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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第54話-2 勘違いしている人には、冗談が通じないことがある

前回までのあらすじは、瑠璃は修行から逃げるように抜け出しました。

 ~松長瑠璃 View~


 私は逃げていた。

 それは正しくないかもしれない。

 実際は、逃げ出すようにして自分部屋と向かっている。

 だって、だって―…、クローナが礼奈のことを、「礼奈に触れられて、傷物にされたから~、責任をもって私をもらって!!」って、告白じゃない、それ――――――――――!!

 女の子同士の恋愛は、悪くないよ。むしろ、いいですよ。いいんだよ。

 でも、でも―…、それでも礼奈には李章君という人がいるから。

 いるから。いるから。ダメなんだよ。絶対に。

 その後、どうして、部屋に戻ったのかは、記憶になかった。記憶する暇がないほど、クローナの言葉を考えさせられていたんだと思う。


 ~松長瑠璃 View 了~


 一人の少女は走っていた。

 一人称で気持ちをはっきりさせたほうがいい。第三者が語るよりも、より少女の気持ちが伝わりやすいであろう。

 だけど、少女の気持ちは、本当という面では語弊が存在する。

 それは、少女の本当の気持ちが嫉妬や、思いやぶれた悲しみそれなのである。

 そして、少女、いや、瑠璃は勘違いをしていた。

 礼奈と李章は付き合ってはいない。それに、クローナが礼奈に自身をもらってといったのは冗談でしかない。

 それを瑠璃は理解することができなかった。礼奈の李章に対する呼び名が、李章君から李章に変わっていたのだから―…。それが、瑠璃の思考を麻痺させるのには十分であった。そのことよりも、瑠璃のその時に思い出した李章と礼奈のあの日のことに、礼奈が完全に気づいて後悔するのは、また後のことである。

 瑠璃は、その後、リースの城の中で働いている使用にも気づかないぐらいに心の中で悩みながら、本能的とでも言っていいかもしれない、帰巣本能でもあるのではないかと思わせるほどに、自らの部屋へと戻っていったのである。


 場所は、リースの城の中庭。

 さっきまで、瑠璃はここにいた。

 瑠璃が走り去っていたのを見た李章、礼奈、クローナ、セルティーはそれぞれ見ることしかできなかった。

 さらに、アンバイドは最初こそ、見ていたが、どうでもよくなったのか空を見上げていた。

 (瑠璃さん、どうしたのだろうか?)

と、李章は心の中で思うのであった。李章としても瑠璃のことについては、とても心配であった。だけど、李章は気づかないだろう。瑠璃の本当の気持ちを―…。李章もまた、女の子の気持ちの理解に鈍い一人の男の子にすぎないのだ。それでも、李章は瑠璃に対する恋心があるがゆえに、心配する気持ちを強くさせることができていた。

 (瑠璃? 冗談なのになんで、怒って―…。あっ!! そういうことかぁ~。あちゃ~。)

と、クローナは心の中で思うであった。最初は、どうして瑠璃が怒ったのか理由がわからなかったが、途中でクローナは瑠璃がどうして怒って、逃げるように去っていったのかの理由がわかって後悔した。冗談でもするのではなかったと思いながら―…。

 (後で、瑠璃に謝っておこう。)

と、クローナは心の中で呟くのであった。反省しながら―…。

 (瑠璃さんは心配ですね。何かあったのは事実でしょう。今の私ではどうすることもできないでしょう。もしも、夕食の時に食堂の方に来なければ、ニーグかロメにでも瑠璃さんの部屋へと食事を運ばせることにしましょう。だから、今はいつも通りを心掛けないといけません。瑠璃さんに対しては―…。)

と、セルティーは心の中で考えるのであった。セルティー自身が関われるのは、決してないと思っているし、現実そうなのである。ゆえに、可能性として慰めることよりも、いつも通りでいることのほうが重要なのではないかと考えていたのである。

