32話:ジャスティス・ブレイクVSヴィラン・ルナ
聖剣の”浸し”が始まった。
長老の放つ白いオーラと、湧き出す霊水から立ち昇る緑の光が混ざり、神秘的な様子を生み出す。
こんな状況でなければ、見惚れ、感嘆の言葉を零すところであろう。
だが、
霊脈の淵の上層では、相変わらずジャスティス・ブレイクとヴィラン・ルナの戦いが続き、断続的な衝突音が響いている。
時折、崩れた岩石が砂が降り注ぎ、大物が落ちてきた場合にはグレッグが戦斧で叩き砕いている。
「すごいな……」
さすがのグレッグも、あの戦闘には素直な感嘆の声を漏らす。
「あれはもう、『筋肉の神話』だ……。肉体の限界を何万回もぶち破って、別の生き物になってやがる。俺もまだまだってことか……」
グレッグの言葉はよく分からなかったが、どうやら心底感心しているようだった。
ジャスティス・ブレイクもヴィラン・ルナも、お互いに各部スラスターを焚いた状態で、空中に滞空した。
『ほぼ”同型機”だし? このまま続けても埒あかないよね』
Villainous Core Overdirve...
そう告げたヴィラン・ルナの全身が強く明滅する。
『受けて立つよ』
Justice Core Overdirve...
『うっせぇ、しゃべんな!』
ちょっと気取って全身のラインを光らせたジャスティス・ブレイクだったが、ルナの一言で少ししょんぼりした。
Shoots restraints!!
Shoots restraints!!
二者の電子音声が重なる。
ヴィラン・ルナの背から大量の触手が生み出され、ジャスティス・ブレイクを拘束すべく殺到する。が、ジャスティス・ブレイクの背からも無数の光弾が飛び出した。
両者の間で、触手と光弾が応酬し、激しく衝突し合う。
Max Power!!
Max Power!!
再び同時に音声が響く。
お互いの右手にエネルギーが収束していく。
Call Command
『ジャッジメントスマッシャァァァ!!』
『マリシャスバスタァァァァ!!』
両者が同時に光と消え、振りかぶった拳同士で激突した。
激しい衝撃波が谷に伝播する。
ぶつかり押し合うエネルギーは、両者を巻き込み巨大な球体へと変貌し、両側に切り立つ谷の壁を削り、消し飛ばしていく。
『あぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
『うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
なおも肥大化するエネルギー球体は、ついに臨界を迎える。
エネルギー球体の中心部から、強烈の光りが放出され、すべてを消し飛ばす力の暴流が噴出する──、瞬間
ジャスティス・ブレイクがその根源を蹴り上げた。
突如指向性を与えられたエネルギーは、一斉にそちらへ向けて濁流のように流れだす。
谷の上空へ、雲を割り、宇宙空間へと到達するほどの光の柱が屹立する。
全ての衝突エネルギーが上空へと飛び出し、光りが納まる。
霊脈の淵の上層は大きくすり鉢状に削れ、薄暗かった谷底には、日の光が入るようになっていた。
その様子を見上げ、長老は顎が外れたのか? と思うほどあんぐりと口を開けている。が、”儀式”は止めていないあたり、さすがのプロである。
リアム達もそれぞれに上を見上げ、唯々、異次元の戦いに呆気にとられていた。
すり鉢状に削れた空間。その中央付近には、ジャスティス・ブレイクとヴィラン・ルナがが滞空していた。
それぞれに装甲に少しの損傷はあるが、ほぼ無傷な状態だ。
『ふは……』
ルナが上を向き、
『あは、ふは……』
体を揺らし、
『あはっはっはっ……、』
不気味な笑いを挙げる。
Villainous Core Unlock First Limitter...
『ふは、はっはっ、お楽しみはまだこれからだから……』
ヴィラン・ルナの全身に走るラインが激しく明滅する。
Limit Break
胸部から発生した激しい光が全身のラインに広がっていく。
Expend the Exoskeleton
全身の装甲が拡張されていく。各部はさらに鋭角に、頭部や肩、あちこちの装甲からとげとげしい角のようなものが出現した。
背面からは、これまでよりも一段と太く強靭に見える触手が4本出ており、それがゆらゆらと揺れる。
『あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!』
叫びながら赤いオーラを噴き上げるヴィラン・ルナ。
『第二形態……』
ジャスティス・ブレイクが呟いた瞬間、ルナは触手で高速の横薙ぎを放った。
左脇に触手の打ち払いを食らったジャスティス・ブレイクは、そのまま吹き飛ばされ、すり鉢状になった岸壁へと激突した。
4本の触手の先端が、吹き飛んだジャスティス・ブレイクの方向へと向く。直後、その先端から赤黒いレーザーが照射され、ジャスティス・ブレイクへと降り注ぐ。
着弾したレーザーが小爆発を引き起こし、粉砕された岸壁が砂塵を巻き上げる。
その砂塵を突き破り、ジャスティス・ブレイクが跳ねるように飛び出す。
触手が向きを変え、疾走するジャスティス・ブレイクを追うようにレーザー照射が移動していく。
すり鉢状の岸壁を半周ほどしたところでレーザー照射が停止する。と、ジャスティス・ブレイクは跳躍、一気にヴィラン・ルナへと肉薄した。
突進からの拳打は、しかし、触手の1本で受け止められた。
動きの止まったジャスティス・ブレイクに向け、残り3本の触手が、その鋭利な先端で刺し貫こうと迫る。
『はっ!』
ジャスティス・ブレイクは気合の意気を吐き、それらを拳と蹴りで逸らし、回避する。
『しゃぁぁ!!』
合わせるようにルナも拳と蹴りを繰り出す。
触手4本に手足の合計8本による猛烈な連撃がジャスティス・ブレイクを襲う。
躱し、逸らし、掠り、削れ、右フックをうっかり腹部に食らった直後、回し蹴りで真下へと叩き落とされた。
落下しながらも触手の追撃を食らい、装甲が次々と破損、受け身を取る余裕すらなく、ジャスティス・ブレイクはすり鉢状の底、谷底へと墜落した。
「レイジ!!」
霊脈の淵に近い場所に落下してきたジャスティス・ブレイクに、リアムは駆け寄ろうとする。しかし、ジャスティス・ブレイクが手をかざし、それを制止した。
立ち上がったジャスティス・ブレイクの姿、その惨状に、リアムは絶句する。
これまで、手傷どころか装甲に傷一つ負ったことが無かったジャスティス・ブレイクがボロボロになっている。
あちこちの装甲が欠け、素顔が半分ほど見えてしまっている。
体も負傷しているように見えるのに、血が出ていない。レイジはやはり、普通の人間ではない。
だからなんだ。
仲間が危機だ。その現状に、そんなことは些事だ。
「レイジ! 一人では!!」
「ごめんリアム」
レイジは、半分素顔が露わになった顔をリアムに向ける。
「俺は初めて、自分で望んで戦っている』
全身の装甲を修復しつつ告げると、ジャスティス・ブレイクは再び飛び立った。




