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#11 強者と出会った、山頂溶岩湖 5

 バルバスを先頭にして邪竜の遺体が横たわる横穴を奥へ向かって進んで行く。

 遺体の傍まで行くのかと思ったが、丁度フレイムファントムとしてバルバスが現れた場所まで来ると、バルバスはしゃがんで地面を払い始めた。

 暫く払い続けると何か棒状の物を地面から拾ってバスバスは立ち上がり、俺の前に立つ。

 誇るようにバルバスが掲げる棒状の物をよく見てみると、長さは今のバルバスの身長より多少長く総金属製で強力な魔力を帯びた見事な槍だった。

「すごい、な。」

(お褒め頂き有り難いですな。この槍は勇者に指名される前から使っていた槍でしてな。眷属化して頂いてすぐ見つけたのですが、あの赤霊の体では持ち上げるだけで精一杯で、もう扱えぬと諦めておりました。ですが新しく頂いたこの体ならこの槍を十全に扱えます。私がこの槍を使う事、お許し頂けませんかな。)

 俺の許しなんて必要ないと思うが、バルバスにとっては主人の許可を貰う事がわだかまりなく槍を手に取る通過儀礼のようなものなんだろう。

「分かった、その槍はバルバスに預ける。これからも俺の力になってくれ。」

(御意、この身が再び朽ちるまで手足となってお仕えする事を、改めてお誓いしますぞ。)

 バルバスが膝をつき頭を下げて臣下の礼を取ってくれるのは、うれしいと同時に多少気恥ずかしい。

 ただ顔をそらす訳にもいかないので、バルバスが立ち上がるまで槍に視線を向けていると不意に気付けた。

「なあバルバス、その槍みたいに他にも使える物が残ってるか?もし残っているならそれを俺達が使ってもいいか?」

(そうですな、槍以外探していないのでわかりませんが、使える物が残っている可能性はあると思いますぞ。後私への気遣いは無用。リク様が存分にお役立てください。)

「そっか、じゃあ早速調べてみるか。」


 岩や石に砂以外の物を見つけたらバルバスに報告するよう眷属たちへ指示して、俺も地面へ視線を向ける。

 何かないか探してみるが、ふと顔をあげ邪竜の遺体に視線を向けると何故か見入ってしまう。

 呆然とした状態のまま遺体に近づき手を触れて溶融同化を発動するが、強い抵抗にあい手を弾かれて溶融同化に失敗した。

 その衝撃で意識がハッキリし、自分でも何故溶融同化を試そうと思ったか分からず多少気味が悪いが面白い事に気づけた。

 溶融同化に抵抗された感覚が、バルバスを眷属化する時最初に感じた抵抗に強さは違えどよく似ていると。

 つまり溶融同化を強化していけば、この竜の遺体も何かの力として取り込めるようになるはずだ。

 自分や転生させてくれた神様の為にも強くなると決めていたが、明確な目標があれば意欲を維持しやすいだろう。

 竜の遺体へ勝手にリベンジを誓っていると、バルバス達が近寄ってきた。


(リク様、周囲の捜索が終わりましたぞ。火山の空気に当てられてか、多くが腐って朽ちておりましたが、幾つか使えそうな物もありましてグリア殿の背を借りて運んできましたぞ。後これは個人的なお願いなのですが、配下だった者達の埋葬をお許し願えませんかな。)

「勿論許可する。使える物の確認は後にして、先に遺体を埋葬してやろう。俺も手伝うからこの横穴の壁際に穴を掘って、腐った装備も一緒に埋めてその上に石でも積んでやろう。だけどバルバス、お前の遺体はどうするんだ?」

(それなのです。墓を作るのは嫌なのですが、かといってあの体を何処かに捨てるというのも抵抗がありましてな。何か良い知恵がありませんかな。)

「そうだな。バルバスの今の体に取り込んで保管するってのは、どうだ?」

(なるほど、それが良さそうですな。)

