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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第43話 第四回戦

前回までのあらすじは、眠そうにしていて、ぬいぐるみを持つおじさんという個性的な人が登場しました。

 第四回戦の当日。

 場所は、リースの競技場の中の中央の舞台。

 そこには、すでに瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドがいた。

 そして、瑠璃たちが来てから五分のも経たないうちに、今日戦う相手チームが登場した。

 ファーランスは、

 (……………これで、第四回戦に参加する両チームが揃いましたか。)

と、瑠璃たちのチームとアルディーたちがいるチームが揃ったことを確認する。

 この第四回戦は、アルディーたちのチームは三人であり、瑠璃たちのチームより人数が少ないので、三試合がおこなわれることになった。

 そして、両チームともに対峙した。その様子は両チームとも緊張感を含んでいるものであった。一人を除いては―…。

 そう、眠そうにしているぬいぐるみを持ったおじさんが、眠そうにしているのだ。

 その衝撃に、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドは開いた口が塞がらなかったという。しばらくの間のことであったが―…。


 【第43話 第四回戦】


 李章はあることに気づく。

 (アルディー(あの人)は確か―…。二回戦で私が負けた相手。)

と、李章はアルディーがこの第四回戦に参加しているということに―…。

 李章を確認すると、今度こそはという気持ちを心の中で抱き、アルディ―の方に視線を向けるのであった。

 同様にそのことにアンバイドも気づいた。

 (二回戦に出場していたアルディ―(やつ)が、この四回戦にも出場しているのか。李章が何か変なことをしなければいいが―…。まあ、戦わすこと自体は、避ける必要はないが、それでも―…、李章が天成獣の力を自らの武器である刀を使わずに発揮させることができるかどうかはわからない。この目で見るまでは―…。)

と、アンバイドは心配そうになる。それは、アルディ―がこの第四回戦に出場していることは、李章が何が何でも戦って、倒そうとするのではないかということではなく、天成獣の能力を十分に発揮できるかどうかである。天成獣の能力を十分に発揮することができれば、李章が負けるように相手では決してない。

 それと、アンバイドは心配なことがもう一つあった。

 (あの眠そうにしている男。あんな様子で油断してしまいそうだが、明らかに中央の舞台(この場)にいる中で、俺の次ぐらいの実力者だ。もし、こいつが試合に出場する場合、チームとしての勝利が決まっていなければ、絶対に俺がでないと確実に、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティーでは全く歯が立たない。)

と、心の中でアンバイドは呟く。そう、眠そうにしているおじさんが、この中でアンバイドに次いで強く、アンバイドでなければ倒せないと考えていた。そして同時に、相手との力の差を知る上で重要な相手だともみなしていた。チームとしての勝利が決まってさえいれば、それを実行しようと考えてもいた。プランの一つとして―…。

 一方で、両チームが揃ったことを確認した後、少しの間であるが間をおき、

 「両チームとも揃いましたね。では、これより第四回戦を始めます。今回は、少ない相手の人数は、三人なので、三対三の勝負とします。第一試合に出場される人は、フィールドに入場してください。」

と、ファーランスは言う。

 それを聞いて、アルディーのいるチームは、アルディーでもなく、眠そうな表情しているぬいぐるみを持ったおじさんでもない人物が中央の舞台にある四角いリングに上がっていった。つまり、ランシュの面前で緊張していた好青年が第一試合に出場するのである。

 そして、瑠璃チームからも、一人、四角いリングのあがっていった。その人物は、瑠璃である。

 瑠璃が第一試合の対戦相手と気づいた、ランシュの面前で緊張していた好青年は、

 「このアルゲッシテの相手が子どもかよ!! 少々ガッカリしてしまうレベルじゃねぇ~か。はあ~。」

と、瑠璃に対する印象をただの子どもとしか感じていなかった。さらに、言葉の最後には、溜息までついたのだ。

 そのアルゲッシテという人物の言葉に対して、

 (子どもって言われた!! 確かにまだ子どもだけど―…。子どもってことだけで舐められるなんて、何か嫌。)

