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18話:ヴィラン・ルナ

『ねぇ、”ジャスティス・ブレイク”とか名乗ってるの?』

『ぐはっ!!』


異形の人型による口撃(こうげき)

効果はばつぐんだ!


その一言に、ジャスティス・ブレイクは深く心を抉られ、四つん這いになってうなだれた。


『まさかそんなに効くとは思わなかったよ、なんかごめん』

そんなジャスティス・ブレイクの様子に、異形の人型すらも戸惑いを覚える。


『んじゃ、私も自己紹介しておくね。私はルナ。まあ、ヴィラン・ルナとでも呼んでよ』

「ヒーローに続いてヴィラン出てきたけど!? 世界観仕事しろ!」

ケンタのツッコミは、虚しく森に響いた。


『ヴィラン?』

日曜朝に放送されている番組程度の”ヒーロー知識”しかなかったレイジは、”ヴィラン”という用語になじみがなく、オウム返しに呟いた。

その言葉に反応したのか、彼の視界インジケータに新たな情報が展開される。



<ヴィルナスシステム>

悪役(ヴィラン)化した「ヒロイックシステム」>


ヴィルナスシステム三か条

一つ、戦うときは変身すべし!(※1 正体を知られるべからず(※2

一つ、手段は選ばない。できることはなんでもする。勝てばよかろうなのだァァァァッ!!(※3

一つ、私はまだ2回変身を残しています(※4


※1)生身では攻撃能力がありません。必ず変身して戦ってください。なお、万が一、命を落とすことがあってはいけませんので、生身でも生命維持能力は全開です

※2)ヴィランは恨みを買うため"孤独"です。目立ちたい気持ちはわかりますが、プライベートは大切です。正体は隠しましょう。

ただし、親密度1750ラヴ以上、又は、利害一致度80%以上の相手は例外です。"共犯者"の裏切りには注意しましょう。

なお、相手を絶望に陥れるためにあえて目の前で変身するのはアリです。生き残りが居なければ、正体はバレません。

※3)いつでも変身は可能です。あらゆる手段で弱者を蹂躙しましょう。もちろん常に先制攻撃です。

※4)ヴィランの変身システムは3段階制です。1段目の変身はいつでも使用可能ですが、2段目以降は危機的状況でのみ使用可能となります。

ヴィランとは敵を見下し、侮るものです。最初から全力は出さず、第二、第三の形態を残しましょう。



『は? え? ヴィルナスシステム? ヒーローのヴィラン化!?』

『君はヒーローなんだ?』

戸惑うジャスティス・ブレイクに、ヴィラン・ルナが語り掛ける。


『こんな体にされて、こんな世界に落とされて……』

ヴィラン・ルナの全身に走るラインが強く、赤黒く明滅する。

『”まだ”ヒーローなんだね』


瞬間ヴィラン・ルナの姿が消え、ジャスティス・ブレイクは半ば反射的に、両腕を交差して防御姿勢を取る。

直後、その腕にヴィラン・ルナの拳打が突き刺さった。


「うわぁっ!!」

「きゃっ!!」

衝突の衝撃が周囲の森へ吹き荒れ、リアム達、エルフたちも暴風に吹き飛ばされて転げまわった。


ヴィラン・ルナが次々と拳打を叩き込む、そのたびに激しい衝撃が森を駆け抜ける。


『はぁぁぁぁぁぁっ!!』

『くっ!』

大振りな回し蹴りを受け、ジャスティス・ブレイクが吹き飛ぶ。が、くるくる回転した後、ジャスティス・ブレイクは何事も無く着地した。


『どうしたの? ずっと攻撃しないつもり? ヒーローなんだから、ヴィランを倒さないと』

『こんな体にって、君も”ゼノン”に会ったのか!?』

レイジはルナに語り掛ける。まさかここで”同じ身の上”に遭遇するとは思っていなかった。

彼女はレイジよりも何かを知っている様子だ。もしかしたら、”元の世界に帰る”手がかりも、彼女は持っているかもしれない。


『ゼノン……、そうだね、会ったよ。ふざけた理由で私を改造して、”演算機を止めろ”とか言って、私をこの世界へ放り込んだ……』

ヴィラン・ルナは上を見上げ、何かを思い出すように続ける。


『私は、来たくなかった……』

ヴィラン・ルナは、悲哀を感じさせる声で呟く。


『演算機?』

聞き返したレイジの言葉に、ヴィラン・ルナはピクリと反応し、ゆっくりと視線をジャスティス・ブレイクへと向けた。


『……、”演算機”を知らない? まさか、”一部”を入れられていない?』

声のトーンが二段ほど低くなり、ゾッとするような声色でヴィラン・ルナが問いかける。


『す、すまない、何のことかわからない』

レイジの言葉を聞き、ヴィラン・ルナの全身のラインが、真っ赤に輝く。


『そうなんだ、君は”違う”んだ』

掻き消えたヴィラン・ルナが、再びジャスティス・ブレイクに猛攻を仕掛ける。


『ま、待って』

『なんで違う? 私はそのために頭もいじられた!!』

凄まじい威力の拳撃、蹴撃の嵐がジャスティス・ブレイクを襲う。


「うぉっ!」

エルフたちが吹き飛ばされ、リアム達も木の幹や根っこにしがみついて、必死に耐える。



「皆さん! 私の後ろに!」


全員が背後に入ったことを確認したセレスティアが防御魔法を展開する。

瞬間、なぜか全員が水着姿に変化した。



リアムは茶髪ピアスのサーファースタイルになった。パリピ感が増した!

セレスティアは黒ビキニになった。セレブ感が増した!

エリシアはスクール水着になった。背徳感が増した!

グレッグは白ふんどし姿になった。言い表せない危機感が増した!

ケンタは赤ふんどし姿になった。危機感を覚えた!!



『奴の”一部”が言い続けるんだ! ”演算機を止めろ”って!!』

ジャスティス・ブレイクが地面に叩きつけられ、森の地面とエルフたちが爆散、大きなクレーターが形成された。


『私は来たくなかった! あっちに、”大切なもの”があったのに! あったはずなのにぃぃ!!』

ヴィラン・ルナがジャスティス・ブレイクを蹴り上げる。


『それも思い出せない!!』

浮いたジャスティス・ブレイクは連続で拳打を打ち込まれ、木々をなぎ倒しながら吹き飛んでいく。



『イライラする。いいや、消えて』


Villainous Core Overdirve...


ヴィラン・ルナの全身が再び強く輝く。


Shoots restraints!!


ルナの背中から、複数の触手が生み出され、地面に突き刺さる。


100m程先で触手が突き出す。その先端には、巻きつけられたジャスティス・ブレイクの姿があった。


Max Power!!


『これで死ぬなら、そこまでだよね』

ヴィラン・ルナの右手にパワーが集まる!



『俺も死ぬ気はない!!』

拘束されたジャスティス・ブレイクも全身が赤く輝いた。


Justice Core Overdirve...

Max Power!!


同じく、ジャスティス・ブレイクの右手にもパワーが集中する。



『マリシャスバスター』

『パニッシャァァァァァァァァブロォォォォォォォ!!!!』


迸る赤と赤の衝撃が、空中で衝突した。


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