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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
710/759

第148話-4 略奪者

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 ラナトールを出発してから一週間が経過した。

 瑠璃たちは、砂漠の中を隊商の護衛をする形で移動しているのであった。

 ラナトールの近郊で隊商を襲おうとしたアイビックサソリを追い返すことによって、その隊商から護衛の仕事を手に入れることができたのだ。

 向かっている場所は、イスドラーク。

 そんな道中だ。

 護衛の仕事と言っても、四六時中モンスターや略奪者から戦うというようなことはなく、隊商の中の一部がはぐれないようにするために、見回ったり、見張ったりするのが主な仕事であるし、モンスターや略奪者がいないかをも見ている感じだ。

 そうであったとしても、一息も吐けないようなことはなく、ゆっくりと談笑するぐらいは可能なのだ。

 「砂漠が長いねぇ~、どこまで続くんだろ。」

と、クローナは言う。

 クローナからしたら、砂漠に厭きたと反応してもおかしくないのではあるが、そのようなことをして迷惑でもかけるようなことがあれば、砂漠という海の中で、自分以外の集団をも命の危機に晒してしまうことを感じているのか、口ではそう言いながらも、かなり大人しいという感じだ。

 砂漠は過酷だ。

 想像しているよりも―…。

 地平線のない海の上を歩くに等しい。

 オアシスという名の島を見つけるのも簡単なことではない。

 それをこの大きな砂漠の中で無理でも理解させられてしまうのだ。

 広大さとは、無力を自覚する上で重要な要因なのかもしれない。

 そんな感じだ。

 「そりゃ~、この目から見ても終わりが見えんのだから、果てしないとしか言いようがない。そこから日の位置や角度で、推測しながらイスドラークへと向かってるんだ。熟練の隊商長の技量の見せどころなんだ。ということで、何かおかしなところはないか。」

と、キャラバンの中にいる商人の一人が言う。

 隊商は、全部で七つの商会から成り立っており、イスドラークへと日用品から少しだけの鑑賞品などを運んでいる。

 その中で中間あたりをクローナが護衛として見張っているということ。

 前方の方は、李章であり、一番の後ろは、ミランと礼奈ということになっている。

 瑠璃もクローナとは別だけど、近くで見張りをしている。

 そんな感じで一週間の時が過ぎている感じだが、夜の見張りに関しては、商会の人達と一緒に見張りをしているという感じだ。時間ごとに交代という感じで―…。

 そして、クローナはこのように商会の人達と仲良くなっているというわけだ。

 「ないですねぇ~。砂漠、砂漠、砂漠しか見えません。オアシスすら見えません。」

と、クローナは返答する。

 会話するぐらいしか移動中は娯楽というものはない。

 そんな感じなので、どうでも良い話とか、自慢に近い話もするような感じになっている。

 「クローナちゃん。リースでの活躍の話の詳しい話を―…。」

と、別の商会の商会員の人に聞かれるのである。

 クローナとしては、もう何度も話したことなので、疲れるという感じなのであろうが―…。

 それでも、少しだけ脚色して話すしかない。

 それぐらいしか娯楽がないのだから―…。


 一方、後ろの方―…。

 ミランと礼奈がいる場所では―…。

 「異常ありません。」

と、ラクダで牽かせる馬車みたいものに揺られながら、後ろの方に異常がないことを言う。

 砂漠しか見えないし、異常なものは一切、検知しているわけではないのだから、これしか言うことはない。

 それでも、ミランがラッキーだったのは、礼奈がいるからだ。

 「この異世界に関することは、少しだけ分かりましたが、私たちの文明以上の地域も存在するのですね。」

と、礼奈は言う。

 礼奈からしたら、この異世界に関する知識はリースという場所があり、そこでは王とラーンドル一派が悪政をしていたこととか、天成獣の宿っている武器を扱って戦うことができることは知っていた。