 (瑠璃がどうして、怒って出ていった理由はわからないが、完全に俺の手に負えることではないな。本人同士での解決が一番かもしれない。しかし、こっちに頼ってくるのであれば、ある程度は相談にのって、解決には協力するという方法が一番だろう。何もわからないうちに、いくのも危険だけど、遅くなりすぎるのも危ないからな。)

と、アンバイドは心の中の状況で冷静に考えるのであった。第三者のように、関係ないと思うことで、冷静にかつ範囲を広くして、よりよい答えを得るような考えをすることができたのだ。ただし、アンバイドは、この瑠璃が怒って逃げるように走っていったことの原因に積極的に関わっていこうとは思わなかった。アンバイドは過去の経験から、自らがうまくできないことと、女性との関係で苦労したことがあるからだ。アンバイド自体が、プレイボーイといわれるような人物ではなく、愛した人との関係で、一回もしくはそれ以上に似たと思わせるような経験があったからだ。

 (瑠璃―…。一体どうしたの?)

と、礼奈は瑠璃のことを特に心配しているのである。たぶん、今、リースの城の中庭にいる人々の中で一番であろう。そんな礼奈も、重要なことには気づいていなかった。李章と礼奈が真夜中に、一緒に話しているのを瑠璃が見てしまっているのだ。その光景の中で、李章と礼奈が顔が接触したような状態を瑠璃が勝手に二人がキスしている瞬間であると勘違いしてしまったのだ。それを知らない礼奈と李章、そして、李章の相談にただ乗っていただけだとということを知らない瑠璃の双方の勘違いは、リース以後の続くことになるのであった。その後、いくつかの場面で、瑠璃が李章に対してトキメキ、ドギマギしようとも―…。


 ~松長瑠璃 View~


 私は今、自分の部屋にいます。

 どうして、なんて思うかもしれないよね。

 クローナが―…、あんなことを言うから―…。

 礼奈にもらって、って。

 そんなこと言っちゃいけないよ。

 礼奈には、李章君がいるのだから―…。

 なんか、知らないけど、涙が―…。

 涙が出てきて、出てきて止まらないよ。

 でも、わかっているんだ。自分が悔しいと思っているのが―…。

 礼奈が、李章君のことを好きだと思わせるような様子を探して見つけられなかったことは、李章君の方から―…。

 ありえるかもしれない。李章君は、あんまり表情を変えないから―…。

 やっぱり悔しいよ~。

 泣き続けながらも、私は思うのです。

 二人のためなら仕方ないよね。

 誓ったじゃない。二人の恋愛に気づかない馬鹿な私でないと―…。

 私の中で、悔しい、奪ってやりたい、という気持ちはあるけど、ちゃんと抑えないと。

 そうよね。私だけが苦しい思いをしていれば大丈夫だから―…。

 そして、今は恋で悩むよりも、現実世界(私たちの世界)の石化を終わらせることに集中しないと―…。

 私は、そのために異世界(ここ)にいるのだから―…。

 この時になって、私の涙はすべて止まっていたのでした。


 ~松長瑠璃 View 了~


 時は流れ、夕方から夜のはじまりの頃。

 ここは、リースの城の中の食堂。

 今は、ちょうど、食事の準備ができていたのだ。

 そこには、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドが修行を終えてきていたのだ。食事をするために―…。

 瑠璃の姿は、見えなかった。

 (瑠璃さん、いませんね。それなら―…。)

と、セルティーは、食堂に瑠璃がいないので、近くにいるメイドに尋ねようとする。食事を瑠璃の部屋へと運ぶように、と。

 そして、瑠璃がいないことには、ここにいる誰もが気づいていたことだったのだ。気づかないほうが無理なことかもしれない。そうに違いない。

 「あの~、すみまー…!!」

と、セルティーが言いかけたところで、食堂にいた誰もが気づくのである。それぞれに時間差があったのは事実であり、気づいた人の表情や視線に気づき、その視線に向けることによって気づく者もいた。

