第41話-2 決まる戦いとそれぞれの動き
前回までのあらすじは、チーム名が決まりました。そして、第三回戦に瑠璃チームは勝利しました。
今回で、第41話は完成します。
ここは、魔術師ローのいる世界のどこか。
そこには、人が一人歩く音がする。
その一人の人は、自らが目指していた部屋の前に辿り着く。
そして、一人の人は、部屋の扉に手にかけ、扉を開けるのであった。
一人の人が、目指していた部屋の中に入ると、そこに、一人の女性がいたのだ。十代後半から二十代前半ぐらいと見た目の印象で思われる。
「ベルグ、どうしたの?」
と、一人の女性が尋ねる。それは、一人の人、いやベルグが、悔しそうな顔していたのだ。何か嫌なことでもあったのだと思ったから、尋ねてみたのだ。
「フェーナか。あ~、実験のためにその世界を石化させた世界に行ってきたんだ。その世界の時間を止めた犯人であるギーランに―…。」
と、ベルグは言う。
「そうだったね。で、悔しそうにしていた、ってことは、ギーランにでも負けたの?」
と、フェーナはベルグに聞く。
しかし、それはベルグの怒りを増加させるだけだった。
「ギーランに俺が負けるか!! むしろ、戦闘にはならなかった。魔術師ローの作った仕掛けで、俺が、二度と今実験している世界へと行けなくなってしまった。」
と、ベルグは悔しそうに言った。このときばかりは、ベルグに冷静さは少ししかなく、感情的にもなっていた。
「そう。それでも実験に支障が出たりはしないのでしょ。ベルグ。」
と、フェーナは言う。
その言葉を聞いて、
「その通りだよ。フェーナ。この実験は、たとえ、魔術師ローだったとしても止めることはできやしない。できるはずがない。ローは、俺のところへは確実に来れるはずもないのだからなぁ~。」
と、ベルグは確信したような、勝ち誇ったかのような表情になる。そう、魔術師ローは、ベルグのもとへ来ることはよほどのことがなければ、来るはずがないのだ。自身の心境に大変化を及ぼすほどの出来事がなければ―…、というレベルのきっかけが必要なのだから―…。
「それは、そうと、ランシュはリースで瑠璃、李章、礼奈を倒すためにゲームを始めたみたいだよ。最大で十週間ぐらい続く―…奴の―…。」
と、フェーナは言う。そう、ランシュがリースでゲームを企画して、瑠璃、李章、礼奈と対峙するというゲームを―…。
それを聞いたベルグは、安心する。
「そうか。ランシュもランシュなりに俺の命令の意図を読んでやっているということか。感心だ。」
と、ベルグはランシュを褒めるのであった。そこにランシュはいないが―…。
「さて、実験の方も進めていかないとな。」
と、ベルグが言うと、自らの実験を進めるために、ある場所へと向かって行ったのだ。
フェーナは、ベルグがいなくなるのと同時に、自らの部屋へと戻っていったという。
(そろそろ、サンバリアに戻って、いろいろ職務を片付けたいなぁ~。)
と、思いながら―…。
話しは、リースの競技場の中央の舞台と戻る。
第三回戦第二試合に勝ったクローナが、四角いリングから降りて、瑠璃と礼奈の元へかけていく。
「私、勝ったよ――――。みんな――――――。」
と、言いながら―…。
「クローナ。」
と、瑠璃が言い、
「よかった。」
と、礼奈が安堵するのであった。
そして、瑠璃、礼奈、クローナの三人が抱きつき合うのであった。
そのとき、礼奈は、クローナに抱きついている間に、青の水晶で、クローナが第二試合で受けたところを治療するのであった。すべて、回復させるには至らなかったが―…。
そうして、セルティーの機嫌を直して、一行は、リースの城へと帰っていくのであった。
ここは、砂漠の始まり。
一方では、港町があり、町を一歩でも出れば、そこは一面の砂砂漠となる。
瑠璃、李章、礼奈が来ている世界は、実は地球と同じく円形で、地球の大陸とほとんど同じなのである。
それでも、多くの面で違うところもあるが、共通しているところもある。
例えば、この砂漠がそうである。
この砂漠の始まりは、リースから海を渡った別の大陸にあるものだ。そして、この砂漠は、異世界において、最大の大きさを誇るといわれているのだ。地球でいうところのサハラ砂漠のように―…。
この砂漠の名は、今ところ触れないが、この港町から一直線に砂漠を進むと、イスドラークというオアシスの大都市、さらにそれを突き進み、砂漠の終わるところには、サンバリアという巨大国家がある。
その方向を見渡している歳を召された女性が一人、そこにいた。
魔女と思われそうな恰好をしているのだ。その人物は、世界において、暗躍などをしているのではないかといわれる、そう、魔術師ローである。
(今、たぶんだけど、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、アンバイドは、リースにいることじゃろう。はて、儂は、どこへ行くとするかのぅ~。)
と、ローはどこへ行こうか悩んでいた。
(砂漠を越えて、サンバリアに行くのも一つじゃが―…。あそことは、今は良いとはいえなからなぁ~。二年前の革命で―…。なら、砂漠を越える前に、寄るとするかのう~。今後のために、あの一族に―…。二百年前にこの大陸に渡ってきた一族に―…。)
と、ローは、砂漠を越えようと考えるのであった。そう、砂漠の終わり頃の近くに、二百年前からこの大陸に住みつく、一族がいた。渡る前に迫害されていた一族が―…。人に創られし人の一族が―…。
