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#123 引き入れた、王都までの道 8

 さて、これ位の時間が経てばザイオ達もあの集落の現状を確認して移住についての説明を終え、疑問を持たれた点に対する質問へ答えを返したり難色を示す者たちの説得をしてくれている頃だろう。

 その中で俺達についても色々聞かれている筈だし、移住する連中との顔合わせも必要なんでそろそろ話し合いの方へ俺も合流した方がいいな。

 丁度周囲の魔物たちは一掃したんで、再び集まってくる前にここを離れよう。

 この戦闘では魔物の誘引に囮兼壁役として役に立ってくれたが、あの集落へ魔物を引き連れている訳にはいかないんで即席ゴーレム達はここでお役御免だな。

 どのタイプもほぼ全ての個体が表層に傷を付けらはしたが、四肢の欠損なく前衛を務めを果たしてくれた3タイプの即席ゴーレム達から魔力を抜いて土に返す。

 鎧が擦れて音の出る3体の鎧人形達も停止させて格納領域に収め、俺はティータ達にグリア達と気配を殺して戦場にした一帯を離れた。

 そこそこの数の魔物を倒したと思ったが少し移動するとその密度は然程変わらず濃いままで、魔物の群れを避けながら集落へ向かうのには結構時間がかかりそうだ。

 まあ魔物達の動きは単調なんで移動にそう気を使う必要はなさそうだし、この時間を利用して試してみた即席ゴーレム達についての考えを纏めておこう。

 まず大きめのタイプは体格相応に力が強いし体術スキルの影響もあって身こなしも悪くなかったが、その体格だけに小さい個体への対応や移動スピードに少し難があるな。

 俺の魔力やスキルが強くなればまた違ってくるんだろうけど、今のところは大型の魔物対策や城壁に城門といった重量のある固定物の破壊に使うのが良さそうだ。

 次のポイントで作れるゴーレムと同じ大きさタイプだがパワーとスピードのバランスが一番取れていて汎用性が高そうだ。

 加えて体形に手を加えれば用途に合わせてパワー寄りやスピード寄りにも調整できそうなんで、これも後できちんと試しておこう。

 最後に少し小さいタイプは他よりスピードはあったが、ゴーレムとしてはパワーが少し足りないように感じた。

 そのパワーを補おうとして体格の厚みを増すとその効果以上にスピードを殺しそうなんで、逆に体形のバランスを人に出来るだけ近づけ武装もさせて鎧人形のように使ってみればいいのかもしれない。

 合わせて次のゴーレムのテストについてもある程度考えが纏まった所でエルフの集落が近づいてきた。


 さっき傍まで来てはいるが、いきなり俺達が集落へ入ろうとすれば間違いなく余計な警戒心を持たれて騒動になるな。

 そうなると間違いなく出入り口には見張りがいる筈だからそいつらに声をかけてザイオ達を呼び出だそうと思ってたんだが、ヴォ―ガイが集落の外に出て待っていてくれた。

「出迎えのために待っててくれたみたいだな。段取りが良くて助かるよ」

「不用意にリクさん達とここの連中が接触して余計なもめ事が起こるなんて俺達も御免だからな。話し合いをしている集会場まで案内させてもらう。俺の後について来てくれ」

 俺が頷き返すのを確かめてヴォ―ガイは集落へ歩き出した。

 仲間達も文句なく続いてくれ、俺は聞くことがあるんで足を速めてヴォ―ガイの横に並んだ。

「ヴォ―ガイ、話し合いに参加する前にこの集落の状況と話し合いの進捗具合を教えてくれ」

「分かったが、すぐに集会場に着くだろうから要点だけ話させてもらうぞ」

 そうして続くヴォ―ガイの話を聞いてみるとあまり状況は良くないが、それでも最悪ではなかったみたいだ。

 どうやら以前の各種族個別の集落単位では安全を確保出来なくなり、この盆地周辺で暮らす全ての種族が一か所に集まって防備を固める事にしたようだ。

 どこに集まるかは防備の堅いドワーフかエルフの集落のどちらかとまではすぐ決まり、最後はまだ魔物の密度が少しは増しという理由でエルフの集落が選ばれたそうだ。

 外からだとドワーフ達の姿が見えなかったが、集落の過密を出来るだけ避けるため地中での生活を苦にしないドワーフ達には地面に穴を掘って集落の地下で暮らしてもらっているからみたいだ

