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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第42話-1 痛みと、そして、ぬいぐるみを持つ-・・・

前回までのあらすじは、第三回戦に瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドのチームはリンガイ兄弟に勝利することに成功する。一方で、ローとギーランが合流するのであった。

第42話も前回の第41話と同様に分割します。理由は想定よりも長くなったためです。

 【第42話 痛みと、そして、ぬいぐるみを持つ―…】


 第三回戦がおこなわれた日から翌日。

 場所はリースの城の中。

 そこは、医務室の前。

 その場所には、瑠璃がいた。

 瑠璃は、少し申し訳なさそうに医務室の方を眺める。

 (大丈夫かなぁ~、クローナ。)

と、瑠璃は心の中で思うのである。

 そんな瑠璃の心情の中に、医務室の方へと向かって歩く人物がいた。

 その人物は、瑠璃の親友である礼奈であった。

 「瑠璃、どうしたの。こんなところににいるの?」

と、礼奈はどうして瑠璃が医務室の前にいるのかを尋ねる。

 「うん、昨日のことが気になって―…。」

と、瑠璃は言う。

 「昨日のことって?」

と、礼奈はさらに尋ねる。

 瑠璃は、少し悲しそうしながら―…、

 「クローナに昨日、支えようとして触れたとき―…。」

と、ぼかす感じのように言う。

 それを聞いた礼奈は、納得するのである。瑠璃とクローナの昨日の出来事のことを―…。


 時は、第三回戦がおこなわれた日の夕方から夜の間に戻る。

 瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドは、リースの城へと帰ってきた。

 城の門をくぐると、そこにいた二人のセルティーのメイドに迎えられ、城の中へと入っていく。

 その後、各自の部屋へと戻り、男女別々に入浴し、夕食をとり終え、廊下のラウンジになっている部分に六人がいた。

 そう、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドがいるのである。もう、時は夜となっていた。

 「イェ―――――――――――――――――イ。」

と、クローナが言うのである。自らの勝利にまだ酔いしれているかのように―…。実際に、酔いしれているのであるが―…。それは、むしろ、今この時において、気分の最高潮をクローナはむかえていた。

 そのクローナの気分の良さは、他の五人にしては微笑ましいものと思われる。その中でアンバイドは、

 (あんなダメージを負ったというのに、ここまではしゃげれるとは―…。別の意味で恐れ入った。だが、あんなにはしゃいでいたら―…。)

と、クローナが再度にどこか別の所を痛めるのではないかと心配していた。そして、アンバイドは、さらに、

 (こりゃ、少しぐらい説教したほうがいいな。調子乗ると、どこかで痛い目に会いそうだし。それに―…、その痛い目がこちらにとって致命的なことになりかねない。)

と、心の中で呟き、動こうとする。

 一方で、瑠璃は、クローナと一緒に半分盛り上がっていた。理由は、クローナに半ば強制的に盛り上げさせられていたのであるが―…。それは、瑠璃にとっても満更でもなかった。

 そして、瑠璃は、優しくクローナの自身の右手をおいたのだ。

 そうすると、クローナは、

 「痛アアアアアア――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。」

と、叫び出したのである。これは、クローナの自らの意思ではなく、勝手に出されたのである。この時、クローナは、強烈な痛みが瑠璃の触れた肩の部分からしてきたのであった。それは、クローナにとって堪えられるようなものではなかった。

 その声を聞いてクローナ以外の全員が驚くのであった。

 瑠璃は、

 「大丈夫!! クローナ!!!」

と、心配そうな、罪悪感のあるような声で言う。

 「うぅぅ~、まだ今日の試合で受けた攻撃のダメージは、まだ治っていなかった。」

と、クローナは言う。

 クローナの痛みよる悲鳴を聞いたアンバイドは、

 (痛みはまだ治っていなかったか。それなのに、表面上痛みを感じなかったせいで、はしゃいで、瑠璃が痛みのある箇所に触れて、激痛に襲われたってところか。)

と、心の中でクローナの痛みに関する原因を自身なりに結論づけた。

 アンバイドは、前へと進み出る。

 言葉にはしていないが、俺が今この場で言うという雰囲気をアンバイド以外に感じさせるほどの威圧であった。

 ゆえに、クローナも一時的にではあるが、痛みよりもその威圧を感じ、アンバイドのいる方向に視線を合わせるのであった。他の瑠璃、李章、礼奈、セルティーも同様に視線を合わせる。