 一方で、水晶の中に能力を封じ込めることができる能力者がいること、能力者は自分の能力を他人に知られないようにしていることが多いこととその理由、そして、現実世界よりも発達した国が存在するということだ。そういう地域があることを―…。

 「まあ、文明の方に関しては分からないけど、魔術師ローが出したログハウスの中の水を出すという設備は、この地域じゃサンバリアぐらいにしかないもので、ローはそういう文明国の中で過ごしたことがあるのでしょう。私もサンバリアには、実際に行ったことはないけど、そこで物を運んでいる商会に近い武力集団を知っているから、彼らに会って、味方にしないといけないのよ。分かったでしょ。それにしても、あんたの世界にも、水を出す機械やそういう仕組みがあるなんて―…。それに、映像作品や時計など、ここじゃ高価品が庶民でも買えるなんて―……。」

と、ミランは、礼奈から聞いた現実世界の話に驚きを見せながらも、同時に、サンバリアなどと比較してしまう。

 決して、創作の中における文明の発展度合いにおける序列はあまり意味をなさないことを示しているだろう。比較することは、地域に限ってすることは可能であるが、異世界イコールすべてにおいて現実世界より優れているか、そうではない逆のことなのかということを一概に決めつけることはできないということである。

 その比較方法に批判を呈する人もいるだろうが、彼らの言っていることを間違っていると言う気はないし、彼らの正しいと言えるが、それでも、何かしらの比較ができないというのはおかしなものであるが、それは自分が優れているから良いのだとか、自分のところは劣っていることが悪いとか、そういうのではなく、相手の良さを自分の中にどうやって受け入れるべきかということのために、比較しているだけに過ぎないし、そのことを忘れてはいけない。

 物事を進展というか、社会を発展させるためには、自分の属している社会だけでなく、別の社会についてしっかりと本質を知り、必要なことを取り入れ、その技術を新たな段階へと導くことが大切なのだ。

 その繰り返しによって、社会というものは発展していくのであるから―…。

 そうだとすると、比較自体には意味があるが、その優劣だけで比較を終えるようなことをしてはいけないということになる。必ずかは分からないまでも、社会の発展への手がかりをしっかりと掴むようにしないといけないということだけは確かであろう。

 「まあ、高級品は買えませんけど、決して、安くはないですよ、時計は―…。」

と、礼奈は言うのだった。

 礼奈もすべての物の値段について知っているわけではないし、そのことを知れるだけの存在ではないし、そのための時間を有している存在でもない以上、どうしても何かしらの自身の主観、範囲性の問題というものが加わってくるのである。

 そうである以上、礼奈が言っていることが現実世界における全てだと思うのは危険ではある。一方で、すべてが嘘ということでもない以上、ある一面では合っているという認識でいるのが良い、ということになる。

 それは、人が世界というものを認識する上で、相手に伝えるということのゆえ、時間を消費するということが理由に、避けられるものではない、ということになる。なので、全てが嘘だとか、真実だとかで判断するのは危険なことでしかないし、そのことをしっかりと理解した上で、物事を考えることが大事であることを教えてくれる。

 「それにしても、羨ましいわねぇ~。で、今は石化ねぇ~。ベルグという人が関係しているのね。お母さんから聞いたけど―…。」

と、ミランは言う。

 ミランからしたら、ベルグのやっていることを許せるという感じにはならないが、そのおかげで、瑠璃への復讐からの和解に近い感じになったので、ある意味では幸運を呼んだ人という認識で、複雑な感情を抱く気持ちにはなる。

 それでも、ろくでもないことをしているし、瑠璃たちに協力しないといけない状況になっている以上、倒さないといけない存在になっているのは事実であろう。

 そのことで、一々恨んでいても仕方ないと思っているので割り切っているが、「人に創られし人」の一族に会わないといけないし、彼らを味方にしないといけないことに関しては、あまりそのようなことをしたくないという気持ちがあり、そういう意味ではやきもきに近い気持ちを抱いているという感じである。

