連なる選定、動き出す四人
帆保はるかが、六人目の使い手に選ばれた。
その事実に、訓練場は一気に沸き立つ。
称賛、羨望、焦燥。
さまざまな感情が入り混じり、ざわめきは収まる気配を見せない。
――だが。
「……めんどくせ」
そんな空気を一切気にする様子もなく、
加賀仁羅は気怠げに前へ出た。
はるかと同じように、
並べられた武器へと、一本ずつ手を伸ばしていく。
一本目。
反応なし。
二本目。
白い水晶が、かすかに揺れるだけ。
三本目、四本目……。
周囲が「まあ、そうだろう」と空気を緩め始めた、その時。
最後の一本に、仁羅の指が触れた。
――カン、と澄んだ音が鳴る。
白い水晶が、はるかの時と同じように淡く青く染まり、
武器が、ゆっくりと形を変え始めた。
刀身が、ぐにゃりと歪む。
それは、仁羅が普段使っている――
刀身の曲がった曲刀と、酷似した形状だった。
一瞬の沈黙。
次の瞬間、
訓練場は、先ほど以上の歓声に包まれた。
「おい……まさか……」
「二人同時だと……?」
善徳は、腹の底から笑い声を上げる。
「はっはっは!
いきなり二人も現れるとはな。
これは神の天啓かもしれん!」
だが、その様子をじっと見つめる視線があった。
ユキヨだ。
「……本当に、試しておったのか?」
静かな声。
だが、鋭い。
「主は適当なところがあるからの。
まさか、今まで放置しておったわけではあるまいな?」
善徳の背に、冷たい汗が流れる。
だが、すぐに表情を整え、
隊員たちへと鋭い視線を投げる。
「試しておりましたとも。
――そうだろう?お前たち」
圧のこもった声。
察した隊員たちは、即座に声を揃える。
「「もちろんです!」」
「それなら、よい」
ユキヨは頷き、穏やかに言葉を続ける。
「使える者が増えれば、戦力の幅も広がる。
次に誰が選ばれるか――
それを聞く日を、楽しみにしておるぞ」
そう告げると、
後の訓練を善徳に任せ、静かにその場を後にした。
残された訓練場では、
新たな使い手となった二人へ、称賛と激励が飛び交う。
同時に、
――次は自分も、と強く願う者たちの視線も、確かにあった。
やがて訓練が終わり、
仁羅、はるか、月兎、世一の四人が集まる。
「ねえねえ!」
はるかが、いつもの調子で声を上げる。
「明日は訓練お休みだけど、二人はどうするの?」
「俺はまだ考え中かな……」
月兎がそう答えるより先に、
世一が即答する。
「俺は、またたび探しに行く。
月兎にも付き合ってもらうぜ」
「数日、訓練には出られねぇから、
後で隊長に伝えといてくれ」
「……」
はるかは、じっと世一を見てから、
にっこり笑って言い放つ。
「あー、しっぽそれだけ触りたいんだね。
気持ち悪い!」
「うるせぇ!」
だが、はるかはすぐに表情を変え、目を輝かせる。
「でも、折角だし私もついていくよ!
もしかしたら、この力を使うチャンスがあるかもしれないし!」
新たに得た武器を、
試したくて仕方がない――
そんな気配が、笑顔の奥に滲んでいた。
「……」
仁羅も、肩を掻きながら口を開く。
「今は一応、教える側でもあるしな。
俺もついてってやる」
やる気はなさそうだが、
武器を得たことで、どこか内側が変わり始めている。
「まあ、人多い方が見つけやすいだろ」
世一がぶっきらぼうに言った、その瞬間。
――ドンッ。
「言い方があるだろ」
仁羅の蹴りが、容赦なく飛ぶ。
「『ついてきてください』だ」
「……」
世一は渋々立ち上がり、
感情を殺した声で言い直す。
「……ついてきてください」
四人の視線が、同じ方向を向く。
それはただの“またたび探し”ではない。
新たな力を得た者たちが、
初めて同じ目的で動き出す――その始まりだった。




