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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第42話-2 痛みと、そして、ぬいぐるみを持つ―・・・

前回までのあらすじは、リースの城の中にいる女性の医者がサディストなのではないかと思われるほど、クローナにとって痛いツボを押していたのだった。クローナの悲鳴付きで―…。

 ここは暗闇。

 周りの視界は、見えやしない。真黒なのだ。

 人が一人、ここを前に進んで歩くことすら不可能だろう。人に夜目があったとしても―…。

 そこに、一人の少年、そう、李章が今のこの場にいるのだ。

 李章は周りを見渡しながら、

 (最近、あいつのいた場所のような感じだ。この暗闇は。でも、この暗さは、あのあいつと会った場所とは違うみたいだ。なんとなくだけど―…。)

と、李章は心の中で思っていた。

 李章は思考する。

 (この場所は暗闇である以上、進まず、ここにじっとしているのが一番かもしれません。しかし、自分の武器に宿っている天成獣を探さないといけないとなると、ここにじっといるわけにもいきません。う~ん。)

と。

 この後、実際に数分の間、李章はじっとしていることにした。その時、李章の体感では何時間も経過したように感じられたのである。ゆえに、李章は、

 (何時間たったのだろう。本当に、ここに天成獣はいるのでしょうか。)

と、本当にこの空間に自らの武器に宿っている天成獣がいるのかを考え始める。そして、李章は、体感時間を実際の経過した時間よりも長く感じているため、精神的に疲労のようなものがでてきていた。

 そのように、李章が感じている時に、一筋の光が李章に向かって近づいてきたのである。

 (あの光は―…?)

と、李章が心の中で感想を漏らす。

 そして、その光はどんどん大きくなっていく。それは、近づいて来ているためであり、音が聞こえるようになる。その音は文字にするのは難しいが、キラキラとしたものを感じさせた。

 一つの光は李章の目の前で止まる。

 (止まった。)

と、李章が心の中で言う。

 「何? なんで私のいるところに人がいるのよ。私が呼んだ覚えもないのに~…。本当は、私に選ばれた少年にガツンと言ってやりたいのよね。で、君、誰?」

と、一つの光の中から声がした。その声は女性の声というよりかは、少女を思わせるような声で、可愛らしいと思えるものであった。

 その声を聞いた李章は、

 (光がしゃべった!!?)

と、驚いて、固まってしまっていたのだ。思考も停止させてしまって―…。

 そんな固まっている姿を見た、一つの光は、

 「何か固まってしまったのだけど―…。こういう種族でも人の中にはいるのかな。まあ、どうでもいいけど。とにかく―…。」

と、言った後、少しの間をつくる。その間に息を大きく吸い、

 「私の話を聴け―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。」

と、一つの光が李章の鼓膜をやぶるかもしれないと思われるほどの大声をだす。

 そんな声を聞いた李章は、ハッと我にかえる。

 (なんてことですか。光が喋ったことに驚いて、固まってしまいました。)

と、ふと、李章は心の中で言う。

 そして、李章は目の前を見る。

 そうすると、そこには、一つの光があった。一筋とはなっていないが―…。再度、心の中で驚くが、すぐにどう対応しようかと考え始める。

 その中で、一つの光から声がした。

 「意識を取り戻したのね。今の私を覆っている光を見て、その光が喋るのを聞いて、驚いてしまっていたみたいね。で、もう一度聞くけど、君、誰?」

と、一つの光は李章の驚いて固まった状況をあて、大声で意識が戻った李章に対して何者であるかを尋ねる。

 その一つの光に質問に対し、

 「私―…、ですか。」

と、李章が言うと、

 「李章(あなた)しかこの場にはいないでしょ。」

と、一つの光がさも当たり前のように言う。

 そして、李章は続けるかのように、

 「私は、松長李章といいます。あなたは一体何ですか?」

と、自分の名前を言い、そして一つの光に向かって、何者であるかを尋ねる。

 「私!!? ………私は、折角、選んだ少年が一切、刀を使わずに蹴りだけで戦おうとする愚かで、馬鹿な奴の天成獣だけど―…。」

と、一つの光が言いかけたところで、気づく。

 「って!!? 李章(お前)か!!! 刀も使わず蹴りで戦っている奴は!!!!!」

と、李章の今持っている武器が、一つの光にとって自らの力が宿っている物だと気づき、李章に向かって、驚きながら言う。怒りの感情を込めて―…。

 「あなたが私の武器に宿っている天成獣ですか?」

と、李章はさらに尋ねる。

 「そうよ。私がねぇ~、李章(あなた)の武器に宿っている天成獣なの。さっきも言ったけどガツンと言わせてもらう。」

と、一つの光、もとい、李章(あなた)の持っている武器に宿っている天成獣は、李章に言いたいことを言おうとする。そのために、光を弱め、自らの姿を完全に李章に見せるのである。そう、妖精のような姿を―…。

