第二章 第二回進級試験 その六
所々にAI(名前や誤字脱字の修正など)を使っているため、完全に自分作の作品ではありません。どうか暖かく見守ってください。
「……アルバートさん、止まってください」
スライムの残骸が紫色の粘液となって消えていく中、カイトの声が静かに、しかし鋭く響いた。 アヴァンとエルドを救出し、現実世界へ戻るためのゲートを目前にした時だった。
「どうしたカイト。一刻も早く学園へ戻り、医療班を呼ばねばならん。」
アルバートは振り返らずに答える。その背中は相変わらず大きく、揺るぎない。
「……気づいているんでしょう。ここにいたのが、ただのスライムだけだった意味を。」
カイトの言葉に、アルバートの肩がわずかに動いた。
「教師の報告は『見たこともない凶悪な魔物』。でも実際は、ただ数が多いだけのスライムだった。つまり、学園の報告者……あるいは本部に情報を伝えた誰かが、意図的に嘘をついた、あるいは、そのモンスターがここから消えたか。」
カイトは一歩踏み出し、師の背中を指差した。
「目的はアヴァンたちの命じゃない。アルバートさんのような『本部最強クラスの戦力』を、エリシオン支部から引き剥がすことだ。……リアリンさんが言っていた『防衛網が削られている感覚』の正体はこれだ。今、本部の守りは最低レベルまで落ちているはずだ。狙いは、聖騎士エリシオン支部の壊滅……いや、少なくとも機能不全だ!」
沈黙が流れた。アヴァンとエルドが息を呑む音が聞こえる。 アルバートはゆっくりと振り返った。その瞳は、いつもの厳しい教師のそれではなく、冷徹な一人の「戦士」のものだった。
「……カイト。お前は確かに頭が良い。俺が想定していたよりも、ずっと早く正解に辿り着いたな。」
「だったら! どうしてあんたは、あんなに早く救援部隊を組めたんだ? まるで、この囮作戦が始まるのを待っていたみたいじゃないか!」
カイトの右手が、剣の柄に強くかかる。 疑惑は確信に変わりつつあった。アルバートが投げたあの不気味な小瓶、そして迅速すぎる出動。すべてが魔王軍との内通を示しているようにしか見えない。
「……カイト。お前が俺をどう疑おうと構わん。」
アルバートは懐から、先ほどカイトが見たものと同じ『禍々しい光を放つ通信石』を取り出した。
「だが、一つだけ教えろ。目の前で生徒が死にかけている時、それが罠だと分かっていて見捨てられるのが、お前の言う『聖騎士』か?」
「それは……」
「俺はこの事態を予見していた。だからこそ、最速で動ける準備をしていた。……罠に飛び込んだのは、この二人を救うためだ。本部の防衛を大きく削ってでもな。」
アルバートは通信石を強く握りしめた。すると、石から不気味なノイズと共に、エリシオン支部からの緊急信号が漏れ聞こえてきた。
「……始まったか。イリスには酷な任務になったな」
「イリス!? アイツに何が起きてるんだ!」
「魔王軍の上級幹部による、エリシオン支部への直接攻撃だ。……俺が投げた小瓶は、この亜空間の座標を本部に伝えるための発信機だ。リアリンがそれを受け取れば、すぐにでもここを閉じて俺たちを強制帰還させる手はずになっている。」
カイトは目を見開いた。 アルバートの不審な行動、あの迅速な動き……すべては、「罠だと知りながら、生徒を助け、かつ最小限の時間で帰還する」ための、彼なりの賭けだったのか。
「カイト、アヴァンとエルドを頼む。……ゲートが開くぞ」
次の瞬間、空間が激しく震動し、眩い光が差し込んだ。リアリンが外側から空間をこじ開けたのだ。
「……アルバートさん。もしスパイじゃなかったら、後で腹筋五千回付き合ってもらいますよ!」
「フン、見習いの分際で生意気だな。付き合ってやる……走れ!」
カイトはアヴァンを、エルドを支え、光の中へと飛び込んだ。 エリシオン支部が、そして友が待つ、戦場へと。
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