表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

ボキャ貧自称面白人間

作者: P4rn0s
掲載日:2026/02/02

誰かが場の空気を少しだけ歪めるような冗談を言った時、

だいたい決まって同じ声が飛んでくる。


「えぐい」

「怖い」


それだけだ。


最初は反射だと思っていた。

考える前に口から出る、便利な緩衝材みたいな言葉。


けれどその人は、毎回同じだった。

言葉の意味も、文脈も、面白さの方向も関係なく、

笑いながら「えぐい」「怖い」を連呼する。


その笑顔が一番怖かった。


まるでその二語を言えば、

場に参加したことになると信じているみたいだった。


理解しなくていい。

咀嚼しなくていい。

自分の言葉を差し出さなくていい。


ただ、強めのリアクションを被せれば、

それで「ノってる側」になれる。


その人の笑いは、いつも少し遅れてやってくる。

誰かの冗談が着地して、

空気が一度静まったあとに、

慌てて追いかけてくるような笑いだった。


「えぐいって」

「マジ怖いんだけど」


笑いながら、何度も。


周りは最初、愛想笑いをする。

けれどだんだん、その言葉が冗談を殺していく。


話の余白を潰し、

次に続くはずだった別の誰かの一言を、

無音に変えていく。


面白さを受け取れない人の声は、

思った以上に大きい。


その人は、自分が面白い側に立っていると

信じて疑わない。


「今のやばかったよね」


そう言いながら、

何も言っていないことに気づかない。


私はいつも思う。


怖いのは冗談じゃない。

えぐいのも冗談じゃない。


自分の言葉を持たずに、

他人の笑いの残り滓にしがみついている、

その姿の方がよほどきつい。


だから最近は、

その二語が聞こえた瞬間、

少しだけ距離を取るようにしている。


笑いの場からじゃない。

その人から。


本当の冗談は、

ちゃんと受け取ろうとする人の前でしか、

生き残れないから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