序章 最強勇者が執筆活動
初めての投稿で不慣れの部分もありますが、どうかよろしくお願いします。また、所々にAI(名前や誤字脱字の修正など)を使っているため、完全に自分作の作品ではありません。どうか暖かく見守ってください。
埃をかぶった書斎に、柔らかな朝の光が差し込む。窓の外では、今日も魔法の馬車が行き交い、空には風を纏った飛空艇が優雅に浮かんでいた。魔法が科学よりも圧倒的に発達したこの世界で、その恩恵を最も享受しているのは、おそらく書斎の主である男 -リュウガだろう。
彼はペンを握り、真新しい羊皮紙に向き合った。目の前には、インク壺と、いくつか読みかけの書物が積み上げられている。普段は**『神器 月光刀』**を携えているその手が、今はごく細い金属のペンを不器用に操っていた。
「うーむ……」
リュウガは唸った。魔王をその手で打ち倒し、世界を救った稀代の英雄。リュウガ・ミラン・シルバー。彼の名は、この世界のどこへ行っても知らぬ者はいない。しかし、そんな彼が今、四苦八苦しているのは、次の魔物討伐の作戦書でも、新たな魔法陣の解読でもない。
「『第一章 勇者の始まり』……っと。よし」
彼は書き始めた。綴られるのは、彼自身の冒険譚。魔王を倒すまでの、壮絶な道のりを記す物語だ。英雄としての役割を終え、突然訪れた平和な日常は、リュウガにとってどうにも手持ち無沙汰だった。
きっかけは、数日前のことだった。町のギルドで見慣れない本を見つけたのだ。何の気なしに手に取ったその本には、目を疑うような題名が踊っていた。
『勇者リュウガの冒険物語』
まさか、自分の冒険が物語になっているとは。少しばかりの好奇心で購入し、家に帰ってページをめくった瞬間、リュウガは言葉を失った。
「なんだ、これ……!」
読み進めるにつれ、彼の眉間の皺は深まる一方だった。登場する仲間の性格は、実際の彼らとはまるで違う。名前までもが微妙に、あるいは全くの別物に改変されている。訪れたこともない町の名前が記され、自分が愛用する剣技、「名月流」の技名までが勝手に変えられている。しかも、帯には堂々と**『本人公認』**の文字。身に覚えのない偽りの情報に、リュウガの奥底で燻っていた闘争心のようなものが、むくりと顔を出した。
「ふざけるな……こんなデタラメを、俺の物語として世に出すなんて」
怒りにも似た感情が、リュウガを突き動かした。このままでは、真実が闇に葬られ、いつかデタラメな英雄像だけが独り歩きしてしまう。そう思った時、彼の心に一つの閃きが走った。
「そうだ。ならば、俺が書けばいい。本当の物語を、この手で」
ペンを握ったその指先に、かつて神器『月光刀』を振るった時と同じような、確かな決意が宿った。これは、誰かのための記録ではない。紛れもない自分自身の、そして共に戦った仲間たちの、真実の物語だ。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました。