第4話-2 狩りの時間
分割した第4話の続きです。この話で第4話は完結します。
前回までは、領主の館がじつは、瑠璃、李章、礼奈を狙う罠だった。そして、レクンドの攻撃が瑠璃と礼奈を襲う。
レクンドは、再度、瑠璃と礼奈が自らの一撃を受けた方向へと自ら向けた。
そこは、レクンドの一撃の衝撃を埃もしくは煙のようなものが広がっていた。
そこから人影が徐々にはっきりとしていく。
そして、埃もしくは煙のようなものから、スウッと何かを現れた。
それは、雷である。レクンドへと向かって。
レクンドは自らに向かってきた雷に反応し、回避を一瞬のうちに選択し、そのおかげでレクンドにあたることはなかった。
(この雷は何だ)
と、レクンドは自らに向かってきた雷に対して疑問に思う。
「瑠璃さん、山梨さん」
と、李章は瑠璃と礼奈が生きていることを確信した。
それは、レクンドに向かって雷の攻撃が放たれたことから、そのように判断することが李章にとって、一週間の一緒に修行すれば、容易にわかることだ。
李章のその言葉に、レクンドは、
「俺のあの一撃を喰らって、生きていたのかよ」
と、驚いた。
それはレクンドにとってありえなかった。
さっきも語ったが、レクンドはこの自らの一撃で傷なしでいられたのは領主であるフォルゲン=デン=ベークドだけであった。レクンドはそれを自らの経験で知っている。そう、自らが戦った相手のなかで、この自ら放った一撃において相手がどうなかったについて、簡単に思い出すことで―…。
ゆえに、レクンドはありえないことが起こったので、どうすべきかを考え始める。
一方、シークドは考える。
今、自らがどうすればよりうまく立ち回り、瑠璃、李章、礼奈を倒せるかを―…。そうして、レクンドの攻撃を見ながら、瑠璃、李章、礼奈の弱点を探っていくという結論にたどり着いた。そして、今現在実行中である。
◆◆◆
瑠璃と礼奈が煙のような埃のようなものから姿を見せる。
自らの武器を構えて―…。
場所は、ちょうどレクンドの攻撃を受けたところである。
捕捉である。なぜ実際に瑠璃と礼奈がレクンドの一撃を傷もなく防ぐことができたのか。それは、とても簡単なことである。礼奈がとっさに、自らの天成獣の能力を借り、氷を自分の前へと出し、それを青の水晶で衝撃が来るところで最大限できる範囲で成長させたからである。氷をレクンドの攻撃に対する盾にするために―…。結果、レクンドの一撃で氷は粉々に砕けたがダメージを受けることはなかった。氷が衝撃を防ぎきったからである。
◆◆◆
一方、とある場所。
ふと、立ち止まりながら一人の老女、魔術師ローが考える。
(瑠璃、李章、礼奈ともうまくベルグに関する情報収集をやっているのかの~う。まあ、心配していても今は無駄じゃしの~う。それに、一週間の修行でみたが、瑠璃は、天成獣の能力の使い方に関しては、まあまあかの~う。直線的すぎるしの~う。フェイントとかうまくなかろ~う。礼奈は、あやつは天成獣の能力を操るのがうますぎるの~う。それに、応用の仕方も完璧といっていいかもしれない。じゃが、あの小僧―……、李章は―………)
と、そして、
(あれだけは解放してはいけない。儂の経験からすると――…)
と、李章に関する別の懸念を抱く。
(じゃが、今はそれを考えても無駄じゃ。あれはたぶん、儂では解決できないことじゃからの~う。あの子のときは何とかなったが―………、そうであることを祈るしかないの~う)
と、自らの過去において実際にあったことを思い出しながら、李章に対してある物について不安を抱きながらも、祈ることしかできないロー自身に対する無念さを悔やんでいた。過去の経験の結果という希望から―…。
◆◆◆
場所は、瑠璃、李章、礼奈がレクンドとシークドと交戦中の領主の館。
瑠璃と礼奈がレクンドの一撃を受けた数分が経過していた。
蹴りが一撃入る。
「ぐっ!!」
と、シークドが声をあげる。
シークドに李章の蹴りが一撃入ったのである。
「あまり、効かないぜ」
と、シークドはさらに言う。
シークドは李章の蹴りの攻撃が入り、後退した後、すぐに体勢を立て直し、さらに、強がりに少しだけしか効いていないと思わせようとする。
