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第一章 勇者の始まり その二

初めての投稿で不慣れの部分もありますが、どうかよろしくお願いします。また、所々にAI(名前や誤字脱字の修正など)を使っているため、完全に自分作の作品ではありません。どうか暖かく見守ってください。

安堵も束の間、俺とアヴァンは警戒を解いてはいなかった。ゴブリンの群れがこれほど深くまで入り込んでいるのは異常だ。嫌な予感が拭いきれないまま、俺たちは警戒しながら森の奥へと進んでいった。


不意に、森の空気が変わった。湿り気を帯びた土の匂いに混じって、獣じみた悪臭が鼻を突く。そして、草木の陰から現れたのは、先ほどのゴブリンたちとは明らかに違う、一回りも二回りも大きなゴブリンだった。その体には禍々しい魔力の痕跡が見て取れる。ゴブリンシャーマンだ。


「げっ、厄介なのがいる……!」


アヴァンの声が震える。ゴブリンシャーマンは、手をかざすと、足元から漆黒の茨を無数に生み出し、俺たちを取り囲んだ。同時に、その傍らに控えていた数匹のゴブリンが、奇妙な咆哮を上げながら襲いかかってくる。


「っ、イリス、下がって!」


アヴァンが叫び、素早く闇の塊を放つ。シャドウアロー。だが、シャーマンの茨はそれを吸い込むように無効化する。シャーマンの魔力が周囲のゴブリンを活性化させているのか、動きが段違いに速い。


俺は剣を構え、襲い来るゴブリンの一匹をかわし、カウンターを狙う。だが、活性化したゴブリンは今までとは違い、こちらの攻撃を紙一重で避けてきた。さらに別のゴブリンが背後から回り込み、俺の足を狙って棍棒を振り下ろす。


「ぐっ……!」


間一髪で避けたが、体勢を崩した俺の喉元に、別のゴブリンの錆びた剣が迫る。村で習った剣術の型では、もう対応しきれない。死が、すぐそこにあると肌で感じた。俺は、ここで死ぬのか。


その瞬間、頭の中に誰かの声が響いた。


「ただ闇雲に振るんじゃない。月を意識しろ」


月。


夜空に浮かぶ、静かで、しかし全てを照らす光。俺の意識が、その言葉に吸い込まれるように集中していく。死への恐怖が、研ぎ澄まされた感覚へと変わる。


見える。真昼間に、月が見える!


ゴブリンの剣の軌道が、まるでスローモーションのように感じられた。周囲を囲む茨の動き、ゴブリンシャーマンが次に魔力を放つであろう場所。全てが、まるで月の光に照らされたかのように、鮮明に、ありありと脳裏に浮かび上がる。


「っ……!」


体に満ちる、不可思議な力。それは、これまでの剣術の延長ではない、全く新しい感覚だった。俺は、剣を鞘に収め、柄に手をかけた。迫る剣、そのすべてを受け流すように、静かに、そして爆発的に鞘から抜き放つ。


「名月流・弥生抜刀やよいばっとう!」


剣が閃光となってゴブリンの剣を滑らせ、その勢いのまま、敵の喉元を正確に切り裂く。一瞬の出来事だった。ゴブリンは血を噴き出し、糸の切れた人形のように崩れ落ちた。


「イリス……今の、何……!?」


アヴァンが驚愕の声を上げた。俺自身も、今の動きが何だったのか理解できない。ただ、体の中に、熱いものが漲っている。


ゴブリンシャーマンが、警戒したように一歩下がる。その瞳に、初めて恐怖の色が宿ったのを感じた。


「これなら……いける!」


俺は剣を構え直した。その瞬間、シャーマンが再び両手をかざし、禍々しい闇の球体を生み出した。


「しまっ……! イリス、危ない!」


アヴァンが叫ぶ。彼女はとっさに杖を構え、闇の障壁を作り出した。ダークシールド。だが、巨大な闇の球体は、そのシールドを軽々と押し破り、こちらへ迫ってくる。


「関係ない……!」


俺は駆け出した。目の前に迫る闇の塊。そのすべてを読み取るかのように、俺の意識は研ぎ澄まされている。剣を構え、舞うように、あるいは嵐のように連続で斬撃を叩き込む。


「名月流・卯月乱舞うづきらんぶ!」


剣が幾重もの光の筋を描きながら、闇の塊を粉砕し、さらにその奥のゴブリンシャーマンへと容赦なく切り刻んでいく。闇の魔力が霧散し、あたりに黒い靄が立ち込めた。その中心に、ゴブリンシャーマンが茫然と立ち尽くしていた。俺は間髪入れず、その懐に飛び込む。


「これで……終わりだ!」


剣がシャーマンの心臓を貫いた。ゴブリンシャーマンは短い悲鳴を上げると、急速にその体を黒い塵に変え、消滅した。残されたゴブリンたちは、統率者を失い、完全に戦意を喪失して森の奥へと逃げ去っていく。


俺は肩で息をしながら、剣を下ろした。体に漲っていた力は、ゆっくりと収束していく……いや、収束しきれずに、体から魂が抜け落ちていくような感覚がした。


「イリス! 大丈夫!?」


アヴァンの声が聞こえる。その声が、遠ざかっていく。視界がぼやけ、平衡感覚が失われていく。まるで、水中に沈んでいくような感覚。俺の体は、限界を超えていた。


「……あ、ヴぁ……ん……」


俺は、意識を手放した。暗闇が、俺の全てを覆い尽くした。



最後まで読んでくれて、ありがとうございました。感想やレビュー、どしどし募集してます。時間があればぜひ協力お願いします。

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