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11話:魔法都市マギアヘイム

リアムからの同行の申し出を、グレッグは、実にあっさりと受け入れた。


「俺も、魔物の異常な動きや、これまでにな魔族の活発な活動は気になっていたからな!!」


彼自身が冒険者であり、一所に長く滞在する質ではないというのもあったかもしれない。

かくして、”戦士”の仲間が増えた一行の次の目的は。


「魔法都市マギアヘイムへ行ってみようと思う」

リアムが次なる目的地を告げる。


「”魔を統べる王”、魔王の伝承を調べてみたいんだ」

リアムの言葉に、ケンタはぴくりと反応する。


人族の間には、


長き眠りから蘇りし魔王は、魔族を率いてすべての人族に仇を成す。

聖剣の勇者が現れ、各地の闇を払い、魔王を討伐せしむ。


という伝承がある。

実際に200年ほど前に”魔王”が出現し、そして聖剣を携えた”光の勇者”により討伐されたという話が言い伝えられている。


ケンタは、この世界の「伝承」が、自身が知る“ゲーム”の設定通りであることを知っている。

なにより、リアムが聖剣を得て“光の勇者”となり、魔王を倒すという「正史」を“走馬灯”という形で“体験”し、その“結末”まで見ているのだ。


だからこそ、リアムの疑問の全ての答えを持っている。しかし、それをここで開示すべきではないとケンタは考える。

胸糞展開ばかりの原作など、いっそ完全に破壊してしまいたい。しかし、魔法都市へ行くことは、“最後の仲間”である“魔導士エリシア”との出会いのために必要なことなのだ。


「あぁ、リアムが必要だと思うなら、付いて行くぜ!」

つい気を抜くと表情として(もた)げそうになる「正史」の記憶を努めて頭の隅に押し込めつつ、ケンタは明るく答えた。


「やっぱりケンタは頼りになるな」

「え?」

そんなケンタをリアムは「頼りになる」と評した。その表情は一切の裏表を感じさせない笑顔であった。



********



魔法都市マギアヘイムには、ここアスガルド王国の知が集まる。

あらゆる知識人、知の結晶体たる書籍、そして知と技術の神髄たる魔法。

ここに無い知識は、すなわちアスガルド王国に存在しない知識であると言われている。


魔法都市マギアヘイム最大の特徴は、中央にある魔導塔である。

塔は太古の「大魔術時代」と呼ばれる世代の建物で、今では再現できない高度な魔術陣がいくつも仕込まれている。

むしろ、魔導塔があったからこそ、ここは魔法都市マギアヘイムになったと言える。




正史において、勇者リアム達は、この都市で魔王軍四天王の一人、【狡猾なる奇術師】ガスヴァルと相対することとなる。

ガスヴァルは魔導塔に眠る魔術陣を狙い、魔法都市マギアヘイムを大量の魔物で攻める。

マギアヘイム側は防衛として、魔導塔の魔術陣の一つを用い、都市を覆う巨大結界を展開する。が、それこそがガスヴァルの狙いであった。


有象無象の魔物であれば、その結界で侵入を防げるが、ガスヴァルほどの魔族となれば話は別である。

ガスヴァル自身は結界をすり抜けて侵入し、魔導塔最奥にある”転移魔術陣”を確保するのだ。この都市に魔族領域との転移門を開き、魔王軍侵攻の橋頭保とするために……。


魔王軍の狙いに気が付いた魔導士エリシアと共に、リアム、グレッグ、セレスティアは”転移魔術陣”に向かい、そこでガスヴァルと対決する。

ガスヴァルが使う幻術やトリッキーな攻撃に翻弄され、傷つき、満身創痍になるリアム達。しかし、グレッグの命を賭けた策により、辛くもガスヴァルを倒す。

だが、それは完全なる勝利ではなかった。


既に起動状態であった”転移魔術陣”は術者を失い暴走。魔導塔や都市のあちこちを巻き込んだ大規模転移事故へと発展してしまう。


四天王は退け、魔王軍の企みは阻止したが、リアム達は転移暴走の責任を追及され、魔法都市を追放される。

同じく追放されたエリシアはなし崩し的にリアム達に同行することとなる。


のだが……、




「……これはどういう惨状だ?」


「うぉぉぉぉ!! エリシア様ぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「一目お姿をぉぉぉぉぉぉ!!」

「エリシアおねぇ様ぁぁぁぁぁん!」

「エリシアたぁぁぁぁん!」

「俺を踏んでくれぇぇぇ!!」


魔導塔の周囲には、亡者のように住民たちが縋りつき、一心不乱に「エリシア」の名を呼んでいる。


「エリシアという人は、人気者なんだね」

「きっとすごい魔導士さんなんですよ!」

「あれ見て! ただの”人気者”レベルじゃないよ!? 突然のゾンビパニックだよ! 確実にポンコツ魔導士だよ!」

呑気なリアムとセレスティアの言葉に、ケンタがツッコミを入れる。


「なんだその指の使い方は! そんなふにゃふにゃじゃ、いくらやっても広背筋に刺激は入らねぇぞ! もっと指を立てて、懸垂のつもりで、上から引っ張るように登れ!」

「筋トレから離れろ脳筋!」

魔導塔をよじ登ろうとする亡者──住民たちに向けて、グレッグは力強く筋トレ指導を始める。



その時、魔導塔を中心に一陣の風が吹き抜けた。


エリシア可愛い

エリシア素敵

エリシア大好き

エリシア愛してる

エリシアが居ないとだめなんだ

エリシアだけが居ればいい


エリシア

エリシア

エリシア

エリシア

エリシア

エリシア

エリシア

エリシア

エリシア

エリシア

エリシア

エリシア



エリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシアエリシア


「ぐっ!」

「うが、」

「あぅ!」

「ん?」

「うがぁぁ、毒電波だよ! やべぇ、洗脳される!!」

全員(レイジ以外)が頭を抱えてうずくまる。


「ま、任せてください、こういうときは」

セレスティアが立ち上がりつつ、手に持つ杖に魔力を籠める。


「あ、まって、ちょっと心の準備が──」

精神防御魔法(メンブレブロッカー)


セレスティアから水色のオーラが溢れ、リアム達に降り注ぐ。


瞬間、魔導塔からの毒電波は遮断された。


そして、


セレスティアはクラシックメイド姿になった。

リアムはピンク色のメイド服になった。

レイジは黄色のメイド服になった。

ケンタはミニスカメイド服になった。

グレッグは、セパレートビキニメイド服(?)になった。


「ぐはっ! メンタルブレイク!!」


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