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#23 襲撃した、冥炎山 9

 奴隷商人の小男を始末してこの船は制圧下に置けたと思うのでバルバスの方の進捗状況を確認しておこう。

 むこうの船に意識を向け魔力を頼りにバルバスへ念話をつなぐ。

(バルバス、今大丈夫ならそっちの状況を教えてくれ。)

(おお。リク様。こちらは船に残っていた10名程を仕留めギャルド、ガディ、シャドウフレイムと手分けして船内の残敵確認に移っております。そちらはどうですかな?)

(俺達の方も残っていた奴等を粗方片付け終わって船の中の残敵と戦利品の確認へ移る所だ。戦利品は一通り全部俺の看破眼で調べておきたいから船内の確認が追わったらそのまま待機していてくれ。)

(御意、お待ちしておりますぞ。)

どうやらバルバスの報も片が付いているようなので、増援の待機はもう必要ないだろう。今度は上空へ向けて念話をつなげた。

(タリンダ、アデルファ、上空待機ご苦労。俺達にバルバス達も敵の始末は終わったから崖にある楔の所へ戻ってくれ。タリンダは後始末を追えたら巣へ転移で送るから楔の傍で待っていてくれ。)

 アデルファは御意とだけ返事をくれタリンダも念話を返してくる。

(リク、わたしは自分の翼であの子たちの元まで戻るので転移での送迎は必要ありません。この人形を元の崖まで運んだらもう戻りますが、約束の魔石をちゃんと持ってくるのですよ?)

(勿論分かってる。協力に感謝するよ、タリンダ。)

 念話を切ると上空を旋回していたタリンダは向きを変え崖方へ離れていった。


 さて俺達もバルバス達を見習って船内の確認をして戦利品を回収していきたいが、出来るなら同時に完全な看破眼で調べてもおきたい。

 一旦格納領域に納め占有領域で取り出して調べる事も出来るだろうが、手間になるので何かいい方法がないだろうか?

 暫く考えていると丁度朝日が昇って来て、無意識にそちらを向くと砂浜が目に入り一ついい方法が思いつく。

「ティーエ、この船の動かし方が分かるか?」

「操船の方法は分かりませんが、水の精霊に干渉してゆっくり動かすくらいなら出来ると思います。」

「だったらあそこに見える砂浜に傷をつけないようこの船を座礁させられるか?」

「出来ると思います。」

「じゃあ、早速かかってくれ。アグリスは甲板上の死体の片付けた後シャドウフレイムと協力して船内の最終確認を頼む。ケルブはこのまま残していくからティータはティーエの手伝いをしてくれ。俺は用事があるからこの船をいったん離れる。みんなよろしく頼むぞ。」

