第48話-2 登場 十二の騎士
前回までのあらすじは、第六回戦第一試合が開始されることになる。クローナの対戦相手であるファーキルラードの異名、「長突」とは何を意味するのか。
今回で、第48話は完成します。
ファーキルラードは言う。
「私の力を見せてしんぜよう。」
と。
そして、ファーキルラードは、右手でのみ持っている武器である刀をクローナに向かって構える。刀の先をクローナに向けて―…。
ファーキルラードの持っている武器がそれを覆うかのように光り始める。
(光った。)
と、クローナはその光に対して驚くのである。
それに回避するためにできる時間を数秒消費してしまった。
「ハアアアアアアアア―――――――――――――――――――――――――。」
と、ファーキルラードは叫ぶ。
ファーキルラードは自らの武器を前に突くようにだす。そして、その武器を覆っている光が急激にクローナに向かっていく、そのように見える。
それを見たクローナは、自らが見て左手に持っている武器を、光が向かっている場所に横にわずかに振る。
ほんの一秒もしないうちに、キンという金属同士が接触したかのような音がなる。
クローナの武器とファーキルラードの光が触れたのだ。ファーキルラードの武器ではなく―…。
ファーキルラードは、武器に光が覆われており、光がクローナに向かって伸びていたのだ。つまり、ファーキルラードは、武器を通して、自らの光の属性を押し出していたのだ。それに触れるようにクローナが自身の武器で受けたため、クローナの体に当たることはなかった。
「武器が伸びた!! あれじゃあ、攻撃がしにくい!!!」
と、その様子を見て、瑠璃は驚くように言う。
「あれが、長突といわれる所以だな。ファーキルラードの武器自体は伸びていない。むしろ、それを覆っている光が、武器を通して、前へと直線に伸びていく。その長さが一瞬で数メートルにも伸びるからこそ、長い槍で突かれているように見えることから長突っていう異名がつけられた。だが、避けられないわけではない。さっきのクローナのように、ファーキルラードの武器の直線方向に位置するところを防御さえすれば防げるし、かわすことも一つの策だ。とにかく、ファーキルラードに攻撃を当てるためには、あの光で覆ってくる攻撃をどうにかして、近づかないといけない。」
と、アンバイドは言う。その言う時は、解説口調というよりも、強い相手に対して述べるような慎重で、冷静なものであった。
それを聞いた瑠璃は、
「とにかく、あの光の攻撃をどうにかしなきゃ攻撃すらできない。でも、クローナなら風の攻撃があるから―…、大丈夫だよ。」
と、クローナがファーキルラードに勝つことを確信するかのように言う。瑠璃の言葉はそうであるが、心の中ではクローナの勝つという確実なものに不安を抱いていた。ファーキルラードがクローナを倒すという可能性を完全に消しさることができていないからだ。
「でも、風で攻撃するにも、あの光の攻撃は攻撃への移行とその後においてもかなりのスピードだから、クローナが攻撃を準備する時間すら与えてもらていない。」
と、礼奈がアンバイドの言葉を聞いて、近くに来て言う。
「そうだな。光も風の攻撃に対するスピードは速いほうだ。ただし、攻撃への移行という面では違いがある。風は起こさなければならないので、攻撃への移行には時間がそれなりにかかる。大きな攻撃をするのならなおさらだ。一方で、光は、あのように攻撃への移行スピードは、やり方によって差はあるが、物凄い速さですることは可能だ。そして、ファーキルラードは、速度がある方みたいだな。そうなってくると、風の属性は、不利になってくる。できることとすれば、ファーキルラードのあの光の攻撃を防ぎ、ファーキルラードにあの光の攻撃は意味のないことだと思わせるしかないだろう。そして、相手が攻撃への移行を遅くするやり方へと誘導していくしかない。しかし、クローナは、その条件を満たす必要はないかもしれないな。」
と、アンバイドはファーキルラードの天成獣の属性とクローナの天成獣の属性について説明する。それに加えて、ファーキルラードへの対処を示すが、最後にクローナがその対処しなくてもファーキルラードへの対処が可能であることを言う。
