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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第47話-1 勘違い

前回までのあらすじは、セルティーは、ネリワッセに圧倒的な差で負けました。眠そうにしていて、ぬいぐるみを持つおっさんに―…。

第47話は、分割することになりました。当初よりも内容が多くなったからです。

 【第47話 勘違い】


 後ろを向く。

 向かざるをえなかった。

 試合で相手によって四角いリングの外へと味方の一人が飛ばされたのだ。

 そして、観客席と中央の舞台を隔てる壁に一人が衝突した。

 ドン、という衝撃をあげながら―…。

 (セルティーさん。)

と、瑠璃は驚かずにはいられなかった。それでも、瑠璃、いや瑠璃以外の全員がわかっていた。

 ネリワッセとセルティーの間には、明らかに圧倒的な実力差があるということを―…。

 ネリワッセのような実力者を倒さない限り、ランシュを倒すことができないことを理解した。ただし、アンバイドだけはそれを試合の開始前から、ネリワッセを見たときに理解していた。

 衝撃音とともに礼奈は、セルティーの元ヘ走り出す。

 その中で、ファーランスがネリワッセの勝利宣言をする声が競技場の中に発せられた。

 それから、数十秒の時間の経過後、礼奈は、セルティーの元ヘ辿り着く。

 礼奈は、セルティーに、

 「青の水晶」

と、言って、青の水晶を発動させる。ダメージを受けたセルティーを回復させるために―…。

 その間、アンバイドは、ネリワッセのいる方向を見る。そして、四角いリングへとあがり、ネリワッセに近づく。それに、気づいたのか、眠そうにしていたのをネリワッセは止めた。止めざるをえなかった。

 「ネリワッセ(お前)が強いのはわかった。だがしかし、俺よりも弱い。今度、勝負することがあったら、完膚無きまでに倒してやるよ。」

と、アンバイドはネリワッセに対して、挑発するように言う。

 「そう、アンバイド(お前)ごときが俺に、勝てるはずがない。俺はアンバイド(お前)よりも強い、戦いにおいては―…。」

と、ネリワッセは声が大きくはないが、はっきりとした言葉で言った。眠さが完全になくなっていたことにより、である。

 「そうくるか。まあ、俺でなくてもいい。俺が強くしているあの中にいる一人がランシュを倒せばいい。準備でもしてな、ベルグの居場所を教えるための―…。」

と、再度挑発するようにアンバイドは言う。ランシュに勝つことがチームの中の一人ができると確信をもっていた。今、誰ができるかは、アンバイドには完全にわかってはいなかったが、何となく予想することができた。それは、まだ語られることではない。

 アンバイドの言葉を聞いたネリワッセは、四角いリングの外へと向かって歩きながら、

 「フン、そんな言葉は勝ってから言え。勝てればだけどな―…。」

と、ネリワッセは、アンバイドのみに聞えるように言った。ネリワッセは、思っている。瑠璃チームがランシュの率いるチームに今の現在で、勝つことができるはずがないと―…。勝つためには、物凄く厳しい修行が必要であることを―…。

 そして、ネリワッセは、第四回戦でチームとして参加したアルディーとアルゲッシテを手で掴んで、彼らを引きずらせながら中央の舞台から出ていくのであった。完全に目を覚まし、今戦えば、アンバイド以外の瑠璃チーム全員を一撃で倒せるぐらいの実力を感じさせながら―…。

 アンバイドはネリワッセが四角いリングから出ていくのを見ながら、

 (ネリワッセ(あいつ)を今、この現在において倒すことができるのは俺だけだ。これから以後の回戦は、ネリワッセ(あいつ)クラスの実力者がうじゃうじゃ出てくる可能性が高い。そうなってくると、修行のレベルをいっそう引き上げていく必要がある。それに―…、チームとしての実力をどこまでにしていくかを理解させることができた。後は、ランシュとの対戦までに、実力を最大にしていくだけだ。覚悟しておけよ、ベルグ。お前は、俺が必ず―…。)

と、心の中で呟くのであった。ベルグへの復讐を何度も繰り返した覚悟を確認しながら―…。


 リースの競技場の中にある観客席。

 ここでは、試合の終わった後、ランシュは、ネリワッセとアンバイドが会話しているのを見ていた。声まではランシュに聞えなかったが―…。

 その様子を見ながらランシュは、

 「ヒルバス。今日か明日にでも、ネリワッセと名乗っている奴を大広間に呼びだしておけ。ネリワッセ(あいつ)には、俺からたっぷりと注意せねばならないからなぁ~。」

と、言う。怒りの感情を心の中でだしながらも、表情という面では、ほとんど表にだすことなく―…。

 「そうですね。そうしましょう。少しは言ってやったほうがいいですね。ネリワッセ()は、自由に行動しすぎるきらいがあります。うまくいくこともありますが、逆に私たちにとって不利になってしまうこともあります。」