 俺の指示に全員頷いてくれアグリスは船内へ向かいティータとティーエは魔力を集中し始めた。俺ももう一度ガロを呼び出すと、腕を引いて貰う形で船から飛び立った。


 低所から高所への移動だけあって襲撃時より大分時間が掛かって海蝕崖の上へ戻り、船の周囲や楔を守ってくれていたダルクとアデルファの労をねぎらう。

 もうこの場に刺しておく意味のない楔を引き抜き2体を連れて海蝕崖の上を後にした。

 ドグラに騎乗していた時とは違い歩きだったので結構時間が掛かって森の中を回り込み砂浜に出るともう船は波打ち際に乗り上げていた。

 船底付近を見てみるとへこみはなく擦り傷も殆ど無いのでティーエとティータはいい仕事をしてくれたようだ。

 俺も自分の役目を果たすため楔に魔力を補充し砂浜の干渉地を再補足してそこへ楔を打ちこむ。

 地脈へ接続すると同時に占有領域を展開していき、砂浜や後ろに広がる森へ領域が広がっていくが感覚的に予想した通り海側へはほとんど広がっていかない。

 それでも波打ち際から2〜300mは占有領域化出来たので船の中で完全な看破眼を使うには十分だろう。

 傍に控えてくれていたアデルファとダルクに楔の警備を頼み、肩に乗っているガロに左腕へ移って貰い補助を受けて飛び上がる。

 一旦メインマストの先端位まで上昇し上から甲板上のティータとティーエを見つけるとゆっくり傍へ降り立ち声を掛ける。

「注文通りのいい仕事だ、二人とのよくやってくれた。」

 ありがとうございますとティータとティーエは声を合わせ答えてくれ、息を合わせたように一礼してくれる。

 俺のこだわりで看破眼を完全な状態で使うため一手間かけたのでその分効率的に用事を済ませていきたい。

 船内で戦利品の回収をしている内にバルバスの方の船をこの浜へ移動させれば待ち時間なく向こうの船での作業へ移れるが、ティーエには船内の案内をさせたいのでティータにも出来るか尋ねてみよう。

「ティータ、聞くが一人でもう一隻を動かせるか?」

「これを動かした時と比べて時間が掛かりますができると思います。」

「ならガロとケルブを貸し出すから、バルバスの元へ行って向こうの船をこの船近くの砂浜に乗り上げさせろ。ティーエは船内の案内をしてくれ。」

 はいと声を合わせて二人は答えてくれた。

 俺の左腕にいたガロを肩へ移してやるとティータはふわっと舞い上がり速度を上げながらバルバス担当の船へ向かって遠ざかっていく。

 俺もまず奴隷商の小男に出させた物から確認と回収を始めた。


 金貨と銀貨は小男が商圏にしていた大陸西方で一般に流通している西方金貨と西方銀貨というもので宝石や装飾品も含めて特殊な能力は無かったが、人と接する機会が来れば色々と役に立つと思うので小男が使っていた指輪型の格納庫も一緒に全て俺の格納領域に回収して船内へ向かった。

 俺の考え通りに上手く行くならこの船はいつか再利用できる可能性があるので元乗組員たちの私物は全部回収しておこう。

 船内に入ってすぐの船室は乗組員が複数雑魚寝する私室が並んでいるとティーエが教えてくれ、中にあるのはほとんどが着古した服とぼろぼろの寝具に安酒だった。

 奥に行くほど2人部屋や1人部屋が増えていき特に豪華だった2部屋は船長と奴隷商の小男の部屋だったようで最低限の家具以外全て回収した。

 乗組員部屋の続きに会議室のような大部屋があったがテーブルと椅子に海図位しかなかったのでさっさと倉庫の方へ移動した。

 最初の倉庫はロープや木材などの船の補修資材が詰め込んであって残しておいた方が良さそうなので手をつけなかった。

 次の倉庫は予備の武器庫のようで剣と槍に斧や弓矢といった物がぎっちり詰め込まれていてこれらは役に立ちそうなので残らず回収する。

 その次の倉庫はちょっと変わっていて魔道具と食料の保管庫だとティーエが教えてくれた。

 中に入ってみると低質の魔石と奴隷化の首輪が小山のように積まれ、壁際の棚には格納庫だと見える腕輪が幾つも置いてあり、少し大きめの初見の魔道具が纏めて4台置いてあった。

 魔道具を詳しく看破してみると水を生成する ための物のようで、この部屋に置いた合った1ポイント分位しかない低質の魔石でも結構な量を生成できる農業用に開発された優れものだった。