一方で、ファーキルラードとクローナの試合は、ファーキルラードが伸ばした光を消滅させる。ただし、自らの武器には覆ったままで、武器の先端より少しだけを残したそれ以外の部分の光に対してである。
ファーキルラードは、すぐに、自らの右手で持っている武器を右腕を後ろにさげることで、次の攻撃のために構える。
その動きは、さすがに、クローナでも目で追えるものであった。目が良く、中央の舞台の近くの観客席で見ている観客には、その動きが見えていた。そう、普通の人でも見える速さで次の攻撃への構えへと移行したということである。
(もう一発。)
と、ファーキルラードは心の中で言う。それは、次こそ当てる、そして、当たらなければ、次の手段を講ずることを頭の中に入れてのことである。
そして、ファーキルラードは右手に持っている武器を、突くように前を直線にして右腕を前へと伸ばす動作をする。
それと同時に、ファーキルラードの武器は、直線方向に再度、光の部分を刀の部分を延長させるかのように展開し、前に引っ張られていくように伸びるのである。
前の攻撃と同様であると感じたクローナは、片手に持っている武器で再度、相手の攻撃がくる直線を予測し、それに防御しようとしている武器が接するようにする。自らの体は、武器を持っている手以外は、ファーキルラードの直線に入らないように避ける。
1秒も経過しないうちに、ファーキルラードの武器とクローナの片手に持っている武器が衝突する。再度、金属音のようなものをさせながら―…。
そして、ファーキルラードは、自らの武器をクローナの武器と接している面から離れるように離す。そう、ファーキルラードから見ると、右側へと動かすのである。今度は光を消滅させることなく―…。
(!!! 何をしてくるつもり。)
と、クローナは心の中で警戒する。クローナは、ファーキルラードが自ら攻撃を離したことに対して、不信に思った。何かを仕掛けてくるのではないかと―…。
そのクローナの予測は、当たることになる。
ファーキルラードの武器は、覆われている光の先が、徐々に伸びていく。その時、光が伸びるのが始まると同時に、ファーキルラードから見て左に90度を直角に曲がり、少し進んだ後、再度左に90度直角に曲ったのである。そう、再度、クローナ目がけて向かってきていたのである。
「!!!」
と、クローナはすぐに後ろへ向いて気づいたが、それはクローナにとって攻撃を回避するには遅すぎると自身が感じるものであった。
クローナは、自身から見て左へと再度避けるのであったが、ファーキルラードの武器を覆っていた一部分が、クローナの右腕の一部を掠った。そのため、掠った部分から血が染み出ていた。それは、すぐに重傷となるものではないほどであった。
クローナは、すぐに、ファーキルラードのいる方向を向く。その目の前には、ファーキルラードがいた。
ファーキルラードは、すぐに光で覆っている部分を自らの武器の先の部分以外の光を消滅させる。
「私の光による突きを防がれるとは―…。私の面子が丸潰れだ。あまり人には見せない直角回転させて再度突くという攻撃でも当てることはできたが、ほとんどダメージを受けていない。こうなったら、幾つか、人にあまり見せることのできなったのを披露しないといけなくなった。そんな相手に会えて、私はとても、嬉しい。では―…。」
と、ファーキルラードは自らの攻撃を防がれたり、受けても弱かったりしたことにガックリをするけれども、それ以上の攻撃ができるという面で、興奮もしていた。クローナの実力が、ファーキルラードにその手を使わせるという選択をさせたのだから―…。
そして、ファーキルラードは、再度、直線に進めるかように武器を光で覆って、それより先は、光が刀のように、伸びるかのように形成されていった。長さにして5メートルぐらいだろう。
それを見ていた瑠璃チームのアンバイドは、
「おいおい、向きを変えて攻撃する手もあり、さらに、まだ手があるのかよ。実力者って言われてもおかしくはないし、異名もつくわけだ。」
と、ファーキルラードに感心する。
「クローナの方は、怪我したみたいだし―…。ファーキルラードに勝つことはできるのだろうか。」
と、瑠璃は心配そうに言う。ここにきて、ファーキルラードの攻撃が突きでも応用的に使い、さらに、他にも何かあるのということを知って、クローナが怪我で勝つことができるのか心配になっているのである。
