カラオケ店に行こうか!
な……なんだこの女?
とんでもない圧のこもった眼で、いつのまにか至近距離に近付かれてガン見されている。
この街には、いろんな外人がいる。
とんでもない足の長さや、あからさまに胸と尻が強調されたスタイル。
体重がオーバー3ケタの豊満な女性や、そこらへんのイケメンよりハンサムな女性がひしめいている。
そのどれとも違って、普通に日本人基準でかわいいの範囲に収まっている。
背も日本人の平均に近くて、顔も美人顔ではあるが普通に日本の地雷系だ。
違うのは眼力。見られれば見られるほど、何かが見透かされてるような気がしてしょうがない。
そもそも、なんで僕の名前を知ってる?
この教室にはいま来たばかりだろ。
「なんで僕の名前を……」
「ほら席につけ! 夏休みの課題を提出しろ。提出したものから帰ってよし」
留学生は周りの生徒に話しかけ早速溶け込んでいる。
たまに、チラチラこちらに視線を向けてくる。
そして下校時間。ホームルームが終わったら即放課後のようなものだ。
うちのクラスの女子もレベルは高いと思うが、Vtuberみたいな喋り方をする外国人コスプレイヤー的な留学生は目立つ。
視線の圧の高さにかかわらず馴染めば女子にも男子にも人気で、早めの放課後にはさっそく留学生の周りに人が集まっている。
やはり何かを持って産まれたヤツは違うもんだな。
「レアくんレアくん! ちょっと撮らせてネ」
留学生がスマホを向けてくる。
「さっきまで高城呼びだったのに、もうレアか」
「イヤだった?」
「別にいいよ。っていうかよく知ってるね僕の名前なんて」
「自己紹介お願いしまス!」
「マジか……あーどうも、僕は高城稀人です。
6月生まれの16歳です……他はなんもねえや」
「一発芸やれよ!」
「んなもんね〜し!」
「じゃあカッコいいポーズ!」
僕は、昔由奈姉ちゃんから教えられたポーズを決める。
「わー、カワイイねレアくん! じゃあ次の人!」
留学生キャシーは、どんどんクラスメイトを撮影していく。
昼以降は、有志でカラオケ店に行くことになった。
もちろんキャシーちゃん中心の突発的なカラオケパーティーだ。
僕はなぜか参加する前提で話が進み、お父さんがゲイバーを経営してる娘・時透繭と、部活に所属してない僕みたいな男子が中心になってキャシーちゃんをもてなす感じになっている。
もうキャシーちゃん呼びが浸透しているのだ。
さて、今日ここに来られなかった鈴木高校のサッカー部や野球部員はプロを輩出するようなレベルではない。
大学でも学校推薦で行くと、えらい目に遭う水準だ。
部でそこそこに活躍するぶんには程々にモテるが、小学校からのガチ勢はそもそもプロチームのジュニアの方に行っている。
ある意味で、本当にそのスポーツが好きじゃないとやってられない。
こんな風に、キャシーちゃん歓迎カラオケ大会に来られなかったりするからだ。
……僕の参加はなぜか流れ的に強制だったけど。
キャシーちゃん一行(僕含む)はこうしてデカい複合型カラオケ店に向かった。