(あの一族は、儂としても関係が濃すぎるがゆえに―…、あ奴らは―、儂にとって―…。)
と、ローは口つぐんだ。これ以上は、ロー自身も知っている。だけど、心の中でも今時点で、口にすることではない。
そして、これは後に誰も知ることになるだろう。ゆえに、今ただ、黙っておく、その時のために―…。
ローは、砂漠の中へと突き進もうとする。
そして、少し砂漠の丘になっているところに到達すると、ふと、目の前に丸いドアのようなものが出現する。それにローは少し驚くが、それが、知っているものであることを思い出して、足を止め、その術式の入ったものを渡した人物が、異世界に戻ってきたことがわかった。なので、その渡した人物の名を、開かれている扉に向かって言う。
「やっぱりお主か、ギーラン。」
と、ローは言う。扉を開き、出てきた人物であるギーランに―…。
「ローさんか。お久しぶり。現実世界は石化している。それにベルグが関与している。ベルグの奴が現実世界に来て、俺と接触してきた。あいつを現実世界に行かせないようにした。だが―…、時間停止はベルグの奴によって、解かれてしまった。だから、時間の進行を最大限遅らせる方法をとってきた。ローさんが渡した術式で―…。で、こっちの世界に渡った三人とは合流できたのか。」
と、ギーランは、自らが向かった現実世界で起こったことと、ベルグについて伝えたのだ。今の言葉以上のことを言って―…。
ローは、瑠璃、李章、礼奈に合流できたことと、協力者であるクローナがいることを告げた。そして、さらに続けるように―…、
「そうか。ベルグが現実世界に来たのか。なら、石化に関与していることは確定ということになるのう~。そして、石化はベルグという人物の何かの企みにとって重要ということか。」
と、ローは言って、しばらくの間考える。
そして、ローは、
「わかった。この砂漠を越えて、あの一族に久々に会おうとしたが、それはまた今度じゃ。ギーラン、儂はリースへと向かうが―…。どうするんじゃ。お主は。」
と、言う。
これは、ローがギーランの話しを聞いて判断した。ギーランがもたらした情報が大きいということと、ベルグが石化に関与していることが明らかになった。ゆえに、瑠璃、李章、礼奈、クローナに伝える必要があると―…。ものすごく急ぐわけではないが、砂漠を越えてからの引き返して行くには、遠すぎるからだ。
しかし、それをローは瞬時に可能であるが、空間移動となると、それなり自らの力の量をかなり消費してしまうのだ。ゆえに、よっぽどのことがない限りは、使用しないようにしている。それに、今は術式の中に空間移動に関するものは一個もないし、作っていないのだ。作るのにもかなり力の量を消費してしまう。
結果として、ローは船を使って、海を渡ってから陸路でリースを目指すしかなかったのだ。
そして、戻ってきたギーランに対して、ギーランが急に行かなければならないことがあるのかを尋ねる。
「俺としては―…、リースに向かうのだから、近くにある家へ寄りたい。イルーナやミランにもひと目会っておきたい。しばらく会っていなかったからな。」
と、ギーランは言う。
ギーランとしては、ここからリースへと向かうとなれば、近くにある自らが暮らしている(ほとんど戻っていないが―…)家がある。そこには、ギーランの配偶者であるイルーナと、ギーランとイルーナの娘であるミランがいる。ギーランは、行方不明になってしまったミランの妹にあたる子のローとともに探していたのだ。どこにいるのかもわからない、大事な家族を―…。そう、連れ去られてしまった自らの娘を―…。そして、同時に、探すために辛い思いをさせてしまっているイルーナやミランに申し訳なく思うのであった。ギーランとしては、家族四人で一緒に暮らしたいからだ。そう、家族の誰一人が欠けるということなく―…。
「そうか、わかった。そっちのほうにも向かおう。」
と、ローは了承するのであった。
こうして、ローとギーランが合流し、リースへと目指すのであった。特にローにとっては再度であるが―…。
第三回戦の試合がおこなわれた日の夜。
深夜といってもいいだろう。
リースの城のアンバイドが宿泊している部屋。
そこにはもちろん、アンバイドがいた。
アンバイドは丸い小さなテーブルに置いてあるペンダントを持ち上げる。
そして、ペンダントの中身をみる。
その中には、丸い形をした写真が一枚入っていた。その写真は、一人の女性の顔が写った写真であった。
この写真に写った人物をアンバイドは眺めるのであった。愛おしそうに―…。
この人物とアンバイドの関係は、夫婦であった。
そう、夫婦であったのだ。
それは過去のこと―…。
ゆえに、アンバイドは復讐の原因となっているのだ。つまり、アンバイドの配偶者は、もうこの世にはいないのだ。
(お前を殺したベルグは、絶対に俺がこの手で殺してやる!!)
と、アンバイドは心の中で言う。あの日のことを思い出しながら―。そう、大切な人が殺された日のことだ。
(フィナ。もし、復讐に成功したら―…、きっと、お前のもとへ―…。)
と、自らの愛した女性の名を心の中で呟きながら―…。
【第41話 Fin】
次回、痛いと叫びます。後は―…、ぬいぐるみ?
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
今回の更新は、『水晶』のいろんな面の伏線をはったと思います。第一編で回収されるかもしれないものもありますが―…。