 「あんな体に大ダメージを受けるような一撃を喰らったんだ。ほんの少し時が経ったぐらいで、すっきりと治るか。それに、今日の礼奈、クローナの戦い方は、ヒヤヒヤさせるもので、危なっかしすぎる。攻撃力のある相手の攻撃は、避けることが基礎だし、受けるとしても武器で受ける、そして、相手の攻撃を一撃も喰らわない。これが常識だ。わかったか、二人とも。」

と、アンバイドは、礼奈とクローナに向かって言う。そう、第三回戦の二人の戦い方は、明らかに体格の優れており、防御力の高い者であれば可能な戦術である。しかし、礼奈とクローナはそうではないがゆえに、相手の物理的攻撃は受けてはいけないのだ。喰らってしまえば、簡単に戦闘不能になってしまうからだ。今回の第三回戦はうまくいったが、同じようなことをこれからも繰り返せば、そのような運命を避けることができずに、最悪、戦闘不能になった状態で相手によって殺されることさえあるのだ。

 そのアンバイドの警告にも近い言葉を受けた二人は、

 「「わかった。」」

と、言うのみだった。

 礼奈にとっては、アンバイドの言っていることは理解できるので、これからの戦っていくの必要なこととして頭の中に入れるのであった。

 クローナは、あまりそんなことを考えてはいなかった。そう、アンバイドに対して、うるさいなぁ~程度にしか思っていなかった。ゆえに、アンバイドに対する返事を表の表情では反省したように装いつつも、内面では適当に返したにすぎないのだ。

 「まあ、反省してくれたのなら、それでいい。次回から気をつけるように。」

と、アンバイドは言い、

 (礼奈の方は理解しているみたいだな。一方で、クローナの方は理解しているふうに装っているな。言い方がどこか、適当な感じだったし。)

と、心の中で呟いた。そう、アンバイドは、礼奈とクローナがどのように自らの注意を受けとめたのかをある程度は、表情や声の抑揚などでわかっていたのである。さすがに、アンバイドでも細かい部分までわかったというわけではない。

 それを理解していたゆえに、アンバイドは、クローナに近づいて行った。

 そして、アンバイドは瑠璃がクローナに手を置いた同じ場所に自らも片手を優しく置いたのである。そう、今のクローナにとって激痛が走る場所に対して―…。

 だから、クローナは、

 「痛アアアアア――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。」

と、再度叫ぶのであった。

 そのクローナの声は、リースの城の中の誰にでも聞えたという。

 そして、激痛が少し治まると、クローナは、膝を廊下の地面につき、片手で痛い箇所をおさえるのであった。そう、相手に触られて、激痛を走らせないために―…。

 「―――――――――――――ッ!!」

と、クローナはそうしながら―…。

 「これで、少しは理解したか。まあ―…、そんなことよりも、明日は、修行に関しては、李章以外休みとする。理由は、俺が李章の天成獣の会話のための術式をおこなうからだ。」

と、アンバイドは、話の方向を変え、明日李章の修行のために他を休みすると告げた。

 それに関しては、すぐに全員が同意する。理由としては、修行することは必要であるが、毎日、修行して、休みなしに試合をしたくないからである。そうしてしまうと、体が無理してしまい、体を痛めてしまいそうだと感じていたのだ。

 以後は、解散となって、各々時間となったという。


 時は、第三回戦のおこなわれた日の翌日に戻る。

 瑠璃と礼奈が医務室の前で会話をしている場面だ。

 「まあ、三回戦の試合で、リンガイ(相手)の強い攻撃を受けたのだし―…。しょうがないかな。昨日、クローナが抱きついてきた時に、水晶の能力(チカラ)を使ったんだけど―…、痛みまではダメだったみたい―…。それに、私の方の回復も完全ではなかったから。」

と、礼奈は言う。

 「まあ、クローナの痛いという発言は、瑠璃のせいではないよ。アンバイドさんもやっていたし―…。それに、クローナ、昨日の受けた攻撃の痛みが引かずに、今医務室で治療中だと思うし―…。今日の朝に、セルティーさんとともに医務室に行くっていっていたし―…。」

と、続けて言う。

 「そうね。うん。」

と、クローナのことを心配しながら瑠璃は言う。

 「それよりも、今日は折角の休みだし、のんびりしたほうがいいよ。気持ち的にも、体についても―…。」

と、礼奈は言う。

 そうして、今日は、瑠璃、礼奈はゆっくりと会話しながら、のんびりとしたという。瑠璃は気持ち的な面で、礼奈は昨日の試合における若干残っている痛みから回復するために―…。


