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実感がないまま三日間行方不明だった僕

 瞼に当たった雫で目を覚ますと、そこはどこか懐かしい匂いに満ちている気がした。

 森の草木の香り、雨粒のもたらす何処か懐かしい水の匂い。

 ほんのちょっとしか経ってないような気がするのに、随分長い時間が経ったような気がする不思議な感覚。そういえばあの胡散臭い事この上ない神様は三日経ってるって言ってたっけ。

 草木の匂いの向こう。遠くから聞こえる人々の声。

 

 「・・・居たぞ!」「・・きてるのか!?」

 「あれから三日も経ってる・・・!?」

 「神のご加護だ!」「嗚呼、神よ! この奇跡に感謝します・・・」


 地上に戻された影響なのかまだぼんやりとした意識であんな神様には感謝したくないなぁと考えていると、その声は誰かを探している人々の声だと気付きます。

 近くだけではなく、かなり遠くの方からも聞こえてくる声。

 誰を探しているのだろう?と考えて、それが自分の事だと気付くのには、ほんの少しだけ時間がかかりました。

 彼らの声からは神様(自称)の言う事は本当で、その安堵と驚きの混じった声色からはかなりの時間が経っているであろう事が簡単に想像できます。胡散臭い事この上なかったけど、やはり神様という事なのかなぁと思う。

 声と共に松明や魔法のランタンの灯り、そして徐々に足音が聞えてくるようになった所で、先ほどの人々の声もはっきりと聞こえるようになりました。

 自然と自分なんかの事を探してくれてありがとうという感謝の気持ちが沸いてきます。そのうちお礼をしてまわらなければなければなりませんね。

 しかし聞こえてくる声は当然の事ながら男の人の声ばかり。

 助けに来てもらっておいて言う事でないのは百も承知だけど・・・。なんとなくお母さんの声が聴きたいなぁと思いながら、再び瞼を閉じました。まだ気だるさが残っていたのです。


 助けてに来てくれたおじさん達はやはり村の人々で、僕がいなくなった事に気付いて三日間探し続けてくれたそうです。

 三日も経っている事だし、せめて死体だけでも拾ってあげたいという気持ちだったのだと思います。

 何年かに一度こういう事があるのですが、村の決まりで探すのは三日までと定められています。

 森は広く日々変化している。三日探して駄目なら諦めよう、とその昔決まったそうです。

 しかしながらその日のうちに見つからないと大体熊とかに襲われて既に事切れていたり、大怪我で駄目だったりするのですけどね。

 後一日遅かったら見つからなかったのかと思うとぞっとしますが、僕は神様に誘拐(なんという悪い響きでしょう!)されていただけで、別に怪我をしていたわけでもないので大丈夫だったと思います。