 魔石と魔道具の形で水を保管しているのは分かったが食料が見当たらないのでティーエに聞いてみる。

「食料の保管庫と言っていたが、肝心の食料はどこにあるんだ?」

「そこ棚にある幾つかの格納庫の中です。船長が管理していて2〜3日に一回使う分だけ取りだしていました。」

「なるほど、腐敗の防止と同時に食料を人質にして航海上での反乱を抑制してたんだな。ここの格納庫は全部食料保管用か?」

「いえ、幾つかは船長が強奪した金品を格納していたと聞いています。他には解呪のための聖水を保管しているのも在る筈です。」

「待った。聖水を保管しているやつも船長が管理していたのか?」

 船長は仕留めているので格納庫に納められた物は消えている筈で、聖水も消えてしまったかと一瞬不安になるがティーエは首を横にふってくれた。

「いえ、聖水を保管している格納庫は奴隷商からの持ち込みで私が管理していました。中身は無事の筈です。」

「そうか、どれか分かるか?」

「あれだと思います。」

 保管庫内を見回してティータが指さした保管庫を棚から取り上げティーエの前に差し出す。

 中身を確かめさせると小さな小瓶を取りだし、看破してみると解呪用の簡易聖水が入っていた。

「間違いないようだな。この腕輪はこのままティーエが持っていろ。後で呪いを掛けられた獣人達の解呪を担当して貰うからな。」

 はいと返事をして頷くとティーエは俺から格納庫の腕輪を受け取って腕に嵌め取り出していた小瓶を仕舞う。

 俺もこの保管庫にある全ての魔石と魔道具を格納領域に納めて廊下へ出た。

 次の倉庫へ案内するようティーエへ指示するが後は奴隷収容するための空き部屋だそうだ。

 丁度船内の確認を終えたと念話を送ってきたアグリスもティーエの話を裏打ちしたので船外へ戻る事にした。


 甲板上へ向かう階段を上っていると何かがこすれ合う大きな音が聞こえてくる。

 甲板に出て音がした方を見るとバルバスが担当した船が砂浜に乗り上げていた。

 ティータもいい仕事をしてくれたようで擦り傷は所々ついていたが船底に大きな穴やへこみは見えなかった。

 むこうの船の様子を確かめている内にアグリスとシャドウフレイムも船内から出てきてくれ、ガロをティータの元から呼び戻し力を借りて全員砂浜へ下りる。

 多少不安だが出来る筈なので俺だけ波打ち際に戻り船底に触れながら格納領域を発動した。

 150ポイント消費するか是非を訪ねるアナウンスが頭に響きよしとつぶやいてポイントを消費すると、かすみが晴れるように目の前の大型船が消えてなくなる。

 俺の格納領域に生物は入らないので船内にいたのだろうネズミや虫が何匹も水面に落下して溺れたり泳いで逃げ散って行った。


 次はバルバスが担当した船の後始末に掛かる所だが、大分日が昇ってきているので先に里の獣人達の呪いを解いてやるべきだろう。

 そうなると魔人とその眷属な俺達が解呪するよりティータやティーエにやらせた方が混乱や軋轢が少ない筈だ。

 早速ガロにティータを俺の元へ連れてくるよう指示して送り出し、ティーエやアグリスとアデルファに楔の近くに集まって貰った。

 ガロがティータを連れて戻ってくるとダークエルフの二人には里の獣人の解呪を命じアグリスとアデルファには二人の護衛を指示する。

 返事をして頷いてくれた4名を楔の転移機能で獣人の里へ送ると俺もバルバスが担当した船の後始末に掛かった。


 2隻目も間取りは違ったが中にある物は最初の船と大して変わらず、船員の私物に保管してある武器や低質の魔石と格納庫や水生成の魔道具などだった。

 変わり映えしなかったが全部俺の格納領域に回収し、全員砂浜に引き上げると2隻目自体も楔の中へ回収して地脈を通じ2隻とも冥炎山の楔のへ送るとここでの後始末はすべて片付いた。

 俺は楔の回収があるので眷属達を先に転移で里へ送ろうとしたらバルバス達が難色を示し、俺を心配してのことなので妥協した。

 バルバスとガディにダルクを先に転移で里へ送りだし、ギャルドとシャドウフレイム達を背中に張り付けて楔を引き抜き体に戻すとラザを召喚しその背中に跨って砂浜を後にした。



お読み頂き有難う御座います。

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