第152話-3 分断される
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
少し時が戻る。
場所は、ラーグラと長のいる場所。
そこでは、二人が会話を繰り広げていた。
「ポンガルが氷を破ることに成功したけど、こっちへと一人……向かって来ているんだが―…。」
と、長は言う。
長からしてみれば、凍らされた状態のポンガルの状態を回復させるのにはラーグラはしっかりと貢献したのだが、そのせいで、礼奈をこちらへと向かわせてしまったのだ。
そうだと思うと、ラーグラの判断は吉と出るか、凶と出るかは分からないが、嫌な予感しかしないのは確かである。
ゆえに、若干の皮肉を込めて言うのだった。
それに対して、ラーグラは、長の言葉に皮肉が混じっているのを理解しながらも―…。
「バレたら仕方ない。逃げるしかないな。ということで―…。」
と、ラーグラは言おうとするが―…。
「無理だな。ここがどこだと思ってる?」
長は反論する。
長から言えば、ラーグラの言っていることは決して間違っていないわけではない。
だけど、今、この場においては、明らかな間違いでしかない。
「砂漠だが―…。」
それがどうかした?
と、言いたげなラーグラではある。
狙撃をして、相手に位置が気づかれたと感じたのなら、さっさと移動するのが良いに決まっている。相手と自分の間に距離があるのだから―…。
「馬鹿だな。ここは砂漠だ。一歩、知らない場所に入れば、簡単に抜け出すことのできない砂の海だ。そんなことをする奴は簡単に死を迎える。それに、俺たちはここで戦うしかない。」
と、長は言う。
長が言うように、砂漠は海のようなもの。正しく言うのであれば、人が歩くことができる海のようなもの。
そして、森や木、山、岩などの目印になるものが極端に少なく、ないことさえ十分にあり得るものである以上、道から外れるようなことはするべきではない。
それが砂漠の中で生き残るために重要なことなのであり、ラーグラのような狙撃手が狙撃した後に、別の場所に移動するという常識があまり使うのが難しい場なのだ。砂漠とは―…。
まあ、それでも、キャラバンが見える範囲で移動するという点では、その常識を使えることはあるにはあるが―…。
そして、この場における標高差はそこまでない以上、隠れる場所もあまりないので、逃げている間に補足されるような、相手に見つかる可能性もある以上、その常識は通用しないと言っても過言ではあるまい。
ラーグラは、長の真剣な言葉に対して―…。
(何を馬鹿なことを言っているんだか―…。だが、こいつの言葉を無視するわけには―……。)
と、心の中で言う。
まるで、何かしらの圧力によって、自分の意見が変更されるような感覚。
まさに、ラーグラが抱いている感情はそのようなものであり、本人がそのようなことを言葉の中で認識をしっかりとできているわけではない。理解もできていない。
どうしてそのような感覚になっているのか。
ラーグラは気づいていないようだが、今の長の圧から考えれば、ラーグラは無視すれば簡単に長によって殺されてしまうのではないか、という恐怖を感じているのだ。
それと同時に、長の圧に関して、考えないことによって、問題から真正面に向き合うということを無意識に意図的に避けているのだ。そう、本能がそうさせている。
そのせいで、ラーグラは自らの今の感情と恐怖を理解することができないであろうし、理解すれば、自分の精神面で最悪の結果になるだろう。
それを避けるのも、生きていく上では重要なことである。
だけど、いつかは向き合わないといけないので、ラーグラは自身の実力を強化する必要がある。そうしなければ、向き合うための土壌がしっかりとできないのだから―…。
ラーグラにそのことに対して、無意識的にも気づける機会があるかどうか、それは未来のことであり、今、この場で完全に分かるものではない。
それが人なのだから―…。
そして、ラーグラも嫌な感情を抱きながらも、従わないわけにはいかない。
なので―…。
「わかったよ。」
と、イラつきながら答える。
その返事に対して、何かしらの不満を言うべきなのかもしれないが、そんなことはラーグラ側の視点に立てば、ある程度の見当がつくので、言葉にするようなことはしない。
そういう意味で、長は人生経験が豊かであるということの証左であろう。
人の気持ちを完全に理解することはできなくても、ある程度は理解しないと、交渉やら人をまとめ上げるようなことはできないのだから―…。
年の功がそのようにさせるのだろう。
年をとることすべてが悪い結果になるとは限らない。
人生の中で、すべてが衰えるという結果になるのではなく、成長する面も強くなる面もあるというところをしっかりと理解しておいた方が良い。
そうしなければ、周囲に対する害悪的な存在になる可能性があるのだから―…。何かしらのことを馬鹿にすることは、結局、周囲の良い面を気づける能力があるのに無視していることになり、良い面を褒めることによって得られる利益を失い、変わって、悪い面を詰ることによって相手側からの印象を最悪の状態にさせるデメリットばかりを享受して、それがたくさんの人におこなうものであるから、返って、周囲からの反発、不満を招くことになり、自身の未来を周囲から害悪と言われる結末へと導くのだけなのだ。
そう思うなら、良い面も悪い面もしっかりと見つけ、その点を含めて、人との関係を良好のものに本当の意味でしておく必要がある。
人は、他者がいることによって、上手くいくことは十分にあるのだから―…。
そういうのを無視するのは良くない。
(………………まだまだ若いなぁ~。若さの良さはその行動力だ。それと同時に、その行動力のせいで、大きなミスを犯してしまうこともある。それを経験し、行動するとは何かをしっかりと理解することだな。そして、初めて、人は自らの行動に対し、責任を持つことができる。こんななりの俺が言うべきことではないな。)
と、長は心の中で言いながら、さらに、指示を飛ばす。
「お前ら、護衛の一人がこっちに向かって来てる!!! 絶対に手を出すな!!!」
と、長が言うが返事がない。
なので、それを怪しんで長は周囲を見る。
ラーグラと長以外の六人の護衛は見事に凍らされているのだ。
(遅かったか!!!)
長は焦りを見せる。
だけど、すでに戦いが始まっていることを理解しているからこそ、凍らされている仲間のいる場所から少し離れる。
「凍れ―…。」
声がする。
それはこちらへと向かっている者の声だと、聞いたことはないが、認識することができる。
だからこそ、気配を感じ、すぐに避ける。
「!!!」
(あのまま、移動していたら、完全に凍らされるところだったな。結果として、ほとんど離れることはできなかった。)
と、長は心の中で思いながらも、敵が目の前にいることが分かり、視線を外さないようにする。
長からしてみれば、一番厄介なのがやってきたのだと理解する。
ラーグラに構っている暇はない。
それほどに、礼奈の実力が高いものであることを理解し、そして、視線を外せば、凍らされる可能性があるのだと認識する。
一方で、ラーグラは凍らされることはなかったが、それでも、自分が一歩間違っていれば、簡単に凍らされたのだと理解し、恐怖するのだった。
(…何なんだよ。俺が監視しようとしていたのは、こんな化け物の実力者だったのかよー……。)
ラーグラは今になって気づく。
礼奈の圧に気を落とされてしまっているのだ。
ラーグラは離れて監視をしていたせいか、彼らの強さに気づかなかったし、それを察知できる能力は本能的にはあるのだが、任務で自身の姉に褒めてもらおうとしていたために、彼らの実力を本当の意味で把握しないといけないのを見落としてしまっていたのだ。
普段ならそういうこともしないのであろうが、人は完璧でない以上、このようなミスが発生してしまうのは仕方のないことである。
そんな状態でありながらも、本能的にはしっかりと理解しているようで、ラーグラは距離を少しだけ取るのだった。
「あなたが、私たちを狙っている人?」
と、礼奈はラーグラの方に視線を向けるのだった。
一方、瑠璃の方は―…。
「襲え――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」
と、指揮をしている人の一人が言えば―…。
『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』
「手柄は俺のものだ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」
略奪団の一員で、瑠璃の近くにいる者達は、瑠璃を攻める。