 ・・・さすがに飢え死にしそうになったら神様がなんとかしてくれるでしょう。

 三日間もかかって作り直したらしいのですから、いきなり飢え死にされたら苦労が水の泡のはず・・・ですから。

 ・・・あの神様の事だから「うっかり忘れてたわーハッハッハ」とか死後の世界で言われる気がしないでもないですが。


 話を戻しまして、そろそろ諦めようとしていたその時に僕が見つかったという事をおじさんは興奮気味に話してくれます。ありがとう、名前も知らないおじさん。

 僕を背負ってくれているおじさんN氏(仮名)以外にも大勢のおじさん達(モブの方々)も僕が何の奇跡か無傷で生きていた事にとても喜んでくれました。

 実際は一回死んでるらしいのですが、言わぬが花でしょう。というか、言った所で信じてもらえるとは思えませんし。


 村の着くとすぐに教会の側にある治療院に運び込まれた僕は僧侶の(ギリギリ)お姉さんに診断されて、|()()()()大きな異常はなし、と診断されました。

 特に心に傷を負うような怖い体験をした訳でもないので、健康そのものです。

 色々弄られているいう意味では既に身体は傷物らしいのですけどね。自覚症状はありませんが。

 暗闇を怖がるような年でもありませんし、一人でトイレにも行けます。


 そんな風にのほほんとしていた僕なのですが、周囲の人から見るとそうは見えないらしく。

「強がりを言っているだけだと思います。それが証拠に…ほら…」と何やらひそひそと話しています。

 聞こえてますよー。聞こえてますからねー。 

 なんだか不穏な空気なのですが、何度も繰り返しますが実際何も傷ついちゃいないのです。

 むしろそうやってこっそりこっちを見てひそひそ話をされる方が傷つくってもんです。

 本当にさっき神様の事を話さなくてよかったと思います。

 話していたら一晩中看病とかされて更に居心地の悪い思いをしそうですから。

 本物の病気だったらありがたいんですけどね。熱でうなされている時に側に人が居てくれる事の安心感と言ったら、なんというんでしょうね。言葉では言い表せません。

 そんな微妙な視線が痛くて、なんとも落ち着かない気分になってきました。そろそろ布団に潜って寝たふりでもした方がいいのではないかしらんと考えていると、廊下の方から凄い足音と共に誰かが部屋に入ってきます。


 入ってきた女性は部屋の中をきょろきょろと見回した後、大きな声を上げて僕の方に小走りに寄ってきます。

「シロロ!!」

 お母さんでした。 

 部屋に入ってくるなり、身体が痛くなる程強く抱きしめられます。

「怪我はない?」

「うん。大丈夫だよ」

 その目から止まる事無く流れる涙を見ながら、大げさだなぁ。ほんのちょっと神様に誘拐されていただけだと言うのにと思いつつも、自分の涙腺も思わず緩くなるのを感じます。

「心配かけちゃって、ごめんなさい」

「いいのよ。シロロが無事ならそれで」

 そしてまた強く抱きしめられる僕。お母さん痛いってば。

 そうしてひとしきり僕を抱きしめた後に、もう一度大丈夫?と声をかけながら立ち上がります。

 僕が大丈夫と言うと、そこで何かに気付いたように(ギリギリ)お姉さんの方に行って声をかけます。

「それでシロロの容態は・・・?」

「怪我という意味では身体には異常はありません。ただ・・・」

 そこで言葉を区切ってちらりと僕を見る(ギリギリ)お姉さん。

 その言葉に何かを察したかのように同じようにちらりとこちらを見るお母さん。

 一体何があったのかと思わず首を捻らずにはいられません。

「念の為、今日は様子を見る意味でも一日泊まって行って頂くのがいいかと思います」

「では私も一緒に泊まらせて頂けないでしょうか?」

「そうですね。その方が良いかと思います。後で空き部屋にご案内しますので、ご自由にお使いください」

「ありがとうございます」

 そこまで話すと(ギry)お姉さんは部屋を出て行きます。恐らくお母さんの泊まる部屋の準備などがあるのでしょう。気付けば僕を探してくれていたおじさん達(モブの方々)も居なくなっています。

 お母さんが来た事で自分達の役目は終わったと早々に引き上げていったのでしょうか。


 あ、言い忘れてましたが僕の名前はシロロ=モノ=ククロと言います。

 なんでも空から降ってくる皆に幸せを運んでくる白い綿みたいな精霊の名前だそうですが、ちょっと男の子につける名前としてはいかがなものかと思います。

 

 ちなみに名前を考えるのが面倒で今まで決まってなかったとかではありません。

 決してそんな事ではありません(大事な事だから二回言いました)名前を出す機会が無かっただけだそうです。どうでもいいメタ発言ですね。


 その後でお母さんと心配かけてごめんなさい、とかあなたが無事ならいいのよとかって話をしていたら、お父さんも慌てて飛び込んで来ました。別に存在を忘れていた訳(僕がという意味と作者がと言う意味での二重の意味です)ではありませんが、別の方向を探しに行っていて戻ってきてからここに来るまで時間がかかっただけだそうです。

 僕を見つけたおじさん達が呼びにきてくれたそうです。

 本当にありがとう。名前も知らないおじさん達。

 そうしてお父さんともお母さんとやったのと同じようなやりとりをした後で僕達は眠りにつきました。

 なんだか色々な事があってとても疲れていたので、ぐっすりと眠る事が出来ました。 


 翌日の朝。小鳥(さえず)るさわやかな朝。

 村の人々がどうしてあんなにもひそひそとこちらを見て心配していたのか。

 どうしてお母さんがあんなにも心配したのかがわかりました。

 顔を洗って見上げた鏡を見た僕は、僕の髪が白くなっている事に初めて気付いたのです。


 ・・・あの神様め!!!

 そりゃ恐怖で髪が白くなったんじゃないのか!? って心配もしますよね!!

 そして憤りと同時にどう言い繕ったら良いものかと僕は一人頭を悩ませるのでした。

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