第一章 勇者の始まり その四
初めての投稿で不慣れの部分もありますが、どうかよろしくお願いします。また、所々にAI(名前や誤字脱字の修正など)を使っているため、完全に自分作の作品ではありません。どうか暖かく見守ってください。
リュウガはペンを置いた。羊皮紙に綴られた文字は、彼の冒険の始まり、イリスとアヴァンの出会いから、イリスが「名月流」の片鱗を見せ、そして気を失うまでの鮮烈な出来事を克明に描き出している。書き終えたばかりの原稿を、彼はそっと撫でた。
「……こんな感じか」
口から漏れたのは、達成感とも、郷愁ともつかない、複雑な感情だった。ペンを握る手は少し痺れているが、心は不思議と穏やかだ。神器『月光刀』を振るうのとは全く異なる疲労だが、得られた充実感はそれに劣らない。
リュウガは、自身の記憶と向き合いながら筆を進めていた。あの時、確かにイリスは「父さんの言葉が急に頭に響いてきて……」と言っていた。しかし、今彼が書き記したのは「誰かの言葉」だ。なぜそうしたのか、リュウガ自身にもはっきりとは分からない。だが、彼の直感が、そう書くべきだと告げていた。まるで、物語が自らの意思を持ち、彼を導いているかのようだった。
彼は窓の外に目を向けた。空には依然として飛空艇が浮かび、町の喧騒が微かに届く。平和な日常。それは、彼が血と汗と涙を流して勝ち取ったものだ。しかし、この偽りの物語が世に出回っている現状は、彼の心をざわつかせた。
「あのデタラメ本を書いた奴は、一体誰なんだ……」
書斎の隅に置かれた問題の『勇者リュウガの冒険物語』に目をやる。帯には『本人公認』と大々的に書かれている。あれが、何よりもリュウガの神経を逆撫でするのだ。
「俺の物語を勝手に捏造して、さらに公認だと? ふざけた話だ」
筆を進めるうちに、怒りというよりも、一種の使命感のようなものが彼の中に芽生えていた。これは、単なる個人的な憤りではない。真実を歪められ、忘れ去られようとしている仲間のため、そして何よりも、この世界の歴史のために、正確な記録を残さなければならない。
彼は立ち上がり、大きく伸びをした。肩の凝りをほぐしながら、再び羊皮紙に視線を戻す。
「よし、次はイリスが目覚めてからの描写だな。アヴァンの視点も交えつつ、あの時の様子をより詳しく……」
リュウガは、ふと、今この物語を読んでいるであろう未来の読者のことを思った。イリスが記憶を失った部分や、アヴァンの詳細な心理描写まで、なぜ自分に書けるのか疑問に思うかもしれない。
(……今、これを読んでいるお前らは、そう思うだろうな。イリスが記憶を失った部分を、なぜ俺が書けているのか、なぜアヴァンの視点で描写できるのかと。本当は、後で本人たちに直接聞いたんだが、物語の都合上、今は語らないほうがいいかな)
彼の顔には、英雄としての威厳だけでなく、一人の書き手としての真剣な眼差しが宿っていた。リュウガの新たな戦いは、まだ始まったばかりだ。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました。感想やレビュー、どしどし募集してます。時間があればぜひ協力お願いします。次回から、第二章「イリスとアヴァン ギルドに呼び出される」になります。ぜひ、期待していてください。(割と短めの章ですが)