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#78 手をつけた、後始末 2

 昨日早く寝ただけあって熟睡でき自然と爽快に目が覚めたら窓の外はまだ殆んど真っ暗だった。

 城門への集合時間は明確に決めていないが、流石にまだ早すぎるので時間つぶしをかねてゆっくり準備しよう。

 昨日楔で作ったが食べきれず格納領域へ納めた日本食を取り出し、ゆっくり朝食として食べていく。

 食事を終えた頃には外も大分明るくなっていて体を超人体に換装し装備も着込んで寝床にしている部屋を出た。

 俺としては体を換装する手間を惜しんだつもりだったんだが、城塞内で行き合う集落の住人達全てに人の姿を一々驚かれた。

 中には武器を構えようとする者もいて毎回体を溶岩体に換装し直して説明したが、流石に5回同じ話をした所で面倒になり以降は溶岩体のまま城塞内を進んで行った。

 城門の前に出ると俺がゆっくりした分、今回付いて来てもらうトロスを一緒に出発した面子はもう待ってくれていた。

 その他にバルバスやネイミもいて、装備を着込み荷物を背負った集落の戦士達が幾人か集まり始めていた。

「おはようございます。リク様」

「おはよ、みんな早いな。バルバスやネイミは見送りに来てくれたのか?」

「御意。出城の兵に接触する可能性がある以上わたしはお供できませんからな。加えてこの森にリク様の脅威になるようなもうおらんでしょうから冥炎山やトロスの管理に戻るつもりでおります。ただそれでも十分ご注意を。何か用向きがあるならいつでもお呼び出し下され」

 一礼するバルバスに俺も頷いた。

「あたしはマドラやドグラと一緒にこの森で狩りを続けるわね。ゴブリンやオークの群れはまだまだうじゃうじゃいるんでしょ、リク?」

「ああ、100を超えない魔物の群れならいくらでも湧いてくるはずだから、どんどん仕留めていってくれ」

「OK!まーかせて!」

 胸を張るネイミの次は一緒に討伐へ出る面々と挨拶を交わしていく。

 そうしている内に集落の戦士達もどんどん城門前に集まってきたんだが、完全武装したザイオとヘムレオンも俺の前までやってきた。

「遠征に行く者は儂らで最期じゃ。いつでも出られるぞ、リク殿」

「ザイオやヘムレオンもついてくるのか?」

「当たり前じゃな。この辺りの人族を納める者と交渉をするなら儂らが出向かん訳にはいかんじゃろ。」

「この砦もそうガタは来ていませんでしたし、ここはあなたの維持している霊気泉でもありますから残していく戦士達で十分に魔物からここを守れます」

 自分の言葉を引き継いだヘムレオンのセリフにザイオも頷いているので問題は無いんだろう。

「分かった。ザイオ達がそう決めたんなら俺に文句はない。これで討伐に出る面子がそろったんなら、早速出発しよう」

 頷いたザイオが集落の戦士達は号令をかけ砦を出発した。


 グライエンさんが話していた基本戦術通りに行動しているなら、今頃は出城に籠って防戦を続けている筈で戦力が減衰していないなら城はまだ落ちていないと思う。

 一応その状況を想定して、索敵に優れる獣人達を先頭に列を作り残っている道の跡に添って森の中を南下していく。

 砦を出て少し経つとザイオが俺の隣に並んで話しかけてきた。

「リク殿。この辺りを治める人族と交渉を持つ前に聞いておきたいんじゃが、儂らの居住の黙認の他にどんな益を引き出せると考えておられる?」

「単純に言えば交易だ。ザイオ達はこの辺りに移ってきたばかりでその上転居もしたから食料を始め色んな物資が足りないだろう?この辺りで商売をしている大きな商会とも伝手があるから対価は必要だけど物資自体は恐らく都合をつけられる。ただ集落一つ分を賄う物資の交易だ、領主としては何らかの形で関わってこようとするはずだ。多分何かの名目で税をかけてくると思うから、それをどれだけ抑えられるかが、交渉の要点になるんだろうな」

「確かに物資が手に入る伝手はありがたいが、その物資の対価はどうするんじゃ?儂らは人族の金などほとんど持っておらんぞ?」

「そこは心配しなくていい。俺が伝手のある商会は魔法薬や武具も扱ってるから、それらとザイオ達が欲しい物資との物々交換に応じてくれると思う。そういうのを作るのは得意だろ?後は大きな商会だから魔物の素材も引き受けてくれるんじゃないかな?」

