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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第56話-2 すぐ後ろ

前回までのあらすじは、セルティーVSレナ。この戦いに遅れて観客席の貴賓席に来た十二の騎士の一人であるニードは、ランシュ、ヒルバス、イルターシャに向かって言うのだ。今の戦況について―…。


 「簡単に言うと、炎を展開した奴が優勢だな。」

と、ニードは簡単に言うのであった。今の第七回戦第一試合の状況を―…。

 ニードは続けて、

 「で、炎を展開した奴の相手の天成獣の属性が何なのかわからないと完全に判断することはできない。」

と、言う。そう、ニードには情報が決定的に不足していたのだ。第七回戦第一試合に遅れてきたがために―…。

 「ふーん、そうだったね。ごめん。第七回戦第一(この)試合は、レナとセルティー王女の対決。レナの方が今の炎を展開した奴ね。で、セルティーが幻の天成獣の属性を扱っているみたい。」

と、イルターシャは、正確にさっきまでの状況がどうしてこうなったのかを伝えていなかったので、搔い摘んで言う。その時、かなり適当であったが、同時にニードの欲しかった天成獣の属性に関しては言っている。

 「なら、今のところは炎を展開している奴、レナだっけが有利だな。でも、王女の方も奇策さえあれば逆転可能だ。天成獣の属性の幻の奴は、相手の油断および隙を突く、精神崩壊はお手の物であろう。そして、天成獣の属性が火の奴の弱点を理解しているのならば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()に―…。」

と、ニードは冷静に言う。ニード自身、筋肉が多く、頭まで筋肉できている脳筋だと思われるかもしれないが、決して、そうではなく、戦闘に関しては、それなりに頭や機転が働くのである。つまり、人は見た目で判断するな、ということである。

 「そうね、ニードの意見で、ほぼ間違いないみたいね。」

と、イルターシャは概ねニードと同じ見方をしていた。そして、ニードの頭や機転が働くということを理解しているがためでもあった。

 「ランシュはどうなの? ニードの判断は?」

と、イルターシャはさらにランシュに尋ねるのであった。

 「的確と言いたいところだが、セルティーは、知っているんだよ、天成獣の属性で火を扱っている者の弱点ってやつを―…。」

と、ランシュはニードの判断に対して、イルターシャの質問に対して答えるのだった。セルティーが天成獣の属性が火で、それを扱っている者の弱点を知っていることを付け加えて―…。

 「えっ!! そうなのですか。ランシュ様。」

と、イルターシャがさっきのランシュの言葉に驚き、さらに、ランシュに尋ねる。

 「ああ、騎士としての修行の中で、王女である以上に、天成獣の宿っている武器の一つに選ばれてな。今の持っている大剣な。そのせいで、セルティーは、数年前から、騎士として戦い方に加えて、天成獣のことについて学んでいたという。それを俺は実際に見ているからな。その中で、火の属性の弱点についても学んでいたんだ。セルティーが勉強していた本を実際に読ませてもらったことがあるからな。」

と、ランシュは言う。それは、過去のある一面を思い出しながらであるが―…。実際に、ランシュは、セルティーが学んでいた天成獣について書かれた基礎的な本を一冊借りて読んだことがあるのだ。それが、ランシュにとって、天成獣の戦い方の理論の上での基礎となっているのであるが―…。その中で、火の属性をもつ天成獣を扱っている者の弱点が記されていたのであった。

 「ええ、じゃあ~。」

と、イルターシャが言いかける。

 そこに、ヒルバスは、

 「ランシュ様のおっしゃた通りです、イルターシャ。そう、セルティー様は、火の属性を持つ天成獣を扱っている者の弱点を知っておられます。恐らくは、()()を実行されておるものと考えられます。()()()()にいらっしゃられていたので―…。」

と、ランシュの言いたいことを捕捉するかのように言うのであった。

 「勝手に捕捉されたし。」

と、ランシュはヒルバスに捕捉されたことを少しだけ恨んだ。これからランシュから説明しようとしていたのを、邪魔されてしまったからだ。

 それでもランシュは、そんなことはすぐに記憶の片隅に置き、

 「ヒルバスの言う通りだな。」

と、言うのであった。


 一方、再度瑠璃チームのいる場所。

 そこでは、瑠璃は納得していないけど、無理矢理納得させていた。

 それは、セルティーが四角いリングの炎の中に閉じ込められているのに、助けに行けないことだ。

 助けに行けば、第七回戦第一試合はセルティーの敗北となるであろう。それでも、セルティーの命にはかえられない。

 そして、李章の緑の水晶の能力で、助けるなそのままでいろという内容であったことにもどうしてとあるが、緑の水晶の能力で危機回避ができているのも事実なので、納得するしかなかった。