 ここに集まった各種族には少し悪いと思うが、すべての種族が集まっているなら説明や説得が一度で済むんで俺達にとっては手間が省けてありがたいな。

 そしてその説明や説得も怒号が飛び交うような紛糾は起こらず移住先の話を一通り終え、今は移住先についての疑問点に対する質疑応答や実際に移住する場合に起こる問題点について話し合っているそうだ。

「なるほど。今のところ順調そうだな。それでどんな疑問点や問題が出てきたんだ?」

「疑問点はほとんどリクさん、あんたについてだ。だから詳しい説明はあんた待ちだったんだよ。あと移住についての問題はエルフの集落の事情が大きいんで、集会場に着いてからヘムレオンさんにでも聞いてくれ」

「分かった。出来ればちょっと集落の様子を見てみたかったが、そういう事ならまっすぐ集会場へ行こうか」

 俺に頷き返してきて歩くスピードを上げるヴォ―ガイに俺達も続いた。


 そんな話を聞いている間にヴォ―ガイの顔パスで集落には入れ、一定の距離を取って奇異の視線を向けてくるエルフや獣人達の間を通り中心部へ向けて足早に進んで行く。

 外からは見えなかったが幾つかのテントが張られていない少し開けた場所には小柄な人ならすれ違えるくらいの穴が掘られ、ドワーフが出入りを見張っているんで疑っていた訳じゃないがヴォ―ガイの話に間違いはなさそうだ。

 そんなドワーフ達からも奇異の視線を向けられながら集落の中心付近まで来ると、かなり強い精霊の力を感じる大木の根元で色々な種族の数十人が焚火を囲み車座になって話し合いをしていた。

 こっちから声をかける前に向こうが気づいたみたいで話が一斉に止み、続いてその場の全員を代表するようにザイオが立ち上がり俺を車座の中に招いてくれた。

 まずは最初の印象が大事だろうから、座る前に今狩ってきた魔石を入れた袋を手土産代わりに格納庫から取り出す。

 中身が何かを告げ移住先では問題なく換金出来るんで生活費用の足しにしてくれとザイオに手渡せば、廃砦から戻ってき面々以外が一様に驚きの表情を浮かべてくれた。

 通常魔人はほぼ服従してくる魔物とまず争わないそうなんで、ザイオ達が話したと思う俺についての話にこれで信ぴょう性を持たせることが出来た筈だ。

 現に驚きが収まりザイオに勧められた場所に俺が座っても、車座の中から好奇はあってもそれほど強い奇異の視線は向けられなかった。

 ザイオの紹介で名乗った後は以前ザイオ達にも話した俺の占有領域が持つ特性について話し、お互いに共存共栄を目指していると説明する。

 人と区別できない俺の超人体での姿に本当に魔人なのかと半信半疑の出席者から聞かれもしたんで実際に体を換装してみせた。

 ただ溶岩体に変わると周りが火傷しそうなんで、精霊石体に変わってみせるとエルフ達の口調や態度が微妙に丁寧になったのは面白かった。

 その後も楔なんかの今の段階で話せない事以外は出来るだけ事実の通りに話して、ある程度の質問に答えたあたりでザイオが頭を下げてきた。

「リク殿、一つお願いがある。約束を違える事になるんじゃが口の堅い数名だけでいい、あの力を使ってここの者達に移住先を見せてやる訳にいかんかの?」

 なるほど、ザイオとしてはこの移住の話の信ぴょう性をより増すため楔の転移でここの連中にも廃砦の様子を直に見せたい訳だ。

 話の意味は分かるしそれでも仲間以外に楔の存在を明かせないが、代わりに新しいアビリティのもう片方がここで役に立ちそうだ。



お読みいただきありがとうございます。


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