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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
87/745

第50話-1 装甲は蹴られ、幻覚がいっぱいの人になって現れる(同じ試合には起きないけど―・・・)

前回までのあらすじは、右腕と右手を土で覆ったレガースが李章に向かって攻撃してくるのであった。どうなる、李章?

第50話も分割になりました。理由は内容の追加によるものです。

そして、やっと第50話まできました。ただ一言、長かったです。

 レガースは、右腕と右手を土で装甲のように覆うと、すぐに攻撃を開始する。

 対象は李章だ。

 レガースは、

 (ムカつくね。その冷静に澄ましているのが―…。男ならもっと燃えろよ。心の底から――。)

と、怒りながら心の中で言う。レガースは心の奥底から心の闘争本能を燃やしながら戦っているのだ。どんな相手でも―…。ゆえに、李章のような冷静で、ポーカーフェイスで、燃えているものを感じない奴は嫌いなのだ。レガースは、それをも燃料にして、心の奥底で燃やしているのであるが―…。

 しかし、レガースは李章に対する評価を間違えていた。

 それは、李章は、冷静に対処しようとすることを重要としているのであって、心の中の闘志もしくは闘争本能というものを燃やしていないわけではない。そう、心の中では燃えているし、戦いに勝つための気力は、レガースの心の中で燃えているものと劣らぬほどである。ゆえに、李章は、冷静と同時に燃えるものを秘めて戦っていた。

 李章は、レガースの右手によるパンチ攻撃に対して、今度も同様に右足で蹴りを入れようとした。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 李章は、左足を軸にして、右足で蹴りを入れ始める。

 その軌道は、ちょうどレガースの土で覆われている右腕に当たると予測されるものであった。

 そして、数秒もしないうちに、李章の右足の蹴りがレガースの土で覆われた右腕に当たる。それも、レガースの右腕のパンチ攻撃が李章に当たる前に―…。

 ドン、と音がなる。この音は、響くほどのものではなかった。

 李章の右足の蹴りは、土で覆われたレガースの右腕を弾くのであった。進む軌道を逆に戻すかのように―…。

 それを見た李章は、

 (弾きました。)

と、心の中で呟く。さらに、表情にだすことはなかったが、できたという喜びを抱きながら―…。

 一方で、レガースは、

 「何!!!」

と、驚くしかなかった。自らの防御力も高く、ひ弱と見ていた李章の最初の右足の蹴りをレガース自身の盾で防御したことから、その盾よりも強い土で覆われた右腕を弾くなどということがレガースにとってありえなかったのだ。

 そう、レガースの誤りは、李章の力を過小評価し、侮ってしまったということだ―…。

 そして、修正しなければならない。李章の本来の力がどれくらいのものかということを、冷静に予測する必要がある。

 しかし、たぶんだが、冷静さを失いかけているレガースには、それができないことであったことかもしれない。


 【第50話 装甲は蹴られ、幻覚がいっぱいの人になって現れる(同じ試合ではないけど―…)】


 レガースは見る。

 すでにそれが、()()時間で何分経過しただろうか。

 自らの土で覆われた右腕が、弾かれたのだ。ひ弱と思っていた人物に―…。

 ゆえに、

 (くっ……いっ………何が、何が起きたっスか。考えるっス。)

と、レガースは心の中で動揺し続けていた。

 さらに、

 (まさか…、さっきまでの本気ではなかったのか。いや、そんなはずはない。)

と、前の語りで述べたような状態、レガースは李章の本当の実力を正確に予測できないでいた。自らの最初に抱いた先入観によって―…。

 一方で、李章は、

 (ここは、一気に、勝負を決めにいくべきです。緑の水晶も今だと言っている。)

と、心の中で呟きながら、一気に勝負を決めるための行動に移る。

 右足が地面に着いて、すぐに、ほんの一瞬のうち、高速で移動を開始する。

 それは、レガースにとっても目で見えないほどである。

 (速すぎる!!)

と、心の中で、その言葉を漏らすほどに―…、語ってしまったのである。

 レガースは、李章をとにかく目で追おうとする。

 そんなことは、できるはずもないのに―…、である。

 そして、声が聞こえる。

 「あなたの負けです。」

と、いう李章の声が―…。

 レガースは、動揺するように考え始めてすぐに、

 「ガァ…ッ!!!」

と、衝撃が走った。

 そして、衝撃のした腹部を見るために、視線を向ける。

 そうすると、左足で蹴られていたのだ。

 (どっ…どういうことだ。)

と、心の中で思いながら、左足を視線で、蹴った人物の顔を見ようとする。

 それは、レガースも知っているはずだ。知っていなきゃレガースの記憶力に何か問題があるのではないと思ってしまうぐらいだ。

 見ると、そこには、李章がいた。

 (いつの間に―…、攻撃を仕掛けられたことさえ、気づかないなんて―…。ありえない。どうやった?)

