跨王、段階を越えて
形を変えた武器を手に、正太はタケルノへと踏み込んだ。
白く淡く光る水晶――
跨王・第一段階。
それだけで、これまでとは明らかに違う。
正太の一撃を受けた瞬間、
タケルノの足が地面へと沈み込んだ。
「……っ」
軽く受け流していたはずの攻撃。
だが今度は、確かな“重み”がある。
その様子を見て、サンボンが腹を抱えて笑う。
「ぶはははっ! いいねぇ!
さっきまでのヒョロいのとは別人じゃねぇか!」
妖狐もすぐさま距離を詰め、
二対一でタケルノへと攻撃を重ねる。
――だが。
その時、街の見回りに出ていた雪妃衆の隊員たちが到着した。
戦場を一目見て悟り、
様子見をしていたサンボンとシシバナへ斬りかかる。
数人がかりでサンボンへ。
しかし――
「おっと」
鉄の巨大な棍棒が振るわれ、
まとめて弾き飛ばされる。
次に、シシバナへ。
だが、刀が届く前に
鉄製の編み込まれた長い鞭が唸りを上げた。
一撃。
数人がまとめて地面を転がる。
その混戦の中――
サンボンに吹き飛ばされた隊員の刀が、
視界の外から飛来した。
シシバナは間一髪で避ける。
だが、腕に走る浅い痛み。
血が、流れた。
一瞬の静寂。
次の瞬間――
「……ああぁぁぁぁっ!!」
シシバナの瞳が、縦に裂ける。
「私の身体に……
傷をつけたのは誰よォォ!!」
余裕も妖艶さも消え失せ、
完全な鬼の形相。
「切り刻んで……
殺してあげるわ!!」
鉄鞭が嵐のように振るわれ、
隊員たちは次々と弾き飛ばされていく。
それに呼応するように、
サンボンも完全に戦闘の顔になる。
「ぶわっはっは!!
潰せ潰せぇ!!」
棍棒が唸り、
戦線は一気に崩れ始めた。
その様子を、
温羅だけが無言で見ていた。
表情は変わらない。
だが、正太の動きだけは、確かに目で追っている。
「……余計な敵も増えてしもうたな」
妖狐が低く呟く。
「このままでは、もちませんえ。
うちも……力を使う必要があるかもしれません」
覚悟を決め、踏み出そうとした、その時。
「――遅くなったわね」
聞き慣れた声。
蓮と京士郎が戦場へ駆けつける。
「なんでこんなことになってんのよ!」
妖狐が簡潔に状況を説明する。
「……ああ、もう!」
蓮は舌打ちし、鎌を構えた。
「白陀。力を貸して!」
鎌が形を変え、
蓮は真っ先に戦場へ躍り出る。
京士郎も静かに刀へ手を置いた。
「……最初から全力が必要な相手だな」
「刹那。力を借りるぞ」
刀の刃が変形し、
サンボンへと向かう。
だが、それでも。
数では有利なはずなのに、
力を使えない隊員は戦力にならない。
戦える者は限られ、
体力の差も明確だった。
正太、妖狐、蓮、京士郎の四人は、
一度距離を取り、肩で息をする。
「……さすがに、まずいな」
京士郎が低く言う。
「こっちは主戦力じゃないのよ!」
蓮が吐き捨てる。
その時――
一番最初から戦い続けていた正太が、前に出た。
「……この武器には、
力の段階があると思います」
三人が、正太を見る。
「今のは……第一段階です」
「はぁ!?」
蓮が声を上げる。
「そんな話、聞いてないわよ!」
正太は首を振った。
「ずっと跨王に話しかけてました。
数日前に……一度だけ、
この先の力に触れたんです」
拳を握りしめる。
「だから……やってみます」
正太は、武器へと語りかけた。
「跨王。
もっと君の力が必要だ。
――第二段階を、開いてくれ」
淡く青く光っていた水晶が、
ゆっくりと――黒へと染まっていく。
武器が軋み、
形を変え、
正太の腕を包み込むような小手となって装着された。
その瞬間。
温羅の黄色い瞳が、わずかに細まる。
「……ほう」
初めて、
明確な興味の色が浮かんだ。