と、瑠璃は心の中でアルゲッシテを嫌な奴に認定したのだ。そう、舐められたことに対する怒りを心の中に静かに抱いて―…。

 「まあ、子どもが相手でもいいか。俺は、たとえ、子ども相手だとしても手加減は一切しねぇ~。」

と、アルゲッシテが言う。

 アルゲッシテの性格は、たとえ、どんな相手であっても、手加減をせずに、本気で戦うことをモットーとしているのだ。そんな性格の一面をもっているがゆえに、瑠璃に対しても子どもとして侮るようなことを言うが、舐めて手を抜くということは一切ないのだ。

 両チームの第四回戦第一試合に出場する人が、それぞれ一人ずつをあがったのを確認する。そして、ファーランスは、そろそろ進行してもいい雰囲気を感じ取り、

 「両者とも、準備はよろしいでしょうか。」

と、言う。

 「はい。いつでも試合を開始してもかまいません。」

と、瑠璃はファーランスの言葉に対して、答える。

 「大丈夫だ。さっさと試合を始めてくれ。」

と、アルゲッシテは答えるのであった。

 そして、瑠璃、アルゲッシテに試合を開始してもいいという返事がでたので、ファーランスは、右手をあげ、

 「これより―…、第四回戦第一試合………、開始!!!」

と、右手を下に振り下ろす。

 こうして、第四回戦第一試合が始まった。


 「さあ~て、先に攻撃してこいよ。子どもには、先に攻撃する機会を与えてやるから。ほら、攻撃してこい。」

と、アルゲッシテは言う。その言葉は、瑠璃を舐めているように他人と瑠璃には聞こえてしまうが、アルゲッシテは決してそうではないのだ。むしろ、心の中では冷静に相手の出方を伺っているのだ。

 アルゲッシテのさっきの言葉を、瑠璃にとってアルゲッシテは瑠璃を舐めているのと感じて、自らの武器である仕込み杖の水晶玉のあるところをアルゲッシテのいる方向に向ける。そう、雷で攻撃するために―…。

 仕込み杖の水晶玉の部分から電玉が形成されていく。そして、電玉から形成された電流をいくつも流れていた。

 「征け」

と、瑠璃が言う。

 そして、電玉から、アルゲッシテに向かって雷が放たれる。三本ほどの数の雷が、である。

 その放たれる雷を見たアルゲッシテは、

 「甘いねぇ~。」

と、言う。実際に、アルゲッシテにとって、この瑠璃の雷は、甘いものであった。

 ゆえに、容易に一つの雷を避けることができたのだ。

 そして、アルゲッシテは、瑠璃が放った雷の行方を見るために、後ろを見る。

 アルゲッシテは、心の中だけ驚くのであった。

 驚いた原因は、瑠璃の雷攻撃で、四角いリングの面で雷が触れたところが、少しだけ、煙をあげており、さらに、四角いリングの面が数㎝の深さであったが、削れていたのだ。その範囲は、一メートルに及んでいたのだ。

 (こりゃ~、先に攻撃してもいいなんて、言うべきではなかったな。それに、まだ雷は残り二本あるし、それもこっちに向かってきているのだから、しっかり避けないとな。もしも、喰らってしまえば、一発で俺なんて簡単に倒されてしまう。)

と、アルゲッシテは若干の後悔を心の中で思うのであった。それは、瑠璃の雷攻撃の威力を理解していれば、確実に先に攻撃させるような発言など一切しなかったからだ。瑠璃が子どもとはいえ、舐めてはいなかったアルゲッシテは、雷攻撃のすごさには、最初から本気でいくべきであったと少しだけ悔やんだのであった。

 それでも、二本目、三本目という風に瑠璃の雷攻撃を避けることに成功するのであった。何とかではあるが―…。瑠璃の雷攻撃が単調に近いこともあって、避けることには苦労しなかった。しかし、避けた後も、まだ残っている雷がアルゲッシテ目掛けて向かってくるのである。すべての雷が―…。

 ゆえに、避けながらアルゲッシテは、

 (危ねぇ~、全部の雷が俺に迫ってくるなんて―…。何とか、避けることを―…、回転やら、横避けやら、させやがって―…。)

と、心の中で言うのであった。怒りという感情に近いものを抱きながら―…。

 一方で、アルディーのチームは、

 (生で見ると、俺よりも強え――――と感じるよ。あんな雷をすべて避けるのなんて俺には無理だ。)

と、アルディーは心の中でアルゲッシテの実力について思う。そう、アルディーとアルゲッシテとの間には、圧倒的ではないにしても、実力差はそれなりにある。それをアルディーは、瑠璃とアルゲッシテの戦いの中で理解するのであった。