と、ヒルバスは真面目な表情で言う。ランシュの言いつけを守れないような人物であるネリワッセには、少し灸を据える必要があるとヒルバスは感じていた。

 「なら、帰るとしようか。」

と、ランシュが言う。

 その後、続いてヒルバスは、

 「そうですね。」

と、言う。

 そして、ランシュは立ち上がり、その後ろにはヒルバスが付いていくという感じで、観客席の貴賓席から出ていった。その様子は、誰からも勘付かれないものであった。そう、最初からここにいなかったかのように―…。


 リースの城の門の前。

 「着きました。」

と、李章は言う。

 今、そこには、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドがいる。セルティーは、李章やクローナの肩を貸してもらいながら、歩くのやっとであった。

 「やっと、帰りついたか。まあ、馬鹿のように突っ込んでいき、ぶっ飛ばされた敗れた人もいるから、いつもより遅くなるのは、しょうがないか、()()()()()()()()()()()()()()~。」

と、アンバイドは、アンバイドにとっての普通のペースでいった言葉を、最後は、セルティーに意地汚らしく言うのであった。そう、意地の悪さを含ませて―…。

 その言葉を聞いて、言ったのは、向けられたセルティーではなく、クローナだった。

 「うわぁ~。最低―…アンバイド。負けて落ち込んだ人にそんな意地の悪いことを言うなんて―…。人としてどうかしてるよ。」

と、言うのだった。

 セルティーの反抗的な返事がなかった。ゆえに、セルティーの現在の状態を理解したのか、

 「悪かったよ。負けたからっといって、いちいち落ち込んでいる暇なんてねぇ~だろ。そんな時間があったら、自分の弱さを恥じて、強くなろうとしろよ。」

と、アンバイドは言う。その言葉には、アンバイド本人としては、いちいち気にしている暇があったら、自分を強くするようにしなさい、と。

 しかし、そのような意図の意味で、周りに伝わることはない。もし、伝わるとすれば、その人はきっと人の気持ちのすべてを理解することができるだろう。その人にとって悪いこと、良いことに対する他者からの評価のすべてを―…。

 ゆえに、アンバイドは言葉を選んで、励ますべきであったし、言うべきであった。

 「そういう言い方は最低ですね。本当(ホント)に。良い事を言おうとしても、言い方を間違えてしまえば、どんな良い事も相手には伝わりません。それに、セルティーさんは、今は大事な時なのだから、時間云々は言うべきではないですよ。今は、自分で真剣に向き合い、答えを探そうとしているのだから―…。」

と、礼奈が冷静に言う。その言葉は、アンバイドよりもよっぽど大人が言うそのものであった。まだ、少女と言っていい年齢の礼奈が―…。

 大人げなかったアンバイドは、

 「そういうことなら仕方ない。さっさと、入るぞ。城の中に―…。」

と、言うのであった。

 そして、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドは、リースの城の中へと入っていく。門番に許可をもらい、門を開けてもらって―…。


 リースの城の中へ入ると、すぐに、二人のメイドが瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドを迎える。

 そのメイドとは、セルティー付きのニーグとロメであった。

 メイドの二人は、気づく。セルティーが李章とクローナの肩を借りていることを―…。そして、顔を上げていないことをも―…。

 そんな姿のセルティーを心配したのか、メイドの二人がセルティーの元へと駆け付ける。

 「「セルティー王女!!」」

と、言いながら―…。

 二人のメイドは、セルティーのもとに駆け付けると、

 「李章とクローナ(お二人とも)、感謝いたします。セルティー王女をここまで運んでくださいまして―…。」

と、ニーグがセルティーの肩を貸してリースの城の中へと連れてきたことに感謝する。その感謝は、真剣そのものを感じさせ、強く李章とクローナにそう思っていることがわかるものであった。それを感じた李章は、

 「すみません。セルティーさんは―…、今日の試合で、ネリワッセという相手と戦ったのですが―…。」

と、李章が言いかけたところで、

 「それ以上は言わないください。何となくですが、どういう結果になっているのかはわかりました。これ以上は、セルティー王女を余計に傷つけるだけです。それに、試合の結果に関しては、後で聞かせていただきます。」

と、ニーグが李章の言っていることがどういう内容なのかを理解して、言葉をはさむことで李章のその後に言おうとしている言葉を止めたのである。これ以上、言えばセルティーが傷つくからである。それに、今のセルティーの様子を見ていれば、第四回戦第三試合で負けたことに対して自覚があり、そのために心の中で現実として受け入れることができていないと思ったのだ。とにかく、今は、一人で考えることのできる時間と、現実に向き合うための時間を確保しなければならない。ゆえに、

 「後は、私たちメイドにお任せください。皆様の夕食に関しましては、準備の方はすでに整っていますので、体の汚れを落とされましたら、食堂へと向かってください。では、私たちは、セルティー王女を寝室へと運びますので、失礼いたします。」

と、今度はロメが言って、セルティーの左手をニーグの右肩に、セルティーの右手をロメの左肩に置き、セルティーの寝室へと運んでいくために、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、アンバイドの前を去っていった。

