キャシーちゃんとハニトー
ネットで調べたとおりのド派手なカラオケチェーン店が駅前にある!
日本のカラオケ店は凄いとは聞いていたが、ここまでとは思っていなかった。
もっと凄いカラオケ店もアジアにはあるにはあるが、女性や男性と売買春の交渉をするお店が多いらしい。
日本は国内に数カ所の特殊な風俗街以外には、それが無いようだ。
高校生でも普通に来られる店ばかりのようで安心だ。
私たちが通されたのは大きめの個室。
それより、気になるものが表にディスプレイされていた。
「あの四角のケーキはなんですカ?」
「なにって……ハニトー?」
「ハニトーってなんですカ?」
「うーん……説明するより食べてみたほうが早いね。
お昼まだでお腹も減ってるし、注文しよっか!」
「僕ピラフ」
レアが注文に付け加える。
「甘いものにしてシェアしようよ」
「……妥協してもピザだな。少なくともシェアは出来るよ」
レアが渋々妥協案を出した。
「キャシーはコーンが載ってるピザを見てみたいでス!」
絶対食べたくはないが、見てみたいとは思う。ピザにコーンが載ってるのは変すぎるからだ。
「普通に載ってるだろ。専門店じゃないんだから」
私はスマホで、即席の歓迎パーティの様子を自撮りする。
みんなノリ良く写ってくれて、動画として配信してもいいと快諾してくれた。真の陽キャということだ。
私のように、日本に来るためにキャラクターを作り込んだりしていない。
故郷の大学では本当にみんな大酒を飲み、男も女もむき出しの性欲が爆発していたものだ。
まあ、酒は飲んでいても私に手を出すと小児性愛の性犯罪者として問答無用で刑務所行きになり、出所後も一生GPSの装着が義務付けられる事になるのは分かっていたから、私は大丈夫だった。
あくまでも私は、でしかないが。
「おまえもう入れた?」
「僕はもう入れたよ。
キャシーちゃんは今日の主賓なんだから、歌いたい曲入力したらいいんじゃないかな?」
みんなが思い思いに流行の歌を歌い、場が盛り上がって来たところで待望のハニトーが届いた。
パンをくり抜いてトーストし、メープルシロップとアイスクリームで盛り付けたもので、想像よりかなり大きい。
これを一人で食べると確実に太る。
「ハニトーは、3〜4人で分けて食べるんだよ」
女子で分ければ丁度いい量になるようだ。
ハニトーは正式にはハニートーストと言い、まだアメリカでもかなりお洒落なスイーツ店にしかメニューとして存在しない。
見た目通りのバニラアイスとメープルシロップと焦がしバターの味だが、私は今お洒落なモノを食べているという雰囲気を味わっている。
寿司はアメリカでも日本人経営の店で食べていたが、ハニトーは存在すら知らなかった。
日本はこんなに近所に最高なモノがある。
これはちょっと本気でフィールドワークする必要があるかもしれない。
フィールドワーク、すなわち高校生活に本気で取り組むという意味だ。
こういう時に動画配信者として積んだ訓練は、大いに役立ちそうだ。
思えば大学生は、10歳ごろから飽きるほど見てきた。
それと比べると、日本人の男子高校生は吟味に吟味を重ねただけあってキュートだ。
ティーンエイジャーの男子が好みで何が悪い?
このキャサリン・ディレルヴァンガー教授は15歳なのだ。
年齢的にやましいところは全く無いし、全然ショタコンではない。むしろ年相応だと胸を張って言える。
日本に来るまでは精神の老化に悩んでいたが、かわいい少年たちが合法的に近くにいるだけですぐさま大復活だ。
『かわいい男の子、最高……』
思わず口から出ていたが、無意識にイスラム以前のアラビア語の詩篇の原典から引用していた。
ある程度の多言語理解者の可能性がある時透繭を警戒していたのは、さすがは私だと内心自画自賛していた。