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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
698/748

第146話-10 砂漠へ―…

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 これはアルタフの要求だ。

 アルタフからしてみれば、サンバリアでトップの地位にも、実権を握りたいとも思っていない。

 なぜなら、アルタフは二年前の時点で、自分は取り返しのつかない失点をしてしまっているのだ。

 それは、サンバリアの王政を崩壊させるということを―…。

 その失態をしてしまった人間が、この二年の間、生き残り、議員の地位にあったのは、サンバリアに住んでいる者達が、イバラグラ側の者達によって、不幸なことにならないようにするためのことであり、アルタフにとっては人生のアディショナルタイムを過ごしているだけに過ぎない。

 そうである以上、自身が権力を手に入れることに固執する気はないし、イバラグラを倒したとしても、フェーナやラング家をサンバリアから追い出さない限り、自分の手に権力は回ってくることはないし、その回ってきた権力を手にしたいとは思わない。

 自分は失敗した身であり、許されないことをしたのだから―…。

 それに、サンバリアを本当の意味で繁栄へと向かわせるのは、これからの世代であり、建国当初からの方針は変更され、新たな可能性への船出をしないといけないのだから―…。

 新たな可能性がどっちに転ぶかは、未来のある地点において分かることであろう。永遠の繁栄というものを人が築けないということである以上、どこかしらで腐敗することもあり得るであろうが―…。

 人という歴史は失敗の歴史でしかないというのは、ある意味で的を得ているということである。

 だけど、同時に失敗から学び、繁栄を長くさせることができ、自らの種の生存を長引かせることができる可能性を備えており、それを続けていくことが種の滅亡から逃れ期間を長くするための方法でしかない。それを人という生物に含まれる存在は続けていかないといけないのだ。

 そのことに気づけるかどうかは、人それぞれであり、理解は人によって異なる面も発生するであろうが―…。

 一方で、失敗した身であったとしても、それを挽回することは可能であり、実際に、そういうケースは多くあるが、それが人々のためになるか、社会のためになるかは、その挽回した者の狙いが何であり、どういう状況なのかにもよる。

 ゆえに、安易なことを言うことはできないが、失敗したとしても本当の意味で、その人の利益および社会、人類において必要な挽回がなされるとは限らない。その逆も十分にあり得るのだから―…。

 だからこそ、人は良い方法に対しても、時には本当に正しいのかということをしっかりと確認するという作業と別の可能性での適用は可能かということを考えないといけない。

 我々は、この世界に存在している限り、そこから逃れることはできない。

 さて、話を戻し、アルタフはサンバリアの地位や権力にすでに興味はなく、大人しく隠居に近い感じで過ごそうとしている。匿われるので、ある程度の協力は必要となることは仕方ないと思いながら―…。

 権力を欲する人間は時代によって大小という数はあれども、欲する者がいないという時代はない。

 その権力の良き面ばかりを見てしまい、悪い面を見ないということによって、それが羨ましい、自分の手に入れるべきであるものだとみなしてしまう。

 本当は、デメリットというか、面倒くさい面もしっかりと存在するのであるが、それがあたかも存在しないような感じで―…。

 まあ、そのようなことを知っているからこそ、そして、失敗した身である自分がサンバリアの権力を握ったとしても、過去に囚われるだけで、決して良い結果にならないと思っているからだし、完璧超人に近い政治生活を送るのにはかなりの体力を要するものであり、それをし続ける気力はすでにほぼないのだ。

 イバラグラ体制の中で、弱者やイバラグラにあまり良い印象を持たない者達が酷い扱いを受けるようにないようにするために、僅かな気力を振り絞って頑張ることができたのであろうが、サンバリアから逃げ出すような結果となり、気力は絞りカスすらないほどになってしまっている。

 そんな感じだ。

 そうだとすると、ここで、無理に権力を掌握させるようなことはできない。やる気をなくすことによって、政治が退廃することは歴史が証明している一面であり、自己利益のみばかりに執着する輩を止める者がいなくなるだけだ。