と、レガースは心の中で動揺する。せざるを得なかった。すでに、対処することができないぐらいに―…。

 「もう一発、送っておきます。」

と、李章の声がした。

 それと同時に、再度蹴りがさっきと同じ腹部に入れられる。

 「ガァ…!!」

と、レガースは声を漏らす。すでに、レガースは目を白目の状態にしてしまっていた。そう、気絶していたのだ。

 そして、後ろへと、自らの体が倒れていったのであり、後頭部から四角リングの表面にぶつけて―…。

 その様子は、観客にとっても驚きでしかなかった。

 「今、何をしたんだ、李章(あの少年)は。」

 「見えなかった。」

 「蹴りを入れたようだけど、攻撃するまでがあんな速いなんて―…。」

と、言葉にする者もいれば、言葉にすらできずにただ、茫然として見ている者もいた。その中の一人にファーランスが含まれていた。

 (これは―…、決着ですか?)

と、ファーランスは疑問に思うほどであった。

 レガースが倒れるのを見ながら―…、

 (……………倒しました。勝利です。)

と、李章は、自らの勝利を確信するのであった。


 レガースは倒れた。

 気絶したという状態で―…。

 ファーランスもさすがに理解する。レガースが白目をしていたので―…。

 ファーランスは、理解した後は、

 「勝者!! 松長李章!!!」

と、勝者を宣言した。

 そして、観客席は再度、盛り上がった。そのための歓喜の声を響かせながら―…。


 李章が第六回戦第二試合で勝利した頃。

 観客席のなかでも貴賓席では、ランシュたちが何を話し始めていた。

 「どうだ、さっきの試合を見た感じは。」

と、ランシュは、ここに来ている十二の騎士に尋ねる。

 「四回戦のときよりも、強くはなっている。天成獣の力をうまく引き出しているようだ。しかし、まだ、私たちを倒せるほどの実力にはいたっていない。それに―…、自らの武器を使わずに戦うとは、愚かなのかっということだ。もし、武器を使えさえすれば―…、こちらとしてもヤバくなるだろうな。」

と、第二試合前に貴賓席に来たクローマは言う。あくまでも、冷静に―…、客観性を高くもったうえで―…。

 「クローマの言う通りだったら、さっきと潰してしまったほうがいいんじゃない、ランシュ。」

と、クローマの話しを聞いて、李章をはやく倒したほうがいいのではないかとイルターシャは指摘する。

 「李章(あいつ)か。それよりも、あの中で、一番の高い奴を見ればわかるだろう。あいつがアンバイドだ。当たった気を付けろよ。実力は、お前ら十二の騎士と同じか、それ以上だからな。」

と、ランシュは言う。ランシュにとって李章は、そこまでの脅威を感じるものではなく、むしろ、瑠璃チームの中にいて、最強の力を誇っているアンバイドのほうがよっぽど危険と感じたのである。アンバイドの実力を聞いたという意味で知っているがゆえに―…。

 (アンバイド(あいつ)は、絶対に―…。)

と、クローマとともに来たリークは思うのであった。リークはルーゼル=ロッヘでアンバイドに倒され、さらに、自らの召喚した闇の竜を完全に倒されたのである。リークにとって、屈辱でしかなかった。今まで、ランシュには戦闘力で及ばなかったかもしれないが、他の奴には負けないと思って過信していただけに―…。アンバイドとの戦いでの敗北がリークをより自身を強くなろうとさせたのである。そして、実際に強くなったのである。クローマによって付けられた厳しすぎる修行によって―…。それをアンバイドで試したくなっていたのだ。今は、ランシュの命令で、耐えている。だからこそ、自らが参戦する回戦まで生き残ってほしいと願う。自らの手でアンバイドを倒すために―…。

 瑠璃への復讐に燃えていた一人の少女は、

 (許せない。)

と、瑠璃の李章が勝って幸せそうな顔しているのを見て心の中で思うのだった。声に出してやりたいと思うほどには―…。それでも、声にはしなかった。我慢できないほど感情的であったとしても、自らが参加する回戦まで生き残って、自身の手で復讐を果たしたいと思っているからだ。そして、同時に瑠璃の幸せそうな表情、少女にとって幸せを奪った人が幸せのようになっているのは気に食わなかった。自らは不幸なのに、奪った奴が幸せなって―…。そんな不条理が成り立っていいのか、と思うほどに―…。

