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#138 後始末した、王都 10

 ヴォ―ガイを含む鉱夫達全員から奴隷化の首輪を外し終わり、グリシャムの手下達へその首輪を嵌め終わった頃丁度ジアトルがこの広場にやってきた。

 その顔を見てまだどこか表情が硬かった獣人やドワーフ以外の鉱夫達もようやくホッとしたみだいだ。

「皆に被害なく制圧してくれたみたいですね。改めてお礼を言わせてください」

「なにそっちの手伝いを断ったんだ、これ位はな。で、丁度尋問を始めようと思ってたんだけど、その間にジアトルさんにやって欲しいことがある。一応誰も逃がしてないと思うんだが、俺達が制圧を始める前にここを離れた奴がいるかもしれない。外に残った連中が全員いるか確認してもらえないか?」

「確かに必要な事ですね。もしかしたら連れていかれた鉱夫も知るかもしれませんし、すぐに確認させます」

 ジアトルの目配せに彼の周りにいた護衛の1人が頷き、他の護衛にも声をかけて作業を始めてくれた。

 では、こっちも言った通りに尋問を始めるとしよう。

 いずれは全員から知っている事を聞き出さないといけないだろうが、まずはこの連中の頭に大まかな所を喋ってもらおう。

 その後で他の連中には聞き出した話に間違いないかと、それ以外に知っている事がないかを問い質していけば話が早いだろう。

 足元に転がったまま気絶している連中の中から適当に1人選び、魔術で作った水をかけて起こす。

 そいつにここの頭を指ささせ、同じように叩き起こした。

「目が覚めたな。だったら首は何が嵌ってて自分がどうなってるかも分かるな」

 そいつは返事こそしなかったが、苦々しげな表情を浮かべたんで状況はちゃんと理解で来たみたいだ

「じゃあ、お前の知ってることを洗いざらい喋ってもらうぞ。まずお前たちの所属だ。ジアトルさんが知らない以上は以前からのグリシャムの子飼いじゃないのは分かってる。お前たちは何処から派遣された」

「・・・ジェルマン商会だ」

「ジェルマン商会?知らない商会だな。ジアトルさんは知ってますか」

「ええ、ジェルマン商会は王都に居を構える中堅処の奴隷商会ですね。それにこれでこの連中がグリシャム様に雇われた経緯も予想がつきます。実は破産されたグリシャム様の祖父に当たる方が海運による奴隷の運搬を見込まれて保有していた商会毎ジェルマン商会へ取り込まれています」

「その伝手でジェルマン商会の荒事担当を借り受けたってところか」

 間違いなさそうだが尋問中の男に確認してみたら忌々しげだが頷いた。

「次は確認だが、グリシャムの命令でジアトルさんを殺そうとしたり、鉱夫達を奴隷にしようとしたんだな?」

「ああ。その男については出来るだけ事故に見せかけて殺すようグリシャムさんから指示された。だが鉱夫達の方はその口さえ塞げればその手段は問わないって事だったんで、奴隷にしてうちの商会の商品になってもらう事にしたんだよ」

「ジアトルさんについては殺害方法まで指定されていたんだな」

「そうだ。そいつの性格なら鉱脈が枯れていると知らされれば必ず自分の目で確認に行くんで、そこを狙って坑道の中に生き埋めにしろって命令された。その為の魔道具も用意されてたし、鉱夫達を売り捌けば良い追加報酬も手に入ったのに、お前達に見たいな腕利きがいるなんて誤算もいいところだよ」

「それはお前達に見る目がなかったんだよ。俺達の力量に見抜いていれば、俺達がここを去るまで待っても良かった筈だろ。ジアトルさんの護衛は俺達の腕前にちゃんと気づいていたぞ」

 そんな俺の返しに尋問していた男が忌々しげな表情を深めた所に、警備の頭数を確認していたジアトルの護衛が話しかけてきた。

「ジアトル様、ご命令の確認を終えました。鉱夫達は全員いましたが、どうやらゾアムともう1人警備がいなくなってるようです」

 坑道を崩されてから制圧に掛かるまで少し時間が掛かったんで、その間にここを離れたんだろうな。

 まあこいつらと同等程度の奴らが2人で逆襲を仕掛けてきても問題なく返り討ちに出来るだろうけど、その行方は掴んでおいたほうが良い。

 この尋問中の男ならそれも知っている筈なんで喋ってもらうとしよう。

「おい、ゾイムって奴ともう一人は何処へ行った?」

「その二人なら先に王都へ向かわせた。予定通りにジアトルを生き埋めにした報告と奴隷の受け入れ準備をしておくようにあらかじめ連絡するためだ」

 こいつらの腕前は大した事なかったけど、順当な判断は出来たみたいだな。

 まあそれはいいとして、王都へ向かっているその二人にはどう対処しようか。

 どうやら徒歩で向かったみたいなんで、その二人が急いだとしても王都へ着くのは早くて明日の昼以降だろう。

 すぐに馬かグリアに騎乗して追いかければそう難しくなく見つけて捕獲できるだろうが、その報告先であるジェルマン商会はほとんど偶然の出来事だとしても俺達に喧嘩を売ってきた。

 きっちりと報復するのは当然として、出来るなら向こうの不意を打ちたい。

 その為にはその二人を追うよりも、先に王都へ戻ってジェルマン商会へ仕掛けた方が確実だ。

 それに王都付近の街道や城門に網を張って待ち伏せすれば、その二人も問題なく捕獲できる。

 後はジェルマン商会の制圧が罪に問われないのかが問題だけど、それについては王都の司法に詳しい人へ聞けばいいな。

「ジアトルさん。まだ尋問の途中だが質問させてくれ。こいつらの証言だけでジェルマン商会への報復を正当化出来ると思うか?」

「そうですね。これだけの証人がいる以上恐らく問題ないと思います。懇意にしている役人や警備隊の幹部がそこそこの人数いますから、最低でも不利にならないよう取り扱っても貰えるでしょう。リクさん、こんな事をお聞きになるという事は、ジェルマン商会と事を構えるおつもりですか?」

「ああ。向こうの予定にはなかったんだろうけど、坑道に生き埋めって形でジェルマン商会は俺達に喧嘩を売ってきた。きっちり落とし前はつけますよ。そこでジアトルさんに提案なんですが、引き続き手を組みませんか?ジェルマン商会の制圧も俺達がやるんで、ジアトルさんにはその後の事後処理を頼みますよ。そちらも自分を殺そうとした敵の排除に異論はないでしょ。まあ、もう一人の主犯だろうグリシャムについては商会の始末がついた後でまた相談って事でどうです?」

「勿論異論はありません。私も降りかかってきた火の粉は払わないといけませんし、その条件で協力させていただきます。では、改めてよろしくお願いします」

 ジアトルさんが差し出してきた手をガッチリで握手した。


お読みいただきありがとうございます。

今週の投稿はこの1本です。

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