25話:接戦と危機
異空間からの黒い雷撃に貫かれた魔王軍四天王【集蝕者】アビスは、偽のリアム、グレッグ、セレスティア、エリシア、ケンタへと変貌した。
もちろん、服装は蝶の妖精のままだ。
偽リアムは腰の剣を抜く。その剣は聖剣と瓜二つであった。
偽リアムがぐっと屈みこみ、一足飛びで斬り込んできた。即座に反応したリアムが切り結ぶ。
聖剣と偽聖剣が幾度も衝突し、火花を散らす。
斬撃を受け、流し、躱し、払い、斬り込む。
「ぐっ」
鍔迫り合いになったリアムが小さく呻く。
両者の実力はまさしく伯仲。偽物が同等の実力を持っていることを如実に現わしていた。
鍔迫り合いで静止したリアムに向け、偽グレッグが戦斧を振りかぶる。
「おっと!!」
寸前で割り込んだグレッグが、その戦斧を受け止めた。ビシッ!と大地に亀裂が走り、グレッグの足が数センチほど沈み込む。
「我ながら、いい上腕筋だ!!」
グレッグがふんっ!と強く息を吐きながら、偽グレッグを吹き飛ばす。が、偽グレッグの姿勢は崩れず、両者はにらみ合いの状態となる。
その背後では、エリシアと偽エリシアとの間で、魔法の弾幕戦が展開されていた。
火球、風刃、水砲、石弾、数多の攻撃魔法が応酬され、拮抗していた。
「マジで、私のコピーなの!?」
エリシアが叫びと共に放った熱線は、同じく偽エリシアが放った熱線と正面衝突し爆発、お互いに打ち消し合った。
「そのようです!!」
偽セレスティアの杖による打撃を、セレスティアは防御魔法で防ぐ。セレスティアがゴスロリ衣装に変わった。
セレスティアは、神聖魔法で唯一の攻撃魔法、”聖なる光”を行使すると、偽セレスティアも同じく”聖なる光”を行使した。
杖先に収束した白い魔力から、白刃のように光線が打ち放たれる。光線と光線がぶつかり合い、こちらも相殺された。
セレスティアの髪型が「昇天ペガサスMIX盛り」に変わった。
偽セレスティアの服装が熊の着ぐるみに変わった。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ケンタが偽ケンタに襲い掛かる。全く腰の入っていないテレフォンパンチだ。
偽ケンタがケンタを迎え撃つ。全く腰の入っていないテレフォンパンチだ。
「うごっが、」
パンチがお互いに命中。しかし、威力が無いため、効果が薄い!
「おらぁぁぁぁ!!」
ケンタがへっぴり腰のパンチを次々と繰り出す。
偽ケンタがへっぴり腰のパンチを次々と繰り出す。
お互いにノーガードでの打ち合いだ。だが、お互いに威力が無さ過ぎて、決定打が皆無である。
蝶の妖精同士が、まるで子供のケンカのように殴り合う。まさに地獄の光景である。
『まずい……』
互いが互いに同じ人物同士での戦いに陥り、完全に拮抗してしまっている。どこか1点でも崩れた方が負ける。
リアムが自由になることが最も勝率が高いと予想したジャスティス・ブレイクは、偽リアムへと攻撃を──
「おいおいワシを置いて何処へ行く?」
しかし、ジャスティス・ブレイクの前にゼウスが立ちふさがる。
『邪魔だ!』
ジャスティス・ブレイクは高速攻撃を意識する。が、
<ClockUp Drive Access Deny>
<ヒロイックシステム違反>
<三か条に違反しています。三分間は互角の戦いです>
──くそっ!
まだ変身して1分程度しか経っていない。
以前は、「ご都合展開」というやつで上手くいったが、そうそう毎回できることでもないようだ。
「クッカッカッカッカ、三分の制限とやら、どうやら克服したわけではないようだな!!」
ゼウスがまとう外骨格がはじけ飛び、部品が意志を持ったかのようにジャスティス・ブレイクへと殺到する。
『はっ!』
ジャスティス・ブレイクは、それらを拳打で撃ち返し、躱し、合間を縫ってゼウス本体へと肉薄する。
外骨格が外れ、元の骨格標本状態となったゼウスに拳打を振るうジャスティス・ブレイク。が、拳が命中する直前、ゼウスの骨格が分解した。
『なっ! 本体も分解するのか!?』
分解した外骨格と本体骨格は、ジャスティス・ブレイクの頭上で円を描くように回る。
『時間はかけぬ! 三分以内に片をつけてやろう!!』
ゼウスの外骨格を構成していた部位がジャスティス・ブレイクへと殺到する。
『くっ!』
拳打を連続で放ち、それらを弾くが、いくつかは合間をすり抜け、ジャスティス・ブレイクへと到達する。
ダメージは無い。しかし、外骨格が体にまとわりつく。
へばりつく外骨格が剥がれない。そのために動きが鈍るジャスティス・ブレイク。そして、鈍ると更に外骨格にくっつかれる。
悪循環で徐々に動きが遅くなるジャスティス・ブレイクに対し、その頭上では残った骨格片が赤い十字を生み出していた。
生み出された多数の赤い十字はまとまり、合体し、やがて巨大な赤い十字を形成した。
色もだんだんと黒くなり、黒い雷撃を帯び始める。
食らえばただでは済まぬ攻撃だ。回避しなくてはならない。が、多数の外骨格にまとわりつかれ、ついにジャスティス・ブレイクはその場に膝をついてしまった。
『この一撃で終幕だ!』
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「ぐぎぎぎぎぎ……」
ケンタと偽ケンタの戦いは素人パンチの応酬から、取っ組み合って髪の毛を引っ張るなど、小学生のケンカ味が更に増していた。
力が互角である以上、組み合っても勝負がつかない。
元々泥沼だったが、更に底なし沼に沈み、汚泥化したかのような戦況となっていた。
そんな中、赤く巨大な十字がケンタの視界に映った。
その真下にはジャスティス・ブレイク。しかし、彼の動きはいつもの精彩さを欠き、緩慢だ。
ケンタは素早く他のメンバーに視線を巡らせる。だが、全員の戦いは拮抗しており、ジャスティス・ブレイクを救援する余裕など、誰にもなかった。
ケンタは、覚悟を決めた。