 リースの城の中の医務室の中。

 「痛アアアアア―――――――――――――――――――――。」

と、言う悲鳴にも近い声が聞こえる。この声の主はクローナである。

 今、クローナはどんな状態かというと、現実世界におけるツボを押されているのである。それも痛みを感じるツボを―…。

 なぜ、こんなことになっているのか。それは、アンバイドに対して、ふざけたことをしたために、「厳しい修行」をさせられていたのだ。ちなみに、アンバイドは、元々別のする予定であったが、リースの城のお抱えの医者とたまたま話す機会があって、東の方から伝わったとされるツボ押し?みたいなものを知ることとなった。このツボ押し?を受けたアンバイドが、ちょうどいいと思い、これをクローナと、そしてもう一人のための厳しい修行に入れたのだった。

 クローナは、女性の医者によるツボ押しが一つ終わると、

 「痛いんですけど――…。お願いしますから、終わらせてください。」

と、クローナは涙ながらに訴える。

 「ダメですね。アンバイドさんが言うだけでなく、私個人からしても、今のクローナさんの体のバランスが悪いので、ツボなどを押して治療したほうがいいですね。ということで、続けましょう。」

と、医務室にいるリースの城のお抱えの女性医師は言う。

 「嫌、拒否権があるよね。」

と、クローナは叫ぶように言うが、この医師に対して通じるわけがない。医師は、治療以上にそのことを楽しんでいるのだから。相手の痛がる声を聴くことに快感を感じながら―…。

 (ああ、たまらない。この快感。)

と、心の中で言葉しながら―…。

 そして、再度ツボを押されたクローナは、

 「痛アアア――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。」

と、さらに大きく、クローナは悲痛な叫び声をあげるのだった。

 後に、この医師は、リースの城の中で最もサディストではないかという噂がたったという。

 ちなみに、クローナの後には、セルティーも同様のものを受けて、同様に叫び声をあげたとか。


 一方、リースの城の中庭。

 ここは、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティーが修行をするために使われている場所。

 そこには、今日、李章とアンバイドがいる。

 そして、李章のいる場所を中心として、術式が地面に描かれている。

 これは、瑠璃、礼奈、クローナ、セルティーが天成獣との会話をするために描かれた術式と同じである。そう、李章は、第二回戦がおこなわれた日の翌日の自らの天成獣のいる場所での会話に参加できなかったのである。第二回戦の第五試合で敗れたがために―…。

 李章は、描かれている術式を見る。回りながら、ゆっくりと―…。

 「これが、前回、瑠璃たちが受けた修行をおこなうために必要な術式だ。天成獣がいる場所へと行くためのな。」

と、アンバイドは李章に向かって言う。

 李章も、術式を見渡しながらアンバイドの話を真剣に聴く。ただし、完全にアンバイドの言っている内容が頭に入っているわけではないが―…。

 「まあ、実際、瑠璃、礼奈、クローナ、セルティーを同時に四人だと、俺は三日間動くことすらできないほどの代償を負ったがな。この術式で―…。今回は李章、お前一人だから、代償自体は前回よりも少なくなると思うが―…。ってか、こっちの話をしている場合ではないか。」

と、アンバイドは自らのこの術式による代償を説明していくが、これが今現在の李章に関して意味のないことだと気づく。アンバイドとしては、どうしても自らに負うリスクについて説明をしてしまう。その理由は、相手に成功してほしいと思っているからであり、これで成功させなければ、今までの自らの負った代償は何だったのかという腹立たしい気持ちになってしまうからである。むしろ、後者の方が強かったりする。

 「李章、お前が天成獣と話し、信頼を得ることができれば、天成獣自身の力をうまく発揮させることがあるかもしれない。しかし、信頼を得ることができなければ、二度と自らの持っている武器に宿っている天成獣の力を使うことができないかもしれない。それだけは、覚悟しろよ、李章。」

と、アンバイドは低いトーンの声で、李章に対して、真剣な意味で言っているように思ってもうように言った。

 「はい!!」

と、強く李章はアンバイドの言ったことに対して、返事をする。

 「その返事を聞いて、安心していいのか、そうでないのかはわからんが、覚悟があるということだけはわかった。とにかく、始めるとするか。」

と、アンバイドは言う。

 そして、アンバイドは、李章の周囲にある術式から離れ、術式を発動させた。


第42話-2 痛みと、そして、ぬいぐるみを持つ―・・・ に続く。

誤字・脱字に関しては、修正できる範囲で修正していくと思います。

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