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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第55話-2 先手必勝

前回までのあらすじは、レナがセルティーの持っている大剣に触れ、レナの指先で発生した火によってセルティーが燃やされるのであった。燃えたのは、本当にセルティーであったのか? その中で、レナの言葉は何を意味しているのか?(前回の最後のレナのセリフのこと)

第55話はここで完成します。

 セルティーは、レナが触れたレルティーの武器である大剣に発生させた火がそこから伝って燃やされた。

 これは、現実に言うと、事実ではない。事実であり得るはずがなかったのだ。

 「天成獣の属性で幻をもっている者は、幻の能力によって、相手に攻撃が成功させたと思わせることで油断を誘い、その隙を突いて攻撃をする。ホント、あなたたちの常套手段だものねぇ~。それに―…、演技が下手よねぇ~。現実性(リアリティ)がない。特に「ああああああああああああああ。」の叫び声なんて~、実際に燃えているときにあんなに長くするとは思えないの。それに、声ってものは、すぐに燃える中ですぐにでなくなるのですよ。空気の乾いた声のように―…。実際にそのことがわかっている人は騙せませんよ。」

と、レナは言う。そう、レナもセルティーの「あああああああああああああ。」という、喚き、呻き声を合せた声の長さで判断することができたのだ。今、燃やしているセルティーが幻で、レナに燃やさせているのをセルティー自身であるかのように思わせている、と。気づけば後は簡単だった。セルティーがどこから攻撃してくるのかに注意すればいいのだから―…。幻の天成獣の属性を持っている者が、気配に関して、狂わせるような幻をかけていさえしなければ―…。

 さらに、レナは、天成獣の属性の中の幻を持つ者と過去に戦ったことが、彼らの戦い方もある程度は知っていたし、相手の隙を突くことについてのやり方も経験上において理解していたし、そいうのにも実際に勝ってきた。いや、彼らに、彼ら自身の生の終わりを与えてきたのであるから―…。

 そして、レナはさっきの言葉の後も続けて、

 「さっさと姿を現わしなさい。セルティー王女様。」

と、今度は大声で言う。


 競技場の観客席の貴賓席。

 そこでは、イルターシャが観察していた。セルティーとレナの戦いを―…。

 「へぇ~。王女様の天成獣の属性って幻なのね。大剣とかを武器にしているから、生とか鉄とかかなぁ~と思っていたけど、驚き。でも、もし、天成獣を宿らせるとしても幻なら大剣とかはないと思うんだけどなぁ~、私的に―…。」

と、イルターシャは言う。

 この言葉を聞いて、貴賓席にいたランシュは、

 「イルターシャ(キミ)が言う、それ。まあ、君の武器は大剣ではないけど、天成獣の宿っている武器って、イメージで属性はあれだなぁ~と思わせるものってあまり聞いたことがないんだけど―…。」

と、言う。ランシュは、経験上、天成獣の宿っている武器のイメージでその属性を考えるのはとても危険なことである。戦いに勝つといううえでは―…。ランシュもそのような経験は何度何度もしてきたのだから―…。

 「そうね。まあ~、レラグみたいに想像しやすいのもあるけど―…。」

と、イルターシャは言う。そう、天成獣の属性がイメージしやすい武器もないわけではない。つまり、天成獣の属性というのは、一違いに武器からイメージする属性が合ったり、合わなかったりするのだから、そこから考えるべきではないし、属性を推測すべきではないということだ。

 「戦い方は、幻の中でもオーソドックスね。相手を油断させ、その隙を突く。まあ、定石通りってところかしら。だけど―…、幻の良いところは、相手の精神を完膚無きまでに壊すことだからねぇ~。」

と、イルターシャは言う。その表情は、幻という属性のことを知りつくしているのかのようであった。実際に、知り尽くしているのであるが―…。

 「イルターシャが言うのであればそうであろう。だけど―…、セルティーの天成獣の戦い方はオーソドックスだが、精神攻撃というよりも、隙を突いての物理攻撃みたいだからなぁ~。」

と、ランシュはイルターシャに向かってセルティーのこれまでの戦いについて言う。

 「ふ~ん、そう。まあ、セルティー様には興味ないしね。情報さえ取れれば―…。」

と、興味がないかのようにイルターシャは言う。実際に、興味はない。しかし、瑠璃チームに勝つためには、瑠璃チームのメンバーそれぞれの戦い方を知っておく必要がある。あくまでも、そのためのことなのだから―…。


 レナが大声が競技場の中に響き渡る。

 その声を聞いた、四角いリングの中にいるセルティーは、

 「それはできません。あなたが私の姿を見せるときは―…、私の勝利が決まったときよ!!」

と、確信めいたように言う。実際には、セルティーはレナに勝つ方法は一択の流れしかなかった。そう、レナも考えているであろう、相手を油断させ、その隙を突いて相手を倒すという方法である。同時に、見破られていることも知っているが、セルティーにとっては、

 (見破られたとしても、レナ(相手)が対処できない状態であれば、勝てる。)

