#6 行く道を決めた、洞窟入口 2
背中からの衝撃につんのめりそうになるが何とか堪えて振り返ると、顔面目掛けて岩石弾が撃ち込まれてきた。
反応速度も上がっているお蔭か腕のブロックが間に合い、弾丸を弾いて射線をさかのぼると天井からライフル銃のようなものが生えていた。
何故と疑問が浮かぶが、そのライフルから次々岩石弾が撃ち込まれてきた。
取り敢えず疑問を棚上げし、弾丸を避けたり弾いたりしながらライフルの元へ向かって行く。
真下まで来るとライフルの形が崩れ、天井へ潜ろうとするので飛び上がってライフルと天井のつなぎ目を掴んだ。
自重で引きずり出せると思ったが、なおも天井に潜ろうとするので懸垂の要領で体を持ち上げ天井に足をつけて引きずり出そうとすると、手元の辺りで千切れそうな感覚がする。
正体も分からずただ逃げられるのは悔しいので、トカゲの尻尾のように千切って逃げられる前に魔力を送り込んで全体像だけでもつかもうとすると、あっさり眷属化に成功してしまった。
余りに簡単だったので逆に釈然としない気持ちになるが、仲間になった者を傷付ける趣味は無いので、引き抜く力を緩め天井から足を離して地面へ降り立つ。
姿を見せてくれと上に向かって命じると、2m四方位の天井がいきなり剥がれて落ちてきた。
かなり驚いたが逃げ出さず受け止めてみると、表面積の割に厚さは2〜3cmしかなく能力を調べてみると擬態と武器化のアビリティに、土魔術のスキルを持つロックカノンモスという苔の魔物だった。
能力を確認してどうしてこいつに気付けなかったのかと、攻撃手段がライフルだったかという疑問が解ける。
同時に移動能力が殆ど無さそうだと分かったので、こいつには重要地点の防御役を頼むとしよう。
今の俺にとっての重要地点は楔のある部屋とこの洞窟の出入り口の二つで、こいつには迂闊に動けないロックゴーレムへの支援砲撃を担当して貰うのが良さそうだ。
頭の上から覆いかぶさっているロックカノンモスを丸めて担ぎ、引きずらないよう気をつけながら出入り口の方へ引き返した。
ロックゴーレムの元まで戻ると、丸めていたロックカノンモスを広げて貼り付ける場所を考える。
射線を確保するなら天井がいいので、広い場所とロックカノンモスを見比べているとこの広さならロックゴーレムも隠せるのではと閃く。
早速膝をたてて座っているロックゴーレムにロックカノンモスを被せてみると、全体を覆う事は出来なかったがこちら側半分を隠すには十分だった。
出口側も隠すためにはロックカノンモスがもう1匹必要そうだが、捕まえに行くか作るか創造のためのポイントで決めようと眷属創操へ意識を向けると、僅かだが眷属の創造と違う感覚がする。
原因を確かめるためその違和感に集中してみると融合昇華という項目があり、ロックカノンモスとロックゴーレムが融合可能だと反応が返ってきた。
融合してどう昇華するか分からないが、ロックゴーレムをもう一度作るポイントは残っているので、試しに融合を実行してみると選択肢が思い浮かぶ。
ロックカノンゴーレムとハイドロックゴーレムの2択で、名前から判断すると前者を選びたくなるが隠れて門番をして貰う以上後者を選んでみるべきだろう。
ハイドロックゴーレムの方を選んで実行を念ずると、体から一気に魔力が抜けていくと同時にロックカノンモスがロックゴーレムを覆うように張り付き一体化した。
そこで変化が一旦止まったので失敗かと疑ったが、暫く待つと指や足の輪郭が無くなり歪な形をしているが大きな岩に化けてくれた。
周りの岩より大分大きいのでそこには違和感があるが、ロックゴーレムには見えないので人相手なら十分だろう。
確認のため人型を取るよう命じると2秒程で元の姿に戻って頭を垂れてくれる。
変化の速度も十分実用レベルだし、触って確認すると基礎能力も上昇しているのでこのまま任せてみよう。
もう一度岩に擬態するよう命じるとハイドロックゴーレムはきっちり出入り口を塞いでくれ、出入り口の監視と封鎖を命じて洞窟へ戻った。
ポイントを節約してロックカノンゴーレムを作ってみるため、ロックカノンモスを探して洞窟のまだ足を踏み入れていない場所を進んで行く。
目標を見逃さないよう集中して注意深く進んで行くと、少し先の地面に微かだが魔力を感じた。
天井や壁じゃないのが少し不思議だが、手に魔力を集め眷属化の準備をして近づくといきなり地面が爆ぜた。
とっさに顔をかばう事は出来たが、吹き飛ばされ壁へ叩き付けられてしまう。
高性能な体のお蔭で怪我をせずほとんど痛みも感じずに済んだが、爆発の高威力を物語る地面の大きな陥没にぞっとした。
流石に怖いが何があったか確かめるため、爆発の粉塵がある程度収まるのを待ってゆっくり近づいて調べていると、視界の端に転がっていく小石が見えた。
爆発の飛散はとっくに収まっているので、近づいて拾い上げてみると小さな爆発を起こして逃げようとする。
俺の手を離れるがすぐに反対の手で捕まえ、また逃げられる前に魔力を流し込んでみると眷属化出来た。
能力確認をしてみるとこの魔物はバーストロックという名前で、ゲームなどによく出てくる自爆攻撃を仕掛けてくる奴のようだ。
違いがあるとすれば爆発に乗って本体の核は逃げ出し、力を蓄えて次の自爆攻撃に備える所だろう。
こいつも拠点防御に役立ちそうだし、融合昇華の素材になる可能性もある。
ついでにロックリザードやフレイムファントムにマグマスライムなんかも、今度遭遇したら眷属化して融合昇華を試してみよう。
落とさないようバーストロックの核を握り直し、魔物を探して洞窟の未踏破部分へ移動を再開した。
お読み頂き有難う御座います。