39話:異空間へ
辺境都市サザン。魔の砂漠にほど近いこの都市の気候はきびしい。
昼はかなり熱くなり、夜は凍えるほどに冷え込む。
だが、その中間である朝と夕には、穏やかな気温の時間帯がある。内陸部であり、湿気の少ないこの地域は、気温が穏やかであれば、とても過ごしやすい。
そんな清々しい朝の時間帯。
リアム達は連れ立って朝食のために、オープンテラススタイルの飲食店へとやってきた。
「僕は朝のスープセットを」
「私もそれで!」
「んじゃ私も」
「俺も同じで」
「同じくー」
リアムがスープとパンのセットを注文すると、セレスティア、ルナ、レイジ、ケンタがそれに続く。
「エリシアはどうするんだい?」
「んぁ~、同じでいいや~ZZZ」
何も言わないエリシアにリアムが問えば、半分寝ぼけた状態で”同じ”と注文する。
どうやら夕べも研究だったらしい。
「マスター、いつもの」
グレッグがニヤリと笑いながら言う。
「まだサザン来て二日目だよね?」
「フッ、あいよ」
マスターと呼ばれた男は、不敵な笑みで応える。
「いや、通じるのかよ!」
しばらくして、各メンバーにスープとパンのセットが配膳され、グレッグには、
どんぶりに山盛りの茹でた鶏むね肉、
皿に茹で卵6個、
そして、どす黒い色でもったりと濃厚なドリンクが供された。
「おっしゃ! 今日も一日、最高のスタートが切れそうだぜ!」
全員が言葉を失う中、グレッグはハイテンションである。
グレッグは鶏むね肉を口に突っ込み、丹念に咀嚼。
全員が静かに見守る中、咀嚼音だけが響く。
しっかり飲み込んだあとは卵を1個ずつ豪快に頬張っていく。
途中、謎ドリンクを一口含み、ぷはっ!っと爽快な声を上げた。
「んんんーっ! いいね! この高タンパク低脂質!! 筋肉が喜んでるぜ!」
「いや、やけにこの店進めてくると思ったらこういうことかよ!」
グレッグの食べっぷりに、マスターはいい笑顔でサムズアップしている。
よく見れば、マスターもその道の者であったようだ。ナイスバルク。
「類が友を呼んでたよ!! こらレイジ、”そういうのもあるのか”みたいな顔で見んな!!」
バリバリッ
「っ!?」
にぎやかな朝食も、世界に響き渡るような不気味な破砕音によって中断された。
遥か遠く、魔の砂漠の先から、空に、地に、黒いひび割れが迸り、広がっていく。
世界が崩れ落ちるように、空も大地も、魔の砂漠がどんどん異空間に飲み込まれていく。
ひび割れの拡大が止まったとき、魔の砂漠のすべては消え去り、黒と赤紫が入り混じる異空間へと変貌していた。
異空間には、ところどころ大地の残滓らしき浮島が残り、重力が不安定なのか、岩や水が浮かび、漂っている。
さらにその奥に、暗く、黒く、巨大な何かと、赤紫の異形が存在した。
「演算機……」
怒りと恐怖が入り混じった表情で、ルナが呟く。
「丁度いい、行先は僕らと同じ方向だ」
震えるルナを気遣うように肩に手を置き、リアムが告げる。
「怖かったら、ルナは待っていてくれてもいい」
逆の肩に優しく手を置きながら言うレイジの顔には、怒りと仇敵を見つけた喜びが浮かんでいた。
「まさか! これ以上ヒーローに借りは作らないから」
彼らの手を強気で払いのけ、ルナはさらに一歩前に出ながら告げる。その顔に、すでに恐怖はなかった。
「俺たちもいるからな!」
気が付けば、スペシャルモーニングを食べ終えたグレッグが、胸を張りながら告げる。
「私もです!!」
セレスティアも杖を両手で持ち意気込む。意気込みすぎて杖の先端がバナナに変わった。
「ふぁぁ~、眠気覚ましにはちょうどいいかも」
エリシアは気だるげな様子を見せつつも、その表情は好奇心にあふれていた。
「いこうか」
聖剣を抜いたリアムは、その切っ先を異空間の先へと向ける。全員の視線が揃う。
いざ、”演算機”の元へ!
「ちょっ! 俺もなんか決め台詞ッぽいこと言わせてよ!!」
ノリ遅れた男、ケンタである。
********
「明らかに誘われているな」
先の様子を見て、グレッグが呟く。
リアム達は、広がった異空間の端までやってきた。
まるで、”ようこそ”と言わんばかりに、うっすらと赤く光る”道”があり、異空間の奥へと続いていた。
道幅は20mほど。歩くには十分すぎる幅だが、この上で戦闘となると、少々不安になる幅だ。
さらに、この道から外れた場合、どうなるかわかったものではない。
「せっかくのお誘いだ。乗ってさしあげようじゃないか」
リアムは先頭で、道へと足を踏み入れた。
数歩、異空間の道を進み、足でパシパシと地面の感じを確かめるリアム。
「向こう側が透けて見えているから不安定なのかと思ったが、まるで地面みたいだ」
リアム達は、そろって道を進む。100mほど進んだところで、
──ヴォォアァァァァァ……
道から真っ黒な人型が2体生えてきた。
「ガルヴァル!?」
「ゼウス!?」
それは、倒したはずの魔王軍四天王”【狡猾なる奇術師】ガスヴァル”と”【冷徹なる裁定者】ゼウス”にそっくりであった。
違いといえば、全身真っ黒なことくらいである。
「あれか!? ラスボス前のボスラッシュ的な!?」
ケンタが叫んだ瞬間、更に人型が増える。
多数のガルヴァルとゼウスが道を埋め尽くすほどに出現する。
「違った! 中ボスがザコで出てくるパターンの奴だった!!」
「いくぞ!」
リアムが聖剣をかざし、青白い軌跡をえがきながら駆け、グレッグがそれに続く。
更にそれを飛び越えるようにレイジとルナが跳ぶ。
Recharge Justice Core...
Recharge Resilience Core...
二人の体が光る。
Limit Break
Release the Exoskeleton
リアム、グレッグ、ジャスティス・ブレイク、レジリエンス・キラーの4人は、四天王コピー達と激突した。




