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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
731/760

第154話-1 膠着する戦い

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 「うっ。」

 カサブラは吐き気を催す。

 吐くわけにはいかないけど、その光景で、胃液を吐いたとしても誰が文句を言えるだろうか。

 それほどにおぞましい光景。

 決して、人に見せられるような光景ではないし、慣れないものが見ればトラウマになるのは避けられない。

 (………………どういう……………こと……………なのだ。)

 理解が追いつかない。

 そうであろう。

 サンバリアはこの二年の間、兵器をトップに担いでいたのだから―…。

 そんなこと、普通、誰が考えるだろうか?

 人が支配するのが国であり、国の支配者は人なのである。

 それが兵器によって表向きに担われており、誰もそれを怪しいと思っていなかったのだから、この二年というのは(いびつ)なことが起きており、頭の中にある範疇外でしかなかったのだ。

 そんな範疇にもないことが実際に起こっていたことを聞かされるのは、誰だって驚くしかなく、思考停止をしたとしてもおかしなことではないのだ。

 だからこそ、カサブラの今の状況を攻めるようなことは一切できない。

 「驚いているようね。カサブラ議員にはこのことは言っていなかったし、人喰い兵器の存在は言っていなかったわね。あなたごときの下っ端には言わない方が良いものね。権力欲に取り付かれた亡霊のごとき存在には―…。」

 フェーナは、カサブラに対して、イバラグラが人喰い兵器であったことを教えていない。

 これを知っているのは、サンバリアの中ではフェーナと一部でしかなく、人喰い兵器が戦場で使われていることに関しては、それよりも多くの人間が知っているであろうが―…。

 まさか、トップもなんて思うのは、普通の考えをしていたら、思わなくてもおかしくはないが、この世に絶対にありえないということこそがあり得ないのだから―…。

 まあ、ある程度の予想をすることは可能であろうが―…。

 そして、フェーナがカサブラに対して、イバラグラが人喰い兵器であることを教えなかったのは、彼が出世欲に取り付かされていたことと、言ってはいないが、カサブラが大した存在ではないのに、身に合わないことをしているのだから、駒としてしか見ていなかったからだ。使い捨てのできる駒として―…。

 フェーナに命じることのできるサンバリアを本当の意味で支配する人物であったとしても、カサブラを使い捨てのものと同じ評価を下すであろう。その人物にとって、優れていない人間は必要としていない。

 優れていない人間が幅を利かせるようになれば、この人物にとっては、自分の思い通りに行動することができなくなると思っているし、実際の経験上、分かっているのだ。

 ゆえに、適度に利用し、利用価値がなくなれば、綺麗に捨てるのだ。彼らが何かを喚こうが、その人物にとっては、何を言っているのか分からないし、その言葉を聞いたところで時間の無駄と判断するだけであろう。

 優れていない人間に価値はないと、完全に、判断を下しており、それが間違っていないのかを確かめることをしなくなってしまっているのだ。人の証明において起こっていることを現実に示すかのように―…。

 そして、フェーナは、カサブラを侮蔑に近い感情というよりも、今は、これからの大事な候補として見ているのだ。カサブラにとっては最悪の形での―…。

 一方で、カサブラは吐き気を何とか我慢して、現状を問わないといけない。知っているのはフェーナなのだから―…。

 「…………………これは、サンバリアの一大事。これを知られたなかったら―…。」

 カサブラは脅す。

 カサブラにとっては、サンバリアのとんでもない秘密を知ったのだから、それを利用しないわけにはいかない。自身の有利になるために―…。

 カサブラは権力欲に取り付かれている存在であり、自分が出世することを、自分がサンバリアを支配することを望んでいるのだから―…。そのために慎重に行動をし、バレないようにしているのだから―…。

 どこがだ、とツッコミを入れる人もいるだろうが、本人はそのように認識しているから、ツッコミを入れたとしても意味のないことでしかない。

 人は合理的に行動できるような存在ではないし、完全に非合理的に行動できるようなものでもないのだから―…。

 (脅しねぇ~。意味のないことだわ。)

 フェーナからしてみたら、カサブラのような輩の脅しなど、何の意味を持たないし、返って、潰せば十分なのだから―…。

 「脅しねぇ~。」

 フェーナは淡々と言う。

 それはこの場においては、不気味なものでしかない。

 その不気味さをカサブラはしっかりと理解することができるし、同様に、恐怖する。

 恐怖しない人間はほとんどいないであろう。

 フェーナはさらに―…。

 「脅したところで意味はないわ。それに、あなたが生きた記憶は、ちゃんと残るのよ。そして、人の身では手に入れられない力を天成獣の宿っている武器に選ばれることなく得られるの。素晴らしいと思わない。これを発明した人はかなりの喜びと同時に、この国の支配に復帰してから、二年。ある人の目的のためにしっかりと協力しているの。三十年以上も前から―…。」