実際には、効いてはいるが、すぐに自らの攻撃ができないというわけではなかった。
そして、シークドは李章へ向かって走って移動する。
「決める」
と、シークドは言う。
「そうはさせない」
と、瑠璃の声が聞こえ、
「征け」
と言った。
そして、瑠璃は自らの武器である仕込み杖の水晶の部分から雷を一撃分をシークドに向けて放つ。
だが、雷はシークドにあっさりと避けられてしまう。
その間に、
「そうはさせない」
と、言って、礼奈はシークドが瑠璃の雷攻撃で避けたあたりに向かって氷の氷柱状の一撃を放つ。
それを、あっさりと避けるシークドは、自らが目指す目標点である李章のところにつき、足を床面につけ、右腕を構え、
「バイバイの時間だぜ、少年!!!」
と、言って、右手から一撃を撃つ。
そう、李章のお腹にシークドの右手パンチの一撃がきまる。
「ぐっ!!」
と、李章をシークドの一撃にものすごい強さというものを感じている。
これは、李章のお腹あたりの臓器に対して、大ダメージを与えかねないほどに―…。
◆◆◆
一方、礼奈はレクンドと真っ向から対峙していた。
しかし―…、
「そんな氷の攻撃なんて当らなきゃ意味がないぜ」
と、レクンドが礼奈の氷の攻撃を見切りながら避けていく。
そう、礼奈の攻撃があまりにも単調であったからだ。
レクンドは、あまりにも礼奈の攻撃が単調であることを怪しみながらも、礼奈に攻撃をあてるために向かっていく。
そのとき、レクンドは足を滑らせる。もちろん、礼奈の仕掛けた氷にレクンドの足がつくことによって―…。
「!!!」
と、レクンドが驚く。
しかし、こんな氷の仕掛けなどはレクンドにとっては意味のないことだった。
「今だ!! 私が――!!!」
と、礼奈が言うと、
「甘いぜ、少女」
と、レクンドが言った。
そのとき、レクンドは氷の仕掛けたところへ右手に装着したハンマーを向け、一撃を繰り出す。
この一撃は、衝撃となって礼奈に直撃した。礼奈が防御する前に―…。
それは、レクンドは礼奈との距離をある程度縮めていたためである。
結果、礼奈は、レクンドの衝撃を受けて、吹き飛ばされた。
そして―……、その間に、レクンドは礼奈に素早く近づき、礼奈の体に蹴りを一撃与えたのである。
そのため、礼奈は自らの体が宙を舞い、背中から地面へと衝突した。
もし、これが天成獣の力を借りていない人が受けたなら、ここ2か月程度は、自らの体を起こしたり、動かしたりすることはできなかったであろう。
「礼奈!!」
と、瑠璃は礼奈が倒された驚きために、声をあげる。
この様子を見ることだけしかできなかった。瑠璃は、李章がシークドの一撃でダメージを受け、倒されたことに対応していたからだ。
シークドは、
「瑠璃一人になったなぁ~。お仲間のお二人さんは、あのように倒されちまったぜ」
と言う。
「瑠璃一人だけで俺たちを倒すのは無理だせ。2対1、明らかに俺たちのほうが瑠璃よりも強い。ここで終わらせてもらうぜ」
と、シークドが言うと、シークドは駆け出す。
瑠璃のいるところに向けて―…。
「瑠璃、今はこっちのことはいいから早く、李章君のところへ行って!!!」
と、さっき意識を取り戻した礼奈が瑠璃に向かって言った。
「うん、わかった」
と、瑠璃は言って礼奈を置いて李章のほうへと向かっていく。
李章が相手したシークドのもとへ―…。
「へっ。こっちに来るとはなあ~」
と、シークドは言う。
◆◆◆
レクンドと対峙していた礼奈は、瑠璃を李章のところへ向かうようにさせた。
その後、レクンドは、礼奈のところへと向かいながら、
「すまないが、自分の状況を理解して言っているのか、それは―…。理解していたとしても俺のところへ来る前に、瑠璃は俺の一撃で倒されるだけだけどなぁ~」
と、言った。
そして、礼奈のところへとレクンドが着くと、
「あばよ、少女」
と、言って、右手に装着したハンマーを振り落とす。礼奈の命を奪うために―…。
だが―……………。
◆◆◆
瑠璃は向かう。
シークドのところへと―…。
シークドから李章を守るために―…。
シークドは瑠璃に先制攻撃を加えるために、瑠璃の背後近くへと回ろうとする。
瑠璃は敵のいないことに気づき、後ろをつかれた可能性を考え、動きを止めて後ろを向いた。
