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14話:狡猾なる奇術師VSご都合展開

「ところで、なんでアンタたちメイド姿?」


高まった緊張感に冷や水をぶっかけるような、魔王軍四天王ガスヴァルの言葉。

これぞ【狡猾なる奇術師】の、残虐かつ狡猾な罠。


「ぐはぁぁぁぁぁ」

ケンタはつっこまれ防御力がゼロだった。



「酷いです! 私だって頑張ってるのに!!」

「は? いや、何て?」

セレスティアは顔を抑えてしゃがみこんだ。


「くっ! さすが狡猾なる奇術師! 卑怯な手を!」

「いや、まだなにもしてなくない!?」

リアムがセレスティアの肩に手を置き、ガスヴァルを睨む


「フンッ! この肉体美がわからんかね?」

「アンタはなんなのよ!」

グレッグはダブルバイセップスだ。


『俺はメイドじゃない』

「アンタこそ”何”なのよ?」

ジャスティス・ブレイクはガーンとショックを受けている。



「お前と違って、魅了魔法にかかるよりマシだし!!」

ケンタがガスヴァルに食って掛かった。


「ぐっ、あ、あれは、さ、作戦よ!!」

「”エリシアは我の物だー”って一人称変わってたじゃねぇか!!」

「そ、それも作戦よ!!」

「作戦って言っとけばいいみたいな感じになってるし!」


『なにこの状況』

ガスヴァルとケンタのガキのケンカに、珍しくレイジがツッコミを入れた。



一瞬の沈黙。



「ま、まあいいわ! ワタクシの邪魔をするというなら、全員その命を吹き消してあげるわ!!」

ガスヴァル放つ魔力圧で、魔導塔のホールに暴風が吹き荒れる。消失してしまった対決ムードへ、半ば無理やり持っていく。


「はっ!」

ガスヴァルが軽く息を吐くと、派手なマントが波打ち、その体が宙へと浮かび上がる。


「奇術師の異名の意味、見せてあげるわ!」

指を打ち鳴らすと、ガスヴァルの姿がブレ、何体ものガスヴァルが分身して出現する。その数10体。


「なっ!」

リアムは驚愕の顔で見上げている。


「「「「味わいなさい!」」」」

5体がそれぞれに異なる魔法の詠唱を始め、5体が剣や斧、槍、槌、盾を持って襲い掛かってくる。


「いや、盾ってなんだよ! 攻撃手段は体当たりしかないだろ──ふごぉぉぉーーー!!」

そんな盾持ちガスヴァルのシールドバッシュを食らい、きりもみしながら吹き飛んでいくケンタ。


「ケンタァァァァ!!」

剣持ちガスヴァルと鍔迫り合いをしていたリアムが叫ぶ。


「さすがチート!」

次の瞬間、ケンタの姿は、吹き飛ばされる前とまったく同じ場所にいた。

シールドバッシュを放ち、体が大きく開いていたガスヴァルは、無防備な正面に立つケンタに目を見開く。


「おらぁぁぁぁぁ!!」

ケンタ渾身のパンチが、ガスヴァルの左頬に突き刺さる!

「……」

頬が少し凹んだ。


「たぁぁぁぁぁ!!」

ケンタが全力の前蹴りで、ガスヴァルの股間を蹴り上げる!!

「……」

ガスヴァルがあきれ顔だ。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ケンタが何かを溜めるように叫ぶ!


ドンッ!


