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#107 儲かった、海路 12

「エクトール、この話はそなたが持ち込んできたものだ。ここからもそなたが指示を出せ。まず儂は何をしたらいい?」

 獰猛な笑みを一瞬で引っ込め表情を険しくして問いかけるランバルトさんに、エクトールさんも表情を引き締めて口を開いた。

「最優先でお願いしたいのは、リク殿達エンザンから海賊たちの身柄を回収する事です。もちろん海賊たちの口を塞がれないようマグガムの息が掛かっていない者達を使ってお願いします」

「そこは心配せんでもいい。第一や第二の連中はマグガムの第三を蛇蝎のように嫌っておるし、上手くいけばその力の源泉であるベドール商会を潰せるとなれば喜んで協力しよう。もし第一や第二に内通者がいたとしても複数の見張りを立てれば最低でも数日は口を塞がれる事はあるまい。それに決着までそう時間はかからんというのがそなたの見立てであろう?」

「ご期待に沿えるよう手抜かりなく務めさせていただきます。他にもベドール商会を潰した後でマグガムにつけ入る口実を与えないようこちらの行動を証明する者をリク殿に着けて頂けますか?」

「確かにそれも必要だな。・・・よし、儂の直属で街の情報を集めさせておる者をリク殿へつけよう。その他でまだ何か儂がやらねばならん事があるか?」

「取りあえずは今上げた2つへ迅速に対応していただき、海賊達を殺さず確保していただければ十分です。もし事態が急変した場合はまた迅速に相談へ上がらせていただきます」

 納得して頷いたランバルトさんは机の上のベルを手に取って鳴らし使用人を呼び出した。

 30秒経たずにやってきた執事に幾人かの名前を挙げ呼び出す指示を出してランバルトさんは立ち上がった。

「海賊共の連行にはベドールやマグガムへプレッシャーを与えるため儂も同行しよう。軍装に着替えるので席を外させてもらうが、そなたらはどうする?」

「私は商会に戻り取り交わしたことになっている契約書を準備してまいります」

「俺は海賊の引き渡しに同行しますから、ここで待たせてもらいます」

「では、応接室へ案内させるのでリク殿はそこで待っていてくれ。エクトールも準備を抜かりなくな」

 満足げに頷いて颯爽と部屋を出ていくランバルトさんに代わりに使用人が2人入ってきて俺たちとエクトールさんを別々に先導してこの部屋を出た。


 通された応接室で1時間ほど寛いで待っていると案内してくれた使用人が呼びに来たんでその後をついていく。

 執務室の方へ戻るのかと思ったが玄関の方へ連れていかれ、そこには剣や盾を佩いで全身鎧で完全武装した40人ほどの騎士が整列していた。

 立ち位置を指定されて待っていてほしいと頼まれたんでその通りにしていると、目の前の騎士たちと同じように完全武装したランバルトさんが奥から出てくる。

 そのまま俺の斜め前まで進み出ると騎士たちが一斉に敬礼をし、ランバルトさんも敬礼を返して全員が姿勢を戻したところで口を開いた。

「皆、素早く儂の招集に応じてくれ、感謝する。今回皆を呼んだのは後ろにいる私が個人的に依頼を出していた傭兵達がドゥルガス海賊団の一部を生け捕りにしたのでその身柄を引き取りに行くためだ。蚊帳の外に置かれた皆は不満に思うかもしれないが、海賊共の処罰は儂やパルネイラ警備隊の名で行うと確約を取ってある。粛々と海賊共の身柄を引き取り罰を与えるまで間違いのないよう殺さず管理してほしい」

 話の途中で多少動揺した様子が見られた騎士達もランバルトさんが話を終えると姿勢を正して再び敬礼を返した。

 それに頷いて答えたランバルトさんに視線で促され、歩き出した彼の後ろについて騎士たちの間を通って館を出た。

 外には馬車や騎馬が整然と準備されていて、馬車にはランバルトさんと俺たちが乗り込み騎馬には俺の後に続いて館を出てきた騎士たちが騎乗していく。

 俺たちの馬車を先頭に2列縦隊で騎馬達が続く隊列で代官館を出発した。


 馬車を操る御者は俺から聞いたドックの場所を一度で理解したようで、何度も聞き返してはこなかったんで移動中の待ち時間ができた。

 黙って暇を持て余すよりは良いと思い、さっきの話を聞いていてちょっと気になったこの町の警備隊の組織編成についてランバルトさんに聞いてみた。

 話に出てきた第一というのは第一警備隊を指し、第二というのは第二警備隊の事だそうだ。

 第一警備隊は城壁や城門に港といった場所の警備を担当して主に外からの魔物や盗賊といった脅威へ備えており、第二警備隊は貴族街や商業区画に住宅街といった町中の治安維持や犯罪捜査に当たっているみたいだ。

 ちなみにマグガムが率いる第三警備隊は花街やスラムといった治安の悪い場所を第二とは別に担当しているようで、それを建前にして自身の隊の戦力を手前勝手に拡充してるんだそうだ。

 そんな戦力の拡大に合わせ第三警備隊は他の隊の管轄にも手を出し始めており、第一や第二と衝突し双方から嫌われているみたいだ。

 そんな話の他にも先日の魔物討伐の事をランバルトさんに尋ねられたんで伏せている部分を除いて大まかに事実の通りを話しているとドックに着いた。


 馬車を降りるとドックを囲む野次馬が多少増えていたが、マグガムの息が掛かっていそうな連中はまだいないみたいなので気にせずランバルトさんや下馬した騎士達をドックの中へ通す。

 今は中を詳しく案内する必要はないんで、まっすぐ一塊にしてある海賊達の所へ案内して海賊達の隷属する対象を俺からランバルトさんへ変更していった。

 結構な数がいたんでその分時間がかかったが、邪魔が入るわけじゃないんで淡々と作業を進めて最後の一人まで終わらせた。

 そこからは割合と簡単に作業は進み、緩慢な動きだったが海賊達をドックの外に整列させていく。

 ここにはもう金品や犯罪の証拠になるようなものは何もないが、マグガムはそれを知らない訳で一応配下を差し向けてくることを警戒してランバルトさんからそういった連中を実力で排除する許可を取っておいた。

 ランバルトさんと話している間に海賊達の整列は完了して、騎乗した騎士達でそれら囲み先頭を行く馬車へ乗り込んでいくランバルトさんの号令で護送を開始した。

 念の為俺達も徒歩で最後尾について護送へ参加する。

 流石に三桁に乗る人数が移動し歩く速さもそれなりなんで進むにつれて周囲に野次馬が増えていった。

 それでもドゥルガス海賊団討伐の話が街に広がるのはこっちに利のあることだし、騎士が囲んでいるせいか周りでひそひそ話しているだけで喧嘩を売ってくる無謀な奴は出ず港に隣接している大きな第一警備隊の詰め所に無事海賊達を連行できた。


お読みいただきありがとうございます。


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