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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
699/746

第146話-11 砂漠へ―…

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 一方で、ランドロからしたら、アルタフがサンバリアで権力を握っている方が都合が良い。

 余計な戦争にはならないだろうし、交易品の輸出が盛んになるのだから、自分達も商売で利権に絡めるからだ。

 その商売で過剰な利益を得ようとはしていない。

 なぜなら、利益を過剰に得て、最大化するようなことをすれば、歯止めがかからなくなるし、誠意を欠くような商売は結果として、自分らを自滅させる結果にしかならないことは分かり切っているのだから―…。

 商売はお客に対する誠意というのが必要であるのは確かだし、商人同士の誠意が大事だし、人柄というのは良く見られたりするのだ。

 人柄が良いと、良い情報を貰えたりすることがあるし、その情報で得することがあるのだ。

 だけど、性格が良すぎるようなことではいけない。

 相手だって利益を得たいので、誰かを損させるようなことをしてもおかしくはない。誠意と同時に、強かさというのも重要になってくるということだ。

 そして、ランドロからしたら、アルタフの気持ちを汲むことはできない。

 「だが、匿うことはできたとしても、お前さんがいなくなったサンバリアはより征服戦争への歯止めをかけようとしなくなるぞ。我々からすれば傭兵を出すという感じで儲けることもできるが、交易の方が安全性が高いから、そっちの方が良いのだが―…。」

と、ランドロは言う。

 ランドロからしたら、傭兵派遣をやっていないわけではないが、死傷者とかを考えると、やっぱり商売の方が危険性は少ない。

 隊商における護衛ならば、モンスターや盗賊対策を進めておけば良いだけだし、こっちの方も危険であるが、サンバリアとの戦争で敵側へと派遣されることが多いことを鑑みると、やっぱり村の者達の死傷者が少ない方が有難いのであるが―…。

 そういうことを思っていたとしても、生きていくためには金銭を得る必要はあるので、応じないわけにはいかないのだ。

 このカルフィーアという地は、オアシスなので、そこそこに農作物を生産することができるが、そればかりで生きていける人数には限界というものがあるし、交易があった方が、より多くの者達を養うことができる。小さい罪のない子どもをこれ以上増やせないという理由で、殺すようなことなど、もう二度としたいとは思わない。

 カルフィーアは砂漠という過酷な環境だからこそ、厳しい選択をしないといけないことは多々あり、その選択をしなくても良い状態から離れるのはどうしてもできないことなのである。

 命を軽く見ているのではなく、重く見ているからこそ、嫌でもしないといけないことから逃れられることができるのなら逃げたいし、逃れられない状況にはなりたくない。

 それを立ち向かうということなのであろう。

 自分達が残酷な選択をしないといけないという場面から―…。

 一方で、ランドロの言葉を聞いて、アルタフは考えながらも自分の意見を曲げるようなことはできなかった。

 「ランドロ殿。私はまだ働ける年齢ではあるでしょうが、二年前の敗北者である以上、自分が権力を握るようなことをしてはいけない。それに私ができることは支えるということだけです。サンバリアをイバラグラから取り戻したとしても、次の時代の人間を育成することしかできない。譲歩できるのはそこまでです。」

と、アルタフは言う。

 自分の意見を一切曲げていないように感じるが、肝心なのは、自分がもうサンバリアの権力者側にならないということを一切、曲げていないということである。

 自分が時期後継者を育成する、次世代を育成することに対しては、まだ妥協してよいと思った。

 なぜなら、自分の後のサンバリアを担っていく世代というのは、大事なのことであり、その人材が自分より劣っていたりしたとしても、その真逆であったとしても、才というのは磨かないことには、光り輝くことはないのだから―…。綺麗に輝くという面で―…。

 なので、ちゃんとしっかりとした育成および本人の自己の考えを尊重した上での成長をもたらすようにしないといけないし、それをなすには対話が必要であるということは当然のことであり、コミュニケーションをとれるようにしないといけない。相手との関係は、何事においても重要なことであるから―…。

 そして、アルタフは言葉にはしなかったが、自分が次世代のサンバリアを率いるための人材として、すでに目をつけている人物はおり、この人物をしっかりと見守りながら、育てること、助言を与えることが大事だという認識を確かめるのだった。

 そのためには、サンバリアを攻めて、イバラグラ体制を崩壊させないといけないということになる。

 そうなると、アルタフは結局のところ、神輿の役割を与えられることになる。

 それに加え、実質の言論面での主導者的役割を自らの意思を持ってしないといけないということだ。

 それを理解してしまうと、アルタフの気持ちは少しだけ、げんなりしてしまうのであった。表情には出さないようにしながら―…。

 それは、周りの空気を読んだからであろう。

 そういうことだ。

 「そうか、ありがたい。だけど、お前のことなら、レオランダ王の意志というものを言うのかと思ったが―…。」

と、ランドロは言う。

 ランドロからしたら、サンバリアでアルタフという存在は知らないものがいないであろうし、影響力も凄まじいものであることは分かりきっており、レオランダ王の意志を継いで、サンバリアの権力者、トップになることもできるだろうに―…、そう思ってしまう。

