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#105 儲かった、海路 10

「面白い書類を持ち込んで頂けました。一つ考えが思いついたのですが、それをお話しする前にお聞かせ下さい。リクさんは元々この書類をどう使おうと考えておられましたか?」

「そうですね。その書類にはベドール商会っていう所が海賊達から盗品を買い付けてたってあったんで、そこからに盗品売買で儲かった以上額を吹っかけてその書類を買い取ってもらおうとは考えてましたね」

「なるほど、でしたら私の考えと矛盾はありませんね。お互いの得になると思うので私の話に協力して頂きたいんですがその前に確認させてください。この書類に名前が上がるベドール商会やマグガムという男についてどれ位ご存知ですか?」

「あ〜実を言うと全く知りませんし、そういう情報やこの街の事が知りたくてここに顔をだしたんですよね」

「分かりました。では、私の考えをお話しする前にベドール商会やマグガムについて説明させて頂きます」

 今まで手に持って目を通していた書類をテーブルに置いてエクトールさんが説明を始めてくれる。

 まずベドール商会だが、商会の名にもなっているベドールという商人の男が一人で立ち上げ、ここパルネイラでかなり大きくなった商会だそうだ。

 元々は花街の大部分を仕切っていた商会に属していたベドールがそこから独立し、元いた商会の縄張りを奪い取りながら自分の商会を大きくしてきたようだ。

 その縄張りを拡げる手法はかなり強引であくどく花街の者達やその関係者は蛇蝎のごとく嫌っているが、独立した当初から花街を管轄する警備隊の一部を抱き込んでいてその力を背景に不満を抑え込んでいるみたいだ。

 その抱き込まれている警備隊の者がマグガムで、ベドールが独立した当時は平に近い警備隊員だったが便宜を働いた見返りにベドール商会から流れてくる資金をばら撒いて出世し、今は花街を管轄する警備隊の隊長になっているそうだ。

 しかもベドール商会は花街の外にまで縄張りを広げ始めていて、ギラン商会とも商売がかち合い始めているらしい。

「なるほど。悪徳商会とそれに手を貸している官吏って訳ですか。遠慮なく毟り取れそうですけど、警備隊の隊長ともなると代官ともつながっているんですかね?」

「いえ、それはありません。マグガムが出世のために金を貢いで力を借りた相手というのがガルゴ様なんです。だから当地の代官であるランバルト様とは犬猿の仲ですし、ガルゴ様が押している次の代官候補というのがマグガムなんですよ」

「だったら、そのランバルト様が敵に回る可能性は低そうですね。じゃあ、話の前提として必要な事も教えてもらいましたし、エクトールさんが思いついたこの書類の使い道を教えてくれますか?」

「はい。お話させて頂きます。私はこの書類を使えば十分な利益をリクさんが得ながら私達にとっても目障りになってきているベドール商会とガルゴ様の息の掛かったマグガムをこのパルネイラから一気に排除できるのではと考えています。まず準備段階として代官のランバルト様に直接面会して協力を取り付けようと思います」

 そのための一番の材料となる拘束中のドゥルガス海賊団の連中はランバルト代官が密かに俺達と契約を交わしその指示で捕縛した事にしようとエクトールさんは提案してきた。

 その契約は生死を問わず海賊達の身柄を引き渡せば船やアジトそのものだけじゃなく中の物まで全てこちらに所有権があるという内容だったことにする。

 そうすれば討伐の名誉は代官のもので協力を引き出しつつこの書類も問題なく自由に使えるだろうというエクトールさんの考えに異論はなかったんで俺も頷いて賛成した。

「ドゥルガス海賊団討伐の名誉を譲る事になるんで、難色を示されるかと思ったんですが同意して頂いてありがとうございます」

「十分な実利があるんなら名誉くらい幾らでも譲りますよ。で、そのランバルト代官様の協力を取り付けた後はどうするんですか?」

「ライバルト様と上手く話が纏まる事が条件になりますが、その次はこの書類をメリルレスタ商会へ持ち込むのと並行してその噂を花街中に流します。この商会は今話したベドールが独立する前に所属していた所で大分劣勢ですが今でもベドール商会と花街の縄張り争いをしています。ここが自分達の不正の証拠を握ったとなれば必ずベドール商会はそれを奪い取ろうと仕掛けます。そこを返り討ちにして力を削ぎこの書類を根拠に証拠を隠滅しようとしたとしてベドール商会へ踏み込むんです。ベドールもやり方はともかく一角の商人ですから保身のためにマグガムと行った不正の証拠を隠し持っているでしょうから、それを押さえてこの書類と合わせればベドール商会を潰すのと同時にマグガムも警備隊から追放できるでしょう。リクさん達エンザンのみなさんへの利益はベドール商会を潰す時に彼らがため込んでいる金品を全てお譲りするという辺りになると思いますがどうでしょうか?」

 ふむ、このエクトールさんの考え通りに進めばただこの書類をベドール商会に買い取らせるより利益は多そうだ。

 しかも同時にガルゴ男爵の思惑も潰せそうで尚良いが、ちょっと疑問もあるな。

「概ね異論はないんですが、1つ聞かせてください。俺達がこの書類を持って直接ベドール商会へ乗り込む方が話が早そうですけど、それが選択肢にも挙がってないのは何でですかね?」

「ああ、それはですね。この書類を根拠にこちらからベドール商会へ交渉を持ってしまうとマグガムが脅迫だとかの口実で介入してくる余地を与えてしまうと思うんです。そうなればこの書類もゆすりのためのねつ造だと難癖をつけられかねませんし、向こうから手を出させれば返って証拠としての信憑性も増せると思うんですよ」

「なるほど、そういう訳なら納得ですね。他の段取りに不満な点はありませんし、エクトールさんの考えに乗りますよ。となると出来るだけ早く代官のランバルト様に会って協力を取り付けたいですね」

「ええ、同感です。出来れば今日中にお会いできるよう、すぐ面会の要請状を書きます。ただそれでもお会いできるのは早くて今日の昼を過ぎてからになるでしょうね」

「ならそれまでの間に拘束している海賊達や拿捕したり回収してきた船をドックまで見に来ますか?」

「いい考えです。すぐに予定を調整して面会の要請状も書き上げるんで少し待っていてください」

 そう言い置くと上機嫌でエクトールさんはソファーから立ち上がった。


お読み頂きありがとうございます。


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