表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
97/759

第56話-1 すぐ後ろ

前回までのあらすじは、レナの炎を何とか幻で攻撃を受けないようにしたが、四角いリングの縁およびところどころに炎が展開され、ピンチとなる。どうなるのか?

第56話は予定よりも、瑠璃チームでのセルティー以外の内容が多くなってしまったために、分割することになりました。さらに、区切りが曖昧となってしまいましたが、ご容赦ください。

 炎は燃え上がる。

 そこにある空気、いや、酸素に炭素を化合させながら―…。

 炎は、四角いリングの縁を覆い、二人の人間を逃げられないような状態にしていた。

 いや、一人は逃げられるだろう。これは、危機に向かい合った二人のうち一人が助かるものではない。

 一人がこれを起こし、もう一人は、その一人のために燃やされようとしていた。その命が尽きるということを未来から語り部が運命という言葉で語らせるために―…。

 そして、四角いリングの中のところどころで炎が壁のようにいくつか湧き上がっていた。

 炎の中にいるのは、炎を出して、以上のようにしたレナと、レナの対戦相手であるセルティーがいた。そう、セルティーは、レナによってここで燃やされそうになっていたのだ。今は燃やされていないが―…。ただし、幻で二、三回ほど燃やされるシーンをレナに見せた。

 こんな状況の中で圧倒的に有利となるのは、レナだ。レナは、この炎を自ら展開したのだ。ゆえに、レナはこの中においても生き残ることができるだろう。自らが生きるのに厳しい状況になれば、簡単に炎の展開を止めればいいのだから―…。

 火の属性をもつ天成獣をあやつる者は、火の中においても、ある程度、安全でいられるのだ。自らを燃やす対象に選択をしなければ―…。簡単に自らが展開した火を止めるように念じれば可能である。さらに、火の天成獣は、その力を行使させている自らの使い手に対しては、使い手が展開した火に触れたとしても、使い手の体が燃えることはない。そう、火の属性をもつ天成獣をあやつる者は、火に対して耐性があるのだ。そのため、火の中にいても、熱いとは感じない。

 これ以上の火の属性をもつ天成獣の特性について語っても意味がない。実際の四角いリングの双方がどうなっているのか。

 「ゴホッ、ゴホッ。」

と、咳きをする者がいる。

 「ゴホッ、ゴホッ。」

と、さらに続けて咳をする。

 その人物の名は、セルティーである。今、セルティーは、対戦相手のレナが展開した炎が四角いリングの縁およびところどころにあるがために、不利な状況におかれているのであろう。

 その中で、セルティーは、炎の熱さのせいで、喉が乾き、そのために、咳がでていたのだ。いや、出続けているのだ。そして、炎の中では、セルティーが呼吸に必要とされる酸素が火によって化合させられて二酸化炭素になっているせいで、酸素濃度がセルティーの周囲では低下しているのであった。つまり、次第にセルティーは呼吸をすることさえできないようになっていたのだ。セルティーは、速く決着を付けないと自らの生の終わりという結末を迎えるのであり、逃れるためにはレナに勝つことが必須条件である。

 ゆえに、

 (うっ。)

 「ゴホッ、ゴホッ。………………うっ。」

 (くっ!! くそっ!!)

と、セルティーは、心の中で苦しみながら、実際の言葉にすることができない状態になっていた。さらに、冷静に判断することも難しい状況へとなっているのである。理由は、以上でも述べたが、炎のせいで次第に呼吸が難しくなっていっているからである。必要な酸素を求めて―…。

 (あの時の攻撃は―………、フィールド…全体に…火をまくため・・・だったの…です…か。私としたことがやられてしまいました。)

と、セルティーは心の中で考える。そう、レナが四角いリングを覆う前の炎を直進させてセルティーに向けて攻撃してきたのが、現在、四角いリングを炎で覆うための伏線であったことにセルティーは、自身としての結論にいたる。レナもそれが狙いであったのだ。

 レナは、セルティーの気づいている先の狙いをもっていた。

 (あと…もう一押し。)

と、心の中でレナは呟く。そう、レナは、セルティーを呼吸困難もしくは燃やすことによって勝利しようとしていたのだ。火の属性をもつ天成獣をあやつる者は、相手を殺さない程度に燃やした戦闘不能することもできないことはない。しかし、レナとしては、セルティーの命ごと燃やし尽くしたいと思っている。それは、自らの課したルールの中で、自らに戦いを仕掛けてきた者に該当するからだ。それに、ランシュの企画したゲームは、試合での勝者の決定方法として相手を殺しても構わないからだ。ゆえに、レナは戦闘不能なる程度の方法を使う必要がないのだから―…。


