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13話:真の大罪人

「──!!」


おそらく、エリシアは顔を真っ赤にして激怒しているのだろう。


「──、──!!!」

凄まじい剣幕だ。口からは唾が飛び、髪や衣服を振り乱すその様相は、まさに般若。

しかし、自ら展開した“遮音魔法”の効果が残っているため、彼女が怒りに任せて絶叫しようとも、リアムたちにはまったく聞こえない。

地団駄を踏んでも音が出ない。


無音で烈火のごとく激怒する般若と、それに相対するメイドとヒーローのコスプレ軍団(一応ヒーローだけは本物のハズ)という、シュールな光景が広がっていた。


リアムは、必死に”ジェスチャー”で、エリシアに事情を説明しようと試みるが、その背後で、音の出ない口笛でしらばっくれる聖女と、なぜかサイドチェストでポージングしている筋肉バカのせいで、火に油である。


なお、一応加害者側に属しているケンタも、これは容易にツッコミを入れられない。もとい、遮音魔法はどれだけ鋭いツッコミも通さない。まさにツッコミの天敵と言えよう。


ちなみに、レイジことジャスティス・ブレイクは腕組みして後方彼氏面である。



エリシアを遮音魔法の範囲から連れ出せれば、もしかすると話が通じる可能性が極々微小、刹那な割合でも存在するかもしれない。

しかし、下手に手を伸ばそうものなら、「シャァァァァァ!!!」と聞こえてきそうな勢いで、ひっかき攻撃が繰り出されてくる。

全身の毛が逆立つほどに怒る猫を見るようである。



「──っ!?」


突如、エリシアが静止したかと思うと、白目を剥き、泡を吹いて卒倒した。


「大変だ!」

リアムが研究室に飛び込み、地面に衝突する寸前に彼女を抱き留める。

どうやら、激憤のあまり叫びすぎた酸欠で気絶したようだった。



何とかエリシアを廊下に連れ出したのはいいが、白目で泡を吹き、全身がガクガクと細かく痙攣している。おおよそ妙齢な乙女が晒して良い姿ではない。


「ここは私が──」

「塔にも医務室くらいはあるはずだ。探して連れて行こう!」

混沌の権化(セレスティア)が再びその魔の手を伸ばそうとしたところを、リアムが華麗なファインプレーによりブロック。

1名以外の心は一致し、見た目上一番怪力のグレッグがエリシアを抱き上げ、移動を開始した。



さて。


彼らは、魔導塔に突入した際、一つの違和感に気が付かなかった。

それは、塔内部に人がいないのだ。


エリシアの研究室が苦も無く見つかったのは、広大な塔にあって”魔法発動の気配”があったのがそこだけだったからだ。

逆に考えれば、知が集結するといわれるマギアヘイムの、それも中枢たる魔導塔にあって、”魔法発動の気配”が一カ所しかないなどというのは異常事態である。


リアム達は、この異常事態の原因を、エリシアの研究室の”隣”で発見した。


「……」

魔導士らしき衣服の男女数十人が、全員茨のような植物で吊り下げられ、白目を剥いて気絶している。


中には、人間的な尊厳としてまずい状態の”様々”を垂れ流している者もおり、この状態が数分や数十分程度ではなかったことを物語っている。


犯人は明らかに、”魅了魔法を暴走させていた人物”であろう。



「これはもう転移事故を超える大惨事なのでは?」

ケンタの言葉を理解できた者はいない。しかし、全員の心は一致し、視線は一斉にグレッグが抱き上げたエリシアに向けられる。



──真の大罪人はこいつだわ



全員を茨の拘束から解き放ち、しかしまともに意識を保っている者がいないため、仕方なく全員を横向きに寝かせる。

(吐しゃ物で呼吸困難に陥ってはいけないため)

なお、犯人も同じくそこへ並べておく。



「外も同じだな」

窓の外を覗いてきたグレッグが、呆れ気味に告げる。

どうやら、魅了魔法は無事停止できたようだが、その術中に落ちていた者たちは、皆白目で気絶しているようだ。


「命に別状はなさそうだし、とりあえずこのまま様子を見るしかないか……」

「ここはやはり私が──」



ドォォォォォォン!!



混迷を齎す者(セレスティア)が立ち上がらんとしたその時、塔の下層から大きな破壊音が響いた。

全員が一斉に動き出す。


階段を駆け下り、塔1階の正面ホールへと至った一同は、そこに立つ派手なマントの魔族と相対した。


「ほぅ、意識のある者が居ましたか」

魔族が華美な装飾のついたマントを翻すと、タキシードのような着衣が露わになる。

全身に金銀の装飾が施され、しかし、それらはいずれも魔力を持った魔道具である。


「たった5人程度、このワタクシ、魔王軍四天王が一人、【狡猾なる奇術師】ガスヴァルの前に立つならば──」

ガスヴァルが手を一振りすると、ホールに暴風が吹き荒れる。


「命は無いものと思いなさい!!」

全員が武器を抜き、身構える。まさに臨戦態勢だ。


「ところで、」

ガスヴァルは一度言葉を切り、そして続けた。


「なんでアンタたち、メイド姿?」


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