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茜色の空に  作者: おかゆ
1/1

act.1

その目で見つめられたくなんかない

その声で呼ばれたくなんかない

その手で触れられたくなんかない


そんな事されたら、きっと後悔してしまう

苦しくなってしまう


だから私は、あなたに会いたくなかった















私には幼なじみがいた。

とても綺麗でとても優しい子。

時々、意地悪もしてきたけど、私がほんとに困ってたら絶対に助けてくれた。


いつも一緒にいた。

なにをするにも2人でやった。

少しどんくさい私を見放さずにいた意地悪で優しい子。


でも私は逃げてしまった。

ただの友達だった私達の関係が変わってしまったから。


正直、いまいちよく分かってなかったんだけど、でも幼心に怖かったんだと思う。


幼なじみには何も言わなかった。

何も言わずに避けてきた。


そしてその幼なじみが、




今、目の前にいる。


「・・・香澄。」


泣きたくなるってこういうことを言うんだなぁと頭の片隅で考えた。

そもそもこんな状況になったのは今日の朝まで遡る。




act.1




もうすぐ学校の三大行事の一つである文化祭がやってくる。


私達の学校の文化祭は高校のにしては結構な盛り上がりをみせる。

地域の方々にも毎年好評だ。


出し物数も多くて、クラスはもちろん、部活からもあったりする。

なかでも毎年、特に人気なのが、各部活の実力者が集う出し物だ。


生徒会が実力のある部活から実力者を一人ずつ選出し、同じ場所の区切られたブースごとに出し物をさせ、一番人気があった部活に部費を融通する。

しかし、そんなのは本当に選ばれたすごい人たち。


私には関係ないと、クラスと私が所属する料理部の準備で忙しくしていた。


そして、今日の朝。

友達である、各務 光奈がばたばたと教室に入り、私の机を勢いよく叩いた。


「ど・・・したの?光奈ちゃん。」

「どうもこうもないわ・・・。あんた、選ばれてたのよ・・・。」

「なにに?」

「文化祭の・・・選抜出し物に選ばれてたわ。」


私もだけどねー、一緒一緒!とにこにこと話す光奈ちゃんを横に、私は色々な想いを頭の中で巡らせていた。


え、なんで?あれって選ばれに選ばれた人たちがなるものだよね?・・・いやいや、どう考えてもおかしいよ。そもそも私、料理部だもん。え、実績とかよく分かんないよね?ていうか私、部長でもなんでもない、一部員なんだけど・・・。いやいや、


お か し い よ ね ?


「光奈ちゃん!」

「うぉ!え、なにどうしたの?!」


香澄がそんなに積極的なんて・・・!と光奈ちゃんは呟いてたけど、今はそんなことどうでもいい。


「選抜出し物の人、選ぶの生徒会だよね?!」

「そ、そうね・・・。」

「わ、私、生徒会室行ってくる!」


そう言ってすぐに私は駆け出していた。

後ろの方で光奈ちゃんがさけんでいたけど、気にできる程の余裕は私にはなかった。

私はいっぱいいっぱいだったのだ。

毎年、選ばれた人たちはもともと憧れの的になっている人たちがほとんどだけど、選抜出し物にでることにより学校外でも有名になる。


私には会いたくない人がいる。

その人は私がどこに通っているか知らない。

私もその人がどこに通っているか知らない。

それでいい。

会いたくないから。


でも選抜出し物に出たら有名になってしまう。

あの人に知られてしまうかもしれない。


知ったらきっと会いにきてくれる。

そうせざるをおえないから。


だって、私はあの人の・・・。


「冬雅ちゃんいますか?!」

「・・・香澄、学校では雨宮先輩と言えと言っただろう。」

「ご、ごめんなさい・・・。」


雨宮 冬雅。この高校の生徒会長で小学校からの幼なじみ。冬雅ちゃんは腐れ縁だっていうけど、困ってたら絶対に助けてくれるし、一緒にいてくれるお兄ちゃんみたいな人。

本当に大好き。

大好きだけど・・・!