 そう、瑠璃が食堂に来たのである。

 瑠璃は、食堂に来て、

 「修行を抜け出してしまってすいませんでした。」

と、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドに向かって言い、頭を下げたのである。

 その瑠璃の行動に、李章、礼奈、クローナ、セルティーは驚いてしまった。

 頭を上げた瑠璃は、

 「つい、クローナの言葉にわけもわからずに頭にきて、逃げ去るようにしてしまって―…、それに、みんなに心配をかけてしまって―…。」

と、瑠璃は告白するかのように強く言うのである。その言葉、好きな人の目の前で自らの好きな人を言ってしまった後に、勢いで告白するかのようなものであった。しかし、これは、瑠璃による李章への愛の告白ではないのだけが事実であるが―…。

 そして、さっきの瑠璃の言葉を聞いたクローナが、自らが座っている席を立って、瑠璃のところへと向かって行った。

 瑠璃の目の前に辿り着くと、

 「ごめん。あれは、冗談で言っただけだから―…。これからは、冗談でも瑠璃に冗談だとわかることを言うことにするから―…。」

と、クローナは言って、瑠璃に頭を下げる。

 その様子を見て、瑠璃は今度はビックリして、

 「いやいや、悪いのは私のほうだから。」

と、今度は瑠璃の方がクローナに向かって頭を下げるのである。

 (それでも、クローナは冗談を言うことはやめないのね。)

と、瑠璃はこの時、心の中で思うのであった。

 同様のことを、礼奈とセルティーが思っていたという。

 一方で、李章は、「?」を頭の上に浮かべていたが、何かが解決したのだと思い、ほっとするのであった。また、瑠璃さんが元気になって戻ってきたことに対して、喜んでいたのである。李章はたぶん、瑠璃の本当の気持ちを知るのには、時間がかかりそうだ、と礼奈なら思っているだろうし、現に思ってもいた。

 アンバイドは、

 (まあ、何かが解決したのだろう。それはそれでいい。完全に解決をしていなくても―…。俺には、女子の気持ちなんてわかりはしないのだからなぁ~。コロコロと変わる女心なんて―…。)

と、心の中で呟くのであった。

 そして、

 (いつまで謝りあっているんだ。瑠璃とクローナ(あの二人)は―…。このままだと、食事が冷めてしまうじゃねぇか。リースの城(ここ)の飯は美味いのによぉ~。)

と、アンバイドは、クローナと瑠璃による謝り合いに対して、さっさと終わらせてくれと思うのであった。美味しい食事を美味しいまま食べたいがために―…。


 数分後。

 瑠璃と礼奈が謝り合いを終え、それぞれの席につく。

 瑠璃の右隣には礼奈がいた。

 礼奈に向かっても瑠璃は、

 「ごめん、急にいなくなって―…。それに、あんな言い方して―…。」

と、申し訳なさそうに言う。瑠璃にとっては、あの場面は、礼奈に対して申し訳なく思っていたのだ。心の本心として―…。

 それを聞いた礼奈は、

 「ううん。気にしてないよ。それより、折角の食事なのだから、楽しみましょう。」

と、瑠璃に向かって言う。

 そして、

 「うん、そうだね。」

と、瑠璃は言った。

 こうして、一つの解決(?)されて、夕食の時間となったのだ。

 決して、全てが納得いくものということではなかったが―…。


第54話-3 勘違いしている人には、冗談が通じないことがある に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


女性の気持ちの描写はなかなかうまくいきません。さらに、当初の予定になかったシーンが多すぎて、書くのが大変でした。とにかく、瑠璃と李章の恋愛関係の大きな動きに関しては、第1篇の最終章の前半に一つくると思います。すでに、構想もネームみたいなものはすでに出来上がっているのですが―…。予定通りにいけばですが―…。

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