 瑠璃が無理矢理自分自身を納得させた時に、不満を解消するものではなかったが、アンバイドが、

 「そうか、そうだった。俺としていたことが失念していた。セルティーが()()()()にいる時点で考えるべきだった。仮に、セルティーが火の属性持つ天成獣を扱っている者の弱点を知っているのならば、確実に俺たちが四角いリング(あの)の中に行くべきではない。絶対にだ。でも、セルティーは知っているのか、火の天成獣を扱っている者の抱える確実的な弱点の一つを―…。」

と、アンバイドは心の中で言おうとしていたが、敢えて口にする。それは、瑠璃、李章、礼奈、クローナに希望を持たせるためである。しかし、セルティーが火の属性を持つ天成獣を扱っている者の弱点を知っていなければ意味がないのだ。それに、その弱点を実行しないとセルティーの生の終わりという結末を免れることができないのだ。アンバイド自体も希望に縋るような感じであった。

 さっきのアンバイドの言葉に気づいた瑠璃は、

 「どうゆうことですか。アンバイドさん。火の属性を持つ天成獣を扱っている人の弱点って。」

と、アンバイドに質問する。瑠璃は知らないのだ。知っているはずがない。魔術師ローによって天成獣の戦い方の修行をしたのは、ほんの一週間であり、リースでのアンバイドなどによる修行でも知識的な面は最低限でしかなかった。そう、簡単な天成獣の属性と戦い方を理解することと実践に重点がおかれていたのだ。火の天成獣を扱っている者の弱点よりも、危険度の高い幻や時の注意点の方が主要であり、あとは、多くの時間が実践に費やされ、実際の戦闘での戦い方がほとんどなのであった。

 そうなってしまうと、アンバイドはここで説明しないといけないのだ。それは、アンバイドでもわかっていたことだ。

 だから、アンバイドは、

 「言わないといけないな。それと、腕で止めてすまなかったな。で、火の属性を持つ天成獣を扱っている者の弱点は――…。」

と、これから話を始めるのであった。セルティーの勝機のために必要なことを―…。


 【第56話 すぐ後ろ】


 四角いリングは炎で燃え盛る。

 消えるという概念が存在しないのだろうかと思わせる。

 ゴオオオオオオオオ、と。

 勢いは中にいるものを燃やし尽くそうとしている。展開したレナを除いて―…。

 その中では、セルティーは、再度レナを見るのであった。

 双方は、(……………。)と対峙するのであった。セルティーにいたっては、はやくレナを倒さないと自らの生の終わりへの確率を高めてしまうだけなのだ。

 ゆえに、

 (くっ!! どうすればいい…。どうすれば―…。)

と、セルティーは焦りをさらに強くしていくのであった。冷静さを失いながら―…。

 セルティーの冷静さが失われていることを感じたレナは、

 (冷静さがなくなってきたみたいだね。そろそろ私の勝ちも近いかもね。なら、いっそう―…、これで―…。)

と、心の中で呟く。レナは油断をまだ発生させずに―…。

 そうして、レナは展開するのであった。いや、範囲を拡大するといった方が正しいのかもしれない。

 「さあ、屈せ!!! そうしたほうが見苦しい姿を見せれるかもしれないねぇ~。」

と、レナは言う。それは、自らの勝利を確信するための一撃を放とうする、ある意味宣言でもあったのだ。

 レナが言い終えると、炎は四角いリングの中、全てといっていいかもしれないほどの範囲を覆ったのである。

 セルティーがいられる場所のすべてを潰していくかのように―…。

 このレナの攻撃といっていいものは、四角いリングの外にいるものでも感じるほどであった。理由は簡単だ。四角いリングの縁の炎の壁のようなものの高さよりも高く燃えていたがゆえに、見えたのだ。四角いリングの中の炎が燃え上がっているのを―…。そして、四角いリングの中の炎は、天にでも届きそうなぐらいに伸び上がるのである。実際は、リースの競技場の高さよりも二~三メートルほど高いというぐらいには―…。だから、リースの市内にもその炎は見えたのである。リースの競技場で火事が起こったのではないかと思わせるぐらいには―…。