 一方、中央の舞台。

 瑠璃チームの方はどうなっているのか。

 瑠璃チームは、四角いリングの方向を見ると、四角いリングが端から燃えているのがわかる。

 「あれって、早く降参してセルティーさんを助けにいったほうがいいよ。」

と、瑠璃は焦りながら言う。それもそのはずであろう。このままでは、セルティーは命を奪われかねないのだから―…。

 「そうです。明らかにあの炎の中にいれば、いずれは、一酸化炭素中毒による窒息死もしくは炎で焼き殺されてしまいかねません。ならば、ここは勝敗に関係なく、助けにいかないといけません。」

と、李章は表の表情では冷静になりながら言う。それは、瑠璃が今でも助けにいきそうな感じであった。もし、瑠璃が助けにいくのであれば、自分が先陣をきっていかないといけないと考えているからだ。そう、瑠璃を炎の中で死なせないがために―…。

 むしろ、普通ならば、瑠璃が炎の中に行くことを止めるであろうし、そうするのが当たり前なのだ。炎の中に入る前に、炎のあるところを通らなければならないので、セルティーを助ける前に、自身が炎で焼け死んでしまうのだ。

 でも、瑠璃にはできてしまうのだ。そう、瑠璃が赤の水晶の能力によって空間移動をすることができるのだから―…。ゆえに、李章は、瑠璃を止めても無駄であるから、瑠璃の炎の中でセルティーの救出と、仮にセルティーがダメだった場合にすぐに炎の中から逃げ出せるようにすることを瑠璃が冷静になれなかった場合に自らができるようにするのが役目と感じていた。だから、瑠璃が炎の中に行くのに対して、サポートする感じ行こうとしたのだ。

 「二人とも、危ないからやめて!!」

と、礼奈は怒る。炎の中に入っていくことは、かえって、炎の対策ができていない瑠璃と李章には不利だとわかっているからだ。

 「いや、それでも―…ッ!!」

と、瑠璃が言いながら、四角いリングの方へと走り始めようとする。しかし、それは、腹部に何かが当たってできなかったのだ。

 (何!!)

と、瑠璃は驚く。そして、視線を何が当たっている腹部へと向ける。そこには、腕があったのだ。瑠璃の右脇腹から左に垂直に曲がって、瑠璃の腹部を接しているので、右腕であることがわかる。そして、瑠璃は顔だけを後ろに向ける。

 そこには、アンバイドの姿があったのだ。

 「行ったとしてもどうにもならないぞ。それに―…、空間移動をしても…だ。わかっているだろう。セルティーのいる位置!!」

と、アンバイドは冷静に納得させるように言う。ここでのアンバイドの頭の中は焦りよりも、冷静さが際立っていたのだ。理由は、戦場や戦いでの経験があるということによるであろう。戦場などにおいては、一つの判断ミスが自らの命や仲間の命を危機に晒すことがあるのだ。ゆえに、経験、大胆でありかつ慎重すぎる慎重さ、判断や実行のタイミングが重要であることがわかっていた。そう、アンバイドからすれば、今の瑠璃の行動は愚かなものでしかなかった。炎の中どうやって探すのか、ということをまったく考えていないと思ったのだ。それは、焦りによって、考えることよりも行動が重視と思ってしまっているのだろう。

 それを解決する可能性としてアンバイドは、

 「李章!! お前の見立てはどうなんだ!!!」

と、声を荒げない程度にはっきりと大きく李章に向かって言うのだ。

 アンバイドの意図が何かに気づいた礼奈は、

 「李章!! 緑の水晶の能力を使って!!! どうすればセルティーさんが助かるのか!!!!」

と、強く、李章に聞こえるように言う。

 それを聞いた李章は、緑の水晶を使った。そう、緑の水晶の能力である危機察知を―…。

 一方で、クローナは、

 (私は、この場合、絶対に役に立ちそうにはない。風は火の威力を増加させてしまうし、火を消すにしても、火の少ない量でもそこそこ力を使ってしまうからなぁ~。)

と、心の中で思っていたので、一切、今は傍観せざるをえなかった。本当の気持ちとしては、今すぐにでも助けに行きたいと思っていたし、行かないといけないと感じていた。それでも、今ができるのは白の水晶で防御テント(バリア)を展開することしかできないのだ。探すとなれば移動しなければならない。移動するとなると防御テント(バリア)を一回はきらないといけなくなるので、白の水晶を使うということも意味がないと考えたのである。そして、クローナは傍観していることしかできず、悔しい気持ちが心の底で漂っているのである。