瑠璃の武器は杖である以上、近接距離での戦いが苦手であると、判断する。
瑠璃もそのことはしっかりと理解しているが、苦手であったとしても、何も対策をしていないわけではないし、自分の武器は杖であったとしても、中距離での戦闘も可能な、仕込み杖なのだ。
だけど、この大量の数の相手で、仕込み杖の中に入っている剣を使うのは得策ではない。
そして、自分は雷を扱うことができるのだから―…。
やるべきことは決まっている。
「征け。放流電撃!!!」
杖を上に上げると、杖の一部にある水晶玉の部分から幾数もの雷が略奪団の一員の者達に向かって放たれる。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン。
という、音をさせながら―…。
それはすべて、敵に命中する。
それだけ、攻撃のスピードが速いのである。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。」
という声を出す者が続出する。
見える光、聞こえる悲鳴、それは略奪団の一員に恐怖を植え付けるには十分だ。
そして、この攻撃を潜り抜ける者は今のところいなかった。
(………………まずは数を減らさないと―…。)
と、瑠璃は心の中で思いながら、自身に近づいてくる可能性があるのかをしっかりと探るのだった。
場所は戻る。
礼奈のいる場所へ―…。
ラーグラはビックリしていた。
(………気づかれているのかよ。だが、証拠をもっているわけじゃない。ラナトールへと向かう船上ではしっかりと姿を消したはずだ。なら、大丈夫だ。)
と、心の中で思う。
ラーグラからしてみれば、自身が襲っているようなことは分かるはずはない。
それに、今の攻撃であったとしても、ここまで一直線にやってこれるとは思わない。
何かしらの勘違いをしているように思わせれば良い。
「何を言っている。私は―…。」
と、ラーグラが言うが、何となくだけど、殺気をさっきよりも強く感じる。
「あの矢を放ったのはあなた。矢を武器にしていて、かつ、ラナトールへ向かう時の船上でも同じような矢の攻撃をしていた。船を壊すほどの威力の矢。弱そうに見えるけど、天成獣の宿っている武器を扱うでしょ。」
と、礼奈はラーグラの方へと一気に向かい、問い詰める。
その表情は笑顔のように感じるが、誰もが分かる。
本当には笑っていない。
表情と感情が合っていないのだ。
それもそうだろう。
礼奈は気づいている。
目の前の相手がリースからラナトールの間の船上で、船を沈没させるようなほどの威力のある矢の技を放った人間なのだ、と―…。
それを、凍らせたポンガルがそれを破るきっかけとなったのだから―…。
ゆえに、いつ後ろから攻撃してくるかもしれない、敵を気に掛けるのは危険なことであるし、さらに、これ以上、自分達の狙わせないために、こちらで捕まえておく必要がある。
礼奈はそう判断しての行動であり、ミランはその意図を読めていなかったからこそ、礼奈の行動を馬鹿にしたが、礼奈の狙いはこれである。
(……やべぇ~、こいつとはどうあっても戦いにはならないし、誤魔化しも通じねぇ~。)
と、ラーグラは心の中で思いながら、かなり焦る。
ラーグラの表情を見ても、それがはっきりと分かる。
だからこそ、ラーグラは、その焦りのせいで―…。
(何かないか、兎に角、凍らせてこない今が―…。)
と、ラーグラは礼奈へと攻撃しようとする―…。
だけど―…。
「後で、聞く―…。」
と、礼奈が言うと、ラーグラはあっさりと凍らされるのだった。
その様子を見て、長は一番危険だと感じながらも、ここで戦わないという選択肢はない。
「はあ~、やるしかないか。」
と、長は自身の武器である大剣を取り出し、構えるのだった。
【第152話 Fin】
次回、長VS礼奈―…。そんな単純な構図にはならない。に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆していくと思います。
休んだ感覚がしないぐらいに、活発に動いていたような―…。暑さのせいなのかもしれない。
無理しないように、『水晶』の投稿を頑張っていきたいと思います。
皆様も夏の熱さは最低気温が高いことによるものと個人的には思っていますが、負けないように、無理しないようにしてください。
皆様に幸運があらんことを―…。
では―…。