 そして、一つの光だったのが、

 「私の武器は刀なの。なのに、李章、お前ときたら、なぜ、刀を使わないで、蹴りで戦う。わかってるの!! 天成獣の力は武器を使っているからこそ、十分に発揮することができるの。だから、李章、お前は蹴りなんかで戦うのをやめて、刀を使って戦え!!!」

と、怒声をあげながら言う。

 しかし、その声が可愛らしいものだったせいで、李章には自らが怒られていると感じることがあまり実感できなかったのだ。怒られているのは、なんとなくわかっていたけれど―…。

 「私は―…、刀を使っては戦いません。蹴りのみで戦います。」

と、今度は李章が自らの意思を一つの光で覆われていたものに伝える。

 「……………ここに馬鹿が一人いたわ。頑固の類の。理由は知らないが、今、自分がおかれている状況を本当に理解しているの? 私の力を使うには刀を持って戦うことが必要なの。そうしないと、力は十分に発揮できないの。」

と、一つの光に覆われていた妖精みたいなものが言う。

 (でも、武器を持たずに使わすことも可能だけど―…、それをしてしまえば、刀の意義を失う。それに―…、李章(こいつ)は他人を守ると言いながら、自分のプライドを守りたいだけ―…。今いる人ではなく、今この場にいない人の過去のためだけに生きている。)

と、一つの光に覆われていた妖精は心の中で李章がどんな人間であるかを見きわめていた。さらに、続けて、

 (だから、李章(こいつ)は過去という名の鎖から解放されないといけない。武器を伝って力を発揮させるときに、李章(こいつ)の今までの人生を見たから。)

と、心の中で言う。

 この武器を持っている人の過去を覗くという能力は、すべての天成獣が扱えるわけではないが、李章の天成獣にはそのような能力が使えるのだ。ただし、李章はこの能力を使うことはできないが―…。

 「……どうにかできないのですか。武器を使わずに天成獣の力を十分に発揮させることは―…。」

と、李章は縋るような気持ちで言う。

 「そんなの無理ね。さっさと諦めて、刀を使いなさい。私は知らないけど、そんな小さなプライドなんて、命を守る場面においては、無駄でしかない。もしも、そんなプライドに拘るのなら、今後一切、私は、李章(お前)に天成獣の能力(チカラ)を貸さない。」

と、はっきりと李章に刀を使うように、そして、刀を使わないのならば、天成獣としての力を今後一切、貸さないことを言う。

 その言葉を聴いた李章は、考えざるをえなかった。

 (このままでは、生の属性の力を使うことができなくなります。それは―…。)

と、心の中の言葉でさえ濁しながら―…。そう、李章は、自らが天成獣の力を使えなくされることが、結局、この異世界の中で、守るべき人を守ることができず、守るべき人に自らが守られるということになる。それは、李章にとって屈辱でしかなかった。

 李章は、師からの約束と、守るべき人をこの異世界で守ることによる選択を突きつけられ、両方が成り立たないという板挟みの状態となっていた。そう、選択しなければならない。もし、ここに完全な合理性を持った人(現実には存在しない)がいれば、間違いなく、無限の回数においてそれと同じ回数分だけ同じ選択を簡単に下すだろう。そう、後者の守るべき人をこの異世界で守るという選択をするであろう。しかし、人は完全でなく、李章も同様だ。ゆえに、悩むのだ。どっちも守りたいがゆえに―…。たとえ、過去という一部の出来事に縛られ、解放されることが正しいことであろうとも―…。

 そして、しばらくの間、李章と一つの光を覆っていた妖精のようなものの両者に、沈黙が流れ続けるのであった。

 それを止めようとして、一つの光を覆っていた妖精のようなものの方が話をしだす。

 「まだ私の自己紹介をしていなかったね。私の名はフィルネ。本体は妖精の恰好をした天成獣。属性は、李章(あなた)もわかっているとおりに生ね。まあ、特殊的な能力というものは使えないわ。私自身は使えたとしても、李章(あなた)は無理ね。相性とかそんなのに関係なく。」

と、一つの光を覆っていた妖精のようなもの、もとい、その名フィルネは言う。その喋り方も軽いフランクな感じにして―…。

 「フィルネさん、ということで呼び名のほうはよろしいでしょうか?」

と、李章はフィルネに確認をとる。それは、他人の呼ぶ時に不快な思いをさせないためである。李章が幼少の頃に育ってきた環境が原因でそうなっているのだ。相手の機嫌を窺うことを常に要求されているようなものであったから―…。