 一方、緑の水晶の能力を使った李章は、あるとんでもないといっていいかもしれない結論を水晶から知らされるのである。イメージという名の感覚によって、直感によってでもいいもので―…。

 「えっ、そんなことはありえません。えっ…。」

と、李章は驚かずにはいられなかった。

 「なんかわかったのか。」

と、アンバイドは尋ねるように言う。

 「はい。―……………何もするな。ここにいろ、としか。」

と、李章は動揺して言うのであった。それもそのはずだ。炎の中のセルティーが助かる方法が、何も自分たちからするな、というこのケースでは最悪の手と普通に考えられるのが最善で最高の解答であったのだ。何度も緑の水晶の能力を使用したとしても同様の結果しかでないのだ。他の助けに行くという選択を差し置いて、である。

 「そうか。」

と、アンバイドは単純に頷くしかなかった。

 (どういうことだ。普通ならば、助けに行くという選択肢も決していいものではない。なのに、それを差し置いたとしても何もするな、ここにいろが最善の選択肢になるんだ。李章としてもこんなの自分の選択じゃないし、ありえないという表情をしていやがる。何なんだ。)

と、アンバイドも心の中で驚かずにはいられなかったし、はあ、という訳分からないことを言いがってとも思っていた。

 一方で、礼奈は納得することができた。すべてではないが―…。

 (李章の持っている緑の水晶がそうなんだと結論づけたのであらばそうなのだろう。だけど、疑問も残る。どうして、緑の水晶は、そのような結論に達したのだろうか。セルティーさんに何か考えや、これを逆転できる機会(チャンス)でもあるのだろうか。)

と、礼奈は心の中で疑問に思うであった。そして、礼奈はただ静かに、四角いリングの火を見続けながら―…、

 「瑠璃、たぶんどんな手を使っても今の四角いリングの中(あそこ)には、行くべきではないと思う。セルティーさんが勝つと信じるしかないよ、今は―…。」

と、瑠璃に言葉だけを向けて言うのである。

 瑠璃は、礼奈が何を言おうとしているのか表面的にも、わずかであるが、表面よりも深くわかったので、

 「うん。」

と、言う。決して、納得というものはしていなかったが―…。ゆえに、悔しさも心の中に残るのであった。第七回戦第一試合が終わるまでは―…。


 一方、レラグ率いるチームのいる中央の舞台の場所。

 そこで、レラグたちは、目の前にある炎を見る。レナが展開で拡げた炎を―…。

 特に、レラグは、

 (レナ、君がここまで本気をだすとは―…。相手のセルティー王女もお強いみたいですね。ただし、レナはまだ気づいていないようですが―…。この試合の展開を説明できるのは、()()()ぐらいでしょう。)

と、心の中で言葉にせず言うのである。レラグは、この第七回戦第一試合における今の試合の展開を解説できる人物に心当たりがった。そして、レラグは炎が燃え盛っている四角いリングから、視線を観客席の中の貴賓席の方へと向けるであった。そこにいるのだから、第七回戦第一試合の展開がどうなっていくのかを―…。


 観客席の中の貴賓席。

 そこには、ランシュ、ヒルバス、イルターシャがいる。

 「お~う、ってかもう始まっていたのか。」

と、男の声が聞こえる。そして、男は、四角いリング見える場所へと向かって行く。決して、ランシュ、ヒルバス、イルターシャの邪魔にならないように―…。

 「ニード。遅くない。ってか、そのむな苦しい筋肉をしまってもらえるとありがたいんだけど―…。」

と、イルターシャは皮肉を込めて言う。

 「それは無理だ。俺の筋肉は、俺が俺であるために必要なものであるからな。」

と、ニードはまるで、常識を言うかのようにイルターシャに向かって言う。

 「そうね。ニード(あなた)はそういう人間だったわ。で、今のこの状況をどう見る、ニード。」

と、イルターシャは、視線を四角いリングにある炎に向けて、ニードに問うように言う。

 「う~ん。そうだね。」

と、ニードが考えながら言う。そして、ニードは今の状況を説明しようとするのであった。


第56話-2 すぐ後ろ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


予想以上にセルティーVSレナの内容が多くなっています。当初の予定よりも増えているような気がします。『水晶』の全体的な内容がもう―…、ですね。

次回の更新は、2020年12月24日の22時を予定としております。そこで、第56話は完成すると思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