そうすると、シークドがすでに瑠璃へと攻撃する状態になっていた。
(これじゃ、間に合わない)
と、瑠璃が心の中で言うと、
「これで決まりだ――――――――――――――――――――――――――――――」
と、シークドが叫びのような声をあげる。
シークドはこのとき勝機を確信していた。瑠璃、李章、礼奈を倒すことがこれによって確実に達成されるということを――…。
だが、ここでは達成されなかった。瑠璃に対してレクンドの攻撃があたる前に、レクンドが蹴りの攻撃を受けたのである。
「!!! お前~~~~~~~~~~」
と、シークドは大声をあげた。
◆◆◆
レクンドが右手に装着されているハンマーは、振り落とされた。
だが、礼奈にはあたらなかった。
ハンマーとレクンドの腕は凍りついていた。同様に足も凍っていたのだ。
それにレクンドが気づく間に礼奈が体をレクンドのいる方から離れるように転がって避けた。
「どうなっている。俺は礼奈の氷の攻撃を避けたはずなのに。なぜ、なぜだ!!!」
と、感情を剥き出しにしてレクンドは叫ぶ。
どうして、自らの体の一部が凍ってしまったのかを探りながら―…。
【第4話 Fin】
次回、レクンドとシークドを瑠璃、李章、礼奈は倒すことができるのか。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲内で修正していくと思います。
ちなみに、現実世界石化、異世界冒険編の主人公は松長瑠璃です。『水晶』の本当の主人公は、話が進んでいくとわかってくると思います。
2022年10月19日 以下などを修正および加筆。
①「レクンドは自らに向かってきた雷に反応し、すぐに回避し、レクンドにあたることはなかった」を「レクンドは自らに向かってきた雷に反応し、回避を一瞬のうちに選択し、そのおかげでレクンドにあたることはなかった」に修正。
②「レクンドに向かって雷の攻撃が放たれたことから判断することは李章にとって可能であった」を「レクンドに向かって雷の攻撃が放たれたことから、そのように判断することが李章にとって、一週間の一緒に修行すれば、容易にわかることだ」に修正。
③「この自ら放った一撃において相手がどうなかったについて―」を「この自ら放った一撃において相手がどうなかったについて、簡単に思い出すことで―…」に修正。
④「レクンドはありえないことが起こったにどうすべきかを考え始めた」を「レクンドはありえないことが起こったので、どうすべきかを考え始める」に修正。
⑤「瑠璃、李章、礼奈ともうまくベルグに関する情報収集をうまくやっているのかのう~」を「瑠璃、李章、礼奈ともうまくベルグに関する情報収集をやっているのかの~う」に修正。
⑥「そして、シークドは李章へ向かって走って移動する」の一つ前に、
「シークドは李章の蹴りの攻撃が入り、後退した後、すぐに体勢を立て直し、さらに、強がりに少しだけしか効いていないと思わせようとする。
実際には、効いてはいるが、すぐに自らの攻撃ができないというわけではなかった」を加筆。
⑦「右腕をかまえ」を「右腕を構え」に修正。
⑧「右手から一撃をうつ」を「右手から一撃を撃つ」に修正。
⑨「李章をシークドの一撃にものすごい強いを感じている」を「李章をシークドの一撃にものすごい強さというものを感じている」に修正。
⑩「レクンドは氷の仕掛けてところへ右手に装着したハンマーを向けて、一撃を繰り出す」を「レクンドは氷の仕掛けたところへ右手に装着したハンマーを向け、一撃を繰り出す」に修正。
⑪「自らの体を立ち上がることすらできない」を「自らの体を起こしたり、動かしたりすることはできなかったであろう」に修正。
⑫「シークドは駆けだす」を「シークドは駆け出す」に修正。
⑬「そして、シークドは瑠璃に先制攻撃を加えるために、瑠璃の背後近くへと回ろうとする」を「シークドは瑠璃に先制攻撃を加えるために、瑠璃の背後近くへと回ろうとする」に修正。
⑭「そして、瑠璃は敵のいないことに気づき、後ろをつかれた可能性を考え、動きを止めて後ろを向いた」を「瑠璃は敵のいないことに気づき、後ろをつかれた可能性を考え、動きを止めて後ろを向いた」に修正。