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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
696/748

第146話-8 砂漠へ―…

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 エンゲルが今のところ、何となくであっても問題はない。

 大事なのは、これから成長していく過程で、人生の経験の中で言葉の意味を理解し、自分なりの解釈をうち立てることが重要だ。

 これは、人が何かしらの物事を理解していく上で、決して避けることのできないことである。

 なぜなら、人という生き物は、完全に相手のことを理解したり、物事を理解したりすることができる存在ではない。

 ということは、何かしらのことで、自身で補って理解しないといけない。

 つまり、理解における要素の中に何かしらの理解できていない部分が存在し、それを自身の今までの経験、得てきた知識、自分なりの発想などを加えて、補うことが必ず発生することであり、それを避けることができないということだ。

 そして、これは相手と完全に同じなれないことを意味し、同時に、この世界で生き残っていくためには絶対に必要なことであるのは確かだ。

 要は、個性というものである。

 個性とは違いであり、違いがあるからこそ、同じ理由で滅びるということを避けられる可能性が存在しているということだ。数多くの命が奪われるということになったとしても、そこには共通の要素があり、生き残った者達には何かしらの違いがあり、その共通性というものは同じ結果をもたらす上での条件となり、逆に違いの結果をもたらすのは、共通性における効果を発揮されるものの条件に合致しないものがあったものと考えることが可能であろう。

 ここで大事になってくるのは、完全に相手と同じ解釈や理解になれない以上、それを補うことが必要になってくることを理解すること、それと同時に、それを補うことによって、場合によっては、相手以上の物事に対する理解を得ることができるということである。その逆に、相手以上に理解が得られない場合も存在するということにもなるが―…。

 その基準はないのであるが、理論的にも成り立つであろうし、それを判断する側の人間から主観性を完全に排除することができない以上、基準は全ての物事や起こっている事態に対して適用して完全に解決できるための判断材料にはならないということである。

 よって、自らの判断に対しては、自信を持つということは大切なことであるが、それと同時に、間違う可能性もしっかりと考慮に入れておかないといけないということだ。矛盾しているのではないかと思えるかもしれないが、現実にはそんなものだ。

 さて、話が逸れそうになっているので、戻すと、エンゲルはこれから、ランドロやアルタフの言っていること以上の理解もできるであろうし、それが起こるのはこれからの経験を通して、ということになる。

 エンゲルは今、理解できなくても、問題がないわけではないだろうが、悪い方向に解釈をしないということだけにはしっかりと気を付けないといけない。

 エンゲルがこれから成長できるのかどうかは、これからのことにより、これでランドロからしたら、裁定は終わったものであるという認識にはなっていた。

 だが―…。

 「……「長」……。裁定の方を―…。」

と、リガが言うのだった。

 リガからしたら、エンゲルへの裁定は終わっていない。

 刑罰の内容を言っていないので、裁定が終わったということにはならない。

 それを下すのは、アルタフではなく、ランドロなのだから―…。

 そして、リガの今の言葉を聞いたアルタフは、当然だろうという感じで頷く。アルタフはカルフィーアの村の司法権を持っているわけではないし、自分から判決を下すことはできない。

 それに何かしらの形で罰を与えないと、リガやカルフィーアの住民らが納得しないのは分かっている。

 ゆえに、その裁定を下す権限を持っているランドロは、彼らを納得させるだけの罰を下さないといけない。

 ランドロの方は、アルタフの言葉で、エンゲルが「分かりました」と言ったのだから、裁定は終わりだという認識であった。

 これで一件落着。

 そんなことが許されることはない。

 そして、ランドロの表情は、険しいものになっているが、それと同時に心の中で冷や汗のようなものをかくのであった。

 スメラは、

 (……………………こいつ、完全に油断していたな。)

と、心の中でランドロをこう評するのであった。

 スメラからしてみれば、ランドロがしっかりとしているというのは昔から知っていることであるのだが、それと同時に、こういう戦闘とは違う場になると、時々、油断することがあるのだ。

