44話:グランド・ジャスティス・ゼロ
<Recept Hero "勘" Expansion>
アラートが鳴り響く。
何のアラート?
<Recept Hero "勘" Expansion>
再び鳴る。
わからない。
<Recept Hero "勘" Expansion>
何度も鳴る。
何も考えられない。
<Recept Hero "勘" Expansion>
<Recept Hero "勘" Expansion>
<Recept Hero "勘" Expansion>
<Recept Hero "勘" Expansion>
<Recept Hero "勘" Expansion>
<Recept Hero "勘" Expansion>
<Recept Hero "勘" Expansion>
<Recept Hero "勘" Expansion>
<Recept Hero "勘" Expansion>
レイジは停止している。
だが、彼のヒーロー勘エクステンションは止むことなく鳴り響き続けていた。
彼に”最大級”の警報を鳴らす。
救うべき人が追い詰められている。
悲劇に身を投じようとしている。
お前の愛する人が涙を流している!!
──レイジ!!!
<Hero "勘" Expansion Limit Over!!>
<BOOT |傲慢なる救い手の抱擁《The Greedy Sixth Sense》>
ドクンッ!
レイジの全身が脈打つ。
静止状態だったはずの核が急速に熱を持つ。
Restart Justice Core...
Mode -Grand Zero-
ジャスティス・ブレイクの全身が発光し、装甲が光りに包まれる。
「なんだ!?」
これはレイジの精神世界。
突然、グレイ型宇宙人が出現する。
「ゼノン!?」
「ラスボス戦用の最終フォームは、ヒーローの花だよね」
「はっ!?」
ゼノンはそれだけを告げると、姿を消した。精神世界も薄れ、消えていく。
Release the Grand Justice Zero!!
ジャスティス・ブレイクの全身が変形していく。
装甲が隆起し、全体に重装甲化。全身を走るエネルギーラインは金色に変わり、背には、輝く金色の翼が出現した。
『オォォォォォォォォ!!』
ジャスティス・ブレイクいや、グランド・ジャスティス・ゼロの全身から噴き出す金色のオーラが爆発的に広がり、世界を轟かす。
『え!? レイジ!?』
グランド・ジャスティス・ゼロの覚醒に、ルナは驚きの声を上げる。
『ルナ!!!』
レイジはルナの名を呼ぶ。二人の間は、拮抗する「無あれ」と「光再誕」により構成された力場が隔てている。
その力場を壊し、突破してしまえば、光再誕は止まってしまうことになる。
『レイジ、邪魔しないで……、私は、この力で、妹を救う!』
ルナは力強い言葉で、レイジを拒否する。
『その力は……、ルナもその力の中に囚われるじゃないか!!』
『わ、私は……、私は大丈夫。一人でも、大丈夫だし……』
もう聞けないと思っていたレイジの声を聴き、ルナの中にも僅かに動揺が生まれる。しかし、今更止まれない。
本当は自分だって、一人寂しくこんな気持ち悪い奴と向かい合っていたくなんてない。でも、他に手がないのだ。
それに妹を救うことができると知ってしまった。ならば、やるしかない。
『俺が嫌だ!!』
『は、え……?』
レイジの一言に、ルナは大きく動揺する。
『俺はルナが好きだ! 君が必要だ!!』
レイジは大きく手を伸ばし、ルナに訴えかけた。
『あ、え、あ、その……』
『君に触れたい! 君を抱きしめたい! 一緒に生きていきたいんだ!! だから……』
レイジは大きく伸ばした手を握りしめ、
『一人で大丈夫なんて、言わないでくれ……』
その声は震え、涙をこらえるような色を含む。
ルナはその言葉にすぐに応えることはできなかった。
自分だって、でも……。
『でも、だって、私は……、妹を助けたい……』
『俺が救う。君も、妹さんも……。全部まとめて!』
レイジは両手を大きく広げ、更に叫ぶ。
『だから求めてくれ、俺を! 助けを!!』
ルナの脳裏に、レイジとの思い出がよみがえる。
出会いは最悪だった。
エルフヘイム間近の静謐なる森の中で、レイジと争った。
今思えば、ルナが一方的に絡み、レイジはそれを受け入れていただけだった。
実はあの頃から、レイジはあまり変わっていないのかもしれない。いつも自分を受け止めてくれる。
出会った日の夜。エルフヘイムでの食事の席。
なんとなく彼らと話がしたくなって、半ば無理やり食事の場に入り込んだ。
だけど、彼らは簡単にルナを受け入れてくれた。
今思えば、あの時レイジにキツく当たっていたのも、照れ隠しだったのかもしれない。
──彼が私を意識していたように、私も彼を意識していたから……
その次は……、本当に恥ずかしい。
でも、レイジに「自由でいい、生きろ」と言われたとき、とても救われたのだ。
気持ちの蓋が溢れる。
抑えていたのに、締まってあったのに。
そんなことを言われたら、抑えられなくなってしまう……。
涙と共に言葉が溢れる。
『……、私も好き、一緒に生きたい……』
Justice Core Full Burst!!
グランド・ジャスティス・ゼロの全身がひと際強く金色に輝く。
レイジは「無あれ」と「光再誕」が生み出す力場へと突入し、その手にルナを抱き寄せる。
硝子が割れるように、力場が破壊され、拡散する。かに思われた。
壊れた力場はしかし、拡散することなく、グランド・ジャスティス・ゼロに吸い込まれ、吸収されていく。
『世界は返してもらうぞ。光再誕』
レイジには、ジャスティス・ブレイクには無かったはずの「再天地創造」の機能「光再誕」を起動する。
二機分の「光再誕」は”終末演算機”の「無あれ」を圧倒し、世界は瞬く間に色と時間を取り戻していく。
「な、なにが!?」
リアム達の時間も戻り、彼らも動きを取り戻す。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!! ラスボス戦専用の最終フォームキター!!!」
ケンタだけは、なぜか事態を把握し、動けるようになった瞬間、感動に叫びをあげている。
──終末コマンド「無あれ」
──終末コマンド「無あれ」
──終末コマンド「無あれ」
──終末コマンド「無あれ」
──終末コマンド「無あれ」
──終末コマンド「無あれ」
”終末演算機 ヨグ・ソトース”が再び無あれを開始させようとコマンドを連打する。
しかし、終末は始まらない。
『もうさせねぇよ』
ルナを抱き寄せたまま、グランド・ジャスティス・ゼロは右手を”終末演算機 ヨグ・ソトース”に向ける。その手には黄金色の光が集約されていく。
同時に背の黄金の翼が大きく展開し、輝きを増す。
『スモールワールド』
グランド・ジャスティス・ゼロがその右手を握る。”終末演算機 ヨグ・ソトース”は何かに吸い込まれるように、ベキベキと歪み、へこみ、縮み、縮小されていく。
遂には3cmほどの小さな球体になり、地面に転がった。
球体は薄暗く、中には、先ほどまで猛威を振るっていたヨグ・ソトースが、ミニチュアのように納まっていた。