 「別に呼び方に関しては、変なものでなければいいわ。」

と、フィルネは間接的に李章のフィルネに対する呼び方を許可したのである。

 李章もそのことは、フィルネのさっきの言葉や表情から理解することができた。フィルネが不快な表情をしていなかったからだ。

 その後、李章は考え続ける。どうすれば、蹴りだけで天成獣の力を発揮させることが可能かをフィルネから聞き出せるのか。


 さらに、時間が流れて過ぎていった。

 さすがに、長すぎると考えたフィルネは、ある妥協を打ち出す。

 「実は―…、武器を使わずに戦える方法は、私の場合はある。だけど―…、それには約束してもらわないといけないね。もし、李章(お前)が私との約束を破れば、今後一切、私の力は貸さない。」

と、フィルネは言う。このフィルネの言葉には、裏があった。

 (李章(こいつ)が約束という形にすれば、刀を使って戦うことをいずれ選択することになる。いや、ならざるをえない時が必ずくる。天成獣の力を持った者同士の戦いは、自らの武器を使って戦わないで勝てるほど甘くない。必ず李章(こいつ)は私の約束を守りにくる。そうしなければ、李章はどこかで死を迎える。肉体的にも()()()にも―…。)

と、フィルネは心の中で考えながら、これから言うべき約束を言おうとする。

 それに気づいたのか、李章は黙って静かにフィルネの言葉を聴こうとする。

 (約束するだけで使えるのならば、約束になるような展開にもっていかなければ大丈夫です。)

と、李章は、自らの戦い方を変える状態にならないようにすれば、蹴りで戦える。そして、天成獣の力を十分に発揮させることができるのであれば、それは、守るべき人を自分の力でのみ守れるということだから―…。ゆえに、李章は縋りつく思いがこの時にはあったのだ。

 「私からの約束は―…。」

と、フィルネは間をおいて、

 「もしも、李章(お前)が次の攻撃で自らの命が尽きるであれば、必ず李章(お前)の持っている刀を使って戦うことだ。これ以上は言うまでもないが、約束を破れば、結果は―…。」

と、言う。それは、次の攻撃で確実に死んでしまう場面に直面したときに、李章が意地をはって刀を使わなければ、それは自らの生の終わりを意味するのである。そう、フィルネは、李章が守るべき人のために、必ず使わなければならないと守ることもできずに死ぬということも意図に含めて言ったのだ。

 (一方で、李章(こいつ)からは禍々しいもの感じてしまう。そいつは、たぶんに迷いなく刀を使う。確実と言っていいぐらいに―…。その方がかえって私にとってもいいのかな?)

と、フィルネは心の中で思うのだった。フィルネは、李章の心の中にいる人?に対するものに警戒を抱きながらも、その人?が確実と言っていいほどフィルネの能力(チカラ)をしっかりと発揮させてくれるから嬉しくもあったのだ。二つの複雑な気持ちに挟まれて―…。

 そして、その後、李章とフィルネは会話をできるようにして、李章は、天成獣と会話できる場からリースの城のアンバイドがこのための術式を書いた所へと戻っていったのである。


 リースの城の中の中庭となっている場所。

 そこは、瑠璃たちが修行で使っている場でもある。

 そこには、一つの術式が描かれている。

 その近くにアンバイドがいたのだ。

 そして、アンバイドは見る。李章が帰って来たのを―…。

 術式の中から李章は現れた。

 ほんの数秒の間に、李章は目を開けずにボーっとしているような感じになっていた。

 その数秒が過ぎると、李章の意識ははっきりとして、その場にアンバイドに対して、

 「天成獣の力を十分に発揮できるようにする交渉に成功しました。」

と、簡単に天成獣との会話で起こったことを伝える。

 「そうか。」

と、アンバイドはただそれだけを言うのであった。

 一方で、アンバイドの心の中では、

 (成功した!!? どういう風の吹き回しだ。自らの宿っている武器が使われないのに―…。何かありそうだな。)

と、思っていた。

 そして、李章とアンバイドは、リースの城の中へと戻っていったのである。

 すでに、時は夕暮れ時になっていた。


第42話-3 痛みと、そして、ぬいぐるみを持つ―… に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


フィルネに対して、李章の呼称がなかなか定まりません。むしろ、定めないようしていくべきなのだろうかと思ってしまいます。そろそろ第四回戦が始まるかもしれません。

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