 それがランドロの欠点であるが、「長」という地位にランドロがなっている以上、それを指摘しないようにする。「長」という権威を維持させるために―…。

 スメラは、別にカルフィーアの「長」の地位になりたいわけではないし、「長」という地位を駄目にして、自分達の立場を悪くするようなことをしたいわけではない。

 そうであるからこそ、今は静かにしておく必要がある。

 大人しく、自分は関係ない、という感じで―…。

 ランドロからしたら―…。

 (えっ、終わりじゃないのか。ここは名場面じゃないのか? なら、裁定を下さなくても良くならないか、それもエンゲルのどうしようもないことによるものなんて―…。ここからエンゲルの成長物語が発生するような場面じゃないのか。………………。)

と、ランドロは心の中で思いながらも、リガの方へと視線を向けると、これは、

 (裁定を下さないと、儂の「長」という地位がなくなるかもしれん。………これ、良くね。儂……「長」なんて地位に最初から就きたくなかったしの~う。ということで、裁定を下さないということで、信用を失うことになるじゃろうが、「長」は儂よりも優秀な方に就いてもらえば良いのだ。)

と。

 ランドロからしたら、ここは千載一遇のチャンスがやってきたのだ。

 ここで、エンゲルに対する裁定を下さないということによって、カルフィーアの住民からの信頼を失って、「長」という地位を別の人間に譲ってしまえば良いのではないか、という案がランドロの頭の中に浮かび上がってくるのだった。

 ランドロから言わせてみれば、自分はカルフィーアの村の「長」の地位に就きたかったわけではないし、自分はゆっくりと余生を過ごそうとしているのだ。

 そうだと考えると、カルフィーアの村の住民からの信頼を失ってしまうのは嫌な事であるが、「長」という地位にいると責任重大な判断を任されることがあり、自分の判断で合っているのだろうかという不安な日々になってしまうので、さっさと地位から離れたいという気持ちが強いので、信頼を失うことの方が小さくなってしまっているのだ。

 信頼は再度、築き上げていけば良いと思っているからでもあろう。

 そして、ランドロは、

 「ということで、裁定は―…。」

と、言いかけたところで―…。

 「「長」。もし、裁定を下さないようなことをしたら、「長」の地位に亡くなるその日までいてもらいます。」

と、リガが付け加える。

 リガも分かっているのだ。

 ランドロが、「長」という地位にいるの嫌だという気持ちを―…。

 なら、なぜ、ランドロを「長」の地位に留めさせるのか?

 それは、ランドロ以外に、カルフィーアの村を治めることと、何かしらの判断を下さないといけないことがあり、その判断で納得させられる人物がいないからだ。

 歴戦の戦いの中で実力を持ち合わせているということがカルフィーアの村の人々に知られているのは、そういう面で、村の中では活きてくることになるのだ。

 そういうことで、ランドロを「長」の地位から退けるようなことはできない。ランドロの次に株の高いアーサルエルは、まだ、最前線で戦闘に立つことができる実力を有しており、彼自身もまだ、最前線で戦うのだろうという気持ちであるし、戦闘教官をも兼任しているので、どうしても「長」という地位に就けることはできないし、そんなことをしてしまえば、アーサルエルが過労で倒れるようなことになるのだから―…。

 そういう意味で、ランドロがカルフィーアの「長」という地位から引退できることは、暫くの間、訪れることはないだろう。

 なので、リガの方も、「長」の今のような言葉を言うのだった。

 「えっ、マジー…。」

 とても年を老いた者の言葉とは思えなかった。

 ランドロも歴戦を戦ってきた以上、生き残るため、勝利に導くため、対処するためにいろんなことを学ばざるを得なかったことから、その習慣でいろんな若い人の言葉やら、あまりここでは使うのは宜しくない言葉をも憶えていたりする。

 そして、記憶力も良いし、頭の回転の良いことから、このような今の言葉が出てくるのであった。まあ、今の言葉が若い者の言葉か、と言われれば、そうだと完全に頷くことはできないであろうが―…。