と、心の中で思っていたのである。

 「それは、大層なことを言うのねぇ~。しかし、セルティー王女は気づいていないかもしれませんが、もう一つあるんじゃんですか、セルティー(あなた)が私の目の前に姿を見せるときが―…。」

と、今度はレナが挑発するように言う。それは、セルティーがさっき言葉にした言葉の中で、セルティーが姿を見せる時が、セルティーがレナに勝利する時に見せること以外にもう一つ存在する可能性をレナは理解していたのだ。いや、そんなことは、すぐに気づくことであろう。勝利を望む者であるのならば―…。

 「もう一つとは、それは他にあるのですか? 私がレナ(あなた)の目の前に姿を現わす方法が―…。」

と、セルティーが言う。その表情は、他にもあるのですか? という単純なものを表に纏わせていたが、中では、セルティー自身もレナが言いそうなことに対して、考えはいたっていた。それでも、考えることによって、逆にレナの考えの方に第七回戦第一試合の展開をもっていかれてしまうのではないかと思ったのだ。ゆえに、すぐに、セルティーは、心の奥底に閉じ込めていたのである。それを、レナが言おうとしていることに対して予想がついていたセルティーは、すぐに言葉による反撃の準備することになる。

 レナは続けて、

 「それは―……。」

と、言い、その後、一秒という時間もかからないような少しの間をあけ、

 「セルティー(あなた)が負けるときです。まあ、そちらのほうが確率的に高そうですよ。どうします、セルティー王女。」

と、言う。それは、自らの勝利をレナも確信しているかのようであった。レナ自身も今、現在において油断しているわけではない。セルティーの言葉に自信を確信させるものを少しでも揺さぶろうとしているのだ。さらに、油断しない証拠としては、レナは周囲に対して警戒しているのだ。ゆえに、セルティー自身もわかっているので、攻撃することができなかったのだ。そう、レナの油断しているところを、セルティーは見つけることができていないのだ。

 セルティーはさらに、相手の油断を誘うために、

 「残念なことですが、レナ(あなた)、いや、フォミラ=レナさん、それはありえません。勝つのは私ってことが―…、確定事項となっていますから―…。」

と、相手を挑発するようにする。セルティーは、相手の油断を誘うことのできる方法の一つである相手への挑発によって、相手の冷静さというものを見失わせようとしているのだ。

 さらに、挑発するために、

 「他にも何かあるのであれば、おっしゃってくださりませんか。」

と、セルティーは、はっきりと、意地の悪い女性の意地悪いセリフを言うときの口調で言う。

 (ふ~ん。私の油断を誘おうとしているわけね。分かりやすい。そんなセリフを使っても意味がないのよ。それに―…、幻を使う天成獣の宿っている武器の使い手は、戦場などでは厄介だけど、ここにはあるのよね。セルティー(あなた)を燃やすための方法が―…。それに―…、もう実行できるしね。後は―…。こっちがセルティー(あなた)を油断させることにしましょう。)

と、レナは心の中で考えるのであった。周囲の警戒を解くことなしに―…。

 「私に勝てるとお思いなのですか、セルティー王女。お気楽にもほどがありますねぇ~。」

と、レナは言うと、自らの左手に火を発生させる。それは、すでに炎と言ってもいいほどの強さと大きさにすぐになるのであった。

 そのレナの炎ははっきりと観客席に誰も確認できるほどの大きさとなっていた。そう、ランシュにも目でわかるぐらいには―…。

 レナは続けて、

 「なら、私が戦って、勝手―…、私の言ったことを証明するまで!!」

と、今度は強く言う。その声の強さは、意志をはっきりさせている者、信念を強くもっている者が出す言葉を感じさせるほどだ。

 そのレナの言葉を聞いたセルティーは、考える。

 (……何を考えている。わかりませんが、注意していくこと、油断だけは絶対にしないこと。)

と、心の中でセルティーは思いながら、

 「私の方が正しいと証明されるだけです!!」

と、はっきりとした声で言う。それは、セルティー自身がレナのさっきの言葉に対する威圧に負けないようにするために、声を大きくして言うのである。もう、セルティー自身もレナを油断させるというよりも、気持ちで負けたくないという無意識の感情がそこにはあった。

 そして、レナは、セルティーの気配を感じる方に体を向け、左手に展開した炎をセルティーに向かって放つ。

 「これでも喰らいなさい!!!」

と、言いながら―…。

 レナから放たれた炎は、真っすぐにセルティーに向かって行く。速さはそこまではないが、セルティーは動くことはできなかったのだ。

 ゆえに、セルティーは、何もすることができずに飲み込まれていくのであった。そう、燃やされてセルティー自身の命を奪うかのように―…。

 「きゃああああああああああああああああああああああ。」

と、叫び声を言ってしまうのだった。そう、燃やされるということの恐怖のために―…。

 そんな様子を見ているレナは、もしも、幻以外の天成獣の属性をあやつっている者であれば、この様子に快楽というものを抱くのであろうが、そうはなるわけがなかった。レナは、今、自らが戦っている相手の天成獣の属性は幻で、レナの油断を誘っているのだから―…。こんな人を燃やしているのを見ても、快楽も興奮も抱くことすらできない。いや、不快感しか感じないのだ。