 (これは、ランシュ様の企画されたゲームも、退屈するものではありませんね。)

と、ヒルバスは、十二の騎士の表情を見ながら思うのであった。ランシュの企画したゲームが楽しくなりそうになってきたこと、自らのとっても楽しめそうなことであるという予感がして―…。


 李章は四角いリングから降りてくる。

 そして、李章は、自らが属しているチームのメンバーの元へと歩いて向かって行く。

 李章が近づいてくると、

 「李章君、勝利おめでとう。」

と、瑠璃は歓喜しながら言うのであった。クローナの時よりも、さらに喜びの度合いを数百倍増しと言ってもいいぐらいに―…。

 「あっ、はい。ありがとうございます。」

と、少し動揺しながら、李章は、瑠璃にお礼のようなことを言う。

 少し離れた場所にいるアンバイドは、

 (李章の天成獣の力が、さらに扱い方を洗練させたのかより、速くなっている。レガース(対戦相手)に対して、勝負を決めることとなった二つの蹴りは、明らかに純粋に瞬間移動に近いものだろう。たぶん、本来は、刀を用いて、一瞬のうちに相手を斬るためのものだろう。それを、瞬間に相手の隙に蹴りを入れることに使うとは―…。あんなことされたら、天成獣のプライドがガタガタだろう―…。大丈夫なのか?)

と、心の中で呟きながら、李章を見る。

 アンバイドは、ある変化を感じた。それは、李章の方からである。

 (何だ。あの禍々しい嫌なオーラの感じは―…、それに殺気も混じってやがる。っと、消えた。まあ、いい。それにしても、李章、あいつは何なんだ?)

と、李章から殺気、一瞬であるけれども、物凄く感じるものであった。瑠璃、礼奈、クローナ、セルティーでは、たぶん気づかないだろう。いや、気づいていたとしても見過ごしてしまうだろう。アンバイドぐらいの実力をもっていて、かつ、少し注意してみないと気づかなかったであろう。李章の心の奥底にいる、李章と似た姿をするものの気配を―…。


 (レガースがやられたか―…。あいつは、力任せなんだよ。)

と、一人の人物は心の中で呟く。レガースを馬鹿にするように―…。

 「後は、お前と俺だけみたいだな―…。」

と、一人の人物とは違う同じチームメイトが声をかけてくる。

 「何だ。ギランドか。で、次は、俺に行けというのか?」

と、一人の人物は、ファーキルラードと背があまり変わらない、さっき声をかけてきたギランドに言う。

 「そうだ。実力的に言っても俺の方がカースド、お前よりも強いからな。」

と、ギランドは、カースドという一人の人物であったものに言う。カースドは、背が小さい人物のことであり、二十代前半と思われる男性で、周囲から背が小さいがゆえに、小馬鹿にされたりした経験を数えれば、きりがないぐらいだ。それでも、天成獣の宿った武器を扱うことができたおかげで、小馬鹿にしてきた奴のほとんどは返り討ちにしたという。実力としては、ギランドよりは劣るが、天成獣の宿っている武器を持つ者の中では、中の上に近い実力を有している。

 カースドは、

 「わかったよ。それよりも、フィールドに倒れているレガースはどうするんだ。俺の力じゃ、レガース(あいつ)をフィールドの外には、運べないぜ。」

と、言う。そう、四角いリングの中では、レガースが李章の蹴りの攻撃によって、気絶していたのだ。それは、現時点においても継続しているのであり、レガースは気絶したまま起きそうな気配を感じない。

 「仕方ない。」

と、ギランドが言って、四角いリングの中へと上がり、レガースの元へと向かう。

 (……無様に負けたか。みっともない。そういう奴はこれでいいか。)

と、李章に敗北したレガースを軽蔑しながら、心の中で呟く。

 そして、ギランドは、自らの体を、瑠璃チームのいる側の方のレガースの近くへと向かった。

 そこに着くと、右足で下からレガースを蹴りあげるのであった。そのために、レガースの体は浮き、ギランドは右手を後ろに構え、

 (よし。)

と、心の中で言って、レガースを右手で殴り飛ばしたのである。

 殴り飛ばされたレガースの体は、レガースの属しているチーム側へと飛んでいく。

 そして、観客席を隔てるところまで飛んでいき、そこにレガースの体がぶつかるのである。物凄い衝撃をさせながら―…。


第50話-2 装甲は蹴られ、幻覚がいっぱいの人になって現れる(同じ試合には起きないけど―・・・)に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。

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