「なるほどの。そういう事なら対価の用意は出来そうじゃ。ならばあとは領主の干渉をどう抑えるかじゃが、その良き手もリク殿にはあるのかの?」

「それなんだが、一応考えはある。ただ今の状況だとどこまで有効か判断できないから、取り敢えずは俺の戦功と相殺できないか領主の配下や商会に話をしてみるよ」

「・・・リク殿の戦功を儂らのために使って下さるのか?」

「ザイオ達は俺の配下なんだから、有効な使い道だろ?」

「そお言うてくれるなら、有り難くその考えに乗らせてもらおうかの」

「だったらどんな物資を頼むか予め考えておいてくれよ?」

「了解じゃ」

 1つ頷いたザイオが俺から離れヘムレオンと今の話について相談を始めた。


 森を進む途中で小規模の魔物の群れが何度か近寄ってくるが手早く仕留め、集落の戦士達は勿論俺達も森歩きに慣れてきているので快調に南下できた。

 昼食休憩を挟んで暫くは問題なく進めていたんだが、急に隊列の前方から伝令が駆けてきた。

 話を聞いてみるとどうやら先頭で警戒していた獣耳の者達が進行方向から大規模な戦闘音が続いているのを捉えたみたいだ。

 予想通りの事態になっていそうだが確認のためグリアに騎乗していたガディを偵察に向かわせようとしたら足自慢の獣人数名も同行を希望したので許可して送り出す。

 俺達本隊も立ち止まらずに前進を続けているとガディ達だけが戻ってきた。

「報告します、リク様。予想通り魔物の群れが出城を囲んでいました。戦況は人間達にやや不利なように見受けられましたが、すぐに大きく動く事は無いと思います。同行した獣人達が物見に残りました」

 グライエンさんには悪いが、どうやら俺達にとって一番有利な状況になっているな。

「分かった。報告ご苦労さん。手間で悪いがもう一度先行して物見に残った連中に合流して待機していてくれ」

「御意」

 一礼して駆けていくガディ達を見送り、話しをしていえる間に傍にまで来ていたザイオとヘムレオンへ顔を向ける。

「このまま南へ出てそのまま戦闘に参加しようと思う。異論はないな?」

「勿論じゃ。腕が鳴るわい」

「どう戦うかはザイオ達に任せる。派手に暴れてくれ。」

「それも了解じゃが、任せてくれるというなら一つ頼みを聞いて下さらんかな?」

「何だ、取り敢えず言ってみてくれ」

「リク殿は強力な精霊を使役しておったじゃろ?あの精霊達を戦闘中だけでよいので貸し出してはくれんかな?」

「ああ、精霊術の強化に使うんだな?構わないがそれでエルフやドワーフの戦力は強化されるだろうけど、獣人や獣耳の者達の強化はどうするんだ?」

「その心配は無用じゃ、精霊術が強化されれば獣人や獣耳の者達へ掛ける補助術の効果も上がるからの」

「なるほどな。わかった、戦場に着いたら精霊達を実体化してエルフ達へ預けるから上手く扱ってくれ」

「配慮に感謝するぞ。リク殿」

 俺に一礼したザイオとヘムレオンが歩きながら周りの戦士達へ指示を出し始めると今度はアグリスが話かけてきた。

「リク様。この戦闘が終われば暫く大きな戦闘は無いでしょうから、今回は俺とルファに前面で暴れさせて下さいよ」

 アデルファも同じ考えなのか視線を向けると一つ頷いてきた。

「まあ、いいぞ。5本角との戦いでは俺が花を持たせてもらったしな。今回は後衛に回るよ」

「感謝します。リク様」

 一礼してきたアデルファに続いてアグリスも頭を下げてくれた。

 こうなると今回の戦闘で俺は後衛から魔術を撃つだけになりそうだな。

 作戦の相談を始めるアデルファ達にザイオ達を横目に暫く進むと森が開けてきて、先行したガディ達や物見たちと合流できた。

 同時に戦況も一望できて報告通りに魔物の群れが出城を囲んで攻め立てていた。

 アデルファ達にザイオ達も移動中に戦闘の準備は終えていて、精霊を実体化し終えた俺の合図で全員森から飛び出した。


 俺やティータやティーエに加えエルフ達の精霊術を初撃に出城の防衛戦へ介入したんだが、その一撃だけで出城の北門を攻撃している魔物達の3分の1は吹き飛ばしてしまった。

 術の余波がまだ多少残っている内に混乱する魔物達へアデルファ達やザイオ達ドワーフに獣人達が猛然と襲い掛かった。

 俺達の魔術を受けきったこの群れの主だろう3本角やその取り巻きの2本角はアデルファ達が対処し、その他の雑魚たちは集落の戦士達が当たる端からなぎ倒していく。

 後衛の俺達やエルフ達も魔術師型の魔物が集まる場所を標的に2撃3撃と魔術を撃ち込んでいった。

 俺達が優位に戦闘を進めていくが、どうしても出る重傷者がたまに戻ってくるので俺の回復魔術や格納庫に備蓄してあるポーションで治療してやった。

 ガディの大剣が3本角の首を飛ばし、出城の北門付近にいた魔物達は全て片付けたんだが間をおかず城壁に添って出城の南側を囲んでいた魔物達が襲い掛かってくる。

 ただそいつ等は指揮の取れていないほとんど烏合の衆で、俺達の優位は揺るがず空が暗くなる頃には魔物を全て倒し終えた。



お読み頂きありがとうございます。

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