 そして、ランドロの驚きの表情をリガやスメラ、アルタフは見てしまうが、ここで、スメラとアルタフが何かしらの言葉をランドロにかけることはない。

 なぜなら、この場において、自分達が口を出して良いという感じではなかったからだし、内輪のことは内輪で、ということに徹していたからであろう。

 内輪のことを何も知らずに自分の好き勝手な言葉を言うのはあまりにも、我が儘なことでしかなく、相手に対する配慮を欠いた言葉にしかならない。相手の事情を知って、そこからしっかりと考えた上で言うことの方が重要であるし、それは相手に対するしっかりとした解決策になるようなことでないといけない。

 実際、そのような言葉になるには、かなりの理解度を要することになるであろうが―…。

 一方で、リガの方は内輪なので、しっかりと言わないといけない。

 「ええ、マジです。」

と。

 要は、ランドロにとっては、エンゲルに対する裁定を下さないということが自身が辞めたいカルフィーアの「長」という地位に一生、閉じ込められることになる、ということであり、地獄でしかない。

 そうだと思うと、ランドロは嫌でも、エンゲルに対して、裁定を下さないといけなくなるのだ。

 エンゲルからしたら、裁定から逃れられたという安堵の気持ちが一瞬で、なくなってしまい、俯きになりかけるのだった。

 (……ここで俯きになってどうする。面白いことを言うか。いや、今の俺にはそんなことを言える権利はないし、俺の立場を悪くするだけ。だけど、ランドロの爺さんが裁定を下さないようにすれば、爺さんが「長」の地位のままでいられるのなら、村の皆にとっても朗報でしかない。だけど、呆けるようになったら―……。)

と、エンゲルは考える。

 エンゲルからしたら、ランドロがカルフィーアの「長」でいてくれることはありがたい。

 なぜなら、ランドロ以外の人物がなった場合、確実に、自分が馬鹿をやらかしたら、とんでもない厳しい罰が下るのではないか、と思ってしまうのだ。

 自分が不利になっても、人を笑顔にさせることが良いということをアルタフに言われたばかりのエンゲルであるが、そのことに対する考えはいっていないようであり、まだ、アルタフの言葉をこの場ではいかせないような感じである。

 だけど―…。

 エンゲルはアルタフの言葉を思い出す。


 ―君には自分が敢えて敵になって、雰囲気が悪い双方の側を歩み寄らせる才能がある。君自身は感謝されたいのかもしれない。それは君自身のためでしかないし、誰かのためにはならない。大事なのは、誰かを笑顔にさせたい、誰かと誰かを仲直りさせたい、そのために、自分が彼らに対しての心象を悪くしても良いという気持ちになれることじゃないのか―


 その言葉が頭の中で流れてきたからこそ―…。

 (あっ、今が―…。)

 だからこそ、自分が大切だという気持ちもあったのだろうが、自然と―…。

 「ランドロ様が最近書いたドヘタな詩がありました。そこに書いてあったのは―…。」

と、エンゲルが言いかけた時―…。

 ランドロは、人には見られたくない手記に書かれている恥ずかしい詩をエンゲルが見られていたことに、一瞬で怒りの感情を感じ―…。

 「お主、次回の大遠征は一番先頭で、敵陣に突っ込んでいけ!!! これが今回の裁定じゃ!!!」

と、ランドロは言う。

 ランドロからしたら、あれがカルフィーアの人々に知られてしまっては、自分の今まで築き上げてきた歴戦の猛者としてのものが失われてしまう。それに、あの詩は自分でヒソヒソと楽しんでいるのが良いと思っているのだ。

 まあ、子どもには見せられない、センシティブな面で―…。

 ということで、ランドロはカルフィーアの「長」の地位に一生縛り付けられるということはなくなったのである。エンゲルの機転によって―…。

 ちなみに、エンゲルがなぜ、ランドロの恥ずかしい詩を知っているのかというと、偶然、ランドロの家に呼ばれることがあって、その時にランドロの手記を見つけ、覗いたことによって、ということになる。


第146話-9 砂漠へ―… に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆していくと思います。


では―…。

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