 そして、四角いリングの炎は消えていく。レナのいるほんのわずかの周囲以外はすべて炎で燃やすことができたのだ。ゆえに、もうこれ以上炎を展開しておく必要はないのだ。


 炎は数十秒の時間をかけて消滅した。

 四角いリングのあちこちで、煙が形成されていた。

 しかし、視界はある程度は良く、四角いリングの全てを見ることはできるようだ。

 そして、黒焦げになっているのが一つ、四角いリングに立っている人物が一人。

 立っているのはもちろんレナである。そうなってくると、黒焦げになっているのは、セルティーの可能性があるのかもしれない。ただし、四角いリングの外にいるものにはそうは見えないであろうが―…。

 レナは、高らかに声をあげる。

 「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ。」

と。続けて、

 「さあ~、これで私の勝利だぁ―――――――――――――――――――――――――――。」

と、言う。それでも、まだ油断はしていなかった。油断することさえできないのである。油断をすれば、もしかして、生き残っていたセルティーによってやられかねないからだ。

 レナは、冷静になって、

 「だが、しかし―…、まだ確かめていませんでしたね。あの黒焦げがセルティー王女であるかどうかを―…。」

と、言い、黒焦げの所へと歩きながら向かって行くのであった。レナとしては、四角いリングの全域といっていいほどに炎を展開したのだから、セルティーは燃やし尽くされていると思われるが、それでも念のため確認しておく必要があったのだ。それが、セルティーが造った幻でないかどうかを―…。

 タン、タン、と音を鳴らせながら歩く。

 数秒で黒焦げのものがある場所へと辿り着く。

 そして、レナは軽く、黒焦げに触れる。そう、感触があったのだ。周囲を確認したうえで、

 「フフフフフフフフ、本当に火で燃やしちゃったみたいね。」

と、レナは勝利を確信したように言う。確信せざるをえなかったのだ。黒焦げに感触があったのだ。そして、四角いリングの中には他の人がいなかったのを確認したのだ。一回転して見たのだから―…。

 「でも、姿があるのは良くないから、セルティー(あなた)の名誉のために灰にまでしてあげるよ。もう声なんて聞こえないし、意識すらないと思うしね。」

と、レナは、言うと、黒焦げを再度自らの炎で燃やし始めたのだ。

 黒焦げの範囲のすべてが、燃え盛るのである。燃え尽かそうとして―…。

 その燃えている姿を見ながらレナは、

 「あ~あ、馬鹿だねぇ~、ホント。私は殺さないなんてことはしないの。火は人に燃え移れば、殺してしまうの。それに、負ける者には選択肢なんて存在しやしない。あるのは、理不尽な死のみ。まあ、それを知らずに死んでしまうなんてね。いや、知ったとしても遅いか。まあ、私にはそれは関係ないし。」

と、独り言を言う。今、燃えつくされようとしている黒焦げとなってしまったセルティーを灰になり始めているのを見ながら、哀れで弱い者という視線をおくりながら―…。これは、決定的な油断となった。勝利を確信し、周囲を見て確認したがゆえに発生してしまった。そう、最後の最後で、幻の属性を持つ天成獣を扱っている者にとって、一番ベストな戦いをするための機会を与えてしまったのだ。

 その時、アンバイドは、

 (そういう結末になるのかよ。李章が動揺して言っていたことが本当になるとはなぁ~。あんな炎の壁ができて、セルティーが絶体絶命の状態だと誰しも思う中で―…。)

と、心の中で呟くのだ。確定した勝利が訪れたのだということをアンバイドは感じながら―…。

 「灰になっちゃった。」

と、完全に灰のなってしまった黒焦げであったものを見る。

 「これで私の勝ちがけっ・・・ッ!!!」

と、レナが言いかけたところで、痛みを感じるのであった。

 そして、レナは、前へと倒れていくのであった。

 (あっ!! なぜ…、どうして、この痛みは何なの。どうして、どうして―…。)

と、後ろを向くことができずにレナは倒れたのだ。顔面をぶつけて―…。

 レナは、背中のほうを斬られたのだ。いや、斬られたように見せたのだ。実際には、レナの背中の方に大剣が触れただけなのであるが―…。

 そして、レナが倒れる後ろにはセルティーがいた。大剣を振り下ろしたので、大剣の先は地面に接するかすれすれぐらいの高さに―…。

 それを見たファーランスは、

 「勝者!! セルティー!!!」

と、勝者を宣言するのであった。

 観客は、セルティーが勝者になったことに対して、歓声をあげるのであった。


第56話-3 すぐ後ろ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


次の更新で今年、最後の更新になると思います。今年、最後の更新以後の更新の再開は、2021年1月中旬からを予定しています。たぶん、活動報告の方で詳しい日程が決まりしだい報告すると思います。

あと、最後に、メリークリスマス(恥ずかしながら)。

次回の更新は、2020年12月25日午前0時です。2時間後ですよ。

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