 瑠璃が属しているチームは、

 (瑠璃さん。)

と、セルティーが心配そうに見守る。瑠璃の雷の攻撃が相手に当たっていないからだ。それでも、瑠璃が勝つとセルティーは心の奥底から思っている。ゆえに、

 (アルゲッシテ(あの方)は、まだ、自らの天成獣の属性がわかるような攻撃、いや、瑠璃さんに対する攻撃をしていません。どんな攻撃してくるかわからない今、油断だけはしないでください。)

と、瑠璃に油断することがないように、心の中でセルティーは言うのであった。

 そして、瑠璃とアルゲッシテの戦いに話を戻す。

 瑠璃は、再度、自らの武器の水晶玉の部分をアルゲッシテに向ける。

 電玉はまだ展開されている状態であった。

 電玉を向けられていることに気づいたアルゲッシテは、

 (まだくるのかよ。(あの)攻撃が―…、クッ!! こりゃー、やるしかないな。)

と、心の中で思うのであった。そう、瑠璃に向けられ、これからアルゲッシテ自身に襲い掛かってくる雷攻撃を防ぎ、かつ攻撃するためにやるしかないと判断したのだ。自らの天成獣の属性での攻撃を―…。雷を通してしまう自らの天成獣の属性で―…。

 「征け。」

と、瑠璃が言うと、電玉から雷がアルゲッシテに向かって放たれる。

 瑠璃の放った雷の一本は、アルゲッシテに一直線で向かってくる。そう、最短の距離であり、キャノン砲の軌道のように―…。

 一方で、アルゲッシテは、自らのポケットにいれていた天成獣の力が宿った武器を取り出す。それは、筒状の片方に穴の開いてある物であった。大きさとしては、小さくも大きくもなく、サーチライトの持つ部分と同じぐらいで、片手を丸く、一周できるかのように握れる物であった。その筒状の武器を瑠璃にいる方向に向かって構える。

 「水砲(ウォーターキャノン)

と、言うと、アルゲッシテの武器は、筒状の穴の開いたところから、水からまるで光線のように放たれたのだ。

 そして、アルゲッシテの天成獣の属性である水による攻撃は、瑠璃の雷に向かって突き進む。

 ほんの一瞬といっていい時間に、雷と水の攻撃は衝突するのである。

 通常であれば、水は電気を通してしまうがゆえに、雷を伝ってアルゲッシテにダメージを与えるのである。

 しかし、結果としてはそうならなかった。水が雷を通さなかったのだ。瑠璃も水が電気や雷を通すことを知っている。例外があることまでは知らない。それにアルゲッシテも雷が水を通すことを知っているが、通さないこともあるのも知っている。つまり、アルゲッシテは、原理は知らない、それゆえの賭けに近い要素のものであった。それに、自らの水攻撃が放たれた時に地面に接することがなければ、通さないことを経験から知っていた。

 そして、アルゲッシテの経験と、瑠璃の知らない例外は同じ意味である。それを知っていたのは李章だった。

 (雷は、原則として水を通します。電気も同様に、です。しかし、原則といっていることから例外も存在します。そう、アルゲッシテ(あの人)の水攻撃に使っている水が純水であれば、雷は一切通さない。そうなってくると、アルゲッシテ(あの人)の水攻撃は、瑠璃さんの雷攻撃における最強の盾と言ってもいいかもしれません。)

と、李章はアルゲッシテの水攻撃が瑠璃の雷攻撃を無効にした理由を心の中で言う。

 一方で、瑠璃は、水攻撃を何とかかわすことに成功していた。右横に向かって避けることで―…。

 それを確認したアルゲッシテは、水攻撃を止める。

 アルゲッシテは理解していた。ゆえに、

 「こりゃ、俺も徹底的にやらないといけないな。瑠璃(あの子ども)は、俺が倒さないとな。」

と、言葉にして言う。それは、呟く程度のものであった。ゆえに、瑠璃には聞こえなかった。

 瑠璃の方は、

 (雷を通さない水ってあるの? でも、現実に通していないということを確認している以上、どうにかしないといけない。)

と、心の中で焦りながらも、どうにかしてアルゲッシテの弱点はないかと探ろうとしていた。


 【第43話 Fin】


次回、瑠璃は水の中に!!

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。

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