 フェーナは言う。

 その言葉には、自身が聞いているためか、一切の嘘はないと信じている。

 現実に言えば、ほぼ嘘はないと言ってよいし、これを初めて聞いたものからは何を言っているのか意味を理解することすらできない。

 文脈というものが重要であるし、その背景が思い浮かばないものをいきなり聞かされたとしても理解できないのは当然のことであり、少しでも理解できるのであれば、その人物はかなりの勘の鋭さを用い合わせている可能性は十分にある。

 なので、気づかないことは悪いことではないし、気づけるように、いろんなことを知り、考えることをする必要があると理解し、実践することが重要なのである。

 「まあ、カサブラ議員に言ったとしても分からないものね。じゃあ、そろそろ、お別れをしないといけないのねぇ~。最初の―…。」

 フェーナは少しだけ間をあける。

 その間に、カサブラは逃げ出そうとするが―…。

 「あれを喰いなさい。」

 フェーナは命じる。

 そうすると、人喰い兵器は、カサブラの方へと向かって行く。

 人喰い兵器にはいくつか命令されており、発明者、発明者の上司とその幹部、フェーナの命令を聞くように上書きされているし、その意図を正確に読み取れるようにされている。

 ゆえに、フェーナが指刺したカサブラへと向かう。

 カサブラを喰い、カサブラになるために―…。カサブラの記憶になるために―…。

 そして―…。


 【第154話 膠着する戦い】


 十分ほどの時間が経過した。

 そこには無残な血があり、そこには、成り代わった存在が一つ。

 「私は…………………こんなにも権力を欲しているのか。ガハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、良い、良い―…。」

 その存在はカサブラを喰ったはずなのに、カサブラの姿にはならなかったのだ。

 それは、フェーナがそのようになるように命じたというわけだからではない。

 そして、その人物は、サンバリアの技術職員が着る服を着ていた。

 まあ、喰った人間の記憶や体を手に入れるとしても、服まで再現することはできず、何も身に付けていない人の姿になるのだ。

 フェーナも知っているからこそ、イバラグラから人喰い兵器を取り出す時になった段階で、作業員の服を用意していたのだ。

 怪しまれないようにするのは難しいことではあるが、フェーナならそのことは可能である。

 「笑うのは勝手だけど、どうしてそんな姿に―…。」

 フェーナには疑問でしかなかった。

 人喰い兵器は、喰った人間のその時の状態になるのだ。

 だけど、カサブラを喰った人喰い兵器はそのようにはならなかった。

 「いやぁ~、俺はカサブラになった。いや、正確にはカサブラの若い頃になった。だって、この惨状の証拠を消すなら、カサブラが生きているようなことがあってはダメだろ。フェーナ様。」

 カサブラを喰った人喰い兵器は、まるで、今までのカサブラとは異なって、頭の回転はかなり早いようであるし、思考の柔軟性があるような感じだ。

 それに、カサブラの若い頃の体の姿になっていると言っている。

 それがどうしてできているのかは、人喰い兵器の側にも分からない。まるで、何かしたらできたという偶然の奇跡が起こっているのだ。

 それを説明するには、発明者に聞くしかないであろう。

 まあ、発明者が分かるかは保証できるようなものではないが―…。

 だけど、今の人食いの兵器の状態は、証拠隠滅には利用しやすいし、この惨状を誤魔化すには十分に都合が良いものであろう。

 「そうねぇ~。じゃあ、爆破して逃げ出しますか~。」

 フェーナからしたら、証拠隠滅には火はかなり有用に使える。

 なので、塔の上の方を爆破するのが効率的であろう。

 ということで―…。

 フェーナは、この建物が何かあった時に、どの部分を爆発させるのかを設定されている爆弾があり、それをフェーナのポケットの中に入っている装置を取り出して、設定した上で、実行装置を押すのだった。

 塔の最上階が爆発するのだった。

 これが世に言う「イバラグラ暗殺事件」の顛末である。


 時を戻し、ラナトールからイスドラークの間。

 略奪団との戦いになっていた。

 その中でも、クローナとレグの方では―…。

 砂煙が晴れ―…。

 (はあ~、何とか相殺かぁ~。かなりヤバいよぉ~。こいつ―…。自分が出す技出す技―…。……………焦っては駄目。できることをしていかないと―…。)

 クローナは心の中でこのように言う。

 クローナからしたら、レグはしつこい相手であることに間違いない。

 そんなレグであったとしても、クローナを倒すのには苦労しているところから、お互いに厄介な相手だと思っていることで共通はしている。

 それを確かめる方法はないわけではないが、そんなことをしている暇はない以上、この状況を打破していくためには、相手が倒れた時に自分はしっかりと立っていることを目指さないといけない。

 そのために、クローナとレグの戦いは根競べの要素を呈するようになっていた。

 (こっちも属性を使うとしましょうか。)

 レグがそういうと、斧が光り出すのだった。


第154話-2 膠着する戦い に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で加筆または修正していくと思います。


怖い話が続いていますが、ネームの段階の流れの中で出来上がったものであり、結構、グロい展開だな、と思っています。

ここからしばらく、砂漠の中の戦いになると思います。

では―…。

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