盾持ちガスヴァルの上半身が吹き飛んだ。


「え!? マジ!?」


ケンタの胸が「ついに戦闘系チートが覚醒したか!?」と沸き立った。が、直後左から聞こえたドチャッという何かがつぶれるような音で醒めた。


左に視線を向けると、そこには槌と盾、それとガスヴァルらしき残骸。

右に視線を向けると、何かを投げたような姿勢で立っているジャスティス・ブレイクの姿。


「うん、まぁ、そんな感じだと思ってた」



ヴンッ!という音を立て、ジャスティス・ブレイクの全身から緑の光が漏れる。



<BOOT ClockUp Drive!>



電子音声を響かせながら、ジャスティス・ブレイクの姿が掻き消える。


ババババババァン!と、連なる衝撃音が響き渡り、一瞬にして7体のガスヴァルが爆散し、最後の1体が空中ジャスティス・ブレイクの拳打を受け止めていた。


「本当に、アンタは”何”なのよ!!」

ガスヴァルが目から光線を発射する。ジャスティス・ブレイクは左手を振って光線を散らす。

ガスヴァルのマントが流動し、ジャスティス・ブレイクを掴んでぶん投げる。


きりもみしながら吹き飛ぶジャスティス・ブレイクに向け、深紅の魔力を打ち出すガスヴァルだが、着弾直前にジャスティス・ブレイクの姿が掻き消える。


ガスヴァルが明後日の方向に短剣を投げる。

キンッという音がして、既にそこへ移動していたジャスティス・ブレイクがそれを弾いた。


何処から出しているのか、ガスヴァルが次々とナイフを投げる。

ジャスティス・ブレイクはその全てを躱し、弾き、掻い潜る。しかし、当たらなかったナイフは落下せず、異常な歪曲軌道を描いて再びジャスティス・ブレイクに向かっていく。


『っ!?』

「ふっはっはっはっはっ! やっと気が付いたわね!」

いつの間にか、ジャスティス・ブレイクは細い糸で雁字搦めになっていた。


宙を舞う30本以上のナイフ、そのナイフから、細いワイヤーのような糸が出ており、飛びながらジャスティス・ブレイクに巻き付いていたのだ。


ガスヴァルが指を鳴らす。

全てのナイフが壁という壁に突き刺さり、雁字搦めのジャスティス・ブレイクをその場に固定する。


「アンタの姿は、”ガルバル”の眼を通して見せてもらったわ。理解不能な強さ、そして意味不明な三分の縛り、でも……」

ガスヴァルの右手に禍々しい大剣が出現する。不気味に脈動するソレが、触手を伸ばし、ガスヴァルの体を這いまわる。


「今はまだ二分程度。三分以内に倒してしまえば」

大剣の触手がどくどくと波打ち、ガスヴァルの魔力を喰らっていく。


「問題ないわけよね」

刃が赤黒く発光し始める。


「ワタクシの最大火力。これを受けて、無事ならいいわね!!!」

目がくらむほどの光を放つ大剣を水平に構え、ガスヴァルが拘束されたジャスティス・ブレイクに向けて突撃する。

その前に、リアムたちが立ちはだかった。


「やらせない!!」

「護ります!!」

「耐えろ、俺の前腕筋たち!!」

「やけくそだぁぁぁ!!」


「はっ!! まとめて消し飛べぇぇぇぇぇぇ!!!」



ガッ!



全身を赤いラインで滾らせるジャスティス・ブレイクが、リアム達の更に前で、赤熱した大剣を片手で止めていた。

リアム達の後ろでは、バラバラに刻まれた拘束ワイヤーが舞い落ちている。


「ば、ばかな、まだ三分経っていないぞ!?」


『はっ、教えてやるよ』

レイジが不敵に答える。



Justice Core Overdirve...


ジャスティス・ブレイクの体からキィィィィンという高周波音が響き、関節部にある円形の赤いラインは高速回転開始!


「ヒーローの理不尽システム……」


Shoots restraints!!


背部から数発の光弾が射出! 不規則な歪曲軌道をとってガスヴァルへと殺到!

「くっ!」

しかし、ガスヴァルは大剣で光弾を打ち落とす。


Max Power!!


右腕のスラスターが全開! 全エネルギーが右拳へと集約していく!


「突進攻撃が出る前に止める!!」

未だ棒立ち状態のジャスティス・ブレイクに向け、再び突撃するガスヴァル。

しかし、ジャスティス・ブレイクが放つは近接用の大技。


『ご都合主義ってやつだよ!』



Call Command [Punisher Blow]



ジャスティス・ブレイクは軽く体を引き、



『パニッシャァァァァァァァァブロォォォォォォォ!!!!』


腰の入ったブローパンチ。それが大剣の先端と激突した。


拮抗する二つの光。しかし、その雌雄はすぐに決した。


「な、なんだそりゃぁぁぁぁぁぁぁ──」

パニッシャーブローの光が、大剣をかき消し、ガスヴァルを吹き飛ばす。


拳打から出た閃光は魔導塔の壁を貫き、斜めに空へと延びていった。



光を見上げ、ケンタはフッと笑う。



「勝因は、ノリと勢いだな!」


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