 「はい、そういうことなので、石化を解除しないといけない。絶対に―…。」

 これは礼奈という人間が抱いている責任感。

 まだ、十代前半の年齢でしかない礼奈にとっては、とても大きなことに感じるであろうし、それはかなりのプレッシャーとなっているであろう。

 それでも、誰かが石化を解除させることをしないといけないし、それを為せる可能性があるのは自分達である以上、プレッシャーに押し潰されているわけにはいかない。

 なので、そのことを理由として、真っすぐにではあるけど、進み続けないといけない。

 そういうことなのだ。

 そして、二人の会話は続くのであった。


 前方。

 李章が護衛している場所では、隊商の長と李章が会話していた。

 「敵はいませんね。」

と、李章は言う。

 「緑の水晶」を使いながら、そして、自身の目でも見ながら、周囲に危機をもたらすものはないかを探る。

 だけど、見つからない。

 李章としては、隊商の長と長い会話をしたいわけではない。

 「あのアイビックサソリを倒すことができるのだから、君だけでもこの隊商の護衛はしっかりと務まるだろうけど、ここには大きな略奪団があり、彼らに狙われたら、こっちでは一溜りもない。あいつらは、商人の命までは奪わないが、荷物を奪っていく悪者だ。李章君。彼らに会ったのなら、容赦するな。彼らを殺すことに躊躇はしないで欲しい。そんなことをすれば、君だけでなく、君の仲間も殺されることになる。それだけは覚悟しておいてくれ。」

と、隊商の長は言う。

 この隊商の長であるミグリアは、砂漠の中での略奪を生業にしている者達がどれだけ危険な存在であるかを知っている。

 彼らは隊商を襲って、商人らを皆殺しにした後、荷物を盗んで、近くの都市に売りに行って、利益を得ることを平然とする。

 だけど、ミグリアが言っているのはかなり良心的な略奪団のことを言っており、彼らの存在がイスドラークからラナトールの間における交易にとっての障害の大きな要因になっているのは確かであり、邪魔な存在でしかない。

 それに略奪団は大小あれど、残酷なことをしないわけではない以上、彼らが殺されても文句を言う存在がいないどころか、むしろ、交易の安全が保障されるので、始末してしまった方が得であるという考えが根付いているのだ。

 だからこそ、良き判断を下せない場合だってあることに気づきにくくなってしまっているのだ。なぜなら、物事はすべてがすべて、完全に同じではないということは分かり切っているのだから、何が使えるのかを工夫して、それを組み合わせるような作業をしないといけないのだから―…。

 「ええ、分かっています。初日も長さんから言われましたから―…。多分、一番言った方がいいのは、私ではなく、礼奈の方ですね。彼女、頑固なところがありますから―…。」

と、李章は言う。

 李章は、礼奈のことをそこまで注目して観察しているわけではないが、戦いの中で必要なことに関しては、観察に近いことはしている。

 礼奈は、頑固な面があるというのは否定できないが、その頑固を貫き通せるだけの戦闘センスというものを持ち合わせている。ゆえに、有言実行ができているのだが―…。

 李章は、礼奈の戦闘センスを認めながらも、あくまでも戦いの素人に毛が生えたようなものでしかないと思っている。

 ゆえに、礼奈が苦しむことになるのではないか、そう思っているのだ。

 その判断はある意味では間違っていないが、それでも、礼奈の能力はそれすらを成長のための材料にするであろうが―…。

 (君もだけどね―…。)

 ミグリアは心の中で、李章が頑固であることを知っているからこそ、そう評するのであった。

 決して、言葉にして、李章に言う気にはなれなかったけど―…。

 そして、キャラバンは進みゆくのであった。

 何かしらの存在に覗かれていると気づくことなく―…。

第148話-5 略奪者 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆していくと思います。


では―…。

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