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9話:次なる仲間

爆炎が収まっても、仁王立ちのジャスティス・ブレイク。


「……」


その様子をケンタは、「この後どうするつもりかなぁ?」という心境で見守る。


「……あ、ジャスティス──」

『正義執行完了、さらば!』


声をかけようとしたリアムの言葉に被せるように述べ、ジャスティス・ブレイクは一瞬にして消え去った。


「リアム様は、あの方をご存じなのですか?」

「いや、僕も詳しくは知らないんだ……」


セレスティアの問いに、リアムは憂いを含んだ様子で答える。


そして、リアムは、未だくすぶる黒煙を見上げ、

「ジャスティス・ブレイク……、彼は一体……」


レインボーモヒカン姿でも、キリリと決めるリアムであった。


ケンタは、もうこの二人はこの路線で行ってくれればいいやとツッコミを諦めた。




魔族ガルバルは早々に倒されたため、数棟の家屋は失ったが、目立った死傷者も無かった。

被害らしい被害と言えば、守り人の服装がキンキラになったことと、リアムの頭髪がレインボーモヒカンであるくらいだ。


──あれ? 魔族の被害じゃないぞ?


ケンタはとりあえず心の疑問にフタをした。


リアムやケンタ、守り人はセレスティアと共に、村人たちの被害を確認して回り、

(なお、既に服装と頭髪は元通りである)

いつの間にか合流したレイジと共に、村長の元を訪れていた。


「リアム殿たちのおかげで、この村は救われました。ありがとうございます」

「いえ、僕たちは何も。ジャスティス・ブレイクが居なければ、僕たちも危なかった」


村長の言葉にリアムは謙遜を返す。その言葉に、村長はレイジをチラチラ見つつ、「そうなのですか?」と小さく呟くのみであった。


レイジは、村長の落ち着かない視線を受けながら、目線を逸らして口笛を吹いている、ような口をしている。音は出ていない。


「それでも、村が救われたのは事実。何かお礼ができれば良いのですが……、そういえば、皆さまは何か目的があって、この村にいらしたのでは?」


礼を考えた村長は、リアム達の訪問理由に行き着いた。少しでもリアム達を手助けしようと考えたのだ。


「僕たちは、”聖女”のお噂を聞きまして、旅の仲間としてお誘いできないかと思い、こちらにお邪魔したのですが……」

「そのことですが、リアム様」


訪問理由を述べたリアムに、答えたのはセレスティア本人であった。


「ごめんなさい。私には戦う力はありません。それに、村の人たちを私の回復魔法で助けていきたいんです」

「あぁ、今日の君の活躍を見て、僕もそう思──」

「名案ですな!」


村長の鶴の一声が、セレスティアとリアムの間で終わりそうだった話をどんでん返しする。


「え、村長!?」

「セレスティア、お主の力はこんな狭い村だけのために使うべきものではない! もっと多くの人、世界の役に立つべき力じゃ!」


戸惑うセレスティアに村長は力説する。


「のぅ、お主もそう思うじゃろ?」

「大変名案です!」


村長が話を振ると、村の守り人も秒で賛同を示す。


──あ、厄介払いしようとしてる?


ケンタは、本日二度目の心の疑問にフタをした。


その後数分にわたり、村長とセレスティアのやり取りが続けられ、結果、セレスティアはリアムに同行することに決まったのである。



「ふつつか者ですが、どうぞよろしくお願いします」

「こちらこそよろしく」


頭を下げるセレスティアに、しかし、リアムは頭は下げず、手を差し出した。

それを見たセレスティアは、少し恥ずかしげに笑い、そしてリアムと握手をした。


次は自分の番かと手を出して身構えるケンタ。しかし、セレスティアの握手はリアムだけで終わった。


行き場の無くなった手を、ケンタはズボンの尻でゴシゴシと拭った。そんなケンタの肩に手。

振り返ると、レイジが「わかる」と言った表情で頷いていた。




「魔族は手ごわい。さらなる調査を続けるにも、戦力が必要だと思う」


旅立ちに向け、リアムが次なる目標を告げる。

「戦士か魔術師の仲間を探したいと考えているんだ」


ケンタは「正史」を知っている。そのため、この先増える仲間のことも知っている。が、自分がどこまで口をはさんでよいものか。

くそ胸糞悪い「正史」など、ぶっ壊れてしまっても良いとは思うが、あまり手出ししすぎて、更に悲惨なことになってもマズイ。

ここは慎重に……、あれ? すでに相当ぶっ壊れてない?


「えっとー、大きな街とかで、情報を集める、とかですかね?」


ケンタが一人逡巡に耽る中、珍しくレイジが提案していた。

「そうだね、それが一番無難かもしれない」


「あ、私、戦士の方に心当たりがあります」


レイジの案にリアムが賛同しかけたところで、セレスティアが小さく手を上げて発言した。


「あの……、私、以前森で迷子になってて……、二年ほど」

「長っ! それ迷子じゃなくて、もはや住んでたって言わない!?」


さすがの発言に、ケンタは思考の海から急速浮上した。


「いえ、一年半くらい熊の魔物に追いかけられてたんです」

「ほとんど逃亡生活じゃん! 緊張感エグいな! 聖女って強メンタルすぎない!? 熊も精神力すごいだろ! もう逃亡者と追跡者でおかしな友情芽生えそう!!」


「そんなとき、その熊の魔物を倒して、助けていただいた戦士さんが──」

「熊ぁぁぁぁぁぁぁぁ!! なんでやられちまったんやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


──いやちょっと待て


ケンタは再び思考の海に潜る。

これは確実に、「正史」でも出てくる「戦士グレッグ」を紹介する流れだ。

確かに、「正史」でも、グレッグはセレスティアからの紹介で加入していた。

しかし、こんなインパクト抜群なエピソードあったか? それとも、正史との違いがこんなところにも……?


そのとき、ケンタの脳裏に、「正史」で見たセレスティアの様子が再生された。


『森で迷子になって……』

『……』

『助けていただいた方がいたんです』


──セリフの間が長っ! この女、はぐらかしてやがる!


目は泳いでるし、口元はモゾモゾさせてる! こんなにボケボケなのに、自分はなぜ正史のときに気が付かなかったんだ? とケンタは自戒する。


──はっ! そういえば、ゲームのセレスティアは回復役なのに、「混乱魔法」や「何が起こるかわからない突然変異魔法」を覚えるから不思議だったが、これか! こういうことなのか!


「では、次はそのグレッグという戦士に会いに行ってみようか」

「えぇ!」


ケンタが思考の海を探索している内に、次の目的地は決まったようである。


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