 俺とバルバスは頷き合った。


 まずバルバスの遺体がある場所へ向かう。

 融合昇華の素体にマグマスライムが入っていたお蔭か、すんなりと最初の遺骨をマグマの体に埋め込めた。

 上手く行きそうなので見落としが無いよう気を付けて全ての遺骨を埋め込み終わると、バルバスの体に変化が起きる。

 身長に変化は無いが鎧の外見がより堅牢そうに変化し、触ってみると実際強度が上がっていると感じた。

 念の為バルバスの能力を確認してみると、種族がブレイブマグマアーマーと変わっており、確かに能力も向上していた。

 バルバスも俺に便乗する形で確認したようで、強化自体は有り難いがその原因が原因だけに俺もバルバスも素直に喜べなかった。

 取り敢えず強化の事は忘れ、バルバスの元配下達の遺体と腐った装備を他と混ざらないように集めていく。

 全員分集め終わると横穴の日は当たるが雨は掛からない壁際に穴を掘って埋めてやり、墓石代わりの石を積んで手を合わせた。


 墓からバルバスの方へ向き直ると、深々と頭を下げてくれる。

(感謝致しますぞ、リク様。)

「礼はいいよ。この人達が残した物を使うだから、これ位の事は礼儀の内だ。それよりどんな物が使える状態で残ってたのか、教えてくれないか?」

 半分照れ隠しでそう言うと、すぐにグリアが俺の前まで来てくれる。

 その背中には金属製の腕輪と片眼鏡に金属の鞘と柄につばの無い日本刀にしか見えない武器が置いてあり、バルバスはまず腕輪を指差した。

(この腕輪は格納庫と言い、決まった量の物品を腕輪が作る特殊な空間に仕舞っておけるというものですな。入れる事が出来る物の大きさや量は格納庫ごとに違い、これはかなりの高性能品でだから腐らず残ったんでしょうな。)

「貴重な物なのか?」

(いいえ、質を問わねばありふれたものですな。私も指輪型の格納庫を使っておりましたが、残念ながら腐っておりました。)

「そっか、じゃあこの格納庫からものを取り出すには、どうしたらいいんだ?」

(格納庫は持ち主が変わるか死亡すると格納していたものは消えてしまうのです。ですからこの格納庫は空ですぞ。)

「そういう仕組みなのか、なら残念だけど仕方ないか。次の片眼鏡について教えてくれ。」

(これは討伐に参加してくれた魔術師が所有しておりました叡智による看破という物品鑑定や種々の偽装看破用のものですな。使い込めばその分効果が上昇する逸品だと自慢しておりましたな。)

「確かにすごいものだけど、暫く引き籠るつもりだから恐らく使い道が無いな。最後のこれは?」

 日本刀のような武器を俺が指さすと、バルバスの念話の声に少し張りがなくなる

(途中から討伐に参加した傭兵が使っておった、途轍もなく切れる片刃の剣という以外知らんのです。申し訳ありませんな。)


 グリアの背から日本刀のような武器を手に取り、鞘から抜いてみる。

 直刃で反りがあり片刃の刀身は俺から見たらどう見ても日本刀で、これから俺の中ではそう認識して使わせて貰おう。

 腕輪と片眼鏡はすぐに使い道が無いので失くさないよう仕舞っておけばいいのだろうが、両方から竜の遺体と似たような惹かれる感じがする。

 この感覚が正しいか、それほど貴重ではないという腕輪で試してみよう。

「すまないが3つとも俺が貰う。いいな。」

 バルバスは頷いてくれ、他の眷属達も肯定の感情を送ってくれるので、腕輪を手に取り溶融同化を発動して取り込む。


アビリティ格納領域を取得した


 感覚は正しいようなので片眼鏡の方もグリアの背から手に取り溶融同化で取り込む。


吸収した因子と保有していた因子が統合されました

アビリティ万有看破眼:叡智・限定因果を取得した


 取得したアビリティの詳しい確認は、後でいいだろう。

 これですぐ実行でき即効果の分かる強化策は、大体やり終えたと思う。

 次はじっくり時間をかけて取り組む強化策のためバルバスと向き合った。

「バルバス、俺達に戦い方を教えてくれないか?」

(指南役をしろという事ですな。)

「ああ、薄々感づいていると思うけど、俺と大半の眷属は誕生したばかりだ。バルバスの持ってる戦闘の技術と知識を分けてくれ。」

(私の訓練は厳しいですぞ。ついてこられますかな?)

「食らいついて見せるさ。」

(では、その武器の素振りから始めますかな。)

 バルバスに頷いて日本刀を構えた。


お読み頂き有難う御座います。

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