 だけど、アルタフがこのようにサンバリアの権力者になりたくないという気持ちは本気であり、そこに嘘は見られなかった。

 なぜ、そのように思っているのかという理由は聞いたが、納得できるものではまだなかった。それ以外の理由があるのではないか。

 「死んだ人の意思を完全に継ぐことなどできはしません。その人の気持ちを理解することはできますが、完全にできるものでもありません。それに、レオランダ王の意志が後々の時代の足枷になることだって十分にあります。どんな時でも柔軟に対応していくことをしていかないといけません。だけど、どの方法を選ぶにしても、何かしらの意志や方針というものがなければならないでしょう。なら、レオランダ王の意志を継ぐと発言すべきなのは、私ではなくて、その発言をしっかりと言える王政の崩壊の原因をしっかりと知った上で、それを批判的に継承できることができると見込める人間だけです。私にはその資格はとうにありません。私の人生のアディショナルタイムはまだまだ続きそうだ。」

と、アルタフは最後の方は気持ちを落とすように言うのだった。

 そこから、よっぽどサンバリアで政権を取りたいという気持ちがないのかというのを周囲が理解させられる。

 それぐらいまでに、アルタフも疲れているということなのであろう。取り繕うのが駄目になっているのだから―…。

 そして、スメラの方は、アルタフの気持ちを理解できないわけではないからこそ、ここで、サンバリアの実権を再度、掌握しろとは言えない。

 (………この人らしい。若い頃のように積極的には行動できない。年老いたものねぇ~。だけど、それで良い。次世代はこういう時に育つのだから―…。)

と。

 口には出していないがスメラからしたら、イバラグラ体制が崩壊し、レオランダ王がおらず、アルタフもサンバリアの実権を握る気がない場合、権力闘争が加速しそうな感じもしなくはないが、それでも、結局、自分のことばかりしか考えられない人間が実権を掌握し続けるようなことはできない。

 人々の生活を本当の意味で良くすることができない支配者は、どこかで酷い目に遭うことは避けられないのだから―…。それは思いというよりも、結果という面で―…。

 そして、女の勘の類が入っているので、その直感は意外にも当たりやすいとさえ思える。

 根拠のない直感を簡単に無視できないのは、それが正解を言っている場合もあるからだ。根拠のない直感は何を言っており、それは本当に実現できるのかをしっかりと時間をかけ精査することで、判断することは可能であろうが、頭の中から抜け落ちていること、未知の概念というものがあれば、精査はできないものになってしまったりすることもある。

 そして、人間という存在が完璧にも完全にもなれない存在であるからこそ、このようなことが起こってしまうのだ。ミスをしない人間、ミスをしなくても想定外のことが起こっていることなどの経験があれば、十分に前文の証明の一つの材料として寄与していることになる。

 そして、スメラは、暫くの間、静観するのだった。

 会話を邪魔する理由はないのだから―…。

 一方、ランドロは考えていた。

 ある事を言うべきか、どうかを―…。

 だけど、まだ言うべきではないことを―…。

 迷いながら判断を下すのだった。

 「リガ、エンゲル。お前らには、儂の方から、サンバリアから亡命してきた者達へのカルフィーアでの滞在を認めるということを知らせてきて欲しい。それと彼らのための宿泊場所へと案内して欲しい。アルタフとスメラに関しては、世間話でもしてから、儂の方で案内しようと思うので、宿泊場所へと案内をした後は、自由にしても良い。報酬はいつもの場所で受け取るようの~う。」

と、ランドロは言う。

 「分かりました。エンゲル、行くわよ。」

 「お……おう!!!」

 リガとエンゲルは、「長」のいる部屋から出て行くのであった。

 その時、エンゲルの表情は、何かしらのことを言うのではないかという予感を感じたのか、探ろうとしたが失敗することになる。

 そんな二人の気配が消えるのを感じた、ランドロは―…。

 「ふう~、これを言っておくべきかもしれんな。儂らの始祖の母と言った方が良い人からサンバリアの二年前の事件に関する事件の顛末をこちらは聞いているのだ。まあ、こちらとしても信じがたいことなので、村の者にも誰にも伝えていないし、始祖の母と言った方も皆に言うなと言っていたのだ。理由はサンバリアでの反乱を抑止することと、大きな犠牲を出さないためだ。」

と、ランドロは言う。

 今回の事件に関する情報を聞いて、そして、アルタフの気持ちを聞いて、自分が何を言わないといけないのか理解させられるのだった。

 それと同時に、カルフィーアの村の者達には今は、言えないことがあるのだった。

 なぜなら、この事実を言えば―…、彼らの行動はきっとサンバリアへと向かうし、さらに―…。

 「レオランダ王は―…。」

と、ランドロは言う。


 その話を聞いたアルタフは涙を流すのだった。

 その涙の理由はここで記す必要はないだろう。

 「そうだったのですか―…………。なのに、なぜ、言わないのですか?」

と、アルタフは質問をしてしまう。

 アルタフからしたら、自分が今、言っていることは真っ当な質問であり、この事実を知れば、皆が悪い反応をするとは限らないのだ。

 なのに、なぜ?

 「約束だからな。」

と、ランドロは静かにそう言うのだった。

 これは、「始祖の母」と言った人物との約束でもあり―…。

 そして―…。

 この場での会話は暫くの間、続くのであったが、その話は他愛ないものであり、これ以上、記す必要もないだろう。


第146話-12 砂漠へ―… に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆していくと思います。


では―…。

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