 権威はそういう意味で強い力を有するのであるが、それが機能しなければ結局のところ、意味をなさないどころか、最悪の状態へと社会や国家を導くことになる。それが続けば、誰かが権力を奪うまで、いや、正しくは真面な行動が権力を奪取後におこなうことができる者が奪わなければ、最悪は続き、その衰退は酷い結果を生み出すことになる。

 それは同時に、権力側の権力喪失と同時に、喪失した者達の生活自体を奪いかねない。自業自得と言えば正しいのかもしれないが、そうであったとしても、それは周囲を巻き込むことであり、結局、誰かがどうにかしないといけないという、事態であることに間違いなく、自業自得だけで終わらせることはできない。

 気づかないといけない。

 しっかりと真面なことをしている人を評価しないといけない。

 それができないようであれば、社会や国家、組織というものは衰退の道を、腐敗の道を歩むしかない。

 さて、さらに、長くしてしまったので、続ける。

 「!!!」

 ランドロからしたら驚きでしかない。

 (………アルタフほどに宰相に似合うようなナンバーツーが似合うような人物はいない。王や議長の傀儡は必要ないほどの信頼を世間から獲得しておるのに、フェーナやラング家からサンバリアの権力を奪えば、これまでイバラグラ体制で黙っていた者達が、アルタフの味方をしてくれるだろうに―…。いくら軍事体制で、資本家どもを味方にできていようとも、軍事を掌握していようとも、国民の大多数の反抗にはかなうはずもない。周辺諸国へと戦争を起こしまくっている以上、彼らもその好機を利用するはずだ。アルタフは周辺諸国にも顔が効くはずだし―…。よっぽど疲れたのだろうか。)

と、ランドロは心の中で思う。

 ランドロからしてみれば、アルタフという存在はサンバリアに本当の意味でなくてはならない。なぜなら、サンバリアおよび周辺諸国と上手くやっていくためには、彼のような人が必要なのは分かっているはずだ。周辺諸国においても―…。

 イバラグラ体制で、征服戦争が再開されたとしても、このアウリア大陸の中でサンバリア以上の科学力を持ち合わせている科学技術大国はない。ゆえに、周辺諸国から攻められるようなことがあったとしても、サンバリアが滅びる可能性はかなり少ない。

 天成獣の宿っている武器を扱う軍勢がかなりの数で攻めれば、話は変わってくるだろうが、この異世界においては、天成獣の宿っている武器であったとしても、いつまでも戦い続けられるわけではない以上、軍事力というか、科学技術の力は大きな意味を持ち合わせていたりする。

 ゆえに、その力をこのアウリア大陸の中で一番のサンバリアが最強国なのは必然的なことである。

 一方で、アルタフが自分ら「人に創られし人」の一族と協力して、サンバリアを攻め、イバラグラ体制を崩壊させるようなことがあれば、国民の多くはアルタフの方に味方するだろう。

 なぜなら、若い世代の中にも、イバラグラ体制のことに対して、不信感を持っている者はおり、さらに、付け加えるなら、口には出さないだけで、イバラグラ体制を支持する多くの者は、サンバリアのイバラグラ体制から拡大し始めた格差の拡大と中間層の窮乏化により、何かしらに不満を感じているのは噂で聞いていたりするし、報告はいっぱい上がっていたりする。

 このカルフィーアの村の者達は、護衛だけの仕事だけでなく、商売もおこなっている以上、そういう噂を手に入れることは容易だし、サンバリアに商売へと向かった者達の何人からも、その情報を手に入れているのだから―…。

 一方で、若い世代の多くは、イバラグラ体制に賛成しているようだ。周辺諸国への征服戦争での勝利を我が事のように喜びながら、さらに、その美化を学校での教育からマスコミらによる情報で、イバラグラ体制側からの意図的な情報を聞かされており、それをそのまま信じ切ってしまっているのだ。若いがゆえに、経験というものが足りないということや、知識不足というのもあるのだろう。

