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26話:死なない男

赤黒い十字は、さらに強烈な邪気を帯びていく。


『この一撃で終幕だ!』


空をめぐる骨格の輪は細く長く変形し、回転を速める。同時に骨格の間を雷撃がほとばしり、それが中央の十字へと力を送っていく。

邪気が最大限に高まったとき、十字は真下の獲物に向け、発射された。



──耐えるしか!!


身動きできないジャスティス・ブレイクは、ただ護りを固めるのみ。

赤黒い十字の接近がスローに見える。だが、避けることができない彼は、それが到達するのを見ていることしかできない。



眼前までそれが迫った刹那、横合いから介入した青白い輝きによって、その十字は打ち払われた。


「ふぅぅ」

聖剣を振りぬいた姿勢で、リアムが小さく息を吐く。

そう、リアムの聖剣の一撃が、ゼウスの一撃を打ち払ったのだ。


『ばかな! アビスはどうした!?』




──時間は、数十秒前にさかのぼる。




勇者一行は、偽勇者たちとの闘いで拮抗していた。


そんな中、ジャスティス・ブレイクは、謎の黒い雷撃により強化された魔王軍四天王の一人、【冷徹なる裁定者】ゼウスとの攻防で窮地に陥っていた。


誰もが救援に向かうことができない状況で、自身の偽物と小学生レベルの取っ組み合いをしていたケンタは、覚悟を決めた。



──この手だけは使いたくなかったが!


ケンタは大きく息を吸い込み、


「いつまでチンタラやってんだ、この大罪人女が! 色気づいた下着つけて誘ってんのか、コラァァ!!」


自身にとって致命傷となる言葉を、叫んだ。


「あぁぁぁぁぁぁん!?」

ケンタの叫びの直後、ケンタと偽ケンタは一瞬にしてサイコロステーキに変貌した。


『ば、ばかな、自分ごと……』

偽ケンタの変身が解けたアビスの1体が、驚愕しつつ消滅する。



「ぐはぁっ!」

リスポーンしたケンタの正面には、なんと偽エリシア。そうなれば、当然、ケンタの背後にいるのは……。


鬼のようなオーラを噴出させる本物エリシア。


ケンタは更に意を決する。


「偽物の感触を確かめてやるぜ!」

そう叫びながら、ケンタは蝶の妖精状態である偽エリシアに抱き着いた。あ、意外と柔らかい。ついでに少し頬ずりを──、サイコロステーキになった。



「うげっ」

更にリスポーンしたケンタの眼前を埋めたのは、鍛え抜かれた大胸筋だった。

今まさに、抱き着ける距離に存在する偽グレッグ。もうやるしかねぇ!


「筋肉ぅぅ!!」

尊厳とか理性とか、ケンタはいろいろとかなぐり捨てて偽グレッグへ抱き着き──、

「ふげぇっ!」

に行く直前、偽グレッグの振り下ろした戦斧により叩き潰された。


「一手、遅れたな」

戦斧を振り下ろした偽グレッグに対し、グレッグが戦斧を叩き落す。両断された偽グレッグ、もといアビスは、砕けて消えていく。


「セットが潰れそうになった時に、隣でプロテイン飲んでた奴が完璧な補助入れてくれたみてぇだぜ」

よくわからない例えだが、どうやらケンタの健闘を称えているようだった。



『くっ、我の体が……』


次々と分身体が撃破されたアビスに生じた隙、偽リアムはグレッグやエリシアの状況を確認すべく刹那の間、リアムから意識を逸らした。


「僕から意識を逸らしたらダメさ、僕」

『!?』

その刹那で、リアムの聖剣が偽リアムを貫いていた。


『があぁぁぁ!?』

そのまま縦に両断され、偽リアムであったアビスは消滅した。


「リアム!!」

「わかってる!!」

ケンタの叫びに応えつつ、リアムは走る。

聖剣が湛える、ほのかな青白い光を軌跡として残しつつ、今まさにジャスティス・ブレイクへと降下しつつある赤黒い十字へと接近する。


リアムが振るう聖剣の横薙ぎが、ジャスティス・ブレイクへ衝突直前の赤黒い十字と衝突した。

黒と白の閃光が瞬間輝き、赤黒い十字は拡散し消滅した。



「ふぅぅ」

聖剣を振りぬいた姿勢のまま残心するリアム。その手の聖剣からは、飛び散るように青白い輝きは霧散した。



『ばかな! アビスはどうした!?』

分解していたゼウスの頭蓋骨、それを回し、アビスの姿を探す。


「きぃぃぃぃ!」

見つけたのは、お互いサンバ衣装の状態で、奇声を上げながら髪の毛を引っ張り合うセレスティアと偽セレスティアのみであった。


『倒したというのか……はっ』

ゼウスはその瞬間、大失態に気が付いた。


Justice Core Overdirve...


『三分だぜ』

リアムにより、まとわりつく骨の拘束から解放されたジャスティス・ブレイク。その体から、高周波音が響き、全身のラインが赤く輝く。


『くっ』

ゼウスは咄嗟に骨格を分散し、逃亡を図る。


Shoots restraints!!


『なっ!?』

しかし、ジャスティス・ブレイクの背部から射出された光弾が分散した骨格の各部位に命中。

それらが引きつけ合い、光るトリモチのような状態で一塊に固定された。


Max Power!!


ジャスティス・ブレイクの背面各部スラスターが全展開。最大加速のエネルギーを蓄える。


『ぬがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

もがくゼウス。しかし、粘着剤のようにまとわりついた光の帯は、ゼウスを固定し逃さない。


ジャスティス・ブレイクの右手に、強大なエネルギーがチャージされ、そして最後のコマンドが叫ばれる。


「ジャッジメントスマッシャァァァァァァァァ!!!!」


天に打ちあがる光と化したジャスティス・ブレイク。その姿は、すでにゼウスを通過し、その上空にあった。


『ぬが、ば、ばかな……』


その言葉を最後に、トリモチ状に固まっていたゼウスは爆発四散した。


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