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#119 引き入れた、王都までの道 4

 当然この間も野営地の外縁で振り切ったアルトン伯爵の護衛達は俺を追いかけていた訳で、気絶させた裏切り者達を土魔術の手枷足枷で拘束しているとやっと追いついてきた。

 感じる気配からすると明らかにみなさん憤っているみたいだな。

 これは俺が彼らを無視して振り切ったからで暴言が飛んで来る位なら仕方がないかと作業しながら考えていたら息を整えていたグライエンさんが手を振って彼らを制してくれた。

「その魔物が近づいてくるのには内心驚かされたが、救援感謝する、リク殿。お蔭でこちらはほとんど損害なくこの場を乗り切れそうだ」

「お久しぶりです、グライエン様。もう護衛についてるつもりでしたから礼はいいですよ。まあそのためにしなきゃいけない話が色々とありますけど、まずはこの連中や外で制圧した奴らをどうするかお考えを聞かせてもらえますかね?」

「うむ。この慮外者達やリク殿達が片付けてくれた連中は、パルネイラのランバルトへ連絡して向こうで引き取って処理してもらおうと思っておる。そのためにも後で移動させやすいよう一塊にして街道脇に集めてくれるか?」

「分かりました。こいつらの拘束を終えたら向こうの後始末に行ってきます」

「そうしてくれ。この連中は後で儂らが連れて行こう。よろしく頼む」

 グライエンさんへ頷き返し手早く裏切り者達に手枷と足枷を嵌め終えグリアに騎乗してまずティータたちの方へ向かった。


 精霊達を付けたんでティーエとティータは無傷で時間稼ぎを狙っていた連中を制圧してくれていたが、代わりに人手不足で拘束には手こずっていたみたいで俺も現場に着くとすぐに手伝いを始める。

 その間にこの連中を集めておく場所を見繕ってくれるよう念話でバルバスへ頼み監視しやすいように合わせて土魔術で整地も頼んでおいた。

 奴隷化の首輪を使ってこの連中自身に歩かせれば楽なんだが、手元にある数じゃ全員分に足りそうにないんで全員の拘束を済ませると順次運んでいく。

 犀の姿をしているラザやグリアの背に乗せたんで移送を始めてからは多少は楽になり、こっちが終わってもアデルファとアグリスが制圧した連中がまだ残っていたんでその移送にも手を貸して全員を運び終えるともう完全に日が昇っていた。


 その間にアルトン伯爵一行は出発の準備を進めていたみたいで、テントなどの道具を馬車に片付け野営地を引き払って俺達の方に近づいてきた。

「ご苦労だった、リク殿。後はこちらで引き継ごう。それと正式に我らの主を紹介させてほしい。この方がアルトン・アルデスタ様だ」

 そう言って2歩分ほど横にずれたグライエンさんの後ろから二十歳前くらいの青年が進み出てきた。

「初めまして。私がアルトン・アルデスタだ。魔人を討ったというリク殿とその配下の方達に会えてうれしく思う。今回も私の配下達に犠牲なく襲撃者達を排除してくれて深く感謝している」

「そう言って頂けるのは光栄ですが、もう護衛の仕事を始めていたつもりだったので過度の謝礼は必要ありませんよ。傭兵団炎山で団長をしているリクといいます。後ろにいる配下ともどもこちらこそよろしくお願いします」

 続けて俺からゆっくり一礼すれば向こうも頷き返してくれた。

「護衛の話はグライエンから聞いている。確か報酬の第一希望に再開発している廃鉱山周辺の施政権を所望したので私が判断するまで契約は保留にしてあるという話だそうだが、間違いないだろうか?」

「はい、そのようにグライエン様にはお願いしました。どうでしょうご許可いただけますか?」

「うむ、見せて貰った護衛の手際は見事だったし、施政権を希望している廃鉱山も自らドワーフ達を招いて開発してくれていると聞いている。希望通りの報酬を私の名をもって約束するのでアルデスタへ戻ってくるまでの間の護衛をお願いしたい」

「希望を聞いていただきありがとうございます。ここからは正式に護衛を引き受けさせていただけますが、一つ追加でお願いがあります。今話にも上ったドワーフ達の故郷がここからそう遠くないところにあるみたいなんです。追加でドワーフ達の勧誘をするため途中で俺ともう一人二人護衛から一時抜けるのをお許しいただけませんか?」

「そういう事ならば我らはこれからバーアフ侯爵領の領都へ向かうのでそこでの滞在中に行って来ればよかろう。アルトン様は10日から2週間ほど領主館で社交に拘束されることになるだろうから、その間ならばリク殿が護衛から抜けても問題あるまい」

 確かにそれなら向こうの領主が警備の持つ場面なんで俺が抜けても問題はなさそうだ。

 アルトン伯爵の横から提案してきたグライエンさんの話は納得だが、新たに疑問も感じる。

 エクトールさん聞いたアルトン伯爵一行の予定にバーアフ侯爵領の領都行きはなかったはずだ。

 そんな疑問が起きるのも承知のようでグライエンさんが補足を続けてくれた。

「バーアフ侯爵領の領都へ行く予定はないのではとリク殿は思っているのだろうが、そこも問題はない。実を言うとあの裏切り者の中にガルゴ様からの旅程を伝えてきた者が居たのだ。裏切り者が関わった予定なぞ変更して当たり前だし、訪問予定だった場所へはパルネイラの方から変更の連絡を入れて詫びればよいしな」

 なるほど、この話の持って行きようならガルゴ男爵も文句を言い辛いな。

 加えて俺達が後始末をしている間にもうアルトン伯爵とグライエンさんが話し合って新しい行程を決めたみたいで、隣のバーアフ侯爵領の領都にも続いている一番大きな街道を通ってそのままルボン伯爵領を抜けて王都へ向かう事にしたようだ。

 聞いている情報通りなら貴族が一番早く且つ安全に王都へ行ける道のはずなんで俺達にも異論はない。

 これで話し合いは終わったんだが、パルネイラへの伝令はまだしも拘束した連中の見張りが頼りなかったんで念の為アグリスとアデルファにも残ってもらい、俺達炎山が最後尾に着く形でアルトン伯爵一行は野営地を出発した。


お読みいただきありがとうございます。


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