 良い事を信じるのあれば、それは良い方向により強く推進されるが、その逆になれば、悪い方向に推進するスピードは一たまりもないものとなる。

 ゆえに、若さを美化するのは、それなりの危険性を持ち合わせていることを理解しないといけないし、年を取るからすべてがすべて、衰えるのではなく、伸びる能力もあるからこそ、自分を少しずつ変わっているし、それは決して、悪い事ばかりではない、という認識が重要だ。

 ただし、老人に分類されるであろう人が、全員良い人かと問われれば、それは嘘でしかないことにも注意しないといけない。

 大事なのは、一方的な考えを抱くことなく、一人一人をしっかりと見ていくことが重要であることを認識し、実践することだ。それには人と接することを避けることはできないし、無理しない範囲でやっていくしかない。そういうことだ。

 そして、サンバリアの今の体制であるイバラグラ側からしてみれば、大多数の国民によって反乱を起こされるようなことが、アルタフと「人に創られし人」の一族と協力するような感じで同時に起こった場合、いくら軍事力を有していたとしても勝とうが負けようがサンバリアの体制側にとっては地獄でしかない。

 なぜなら、軍需製品を作るのに機械を使うとしても、点検とか検査などの面で機械以外にも人の眼が重要であるし、人は休ませないといけないし、集中力を欠くような状態に陥ってしまうと、欠陥製品がそのまま通過してしまう可能性は十分にある。

 さらに、人は食事などをしたりしないといけない。睡眠も―…。

 そうだと考えると、人はそれなりというか、多くは必要な存在であることに間違いないのだ。軍需関係だとしても、人が生活をしていくための物を供給する産業は人手を要するものであり、いくら機械があったとしても、人の手を完全に介さないということはない。

 ゆえに、それを無視して戦争をしようとする愚か者はどの時代にもいるだろうが、真面に考えることができるようであれば、戦争によってお金がかかり、かつ、軍需以外での生産面で大きなダメージが出やすいことに気づくかもしれない。何かしらに昂揚していれば、そのことに気づくのは遅れてしまうか、気づかないかということにもなろう。

 いや、平時でも気づかないかもしれない。そうだとすると、戦争を戦場ではなく、戦争当事国の中で生活している人から聞かないといけないし、彼らの経験から学ばないといけない。それは結局、自分達の今までの生活が貧しくなるということが、出てくることであろう。

 その例外は存在するであろうが、それは国内産業がしっかりしているのか、もしくは食料生産に関して、しっかりと仕組みが出来上がっているのだろうか、その面に関しては、分からないという面があるだろうが、我々はその面についても知らないといけないであろう。

 話が逸れてしまったので、話を戻すと、ランドロからしたらアルタフがサンバリアの権力の中枢に戻ってくれるのはありがたいことであろうし、実際、そのために逃げてきたのだろうという思っていたのだ。

 でも、違った。

 そうではない。

 アルタフは、サンバリアでの権力や地位を欲していないようだ。

 そして、改めて、アルタフの態度を見れば、どこかしらの疲れのような悲壮感のようなものが見える。

 もう、誰かの命を守るためにしか行動することができなくなっているのだろう。そう思わせるような―…。

 そして、周囲からしても、スメラ以外は驚きにしか感じられなかった。

 アルタフもそのことを理解しているのだろうか、言うのだった。

 「私がサンバリアでの地位も権力も興味はない。この二年の間、虐げられるかもしれない人々を守るために頑張ってきたけど、流石に、気持ちとしてまいってしまっている。これからのサンバリアは、イバラグラ以外のこれからを支える世代がしっかりと自身の方針をもって進めていかないといけない。いつまでも、旧時代の人間がいて良いということはない。私のような存在などは―…。」

と。

 そこには悲壮感というものを誰もが認識できるほどにあるだろうが、それは同時に、自分には政治をする気力がないと言っているのだ。

 それに加え、新たな世代がサンバリアには必要だという認識にもいたっているのが、その気持ちに拍車をかける。

 アルタフからしたら、自分は終わった人間であり、余生をゆっくりと過ごすための存在に過ぎない。

 それが今のアルタフの強い気持ちなのだから―…。


第146話-11 砂漠へ―… に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆していくと思います


では―…。

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