「こうなってくると、クローナが何かの秘策をもっていることを祈るしかないよ。」
と、礼奈も心配そうに言う。それでも、クローナがファーキルラードに対処する何かを持っていることを信じている。そのため、瑠璃よりかはいくぶんではあるが、不安は低いものであった。
(ファーキルラード。あいつは、強者の部類だ。突く以外の戦い方ができるのであれば、間違いなく。俺が見てきた中で、今のクローナとほぼ互角の実力があるだろう。ほんの少しの失敗が第六回戦第一試合勝敗の分岐点となる。)
と、アンバイドは心の中でそう思っていた。それは、アンバイドの見立てでは、現在のクローナの実力とファーキルラードの実力はほぼ同じぐらいに感じられたからである。ゆえに、ほんの少しの失敗が、勝敗を決する重要な点になるだろうと考えたのである。
一方で、試合の方は、ファーキルラードが、光で伸ばしたものを、今度は、左に向かって横に振る動作をする。そう、クローナをファーキルラードから見て左へと飛ばして四角いリングの外にだすか、もしくは、クローナを横に斬るのかという目的のために―…。
ファーキルラードの攻撃が左から向かってきていることに気づいたクローナは、左手に持っている武器で防御しようとする。
「風」
と、クローナが言うと、左手に持っているクローナの武器を覆うように風が形成された。これは、クローナが二度目の光の突きの後に、準備をし始めていた風である。ただし、左手に持っているクローナの武器のほうでのみであるが―…。
そして、クローナの左手に持っている武器と、ファーキルラードの武器が衝突する。
それは、キンという金属音のような音が鳴り、それは、競技場を越えても音が聞こえるぐらいの大きさであった。
双方の衝突は、威力の面では均衡しているように見える。
(これで押しきってやろう。)
と、ファーキルラードは心の中で思う。そして、押そうとして、力を入れる。
(風の力を接触している面に―…。)
と、クローナは心の中で言いながら、ファーキルラードの武器から伸びている光の部分に接している所に風を集中させる。それと同時に接している所に集中させて、押そうとする。
目いっぱいに力を入れているファーキルラードは、
「はあああああああああああああああああああああああああ。」
と、言葉をでており、それを力に変えて、強く押そうとしている。
このような、双方のこの衝突の結果は―…、数分後に訪れた。
カラン、カランと音が鳴る。金属音のようにも感じられる。
音が鳴ったのは地面であった。それは、落ちてきた物によって、地面に着くときに鳴ったものだ。
そう、ファーキルラードの武器から伸びている光の部分が、クローナの左手に持っている武器と接している所から切られていたのである。そう、クローナの集中させた風によって―…。
なぜ、こうなったのかは簡単だ。ファーキルラードの武器を覆い、かつ伸ばした光は、長さが長く、体積も多く、天成獣の力を十分に発揮したとしても、覆う密度の面では、低くなってしまうのだ。そこに、脆さがでたのである。クローナの風の攻撃は、ファーキルラードの武器の覆って伸びている延長にある部分の一部にだけに集中していたものであったので、その集中している部分の攻撃の威力が高く、ファーキルラードのその部分の一部において、密度を上回っていたがために斬ることができたのだ。
その光の斬られている先を見たファーキルラードは、
「さっきの攻撃には、ビックリした。物凄い風の威力だ。しかし、私の力はまだまだ。」
と、余裕の表情で言う。ファーキルラードにとって、自らの戦い方の手が尽きてない以上、余裕のあることであった。別の手を使えばいいということだから―…。
ファーキルラードは、武器に覆っていた光を一度解除させるように消滅させ、すぐに武器を光で覆ったのである。光は、ファーキルラードの武器である刀の体積を二倍分ぐらいに覆っていた。それもどの面でも満遍なく―…。
(さあ、いきましょうか。)
と、ファーキルラードが心の中で呟くと、走り出し、クローナに向かって行くのである。
【第48話 Fin】
次回、光が覆う、中央の舞台を―…。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。