「ど、どういうこと?!なんで私が選抜出し物に選ばれてるの?!」

「あぁ、その件なら、」

「大体、私、料理部なのに!実績とかないのに!そんななんか凄いのにでても評判をおとぶっ!!」

「落ち着け、この馬鹿。」


少し呆れたような声で冬雅ちゃんは顔面を鷲掴みしてきた。


い、いたい・・・。

あと、くるしい・・・!


「あらあら。香澄ちゃんがかわいそうだわ、冬雅さん。」


紅茶らしきものを持って、颯爽と現れたのは笹道 暁那ちゃん。

うちの副会長でよく分かんないけど、どっかすごいところのおじょーさまなんだそうだ。

あと、冬雅ちゃんの彼女さん。


・・・あ、なんかどことなくいい匂いがする気がする・・・。


私がほわーんとしていると暁那ちゃんはくすくすと笑いながら私に紅茶をだしてくれた。


ほんとにいいひと・・・!


ちなみに冬雅ちゃんは私のほわーんとした顔を見るなり、気持ち悪そうな顔をしながら手を離していった。


失礼なんじゃなかろうか・・・?


「料理部は確かに大会などには出場しておりませんが、他の部活の大会時のお弁当作成、先生方の会議時の軽食など実績とよべるものはありますもの。選ばれてもなんの不思議もありませんわ。」

「だけど、私、部長でもなんでもないし・・・。」

「だが、そういったものはお前が考えていると聞いたぞ。だったらお前がでるのが妥当だろう。」


・・・・・・。


「え、あの、誰がそんなこと・・・?」

「お前の所の部長だ。」


ぶっ、ちょぉぉぉぉぉぉぉぉ!!


頭のなかで部長が笑いながら謝っている図が目に浮かぶ。

確か、部長は冬雅ちゃんと暁那ちゃんに憧れていたから素直に答えたんだろう。


あぁ、泣きたい・・・。


そう思いながら床に崩れているとガチャリ、と扉が開く音がした。


「あの、今日の集まり、ここだとお聞きしたのですが・・・。」


振り向くとそこにはものすごく可愛らしい美少女が立っていた。


・・・周りに花が見えるよ、花が・・・。


「あぁ、そうですよ。わざわざご足労頂き、感謝します。」


美少女に向かってにこりと人好きする顔をする冬雅ちゃん。


二重人格・・・。


ぼそりと呟くと聞こえてしまっていたのか、見えないようにガツンと殴られた。


ひどい・・・。


暁那ちゃんはそれを見てまたにこにことし始めた。


「あ、あの、その方は・・・。」

「あなたと同じ、選抜者です。実は私の幼なじみでして・・・。仲良くしてくださると嬉しいです。」

「あ、そうなんですか。」


何故かほっとしたような顔をして美少女は私の方へ歩みとり、手を握ってきた。


「よろしくお願い致します。お互い、頑張りましょうね。・・・実は、少し早く着きすぎてしまったかと不安になっていたのです。もう先にお一人いらっしゃっていて安心いたしました。」

「え、あ、こ、こちらこそ宜しくおねが・・・、もう先に?」

「?はい。今日は選抜出し物の選抜者の集まりですから。」


それを聞いた瞬間、美少女の手をそっと離し、笑ってから冬雅ちゃんに小声で詰め寄った。



「そんなの聞いてないよ、冬雅ちゃん!」

「貼り紙の下に書いておいたぞ。現に選抜者が来てるじゃないか。見てないお前の不注意だ。」

「そうかもしれないけど、でも・・・!」


「俺、初めて生徒会室入ったよー!」

「騒がないで下さいよ、先輩!」

「でも、俺、なんかわくわくしちゃって!」


冬雅ちゃんと言い争っていると扉が開いて話しながら誰かが入ってきた。

皆でそっちを見ると男の子がぞろぞろと入ってきているのが見えた。

進学科の制服の子もいるし、普通科の

制服の子もいる。

たぶん、選抜者の人たちなんだろう。


冬雅ちゃんとの言い争いを止めて、とりあえず、どうやってこの場から逃げようかと考えて考えて・・・そして、聞きたくない声を聞いた。


「香澄・・・?」



ほんとに、あなたにだけは会いたくなかったのに。

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