 「じゃ、各自、体を洗って、湯に浸かった後は、食堂に集合して、食事とする。その後は、次回に向けての対策と―…、参加する順番を決める。」

と、アンバイドは言う。

 そして、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、アンバイドは、男女に分かれて、別々の入浴室へと向かっていった。その前に、着替えを取り行くために、自分たちの部屋と戻ったのであった。


 1時間半後、食堂にセルティー以外のチームのメンバーがいた。

 セルティーに関しては、ニーグが来て、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、アンバイドに告げた。

 「セルティー王女は、今日の夕食は一緒にできないとおしゃっていました。たぶん、今日はお部屋から出られることはないと思います。ですから、食事に関しては、私たちの方でセルティー様の部屋に運ぶものとします。それと―…、もし、何か用事がある場合も今日はセルティー王女を参加させることは無理だと思います。私の方から以上となります。お食事をお楽しみくださいませ。」

と。

 このとき、ニーグは背筋をしっかりと伸ばしており、言葉もしかりとはっきりしたものであった。たとえ、主であるセルティーが落ち込んでいたとして、自らもそれを心配するようなことがあったとしても、少し時間が経てば、心の中で感情の揺れさえも表情や表面に出すことはない。そうしてしまうほどに、自らの感情をコントロールできないわけではない。そう、割り切ったり、今すべきことを見失わなってはいけないことを知っているし、実践することもできる。たとえ、それが冷たいと他者に思わせたとしても―…。

 そして、ニーグは食堂を出ていく。そう、部屋にいるセルティーに食事を運ぶために―…。

 食堂を出ると、ロメがいて、

 「よく耐えました。もし部屋に就寝するときは話しを聞きますよ。」

と、言うのであった。感情を抑えたとしても、いずれは溢れ出すものであるがゆえに、どこかで爆発するかのように発散させる必要がある。ゆえに、どこまで耐えればいいのかを設定するような言葉を含めて言うのであった。互いのために―…。


 瑠璃、李章、礼奈、クローナ、アンバイドは、ニーグが食堂を出ていった後、夕食を食べ始める。

 そんななか、アンバイドを除いて全員が心配しながらも食事をとる。それほどに、セルティーの敗北によるセルティー自身の落ち込みようが大丈夫なのか、これから戦うことができるのか、という不安のために食事をとるペースがいつもに比べて遅くなっていた。それに、雰囲気も暗くなっていたし、食事の美味しさというものを雰囲気で下げてしまっていた。

 アンバイドは、その雰囲気なっている瑠璃、李章、礼奈、クローナを見て、イライラしていた。そのために、

 「いちいち仲間が落ち込んだときにお前らまで落ち込むのか。人の人生って奴は、常にうまくいくとは限らない。むしろ、多くの時間が辛い事やどうにもならない事ばかりだ。それをいちいち気にして落ち込むなんて馬鹿らしい。もし、セルティー王女のことを思うなら、落ち込むことよりも普段と変わらずに接する事ができるような表情をしろ。落ち込んだ時は、落ち込んでいればいい。落ち込んでいる奴は、人生何でも成功して調子に乗っている奴よりはたいぶマシだ。それだけ、自分にも自分と他者の関係にも向き合えている、ということだ。だから、余計な優しいや心配ではなく、普段通りの他人ってのが、落ち込んでいる奴に安心を与えるんだ。そうすれば、気持ちも落ち着き、沈んでいる精神もいつも通りとなり、自身の自信へと繋がっていくための一歩になるんだ。気にして落ち込むが馬鹿らしいと思えるぐらいに、な。それに―…。」

と、説教たれるようにアンバイドが言い続け、結論付けるように、

 「食事中は、暗い雰囲気でなく明るい雰囲気にしてくれ。暗いと美味い料理さえ、不味く感じしまう。不幸が連鎖して、良い事すら、悪いことに感じてしまうようにな―。」

と、語るように言ったのである。

 「本当、アンバイドは、説教っぽいことを言うときは、長すぎ。だけど、こっちが落ち込んでいたとしても、意味ないことぐらいはわかった。なら―…、食事が終わった後は、次の試合の順番よりも、ゲームして盛り上がりますか。」

と、クローナは言う。

 「そうね。そうしましょう。落ち込んでも何も決められるわけないし。」

と、礼奈が落ち着いて言う。食事をしながら―…。

 そして、瑠璃も李章も賛成するかのように頷いた。

 その後は、食事の雰囲気は少しだけど、明るくなったという。

 その雰囲気に隠れて一人だけ思うのであった。

 (おい、さりげなく、次の回戦の順番を決めることを後でやることを無しにされたような~。っていうか、無しにされてる。)

と、アンバイドは心の中でそう言うが、結局、その後のゲーム大会が盛り上がり、第五回戦の参加順を決めることができずに、就寝となったのである。


第47話-2 勘違い に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。

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