第一章 勇者の始まり その一
初めての投稿で不慣れの部分もありますが、どうかよろしくお願いします。また、所々にAI(名前や誤字脱字の修正など)を使っているため、完全に自分作の作品ではありません。どうか暖かく見守ってください。
世界を覆う魔の森。その北の果てに、人里離れた小さな村があった。陽光も届かぬ鬱蒼とした木々の合間に、慎ましく暮らす人々。それが、俺の故郷、イブリース村だ。
俺――イリスは、そんな辺境の村で生まれた。特別な才能があったわけじゃない。ただ、誰よりも空の青さを知り、風の囁きに耳を傾けるのが好きだった。村の子供たちは皆、いつかくるかもしれない魔物の襲撃から村を守るために、剣術か簡単な基礎魔法を学ぶ。俺も例外ではなかった。
幼い頃の俺は、どこにでもいる普通の少年だった。いや、少しばかりお節介で、困っている奴を見過ごせないやつだったかもしれない。そんな俺のささやかな日常は、冒険者としての初仕事によって、終わりを告げることになる……。
その日、村の依頼を請けて、俺は単独で森の奥へ向かっていた。ゴブリンの群れが近くの街道に出没しているとの情報があり、その小規模な討伐任務だった。まだ経験は浅いが、村で習った剣術の基礎は身についている。手頃な腕試しになるはずだった。
風の囁きに耳を澄ませ、慎重に森を進む。不意に、草木のざわめきとは違う、不自然な物音と、金属がぶつかり合うような音が聞こえてきた。嫌な予感がして、音のする方へと身を隠しながら近づく。
視界が開けた先にあったのは、驚くべき光景だった。粗末な皮の鎧を身につけたゴブリンの群れが、一人の冒険者を囲んでいたのだ。数はおおよそ十匹。囲まれているのは、俺と同年代くらいの赤髪の少女。彼女は細身の杖を構え、その周囲には、黒く澱んだような禍々しい魔力が渦巻いているのが見えた。
ゴブリンたちは粗悪な剣や棍棒を振り回し、少女に襲いかかる。しかし、少女はまるで舞うようにその攻撃をかわし、杖から黒い塊を放った。それは地面に触れると、闇の触手となってゴブリンを捕らえ、締め上げる。光の魔法が主流のこの世界で、闇の魔力を公然と使う者など、ほとんど見たことがない。だが、その力は圧倒的だった。
「ひゃ、ひゃあ! わ、わ、わたし、もう無理!」
少女が震えながら叫んだ。その魔法の腕は確かだが、さすがに多勢に無勢。数匹のゴブリンが、少女の懐に飛び込もうとする。その瞳は、右が黄色、左が紫色という奇妙な色をしていたが、恐怖に大きく見開かれていた。
「危ない!」
思わず、俺は叫んだ。次の瞬間、俺の体が勝手に動いた。村で習った基本の型で剣を構え、少女に迫るゴブリンの一匹の横腹を掠めた。小さな傷だが、ゴブリンは怯み、動きを止める。
少女は驚いたように俺を見て、すぐに安堵の表情を浮かべた。そして、俺の作った一瞬の隙を見逃さず、とどめの一撃、闇の棘を放つ。
「あ、ありがとう! 助かったのっ!」
残りのゴブリンたちは、仲間が次々と倒されていく様に恐れをなし、蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。
「ふ、ふぅ……なんとか、なったね。えっと、あなたは……?」
少女は安堵のため息をつき、俺ににこやかに問いかけた。その表情からは、先ほどの戦慄が嘘のように消えている。
「イブリース村のイリスだ。あんたも冒険者か? そりゃそうか、こんな森ん中で他に誰がいるっていったら冒険者ぐらいか」
俺の言葉に、少女はへにゃりと笑った。
「うん、わたしはアヴァン。きょ、今日が初めての依頼で……実は、その、まだ不慣れで……」
顔を赤らめながら、アヴァンは照れたように言った。闇魔法という恐ろしい力を使う一方で、その振る舞いはひどく幼く、そして優しい印象を受けた。俺とそう変わらない、新人冒険者。それが、俺が初めて出会った、真の強さと、そして謎を秘めた冒険者だった。そして、俺の冒険が本格的に始まった瞬間だった。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました。