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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第54話-3 勘違いしている人には、冗談が通じないことがある

前回までのあらすじは、タイトルそのままでした。それでも、すべてにおいて解決することはなかったですが―…、一応の解決をみたのであった。クローナの冗談が瑠璃に通じなかったことですよ。詳しくは第54話-2を参照してください。

 時は戻る。

 時間にして、だいたい第五回戦から第六回戦の間。

 場所は、リース郊外のランシュがいる場所。

 ランシュ直属の十二の騎士が集められ、第七回戦から第九回戦における瑠璃チームと戦うチームを決めた時のことである。

 その決める過程の出来事だ。

 ランシュは、

 「俺がそれぞれどの回戦にでたいかって聞いていくから。希望しているのに手を挙げるように―…。」

と、言う。第七回戦から第九回戦に出場するチーム決定がまるで、幼稚園、保育園、学校などにおける何か物事を決定するときの方法になっていた。作戦だとか戦略だとかそんなのお構いなしに―…。

 (ランシュ様。もうこれ~、適当にやってませんか。第一回戦や第二回戦のような策というわけではなく、もう~、最後の第十回戦の時の策しか考えてないですよねぇ~。もう少し、まともに考えてくださいよ~、勢いって奴で、実力差なんて簡単に埋められてしまうのですから~。まあ、力の違いを見せつけて、油断せず戦うことのできるところは、勢いとか関係ないですが―…。)

と、ヒルバスが心配しながら心の中で思うのである。ランシュが完全に、自らが率いるチームが戦う第十回戦のことしか考えていないと、経験上からヒルバスにもわかったことだ。同様に、ヒルバスの予想したランシュの今の考えは、正確さでいえばかなり高いものであった。

 (ランシュ様は油断しているというよりも、楽しんでいるといっていいほどです。目的は忘れていないと思いますが―…。)

と、続けて、ヒルバスは心の中で思いながら、口に出さないようにする。

 「では、第七回戦に出場したいのは―?」

と、ランシュが、ランシュが率いる以外のチームの中の十二の騎士に尋ねる。そう、ランシュ自身が率いるチームはすでに第十回戦という最終戦に出場することは確定しているので、ランシュのチームに属していないチームの十二の騎士に聞くのである。

 (私は―…、第七回戦というのは却下ね。はやめに出場するのはいいが―…、十二の騎士と瑠璃(相手)チームの対戦を直接見ていない以上、実力を完璧にはかることはできない―…。ここは、誰か第七回戦に出るっていうのを待つしかないね。)

と、イルターシャは思うのである。それは、自らが最初に瑠璃チームと戦うにはリスクが大きすぎると判断したからである。戦うに当たっては、それなりに情報というものが必要であり、実力がどれくらいかを完全に把握しておく必要がある。そう、第六回戦では、礼奈やセルティーが試合に出なかったので、詳しい実力を直接見ることができなかったのだ。ゆえに、それを確認したうえで、どう戦うのかを考えてから、出場したいのだ。

 一方で、

 (七回戦ねぇ~。どこでもいい。とにかく、瑠璃(あいつ)に復讐できれば―…。)

と、瑠璃を成長させたような女性が心の中で思う。そして、自らが属しているチームが出場したいと思う試合に対して、手を挙げるだろうから、自らは、結果にのみ注視するようにした。


 そして、数十秒の時間が経過した。

 その中で、誰も手を挙げていなかった。

 「う~ん、いないとなると、俺の方で決めないといけなくなるか。いや、先に第八回戦と第九回戦についての希望を聞いた方がいいか。」

と、ランシュは、さっさと決めてくれよという感じを若干ではあるが、それをだしながら言うのである。

 ランシュがさっきの言葉を言って、数秒の時間が経過した時、一人の人物が手を挙げた。

 その光景は、この空間にいる誰もが気づいた。気づくであろう。最初にその手を挙げたものに気づいたときに、「お~」という、弱々しく流れるように感じさせる声が聞こえ、その声に反応した人がしだいに気づいていくことによってである。ちなみに、最初の声を出した者は、弱々しく流れるような声であったが、それは驚きと呆然という二つのものが混じったゆえのものであった。

 ランシュは、その人物に向かって、

 「レラグ。お前のチームが第七回戦の出場するのか。」

と、疑問に近いように(かし)げながら言う。

 この手を挙げた人物であるレラグは、羽衣のようなものを両腕から手にかけて纏わせているイケメンである。

 「はい、ランシュ様。」

と、レラグがランシュの疑問に答える。

 「まずは、私が様子を見る、いや、討伐のための戦いをするのがよいでしょう。」

と、レラグは続けて理由を言う。

 その理由に関して、ランシュは、そこまで強くは聞いていなかったし、理解する気もなかった。むしろ、レラグが手を挙げて第七回戦の出場を申し出てくれたことの方で、頭がいっぱいになってしまっていたからだ。そして、ランシュは心の中で本当に感謝しながらも、

 「ありがとう、助かるよ。」

と、言葉にしてレラグに感謝の意を述べるのであった。

 「いえ。」

と、レラグは簡単に返事をすると、手を下げるのであった。

 「次に、第八回戦に出場したいものは手を挙げて―…。」

と、ランシュが投げやりになりながら言う。すでに、半分、第七回戦から第九回戦の出場チームを決めることに飽きていた。それでも、第七回戦から第九回戦までの出場チームを決めないと、ランシュ自身が企画したゲームを進めていくことができないからだ。そのための責任をランシュは感じているがゆえに、意地になっても決めていこうとするのである。

 (レラグのチームが第七回戦を戦うということか。レラグのチームは六人、瑠璃(相手)チームも六人で同じ。それなら、瑠璃(相手)チームの全員の力を把握することができる。なら―…。)

と、イルターシャは心の中で思う。

 そして、イルターシャは、すぐに手を挙げるのであった。

 「イルターシャか。お前が第八回戦でいいのか。」

と、ランシュは尋ねる。

 「ええ、構いません。」

と、イルターシャはランシュに向かって言う。

 (確実に、第八回戦で倒してあげるわ。)

と、イルターシャは心の中で腹黒い人物のように呟くのであった。瑠璃チーム全員の力を把握し、弱点を探して、瑠璃チームを確実に倒すために―…。特に、心という面で―…。

 「じゃあ、残りの第九回戦は、お前らのチームで決まりだな。それでもいいか?」

と、ランシュが残りの一チームに向かって言う。

 そのチームの代表の一人が答えた。

 「ああ、構わないよ。」

と、中性的な声で言う。この人物は声質は、男声でも女声でも、両方で通じるのではないかと思われるものであったし、普段からその声質であった。

 そして、その人物の横にいた瑠璃に似ている人は、

 (第九回戦ね。まあ~、瑠璃(あいつ)に復讐するよ。瑠璃(あいつ)以外に対戦する気はないし。)

と、心の中で思うのであった。

 こうして、第七回戦から第九回戦の出場チームが決まった。


 そして、しばらくの時間が経過した。

 場所は、リース郊外のランシュいる館の中。

 ランシュは歩いている。ヒルバスを伴いながら―…。

 「ランシュ様。第七回戦から第九回戦に関しては、かなり適当に決めていましたねぇ~。もしかして、瑠璃(相手)チームと戦いたくなったのですか?」

と、少しだけ意地悪そうにヒルバスは、ランシュに尋ねる。

 「……、そうだな。その通りだよ。」

と、ランシュが言う。

 「!!? ランシュ様がデレた。」

と、ヒルバスは驚くように言う。そう、ヒルバスは、ランシュがここでは、気持ちに素直にならず、反発するようなことを言うのではないかと予測していた。しかし、実際に返ってきたのが、素直に認めていることである。瑠璃チームと対戦したいという正直な気持ちを、である。

 「デレたってなんだよ。それに―…、第七回戦から第九回戦までに出場するチームが倒しても構わない。俺の率いるチームのところまで勝ってくれば、確実に、久々に本気を出して戦うことができそうだ。それが、嬉しくて仕方ない。」

と、ランシュは、後半から前半までの冷静な口調から、楽しく、嬉しそうな口調へと変わっていったのである。それは、ランシュ自身が本気で戦うことができるのを待ち望んでいたからである。ここしばらく、本気を出すほどの相手がいなかったからでもある。

 「そうですか。そうなるといいですねぇ~。」

と、ヒルバスは相槌をうちながらランシュのさっきの言葉に頷いた。

 (さて、ランシュ様が企画したゲームがどうなることやら―…。)