 数分の時間の中で、セルティーは燃え尽きてしまった。

 セルティーと思われる体であったものは、真っ黒となっていたのだ。

 身につけていた服や武器とともに―…。

 それは、もしこの場に会場にいる者がレナと同様の映像を見る幻をかけられているのであれば、多くとはいえないが、その光景に吐き気を催していたことであろう。

 しかし、そうではないし、セルティーのそこまでの範囲で幻をかけているのではない。範囲としては、精々、四角いリング全域といったところであろう。

 ゆえに、観客も何が起きているのか、わからないように見ているのだ。たぶん、解説がないとわからないぐらいには―…。

 レナは、目の前の焼き焦げたセルティーを見る。いや、セルティーであったものを見ているといったほうがいいかもしれない。もし、現実に体全体が焼かれたことによって黒くなったのであれば、生きてはいないであろう。

 レナは、

 「はあ~。本当に芸がないわねぇ~。それに最初の時に言い忘れていたことがあるけど、人は焼かれると最終的には骨しか残らないからそこまで再現しないと無理よ。」

と、言う。そう、さっきまで忘れていたことを含めて言うのだ。セルティーは、体の形を保ったまんま黒焦げの幻を相手に見せていたのだから―…。

 そして、黒焦げが卵の殻から雛が(かえ)るように、ピキッ、ピキッと音がなり、ヒビがはいるのであった。そう、孵化(ふか)のようだ。そして、黒焦げは卵の殻のように、雛が孵ると思わせるレナが見ている目の前の光景によって、欠片となって落ちていくのだ。そこからは、服を纏い、武器を構えているセルティーの姿が現れるのである。

 「幻ってそんな、ありえないことを見せることもできるのね。」

と、レナは興味深そうに、黒焦げがひび割れて、その中から、セルティーの姿の光景を見て、言うのである。

 「そんなにこれに興味がおありですか。もう一度見られるといいですねぇ~。でも、狙わせていただきます。」

と、言うと、セルティーは今度はレナに向かって行くのである。セルティー自身の武器である大剣を構えながら―…。

 その行動にレナは驚くのであったが、油断はしていなかった。ゆえに、セルティーがどこから向かっているのかがわかっている。目の前から直進して攻めてきているのだ。そこは、さっきレナが炎で攻撃をしたところだからだ。それに―…、

 (まあ、全てが私が予想した展開ではないが、大きなところは私の予想通りで、修正の必要なし。セルティー(あなた)が私の放った炎が進んだ方向から遡って攻めてくるなってね。なら、いけるのよ。さっきの放った炎なんてそのために使ったのだし。)

と、レナは心の中で呟く。そう、レナの狙いはこれであったのだ。天成獣の属性が幻である者を追い詰めるための方法が今完成したのだ。

 「気の毒ですねぇ~。セルティー王女は。そろそろを見せることにしましょうか。私の()()を―…。」

と、レナは挑発するかのように言うが、最後の「本気」あたりからは、声を低くし、完全にレナ自体が本気になっていることを相手に伝わるように言う。そう、もうセルティーは、手も足も出せないほどの実力を出すというような風に―…。

 「一体何を!!!」

と、セルティーは言いかけると、すぐに、自らが見て右横へと避ける。避けなければ死という結末を迎えていたかもしれない。

 そう、さっきまでセルティーのいた場所、レナがさっき攻撃した炎が通ったところに再度、火が出現したのだ。これは、すぐにでも炎となり、炎の壁と思われるほどになっていた。

 そして、この炎は、四角いリングを覆うように拡がっていくのである。四角いリングの端の形になるように―…。さらに、炎は、あちこちに壁に近いかたちで形成されたのだ。

 つまり、セルティーは四角いリングからもう逃げ出すことができなくなったのだ。

 「これが私の本気。もうセルティー王女、あなたの余裕ぶった言葉ももう出すことはできないでしょう。」

と、レナが言い終えるとすぐに、セルティーが、

 「まさか!!!」

と、驚くように言う。いや、驚かずにはいられなかったのだ。レナの狙いをセルティーが理解したがゆえに―…。

 「そう、いままでの攻撃を含めて、ずっと考えていたのよ、そして、ここは四角いリング(このフィールド)を外に出たら負けとなる。だからやりやすかったの。ランシュが企画した(この)ゲームのルールと、そのフィールドの範囲によってねぇ―…。」

と、レナは言う。そう、レナの狙いとは、四角いリングの縁に沿って、自らの炎で覆い、外へと逃げられないようにし、全範囲で攻撃しやすいようにすることであった。そして、四角いリングの全てを炎の海にして、セルティーを燃やし尽くそうとしたのだ。

 レナは、続けて、

 「火に―…、屈しなさい!!!!!」

と、最大限の自らの出せる声の限界の声を出すのだった。自らの勝利がすぐそこまで迫っていることを示すために―…。


 【第55話 Fin】

次回、相手の油断を誘って、その隙を突く。それが幻の属性の天成獣を扱っている者の戦い方である。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


第七回戦で、第60話はゆうに突破すると思います。リースの章はまだまだ続くと思います。

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