と、ヒルバスは心の中で思うのであった。


 第七回戦当日。

 リースの城の門の近く。

 そこには、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドがいた。

 「お~っし、そろそろ競技場の方へ行くぞぉ~。」

と、アンバイドが緩そうに言う。完全に心の中で緩くなっているわけではないが―…。

 「おお~。」

と、クローナだけが勢いよく声をあげる。クローナは、アンバイドの言葉にノリよく返事したのである。理由は、ノリでやってみたいと思ったからという単純なものだった。

 「瑠璃さん。仕込み杖の剣の方は―…。」

と、セルティーが瑠璃に尋ねる。

 「うん、大丈夫。セルティーさんとの剣術の稽古で、何とかうまく剣の扱い方を覚えたよ。それに―…、グリエルの言っていた戦い方もだいぶできるようになったと思うから―…。」

と、瑠璃は言う。そう、セルティーとの剣術の稽古の間に、仕込み杖の剣をある程度ではあるが使えるようになっていた。ただし、剣術の腕に関しては、素人に少しだけ毛が生えたようなものでしかないが、グリエルの言っていた戦い方については、ある程度、ものにすることができるようになっていた。

 「それは、よかったです。」

と、セルティーは瑠璃に安心したように言う。

 「お~い、そこのセルティーと瑠璃(二人)ぃ~。置いていくぞぉ~。」

と、アンバイドの声が聞こえた。

 「では、行きましょうか。」

と、セルティーが言う。

 そのセルティーの言葉に対して、

 「はい。」

と、瑠璃は答える。

 そして、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドは、リースの競技場へと向かって行った。


 時間が一時間ほど経過したのだろうか。

 場所は、リースの市内にある競技場。

 今日、ここでは、ランシュが企画したゲームの第七回戦が行われることになっている。

 そのゲームに参加しているのは、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドの瑠璃チームである。

 そして、瑠璃チームの相手も今はここにいないが、じきに来ることであろう。そう、ランシュと十二の騎士と話し合って決められたレラグが率いるチームが―…。

 観客席の貴賓席では、

 「今日から、十二の騎士が率いるチームが登場するわけだ。俺の直属の部下がなぁ~。フフフフフフフフフフフフフフッ。楽しみだぜ~。」

と、ランシュは、満面の笑みで言う。

 それを見たヒルバスは、

 「ランシュ様、楽しみにするのもいいですけど、試合に関しては、観戦している以上、しっかりと邪魔をしないようにしてください。」

と、注意するかのように言う。

 「邪魔はしねぇ~さ。俺の楽しみのためになぁ~。それと、イルターシャが今日もここにいるとはなぁ~。」

と、ランシュは、なぜか貴賓席に今日もいるイルターシャを見て、不思議そうに言う。

 「ランシュ。私は~、次の第八回戦で戦う瑠璃チーム(彼ら)のメンバー全員の実力がどれぐらいかを把握するためにここにいるの。わかる~。」

と、イルターシャはゆっくりと言う。そこには、色香というものを感じさせる喋りであった。

 「わかるが―…、六回戦でもそれはできただろう。」

と、ランシュは疑問に思いながらイルターシャに尋ねる。

 「わかってないわねぇ~。相手のデータというものは、多ければ多いほど原則としてはいい。だけど、第六回戦では、四人のチームが瑠璃チーム(彼ら)の相手だったわけだよねぇ~。つまり、残りの二人に関しては、まだ実力が未知数なのよ。それに―…、レラグの率いるチームは六人だから、全員の情報がわかるってわけ。そうすれば、第八回戦でどうすればいいか対策が立てられるのよ。」

と、イルターシャは、ランシュに理由を細かく説明する。

 「そうか。まあいい。好きに分析していけばいい。」

と、ランシュは半分呆れながら言う。

 「ありがとう。ランシュ。」

と、イルターシャは感謝を伝える。

 一方で、中央の舞台では、すでに、瑠璃チームが到着していた。

 すぐにでも試合をすることが可能な状態に瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドはなっていた。

 そして、足音が聞えてきた。

 トントン、と。

 これは、決して釘を金槌で打つような音と、はっきりと区別することができるであろう。現実に聞きさえすれば―…。

 そして、中央の舞台に瑠璃チームの相手であるレラグ率いるチームがその姿を現わすのである。

 レラグ率いる六人のメンバーを擁するチームが―…。


 【第54話 Fin】


次回、燃える!!

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


第55話も分割することになりました。

ここから第七回戦です。そろそろ、リースの二年前の事件と、ランシュの過去編の話数扱いにならない話しを入れていく予定になると思います。後者は第八回戦以後の予定となっています。予定は変更されることもあるので、ご了承ください。

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